ビデオグラファーのためのAfter Effects始め方入門 |VGT2022

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2022.06.29 (最終更新日: 2022.07.11)

2022年6月10日(金)から2日間、日本最大級の映像クリエイター向けイベント『VIDEOGRAPHERS TOKYO(VGT:ビデオグラファーズ・トーキョー)』が3年ぶりにリアルで開催された。

この記事では2日目(11日)に行われたカンファレンスセッションビデオグラファーのためのAfter Effects始め方入門』の様子をお届けする。

近年、ビデオグラファーに求められるスキルは高まっており、新しい表現への試みとしてAffter Effectsを利用したいという声が増えている。

しかし一方でAfter Effectsは取っ付き難く、手を出せないと感じている人も少なくない。

このセッションはフリーランスの映像ディレクターとして活躍する佐々木章介氏を招き、After Effectsでできることや映像作りへの取り入れ方、学習方法を聞くことで、初心者が始めるきっかけになることを目的に行われた。

進行はAdobe Community Evangelistで映像講師の山下大輔氏が行なった。

  • 映像ディレクター佐々木章介

    フリーランス映像ディレクター。2012年に映像制作を始め、プロダクションを経て2017年に独立。ディレクターでありながら撮影・編集・モーショングラフィックス・VFX等による演出までカバーする。近年は舞台プロジェクションやライブ映像の演出も行う。

  • 映像講師山下大輔

    映像講師。Adobe Community Evangelist。主に映像制作を生業とするユーザー向けにセミナーを行う。Premiere Pro、After Effectsを得意とする。スキルシェアを主とした活動を行いつつ、Facebook上でAfter Effects User Group の運営、自身のサイトEverydaySkillShareを運営。モーショングラフィックスをもっと盛り上げたいと常日頃思っている。

After Effectsはあくまで「味付け」に使うためのソフト

冒頭では、ふだん佐々木氏が映像制作において使用しているアプリケーションが紹介された。メインのディレクション・編集業務では

  • Premiere Pro
  • Illustrator
  • Photoshop

を利用しているとのこと。

基本的な編集はPremiere Pro上で行なってしまい、ピンポイントでブラッシュアップをするためにAfter Effectsを少しだけ使う、という感覚を大切にしている。

いわば、After Effectsは「味付け」のために使用している。

佐々木氏は「After Effectsが得意かと聞かれると、自信を持ってそうとは答えられない」と謙遜する。このことからAfter Effectsのプロフェッショナルでさえも、映像制作においては基本はPremiere Pro(編集ソフト)できちんとした映像を作り込むことが最重要だと考えていることが分かる。

Premiere Proでベースを作り、強調したいところに少しだけAfter Effectsを使うことで、映像にオリジナリティを持たせるのだ。

ちなみに佐々木氏はミュージックビデオやライブ映像など、音に関わる演出をすることが多いことからも、作業が軽快なPremiere Proを中心に映像を組み上げているとのこと。

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何ができるかを知っておくことが大事

佐々木氏は自身で撮影まで行うことも多いようだが、その中でも、After Effectsを自分で使えることに意義を感じているようだ。

ディレクションから撮影、編集、モーショングラフィックスまで、トータルなスキルを身につけることによって、同じ映像を作るにしても多用なアプローチが行える。

例えば時間がない撮影現場では「ここはAfter Effectsの後処理に任せよう」「固定で撮っておいて、後で合成しよう」というような判断が、その場で瞬時にできるようになる。

After Effectsでできることを知っておくだけでも、表現の幅は広がっていく。初めは技術的には自分ではできないことでも、After Effectsでできることを知り、少しずつ、そのエッセンスを取り入れていくという考え方が大切だ。

After Effectsは全てを理解しなくていい

「After Effectsを使ってみようと思ったけれど、難しくて挫折した……」という人は少なくない。そのような人に共通するのが、全ての機能を理解しようとしていることだという。

今回、進行役を務めた山下氏は「Adobe社の中の人でさえも、全てを理解している人はいないのでは」と説明するほどに、After Effectsでできることの幅は広い。

そして初学者ほど、できることを全て理解した上で作業しようとする傾向にあるそうだが、その必要はないと佐々木氏は言いきる。

ビデオグラファーにとって大切なことは企画・撮影・編集ができることであり、まずは編集ソフトだけで映像を作り込むスキルが求められる。

その上で、自分がしたい表現をするために、After Effectsのごく一部の機能が使えるようになれば及第点。 そういった考え方ができるだけでも、「After Effectsは難しい」という壁を取っ払うことができるのだ。

After Effectsの学び方|チュートリアルや教本を真似て作りまくる

特に初心者がAfter Effectsを効率的に学ぶおすすめの方法として、

  • YouTubeにあるチュートリアル
  • 市販の教本
  • テンプレートの購入

の3点が挙げられた。

幅広い映像作品に携わっている佐々木氏であっても、自分がしたい表現に対して、その手法が見つからないことはたくさんあるそうだ。

そんなときに今でもやっていることが、チュートリアル動画を参考に、それを真似て作ってみることだという。

例えば、After Effectsの基本的な使い方を発信しているサンゼ氏(和田光司・株式会社リヒトグラフ代表)の動画を参考にして、自分でも手を動かしているとのこと。

サンゼの After Effects 教室
https://www.youtube.com/c/sanze-studio

YouTubeにたくさん配信されているチュートリアル動画をやるのでも良いし、教本を1冊購入して、とりあえずやりきることも有効だ。

現役で映像講師を務めている山下氏もひとつのことを10回くらい繰り返すことが大切だと主張する。繰り返すことによって、作業時間が短くなり、精度も上がっていく。

また佐々木氏はテンプレートを購入することもオススメしている。テンプレートは映像作品のクオリティを上げることはもちろんのこと、素材をはめ込むことで作り方の学習にもなる。

さらに簡単に質の高い作品が作れることで、モチベーションの維持にもひと役買ってくれる。

ちなみに佐々木氏は、After Effectsのメニューを英語表記に設定しておくことをオススメしている。分からないことを調べる際、英語の方が日本語で検索するよりも圧倒的に多くの情報を得ることができるからだ。

制作事例の紹介

佐々木氏は今回のセッションのためだけに制作した、20秒ほどのダンス動画を紹介した。

この日は細かい操作の説明は省略されたが、映像制作の一連の流れの中で、どのようにAfter Effectsが活用されているのかを知ることができた。

この記事でも、ポイントをピックアップして紹介していく。


今回の映像素材は

  • 引きの固定カメラによるダンス映像
  • 同じく固定カメラによるライトの映像
  • 寄りのカメラによるダンス映像

の3種類だけだ。

固定カメラでダンス映像を数テイク撮影した。この時点では左右にスタッフが映り込んでいる。

実は現場にはライトは1本ずつしかなかったため、ライトの位置を変えて5回撮影し、編集で合成している。

完成した映像ではライトが左右5本ずつになっている。

このように、After Effectsで合成することを見越して構図を決め、撮影に臨むことがポイントだ。

寄りのカメラでも、ダンス映像を数テイク撮影した。素材は以上。

そして、ここから映像制作が始まる。

素材を並べ、色を付け、曲を合わせる。

冒頭はモノクロにして、色の緩急を付けている。

映像ではコントラストが大切だと言われる。静から動、無色から有色、さらには、短いカットと長いカットの組み合わせといった 「時間のコントラスト」の考え方も重要だ。

After Effectsに入る前に、Premiere Pro上で、すでにかっこいいダンス映像が完成していた。

ここからさらにAfter Effectsを使って、味付けを加えていく。

冒頭のモノクロからカラーに変わる瞬間は少しだけブラー(ぼかし、滲み)を入れている。

このような「ゆがみ」の表現は、特にAfter Effectsが得意とするところだ。

After Effectsにはロトブラシというツールがあり、かなり正確に背景から人物を切り抜くことができる。

初心者は人物を切り抜き、背景に少しノイズをかけてあげるだけでも、映像に雰囲気を持たせることができる。

このシーンではPlexusというプラグインを使用している。3Dオブジェクトのアニメーションを簡単に作ることができる。

ちなみにAfter Effectsは高機能が故に、どうしても動作が重くなってしまいがちだ。

そのため、シーンごとにコンポジション(映像データを入れる箱のようなもの)を分けて作成し、After Effectsで書き出した映像データをPremiere Pro上に並べて合成することで、負荷を最小限に抑えることができる。

After Effectsはオリジナリティを獲得するためのツール

このセッションを通して佐々木氏が特に強調したのが、「After Effectsを使いこなす」のではなく、「After Effectsを使って、どう実写素材を活かすか」 ということだった。

After Effectsには非常にたくさんのエフェクトや機能が備わっており、使い方も千差万別である。その全ての機能を知る必要はまったくない。

「こういう表現をしたい」というものを1つだけ習得するだけでも、映像の幅を広げるきっかけになる。

佐々木氏自身、もともとは映像編集だけを行っていたが、After Effectsを使うようになったことで他者の映像と差別化でき、ダンサー界隈でも知られる存在になれたとのことだ。

After Effectsはただ単にモーショングラフィックスを作成するためのツールではない。映像のオリジナリティを獲得するためのツールといっても、言い過ぎではないだろう。

TEXT_水野龍一 / Ryuichi Mizuno
EDIT_菅井泰樹 / Taiki Sugai(Vook編集部)
PHOTO_加藤雄太 / Yuta Kato

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