日本のローカルな景色をカラーグレーディングでポップ表現ー映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』ED曲『Bushido』MV超色分解Vol.4

2022.04.28 (最終更新日: 2022.07.20)

MV超色分解Vol.4はみんなが大好き『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』のエンディング曲『Bushido』をピックアップ!

Vol.4:Good Gas & JP THE WAVY『Bushido』

MV解説

『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』でのエンディング曲になったのが『Bushido』です!日本のアーティスト JP THE WAVY
も参加しているため、知っている人も多いのではないでしょうか?

ワイルドスピードではHIPHOP系の楽曲が主に使用されている印象を受けます。作中のシーンも混じりながらMVが構成されていていますね。

HIPHOPのミュージックビデオで 「仲間を引き連れてリップ」の様なベタな演出 も混じるなど、カッコいい演出が沢山ありました。

また海外の方が聴いていても分かりやすい日本語が混じりながらの楽曲も抜群に良いですよね。

それではまず楽曲の伝えたいメッセージを理解した上で、どのようなカラーが使用されているのか分解して深くみていきましょう。

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カラーパレット


色解説

印象的なシーンのカラーパレットを生成してみました!
※後ほど生成したカラーパレットのカラー詳細はお伝えします。

基本使用されているカラーは寒色系と暖色系がスッと目に入ってくるパレットになりました。シーンによって異なりますが、印象的なシーンは純色のトーンが入ってますね。

それでは見ていきましょう!

配色解説

 


画像出典:Good Gas & JP THE WAVY『Bushido (Official Music Video) [from F9 – The Fast Saga]https://youtu.be/yenEi5IOsQY

「BLUE」「ORANGE」の2色で構成されており、
ダイアード」という配色の組み合わせが使用されていますね!


背景の絵画は「BLUE」でグレーディングで発色よくされており、アーティストにはイエローに近い「ORANGE」の衣装を着用して配色が完成しています。

この配色を見ると「ティール&オレンジ」のように感じますが、実はティールというよりは青味が強く、オレンジ色も使われていない配色になります。このシーンはどちらかというと補色の配色を使用しているということです。

実際の銭湯で撮影するとこんな風に明るくならないはずで、そこを明るくポップに見せているのではないでしょうか。

海外のミュージックビデオの配色などでは補色はよく使用される手法ではありますね。

アーティストの衣装を無彩色にし、背景とのコントラストを強調



画像出典:Good Gas & JP THE WAVY – Bushido (Official Music Video) [from F9 – The Fast Saga] : https://youtu.be/yenEi5IOsQY

和の雰囲気の中に佇むアーティストがカッコいいシーンですね。
このカットで使用されている配色は「アナロジー配色」です。

色相環で隣り合った色で作る配色です。
輝度と彩度に大きくコントラストをとると綺麗に収まるルックです。アーティストの衣装は無彩色※を起用している辺りがコントラストがハッキリとしていて最高にかっこいいルックです。

※無彩色とは「白・黒・灰」など色味のない色のことを指します。

ただ、複数の色相を使用するとカラーがうるさくなります
そういった事を回避するために明度で複数の色相をコントロールします。

この場面はおそらく、日本の花街イメージのシーンになるかなあと思います。普通の和室だとこんな色合いにはならないはずで、夜の怪しい花街感を赤味のある色合いで出したかったのではないでしょうか。

このシーンは室内で照明も独特なので、カラーグレーディングが相当大変だっと思います。そこは現場でガファー※さんにお願いするのか、もしくはカラーグレーディングの際にバランスを調整するのかはディレクター次第ですが、筆者の考え方的には、現場とカラーグレーディングの両方で調整することが理想のルックの近道だと思っています。

結果的にこの場面、超かっこよくしあがってるなあと僕は思います。

ガファー(Gaffer)…映像制作における撮影分野の照明技師。照明監督など

日本の飲み屋街の雑多な印象を衣装の色でまとめている



画像出典:Good Gas & JP THE WAVY – Bushido (Official Music Video) [from F9 – The Fast Saga] : https://youtu.be/yenEi5IOsQY

奥行と左右のパースが計算された綺麗なシーンですね。
このシーンは「ダイアード」のルックですが、「ティール&オレンジ」の組み合わせで配色されています。

でもこのシーンってよく見るとアーティストが白いTシャツを着ているので、実は 「トライアド」配色にも見えるんですよね。そこが凄くおもしろいと思いました。

よくよくシーンを観察してみると、ロケーションが夜で、日本のごちゃごちゃした飲み屋街の風景の中でアーティストを浮かび上がらせるにはこの白いTシャツが不可欠なんじゃないかと思います。Tシャツが白いことで、アーティストが浮かび上がって見えますよね。

これを意図的にディレクターが指示しているとすれば素晴らしいです。

Good Gas & JP THE WAVY の『Bushido』MV超色分解まとめ

いかでしたか?
ロケーションも日本にしか無い銭湯だったり、畳の和の部屋を使用していたりと細かい部分にまで演出をされていて感動しました。

海外の方達からはサムライブルーとも言われるイメージカラー「BLUE」が使用されていたり、日本という国の魅力が詰まったミュージックビデオでしたね。

街や建物を上手く使ってカラー演出を行っているのが参考になったのではないでしょうか!

次回もお楽しみに!

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著者プロフィール

  • ビデオグラファー / 映像ディレクターRen Takeuchi

    1997年京都生まれ。高校卒業後にビデオグラファーとして活動し、2019年にフリーランスの映像ディレクターとして独立。TVCM、WebPV、PV、企業VP、MVなど様々な制作を手掛ける。現在はチームで活動をし、主にカラーグレーディングを得意とし、企画・ディレクション・撮影・編集をワンストップで行う。 https://www.instagram.com/grove_glas/?hl=ja

  • Edit:古川恵梨 / Eri Furukawa(Vook編集部)

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