駆け抜けた先に見つけた“XRライブ”の表現。ゼネラリストの集団「flapper3」が持つ強みとは

2022.06.01 (最終更新日: 2022.06.09)

日本最大級の映像クリエイターカンファレンス『VIDEOGRAPHERS TOKYO(VGT:ビデオグラファーズ・トーキョー)』が、2022年6月10日(金)、11(土)の2日間にかけて開催される。

Vookが2019年より主催してきた本カンファレンス。第3回となる本年は、テーマを「映像に、新しいキャリアと可能性を。」とし、錚々たるクリエイターとともに、映像の新たな可能性を模索していく。

VGT開催にあたり、今回は登壇者の1組である「flapper3」代表の中村圭一氏にインタビューを敢行した。

「flapper3」は、初音ミクやMr.Childrenのコンサートにおける映像演出、NHKの番組オープニング映像をはじめとする、私たちがよく目にする映像・空間演出を数多く手がけてきたクリエイティブスタジオだ。

NHK『ボカロフェス2022』/ 初音ミク“ヴァンパイア”ARライブ
https://youtu.be/CDWhoB4kQTs
flapper3でARシステム、撮影、照明、映像制作を担当。

モーショングラフィックスを軸に、映像とテクノロジーを組み合わせて幅広いデザインワークに挑み、最近ではXRライブの演出・制作も増えているという。2009年の創業から14年目を迎えた今、スタジオとしての足跡をどう振り返り、どこへ進もうとしているのか。

  • flapper3 代表中村圭一

    flapper3代表。2009年にクリエイティブスタジオ設立。モーショングラフィックを軸にエンターテイメント領域における映像制作から、XR、空間演出など表現媒体を問わず幅広い分野のデザインを手がけている。

▼flapper3 reel 2019

次世代型映像制作 「XRライブ」の映像演出
日時:6月11日(土)12:40〜13:30
※詳細:https://vook.vc/vgt/session/r02-03

震災を転機に広げていった仕事の幅

——2009年の設立から14年。振り返ってみると、仕事の内容やチームが変わったかと思います。どういったことが印象に残りましたか?

中村:東日本大震災は特に印象が残っています。転機としても大きな出来事でした。

当時、広告やエンターテインメントは全てストップし、世の中が「楽しんじゃいけない」という雰囲気になりました。それまでは広告を中心に、ひたすら目の前の案件に打ち込んでいたのですが、それではいけないなと。スタジオを続けていく上で、一つのジャンルに絞っていては、今後厳しい場面に遭遇した時に乗り越えられないなと考えるようになりました。

中村:それからは広告だけではなく、映画、音楽、ゲームであったりと幅広いジャンルの仕事をするようになりました。

それから4、5年して拠点を秋葉原から日本橋に移したタイミングでは、人も増え、引き出しが増えたりしたこともあり、設立当初と比べて仕事の流れも、単価も大きく変わりました。特に感じたのは、仕事の深さです。モーショングラフィックスを軸に広がっていっただけでなく、企画やディレクションに深く関わっていけるようになりました。

——世の中の流れの変化と同時に、仕事の内容も変化していったのですね。

中村:とはいえ、まだ下請けという立場が多かったのも事実です。ですが、徐々に深くなっていく実感はありました。

その後はメーカーと直接やりとりする機会が増えたり、企業のプロモーションを開拓したりと、取引先を広げていきました。世の中もオリンピックを控えていたこともあり、映像全体の需要がすごく増えていったのを肌で感じましたね。映像に限らずクリエイティブの内容にも変化があって、デジタル、フィジカル問わず「体験型」とよばれるコンテンツが増えていきました。

flapper3でもテックチームを作り始め、映像制作だけでなく体験を生み出すことにも注力し、空間演出や配信や舞台・ライブの見せ方にも拘ったコンテンツを作り始めたという転換期でもあります。

SiM“The Rumbling” / Music Video

flapper3でディレクション、制作を担当。

——現在、メインのお仕事はXRライブだとお伺いしました。

中村:ライブやXR案件は全体の3分の1ぐらいですかね。もう3分の1はゲーム関係です。コンシューマー、アーケードと様々で作中映像やGUI、メニュー画面などのUIを作るだけではなく、アートディレクションからゲーム内部のディレクションまでするようになっています。あとは行政や企業のプロモーション、広告案件なども企画からワンストップで手がけています。

——XRはコロナ禍になってから本格化したわけですか。

中村:VRやARも少しはあったんですけど、本格的になったのはコロナ禍からですね。ここまで来れたのも、専門性を持つ人がどんどん入ってきたからだと思っています。現在はテクニカルディレクターやエンジニアなどテック系が3名。コンセプトアーティストが1名。CGデザイナー3名。あとは、ディレクターが6名が所属しています。

——14年前、今の状態は想像できていましたか。

中村:当初は全く想像してなかったですね。自分たちの表現に求められているものに応えていったら必然的にこうなっていました。

プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。

PR:Vook School

ジェネラリスト志向の集団だから強い

——人数も増え、バリエーションが豊かになってきたかと思います。チームで持つ共通認識みたいなものはありますか?

中村:もともとフリーランスが集まってスタートしたということもあって、その道のスペシャリストというよりは、個として力が強いジェネラリストが多いです。だからプロジェクトも少人数で完結することが多いです。

チームとして動く時は、案件に求められる内容に合わせてチームを形成し、互いに足りないところを補っていく組織だと思います。

自分ですべて担える、トータルでできるフリーランスの方も多くなってきていますし、同じぐらいの規模感の会社、ジェネラリストの集団も増えてきています。

今後も、ジェネラリストタイプの方が増えてきてくれたら業界にとっては面白いのではないかと個人的には感じます。Vookのサイトもそうですが、情報を参考にしながら幅広くできるようになってきていると思うので、さまざまなことを吸収しながら1人でできる方が増えてくといいですね。

——今の時代の映像コンテンツ制作をする上で、そういったスタイルが有効だということですか?

中村:映像は複合的な要素の集まりなので、確実に、そうだと思います。XRもさまざまな分野の要素を含んでいるので、幅広く興味を持って手を動かしてきた人が多かったからこそ、弊社でチャレンジできたと思います。

今後、映像を作ることだけで生き残るは大変だと思います。映像をどう見せて、何を体験してもらうか、先のことまで考えないといけません。

先のことを常に意識していくうちに、必然的に照明を組み出したり、施工から空間をつくり始めたりと、全体に意識が向くようになります。 プロジェクトの本質を考えたとき映像を作るだけでは終われなくなってきます。そうやって広がっていくことが、なによりも大切だと思っています。

働き方は人それぞれマイペースで

——中小企業でも働き方改革が求められ、コロナになって加速しています。クリエイティブの現場でどう対応されていますか。

中村:個々の裁量が大きいこともあり、勤務時間も本当にばらばらです。うちは、上下関係で理不尽なしがらみもなく、それぞれが対等な関係です。なので、働きやすい環境ではないかと思っています。

納品間際ですと忙しい期間があるので、落ち着いたタイミングで休んでもらってバランスを取ってもらうことが多いですね。

——今後、メンバーは増やしていく予定でしょうか。また、新卒採用のお考えはありますか?

中村:メンバーは増やしていこうとは思っています。新卒採用も毎年、1人以上採用するようにしています。

新卒の人でも、学生の頃からフリーランスを経験している方もいて実力があります。なので、イチから教えることは少ないです。あとは、大学1、2年生ぐらいのときからインターンに来てもらって、そのまま入社することもあります。

▲flapper3のオフィス。(写真提供:flapper3 Inc.)

——異業種から入った方はいますか。

中村プロジェクトマネージャーには音楽関係から転職したメンバーがいます。同業からではでないアイデアであったりと経験値など異業種ならではの強みがあると思います。

——ありがとうございます。最後に、近い将来の展望や目標をお聞かせください。

中村:今手がけている分野に関しては、それぞれを今以上に伸ばしていきたいなと思っています。

flapper3は、映像の力で商品であったりIPといった主役をどう引き立てるか、魅せるか、という表現を追求してきました。主役がいる限り、演出し続ける。逆に、主役がいなければ始まらないので、それは変えていかなければいけないと思っています。自分たちで主役を作っていくことが今後の課題です。

——オリジナルのIPのようなものですか?

中村:そうですね。自分たちのコンテンツを持つことが大事だと、改めてコロナ禍で感じました。そこは次のステップとして取り掛かっています。


上述の通り、VGT2022の2日目には、flapper3のNaohiro Yakoさんによる講演 【次世代型映像制作「XRライブ」の映像演出】 が行われます。

映像だけではなく、照明や場の空気など様々な要素を考慮した演出が求められるXR。第一線で活躍するNaohiro Yakoさんの講演をお見逃しなく!

次世代型映像制作 「XRライブ」の映像演出
日時:6月11日(土)12:40〜13:30
※詳細:https://vook.vc/vgt/session/r02-03

「VIDEOGRAPHERS TOKYO 2022」では、2日間にわたって約50の講演が催されます。アンケートに回答いただくと無料で入場できます。まずは特設サイトをチェックしてみてください!

INTERVIEW_沼倉有人 / Arihito Numakura(Vook編集部)
TEXT_kagaya(ハリんち
EDIT_菅井泰樹 / Taiki Sugai(Vook編集部)
PHOTO_加藤雄太 / yuta kato

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