SixTONES『共鳴』メイキング|ソニーPCL「清澄白河BASE」バーチャルプロダクション常設スタジオで撮影! VP撮影のワークフローと今後の課題とは?

2022.06.07 (最終更新日: 2022.08.08)


SixTONESによるYouTube限定の楽曲パフォーマンス「PLAYLIST –SixTONES YouTube Limited Performance-」。2021年8月にスタートした本企画、先ごろ2022年3月にはDay.4『共鳴』とDay.5『Gum Tape』の2曲の最新パフォーマンスが公開となった。

これら2曲のビジュアルには、現在映像界隈で注目度の高い、バーチャルプロダクションによる映像演出が施されている。ここでは、2022年3月2日(水)リリースの最新シングル『共鳴』について、PLAYLISTのMVメイキングを紹介する。


SixTONES – 共鳴 [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.4]
ディレクター:大河 臣/プロデューサー:高橋 嘉幸(SEP)、塩見 俊貴(SEP)/撮影:福留 章介/照明:平野 勝利/美術:藤枝 智美/特機:金子 哲(TOKKY'S )/音響・録音:TOKYO SANKO/メイク:髙橋 幸一/スタイリスト:金光 英行/コレオグラファー:GANMI/テクニカルマネージャー:蓑毛 雄吾(SEP)/テクニカルディレクター:比嘉 了(BACKSPACE Productions Inc.)/CGプロデューサー:鈴木 健哉(amana inc.)/CGディレクター:小谷 洋輔(amana inc.)/CGデザイナー:増田 啓人(amana inc.)、猪嶋 謙一郎(amana inc.)、佐藤 翔太(amana inc.)/CGディレクター:尹 剛志(jitto inc.)/CGプロデューサー:塚本 時彦(jitto inc.)/CGデザイナー:滝口 広大(jitto inc.)/CGディレクター:祭田 俊作/VPプロダクションマネージャー:遠藤 和真(ソニーPCL)/VPテクニカルディレクター:細田昌史(ソニーPCL)/UEエンジニア:長嶋祐加(ソニーPCL)、大橋さゆり(ソニーPCL)/カラリスト:奥津 春香/制作:SEP

概要・企画経緯

本作は2022年2月1日(火)にオープンしたソニーPCLのクリエイティブ拠点「清澄白河BASE」に常設されているバーチャルプロダクションスタジオを活用した初の一般公開作品。

横15.2×高さ5.4mに及ぶソニー「Crystal LED Bシリーズ」による曲面LEDウォール、デジタルシネマカメラ「VENICE」、スタジオ天井の7×7mのLEDパネルを備えるこのスタジオで、SixTONESがライブパフォーマンスを行いながら、リアルタイム合成を行って撮影された作品である。

本作でのバーチャルプロダクション(以下、VP)は「インカメラVFX」と呼ばれるもので、LEDウォールに背景CGやVFXをリアルタイムで投影し、ライティングとライブカメラトラッキングを行い、演者と背景を同期して撮影する手法

従来であればグリーンバック撮影などで後から合成していたような映像をリアルタイムで生成でき、さらに撮影現場でより臨場感あふれる空間を表現できることから、これからの映像制作フローの有力な選択肢として注目されている。

本作は、『共鳴』と『Gum Tape』でVPを使いたい、というところからスタートした企画。

プロデューサーを務めた株式会社セップ 塩見 俊貴氏(以下、塩見)は当時をこう振り返る。

塩見:SixTONESのデビュー曲からずっとMV周りのプロデューサーを担当しているのですが、彼らはパフォーマンスに対して非常に力を入れているグループです。

通常は、楽曲のリリースのタイミングでテレビ番組で歌を披露しますが、彼らはさらに自分たち主導で彼ら自身のYouTubeチャンネルでパフォーマンスを見せたいということで、このPLAYLISTという企画が始まりました。

今回、企画の4回目と5回目にあたる『共鳴』と『Gum Tape』では、VPを使った表現をやってみようということになり、VPやCGの技術に詳しい方に監督をということで、かねてから作品を拝見していた大河さん(大河 臣氏)が適任だと考えました。

映像のクオリティも高いですし、SixTONESとの相性もすごく良いなと思ったためです。

▲大河臣(おおかわ・しん)
1986年生、東京都出身。
「関わるヒト、すべてが幸せに」をモットーに2011 年より映像作家として活動。VFXや光学の知見を活かした画力溢れる空間演出を得意とし、広告や MV、展示作品など、演出領域は多岐にわたる。
主な作品としてRADWIMPS 「鋼の羽根」 、ONE OK ROCK「 Broken Heart of Gold 」、YOASOBI「 NICE TO MEET YOU 」 Vision LED 総合演出 など

大河:お話をいただいたとき、PLAYLISTという試み自体にまず共感しました。回ごとにテーマを変えて、楽曲のパフォーマンスと映像表現を同時に提示する中で、新しいものを追求するということで、最初からすごく前向きでした。

そして、VPを初めてチームでやるということで座組の提案をいただいたときに、私が持っている知見や技術とパフォーマンスを組み合わせて面白いものがつくれたらと楽しみになりました。

企画は2021年末、東宝スタジオに当時開設されていたソニーPCLのVP開発拠点を塩見氏が見学したところから始まる。それから1カ月も経たない1月13日(木)には、オープン前の「清澄白河BASE」に技術スタッフと共に出向き、できることの確認とロケハンを実施。1月末にはLEDにCG映像を表示して見え方を検証し、そこで出た課題の修正を進めている。

CGの演出内容が決まったのは撮影の約1カ月前とタイトなスケジュールだったが、CG部として座組に加わった十十(jitto)アマナデジタルイメージングバックスペースプロダクションの3社が尽力。

各社の持つVPとCG周りの知見により乗り切ることができたという。
なお、CG関連のワークフローとしては、MayaやHoudiniで制作したアセットをUnreal Engine(以下、UE)にインポート、UE上でシーン構築とライブカメラトラッキングの設定を行う。

そのデータをソニーPCLのVPチームが受け取り、本番撮影へと進めていった。

「清澄白河BASE」はソニー製LEDが常設されている国内唯一のVPスタジオ。塩見氏も大河氏も、Crystal LEDを実際に目にした際に、その品質に驚いたという。

塩見LEDがすごく高精細で、かなり近寄らないと肉眼でLEDだと気付かないです。私もたまにMVなどでLEDを借りてきて撮影したりしますが、カメラ通すとモアレが出てしまったりすることがほとんどです。「清澄白河BASE」のLEDはそれが本当になかったです。

大河解像度としても8K以上(横9,600px)でピッチの細かさ、繊細さで群を抜いています。パネル自体はHDR対応ですがCG側がHDRで出せなかったので、出せるようになったらまた楽しみです。

本作は、このVPスタジオのこけら落とし的な作品。そのため、業界からの注目度も自ずと高くなる。大河氏は本作の企画を詰めている段階で、LEDの良さを引き出すためにはどういうCGがいいか、という逆算的な発想をしたという。

VPの難しさは、美術や演者といった実像部分と、LEDに映るCGとそこから漏れるライティングといった虚像部分の違いをいかになくしていくか。その難易度は色が増えれば増えるほど上がってしまうため、本作では「白い無垢な空間」をチョイスした。

その白い空間は、映像が進むと壊れ、荒野の宇宙のような広い世界が立ち現れる。

大河:現実では狭い空間で、このように広く見せることができるというのも、VPの面白さのひとつだと思います。限られた白い空間と無限の宇宙、この両方を1本の作品の中で表現したいというプランが浮かんだのです。

なお、今回の企画・演出プランを考えるにあたっては、今後業界内でのVP活用事例が増えることを願い、まずはベーシックな表現を全体でクリアしていこうという気持ちも大きかったという。

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メイキング・ノウハウ


本作で大河氏は、インカメラVFXの利点を考慮し光沢のある床面を用意した。

大河LEDウォールの利点は、やはりライトの影響をCGの中でつくれることです。光沢のある床面にしたのは、LEDウォールに映っているレーザーやライトの明滅の反射を床がそのまま受けるからで、リアルで説得力のある映像になります。これはインカメラVFX、LEDウォールならではですね。

大河氏は他の活用アイデアとして、車の撮影や床に水を張るシーンなども良いと話す。揺らいでいる水にLEDウォールの景色が映るため、説得力のある映像を生み出すことができそうだ。

大河根本的に実像があって、その実像を虚像でつくるところがVPと従来の撮影の大きな違いですね。それだけではないんですが、それだけじゃない部分に可能性もあります。

それこそ普通にLEDウォールとして抽象的なものを出すということも全然あり得ますよね。何にでもなれるというところが、やっぱりLEDウォールの強みかなという気がします。

完成した本作は、長回しワンカットの演出構成となっているが、これには大きく2つの理由があると大河氏は語る。

ひとつは、VPの面白さを活かすためだ。VPの特長はライブカメラトラッキングであるため、ワンカットでそのVP空間と演者が変化していく展開をきっちり見せていくのが面白い。カット構成で割っていくとVPの良さと相反してしまうため、思い切ってワンカットを採用したという。

もうひとつは、SixTONESのパフォーマンス、特にダンスをしっかり見せるためだ。大河氏が事前に振り付けの動画をチェックしたところ、楽曲を通じてどこをどう見せたいかという振付師の意志を感じたという。

その思いを汲み取り、なるべくカット割りを控えて、見せたいポイントを整理して見せることが演出としてフィットすると判断したのである。

大河:カメラワークはあらかじめ、バチバチに決めて撮っています。それこそ撮影監督の福留さん(福留章介氏)と相談しながら、私が一度プリビズ的にカメラをつくってきました。それをふたりで見て、素直に撮って良いということを確認した感じです。

▲福留章介
Cinematographer/Photographer
神奈川県横浜市出身。
Nissy、平井堅、ONE OK ROCKなど様々なアーティストのミュージックビデオ、LIVE映像など音楽系の映像作品に携わる他、
TVCM、WEBCM、ドラマ『tourist ツーリスト』、『QUEEN』を撮影するなどジャンルを問わず、幅広い分野で活動を行う。

撮影監督の福留氏は本作が初のVP案件。撮影前に大河氏とブレストや試行を繰り返し、探りながらの制作は苦労もあったが、楽しみのほうが強かったと振り返る。

福留:VPで何ができるのか、どうやったら面白くなるか、こうすると良さが出ないとか、頭を使いましたがそれは楽しい苦労でした。

マルチで撮れない、ワンカットで見せる、背景の範囲が決まっているといった制約はありましたが、その範囲の中で知恵を絞る過程がクリエイティブでした

福留氏が最も苦労したと語るのはLEDウォールと手前のセットの馴染み具合。撮影と照明の両面で細かな調整を行っており、最小限の後処理のみでかなりの精度の馴染み具合を実現した。この点は大河氏もVPならではのポイントと考えている。

大河LEDの中の虚像と、美術や人物という実像との境界部分にいかに説得力を与えるかが毎回ポイントになりますね。そこをライティングで追い込むのか、それともCG側の色味を調整するのか。

それとも美術の範囲を変えていくのか、せめぎ合いです。ただ、これからVPがこなれてくると、各所スタッフの知見が増えてきて、もっと段取りなどを意識できるようになるのだと思います。

福留馴染ませについてはどこが主導権を取るかを最初に明確にしておくと、かなりスムーズに進むようになると思います。

また、福留氏は、本作は諸々の条件が良く、かなり自由にやらせてもらったため、ハイクオリティな映像に仕上げることができたと振り返る。

福留:自分たちで言うのも恐縮ですが、かなり上手くできているので、逆にバーチャルの凄さが伝わらないかもしれません。

本作はライティングにもかなり工夫を施すことで、非常にナチュラルな映像に仕上げている。

福留:LED側の反射に合わせて制御したライティングを打っていたりしているんですが、それも別でつくっているものとCGのものが別で存在をしているんです。

それをチームでかなり話し合って詰めたおかげで完パケだけを見ると不思議な映像になっていて、撮っている私でさえ、どうやってやっているんだろうという感じで。私がオペレートしているのを大河くんが後ろで撮影してくれていたものを見てようやく『こんな感じなんだ、すごい』と。

なお、VPは演者にとってもメリットがあるという。グリーンバック撮影などと違い、その場で何が起きているかが見えるためだ。

大河:例えば『ここに光の玉が浮いているから、それを触ってください』ですとか、『ここの物が壊れるから、それに対してリアクションしてください』ですとか、そういうすり合わせが必要なくなりますよね。

VPの場合、こういう空間でこういう展開だから、表情や目線はこうだと、演者はすぐ画として見えるので、演出プランの共有はスムーズです。

制作を終えて感じたこと・VPのメリットとデメリット


制作を終えて大河氏は、本作はポジティブに、いい意味で無邪気に作品づくりが行えたと振り返る。

どのようなVP案件でもマシンスペックやLEDの範囲などに制約があるが、本作は一度無邪気につくってみようということで、チーム全体がノリを優先して取り組んだ点が良かったという。

大河:ノリノリでつくってみたはいいけど、やっぱり走らなかったね。じゃあどうしようか。そこで工夫が生まれたりしました。後ろ向きではなくて、前向きに物事を改善していこうという気持ちで最初から最後までやれました

福留氏はVPによる撮影には、メリットとデメリットの両面があると指摘する。

福留:撮影自体は自然光下で自由に動けるロケのほうがいいですが、天気など不確定要素があります。また、VPはリアルに見せるための工夫をしなくてはいけないという意味で、撮り方、テクニック的にはVPのほうが難しいと思います。

とはいえ、VPは天気などの不確定条件を排除できますし、なかなか撮れないロケーションの撮影もできます。タレントさんのスケジュール調整もロケより楽ですし、同録も全く問題ないです。

VPはまだノウハウが確立していない部分が多いですが、簡素な美術を用意してウォーキングマシンとVPの背景を連動させて演者の歩行カットを撮るですとか、短いカットであればかなり馴染むと思います。

PLAYLISTのDay.5『Gum Tape』が良い事例ですよね。窓の外の書き割りで天気やロケーションが次々に変わっていく演出はVPならではでしょう。

VPのコスト課題とワークフローの課題

最先端の撮影手法として注目されているVPだが、コストという大きな課題があるのもまた事実である。価格がこなれてくるためには、利用例が増え、知見が積み上げられていく必要がある。

福留:VPを使ってやりたいことや、もっとこうしたらこれができるよねということはある意味無限にあるんです。ただ、それはどんどん敷居を上げてしまってコストも上げてしまいます。

だから、今あるものでシンプルに、気軽にみんなが使えるようになればいいねと皆で話していました。

大河:トップエンド、最先端みたいなものを目指すよりも、もうちょっと民主化を図るというところでしょうか。例えば配信ライブ用にVPを使う場合に、松竹梅の松だけではなくて竹や梅の考え方が体系的にあれば、より使うチャンスが生まれるはずです。

使わないとわからない部分がやはりあるので、業界全体として、今はどんどん使うチャンスをつくるべきフェーズではないかと思っています。

この点についてソニーPCLでマーケティングを担当する黒谷瑞樹氏は「価格のためにも、まずは使っていただく機会を増やしていきたいです。”できるかどうかわからないけど、とりあえず「清澄白河BASE」に聞いてみよう”と言っていただける場所になることが、私たちの理想です」と話す。

また、VPを使ったワークフローについて、「準備が全て」 と語る大河氏。

大河:ロケの場合、その場の環境や天候、カメラマン、各所スタッフの配備で化学反応が生まれやすいですが、VPの場合は偶発的な化学反応は少ないです。

そのため、いかに準備できるか、想像できるか、その想像を共有できるかにかかっていると思います。それと、技術的な順序として、CGのプリプロを先行するのが良いです。プリビズが進んでいる段階でオールスタッフを集めるのではなく、最初からオールスタッフで始める。

そうしないとリテラシーが届かない気がします。CGをわかる人間がわかっていればいいということではなくて、垣根をなくす努力をVPに携わる人や広めようとするたちが積極的に映像業界全体に対してやっていくべきだと思います。

今後VPでやりたいこと


取材の締めくくりとして、大河氏に今後VPでやってみたいことを伺ってみた。

大河:まずは私たちスタッフ陣がもっとVPを使ってものづくりをしていくことですね。もしかしたらアイデアは監督からではなくて、例えば美術部やカメラマンから出てくるかもしれませんし。

各所で全体的にもっと前向きにトライしていく機会を増やすのが、映像業界としてすごくポジティブなことだと思います。そういう意味では、クリエイティブの拠点としての『清澄白河BASE』の設計思想にはすごく共感しますし、素敵なことだなと思います。

作品としては、実像と虚像というセットを拡張する試みは今回の作品で実現できたので、もっともっと反射を追求した作品をつくりたいですね。

先ほども言いましたが、車や水のような流体ですとか。反射だけではなくて、透過もいいですね。水槽の奥みたいな状況もVPならつくれるでしょう。

クロマキーでは実現が難しいというところに着目すると、面白いことがありそうだと考えています。

TEXT_kagaya(ハリんち)
INTERVIEW・EDIT_古川恵梨 / Eri Furukawa

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