誰もがスマホを持てば、簡単に撮影や編集、YouTubeへのアップロードができる時代となりました。「誰もが」です。より動画が身近な存在になったからこそ、生まれたのが「YouTuber」です。彼らは、日々の動画制作をどのように思っているのでしょうか?
すでに、動画制作を経験をしている方は、1本の動画を作り上げるために必要なパワーがどれほどなのか知ってるはずです。そして、こだわり続けることがさらに大変なことも知っています。
YouTuberは、カンタンではありません。
その1本の動画に強いこだわりを持ち向き合うYouTuberに、インタビューする連載企画「カンタンじゃないよ YouTuber」。
第1回目のゲストはYouTubeを通して自らの暮らしを発信されている、Hanamoriさんです。
Hanamoriさんが動画にかける強いこだわり、「心地の良い」動画を作る上で大切にされていることとはいったい? そして、動画制作との出会いや楽しさ、こだわり、そして大変さを赤裸々に語っていただきました。
- ゲストYouTuberHanamori(ハナモリ)
インテリアやDIY、料理など暮らしのアイデアを発信するYouTuber。内装関係の仕事もフリーで受けながらも、約週1本のペースで動画投稿を続ける。チャンネル登録者数は16.6万人(2022年4月時点)。
- YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UC8-N_6GBPmT40pOpg5YOirA
動画は簡単に楽しくできるのに、いっぱい褒めてもらえた
Vook:今日はお話を伺いたく、楽しみにしていました。
Hanamori:よろしくお願いします。緊張しますね、何から話せば良いのでしょうか(笑)
Vook:Hanamoriさんはお仕事をしながらYouTuberとして活動されております。お忙しいかと思いますが、動画がとても綺麗にできていると編集部でたびたび話題に上がっています。今日はそのこだわりを根掘り葉掘り伺えればと。
Hanamori:わかりました。
Vook:まず初めに、なぜYouTubを始めたのか、経緯からお聞かせください。
Hanamori:そうですね、最初の動画制作はYouTubeとはまったく関係ありませんでした。
私は以前、在籍していたリノベーション関係の企業で新卒の採用を担当していました。当時の社長が「これからは採用も動画でする時代だ!」とおっしゃっていたのです。でも社内は建築士さんばかりで、動画を作れる人がいるはずもなく、「じゃあ、とりあえず採用担当に作ってもらおうか!」というような流れで任されたのがきっかけですね。確か、2016年頃だったと思います。
Vook:きっかけはお仕事で必要に迫られてだったのですね。
Hanamori:そうなんです。それと当時、リノベ業界で家に関する1分間の映像作品を募るコンテストが開催されたことがありました。頭数をそろえるために個人で作って出すように言われて、それで出品したものが最終審査まで残ったんです。
審査員には映像制作や広告代理店の方などもいらっしゃって、「いいんだけど、なんか、普通だよね」って言われたことを覚えています。でもそれ以上に、作った動画が社内の人からたくさん褒めてもらえましたし、なにより自分の作品を審査員の方々が評価の対象として見てくださったことが、嬉しかったんです。
その頃からです。個人でも動画を制作するようになりました。
Vook:普通と言われるのはショックですが、作品としてみていただけたのは嬉しいですね。動画の撮影や編集は、すんなりとできたのでしょうか?
Hanamori:それが分からないことだらけでした(笑) 特に予備知識があったわけでもありませんし、それこそWebで「動画 カット やり方」から調べていました。Vookさんの記事も読ませていただいたんですよ。
Vook:ありがとうございます(笑) 動画制作を始めるときは、どんな用語で調べれば良いのか分からなかったりするので、大変ですよね。
Hanamori:そうですね。本当に動画に関する知識がなかったので、用語を知って調べていくことばかりでした。でも小さい頃から、絵を描いたり、何かを作ることが好きだったので、抵抗はありませんでした。
Vook:動画制作の楽しさに気づいてしまったのですね。
Hanamori:はい、気づいてしまいました(笑)
Vook:それまで動画以外で熱中されたことはあったのですか?
Hanamori:何か作っているときは、そこから出てこられなくなりますね。それくらいのめり込みます。今は本業で内装の仕事をしているのですが、1日中、インテリアのことを考えていることも大好きです。私は好きじゃないことは仕事にできないタイプですね。
Vook:Hanamoriさんは自分の暮らしやライフスタイルを発信されています。そこにも「自分の好きなこと」と通じていそうですね。
Hanamori:YouTubeを始めるなら、続けないといけないですよね。そうしないと、せっかくチャンネル登録してくれたファンの方ががっかりしてしまいますし。そこで「自分が100本動画を上げるんだったら?」と考えたときに、やっぱり内装やインテリアしかないかなって思いました。
Hanamori:嫌いなことは絶対に続けられないので、「とりあえず100本作れそうなものはなんだろう?」と考えていました。 現時点で実際に150〜200本くらいアップしています。で、気づいたら見てくださる方々が16万人に。
なんでそんなにたくさんの方が見てくれているのか、未だによく分からなくて。本当にそんなに見てくれているのかなって、不思議に思います。
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10分の動画のために、2日かけて棚を作る
Vook:動画のアイデア出しは大変だと思いますが、どのように捻出されているのでしょうか?
Hanamori:私は月に4本、週に1本くらいの更新なので、そこまで動画のネタに困ったってことはありませんね。
強いて言うなら、私は雑誌を参考にすることが多いです。毎月必ず発行されて、一定の文量があって、季節性がありつつも毎年違う切り口で伝えられている雑誌は、よく参考にしています。
私の場合は動画のアイデアよりも、撮影の準備がとても大変です。例えばこの前、本棚の動画を出したんです。
Hanamori:10分くらいの動画なんですが、このようなDIY系の撮影は、設計から始めないといけないんですよね。自分の家を測って、計算して、ホームセンターで資材をカットしてもらって……という準備で2日以上はかかっています。
Vook:撮影って視聴者からは見えてないところがほとんどですからね。スマホでパッと撮って共有できる時代になったからこそ、動画のこだわりが見えます。
Hanamori:TikTokのようなショート動画も楽しいんですけどね。私の動画は準備に時間がかかるものが多いので「10分のための2日間」は、大変かもしれないですね(笑)
普通だったら本棚なんて「買ってきたらいいじゃん?」ってなると思うんですよ。でも、他の人が簡単にできないことだからこそ、やりたいなぁと思っています。
Vook:その「本棚を作ろう」という強い意思はどこから湧いてくるのですか?
Hanamori:好奇心ですね。「ここに棚を作ったら、どうなるんだろう」って。もちろん最初は既製品を考えるのですが、多分私はこだわりが強すぎて満足しないんですよ。「ここはピッタリじゃなきゃダメ」「ここにA4が入らなきゃイヤ」とか……。
だったら作ろうって。私は 「この左右の隙間を埋めるためなら、2日かかってもいい!」 という気持ちなんです。
Vook:「既製品が合わないなら作る」は、正にクリエイターの発想ですね。ここまでポジティブにクリエイティブを楽しんでいられるのは、聞いていて清々しいですね。
Hanamori:もちろん良いことばかりではないですよ。大変なことだってあります。
撮影の準備や時間が長いことや、更新し続けなければいけないプレッシャーは特に感じます。特にYouTubeは更新を続けないとファンの方に表示されなくなってしまうので、忙しくても週1本はアップするようにはしています。
気分が乗らないときだってありますよ。楽しくて好きなことでも、イヤになってしまう時期って絶対にあるじゃないですか。それは仕事でも、プライベートであっても「今月はもう休みたいな...」って。
Vook:10分の作品のために2日かけて準備していたら、そういうときもありますよね。
Hanamori:「こんなに準備したのに10分にしかならないの!?」みたいなことはたくさんあります。本当は2つの動画に分けたりしたいんですが、見てくださっている方のことを考えたら、余計なカットは使えず10分に収めています。
そういった意味では、本当に大変ですね。
映像素材へのこだわり
Vook:Hanamoriさんが動画を作る上での「映像に対するこだわり」は、なんでしょうか?
Hanamori:私は撮影するときに、全部「置き」で撮りたいんです。ジンバルを使って手ブレを出さないように撮られる方もいらっしゃいますが、私は基本的に三脚を使って、フィックス(固定)で撮るようにしています。室内では絶対に置きですし、外出先でも置きです。
Vook:それは動画を拝見したときに感じました。画面の構図一つひとつに時間をかけていらっしゃいますよね。
Hanamori:いま、カメラマンさんに撮影を手伝っていただいています。例えば屋外で歩いているシーンを撮るときは、進行方向に先回りしてもらって撮影して、また先回りして……という繰り返しで、時間をかけています。
ただ歩いているシーンだけでも、その裏ではカメラマンさんがダッシュしてくれているんですよね。お願いしている立場ですが、本当に申し訳なくて。
あとカメラマンさんには「絶対に揺らさないで」と伝えています。揺れない映像にしたくて、素材の時点でちょっとでも動いているのもイヤなんです。
Vook:編集でワープスタビライザーを使うのもダメなんですか?
Hanamori:素材の段階で、できるだけ編集しなくて済むようなものにしておきたいんです。
そもそも、見てくれる方にゆったりした気持ちで見て欲しいと思って動画を作っているんですよ。 ゆっくり話すとか、料理はガチャガチャしない、映像もゆっくりつなげるようにしています。なので、画作りは素材の段階で、最もこだわっていますね。
一度、車の中で撮影したことがあって、そのときに「もっと揺らさないで!」ってお願いしたことがあったのですが、「Hanamoriさん、さすがにムリです」って言われて。流石に車の中で揺らさないのは難しいですよね(笑)
Vook:車自体、揺れていますからね(笑) 映像の色味はいかがですか?
Hanamori:私はとにかくキヤノンのカメラの色味が好きなんです。今は「EOS RP」というカメラを使っています。たぶん、映像制作をしている方の中では珍しいですよね。YouTubeで動画を発信されている方はソニーのα(アルファ)やLUMIX(パナソニック)などを使われている方が多い印象があります。
Hanamori:私の中で、キヤノンの色が一番好きなんです。
Vook:キヤノンで動画を撮っている方はあまり聞いたことがないですね。カラーコレクション(色補正)は、しているのでしょうか?
Hanamori:ほとんどしてないですね。撮影するときにホワイトバランスを合わせるぐらいで、撮った映像をそのまま使っています。
Vook:そうなんですね! 色編集をしていると思っていました。
Hanamori:よく言われます。「その色編集の方法、教えて下さい」って聞かれることが多いんですが、そもそもやってないんですよ(笑) 撮影時の光とホワイトバランスの調整だけで、あとはほとんど何も。
ダイナミックな映像を撮られる方は、編集されるのかもしれないですね。場所が変わると、光の具合も変わるので。私の動画は基本的に家の中なので、そこまで編集しなくてもいいのかもしれません。
Vook:光の使い方に気を使っていらっしゃるのですね。
Hanamori:それもキヤノンのおかげですよ。
光が入って来たときの色が、とっても綺麗なんですよ。いつか、キヤノンさんと一緒にお仕事できないかなって思ってたり。私、キヤノン褒めすぎですかね?(笑)
Vook:好きなことを、好きというのは良いことだと思います。
60歳からの「Hanamori」は……
Vook:もう少しだけ聞かせてください。自分の暮らしを発信することや、自分を主語にすることに対して、恥ずかしかったり、抵抗だったりはないのですか?
Hanamori:最初は恥ずかしかったです。でも名前も顔も出ていないので、べつにいいかなって。顔を出してやっている方とは、少し感覚が違うのかも知れません。今後もこのスタイルは変わらないと思います。
あと……私、60歳になったらゲームをやりたいなって思っています(笑)
Vook:ゲームですか? 今からやってもいいような気がしますが?
Hanamori:おばあちゃんになってから、ゲーマーになりたいんです。今は外で走ったり、何でもできるんですが、お年寄りになると、それまでのように動いたりはできなくなると思うんです。そこで『荒野行動』とかを、60歳から30年間はやりたいなって企んでいます。
何歳になっても、目標があったほうがいいですし。あと、今からゲームをしてしまうと視力が落ちちゃうので、今は視力と体力を温存したいなって。友だちにも「60歳になったらチームを組もう」と言っています(笑)
Vook:面白い考え方です! そこまでのチャレンジ精神というか「こうしたい!」という前向きな性格は、昔からだったのですか?
Hanamori:昔から変わってないですね。すぐ行動をしてしまうタイプで、熱中したらそこから離れなくなるのは、ずっと一緒です。あと、嫌いなことはまったく覚えられないことも、昔から変わってないかと思います。
周りからは「こだわりが強すぎる!」と、ずっと言われていました。それは私自身、自覚しています。
Vook:今、撮影に協力しているカメラマンさんとは意見の違いがあったりしないんですか?
Hanamori:なくはないです。けど、仕事をしていく上では、自分のこだわりを100%は出してはいけないと思っています。
誰かに何かをお願いするときは、求めても8割までですね。あとの2割を要求してしまうと、その方のやる気もなくなっちゃうかもしれません。余白を持たせた方がいいと思っています。ただ、絶対譲れないことは譲りません。こだわりですからね。
Vook:ありがとうございます。Hanamoriのこだわりがよく伝わりました。では最後に、これからYouTubeを始める方に、酸いも甘いも含めて、メッセージをいただけると嬉しいです。
Hanamori:そうですね……。とにかく、早く好きな動画を1本上げてみてください。こだわり続けたりすると上手くいかないことがあったりと、1本作るのが大変だと感じるかもしれません。なので、完璧でなくてもいいから、まずは1本上げて欲しいなって思います。
その1本で、今とは全く違う人生になるかもしれません。その行動で、小さなことかもしれませんが、何かが少しは変わります。動画をYouTubeに上げることで、新しい道は拓けると思ってます。
まずは1本。一人でも多く動画を作る方が増えたらいいなって思っています!
Vook:今日は楽しかったです。ありがとうございました!
Vookが目指す「映像クリエイターを無敵に。」のコンセプトボードをHanamoriさんに持っていただきました。
いかがでしたか?
「とりあえず100本作れそうなものはなんだろう?」と考え始めたYouTubeが、気づいたら16万人の方に登録してもらったと話すHanamoriさん。多くの方に見てもらえる、こだわりと熱意が、強く感じられる時間となりました。
Vookは、これからも動画をつくり続けるYouTuberのみなさんを応援します。
そして、これから動画制作を始める方々の後押しができるようにコンテンツを取り揃えています。
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