はじめに
虎徹のタキです。
データマネージメントの話です。
撮影後、または撮影の途中で撮影データをHDDやSSDにコピーする作業は、"撮影すること"と同等もしくはそれ以上に重要な作業です。
正しく、安全な方法でデータ管理を行わなければ、その日の撮影がただの思い出づくりになってしまうかもしれません。
我々DITはさまざまなソフトウェアやルール・ノウハウを用いて安全かつその後のワークフローにおいて有用性の高いデータマネージメントを行なっています。
Vook | 僕がやっている【DIT】という仕事について
https://vook.vc/n/4817
本稿では、
○ シネマトグラファー・撮影助手
○ 演出部・制作部
○ ビデオグラファー・ブライダル等のカメラマン
などを対象に、データ管理を体系立てて学んだことがない方がDITやデータマネージャーがいない状態でデータ管理を安全におこなう方法をご紹介したいとおもいます。
オフライン編集用のデータ変換に関しては割愛します。
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まず結論
まずは結論というか、極意から書きます。
① 撮影済みメディアの差替え(ロールチェンジ)のルールを徹底する
② かならず撮影メディアの中身は全部コピーする
③ かならず撮影メディアから2箇所以上にコピーする
④ かならず撮影メディアから1箇所以上にベリファイコピーする
⑤ かならずコピー後のフォルダの容量やファイル数を比較して確認する
⑥ かならずメディアを消す前に映像や画像をチェックする
上記はこのいずれも漏れがあってはいけません。
①〜⑥をすべて、①かつ②かつ・・・かつ⑥をやってください。
しつこく言いますが、このうちのひとつでも割愛すると、その日の撮影がただの思い出づくりになってしまうかもしれません。
ロールチェンジのルール
CMや映画の撮影現場でメディアを交換する作業をロールチェンジ、といいます。
呼び方はなんでもいいんですが、年間1000回くらいロールチェンジを行う自分も、毎回緊張する瞬間です。
『撮影現場でメディアなんか交換しないよ』
『1枚のカードで充分足りるよ』
という方もいると思います。撮影時間や撮影スタイルによっては勿論そういうこともあるとは思いますが、個人的にはあまり推奨しません。
カメラからイジェクトしたあと、メディアが死んだら素材が全滅するからです。
メディアを複数使用することはリスクの分散になります。
ロールチェンジのルールは以下の通りです。
カメラやメディアにキャプションを貼る
キャプションとは、カメラやメディアに貼るロールナンバーを判別するためのテープのことです。撮影開始時には"R-1"とか"A001"とかいうテープをカメラに貼ります。
メディアをカメラから抜いた後は、そのキャプションを使用済みメディアまたはそのケースに、【次にメディアを交換しようとした時にひっかかりが起きる】ようにキャプションを貼ります。蓋が開かないように貼る、とかです。
メディアが小分けのケースに入っていない場合はこのような運用になります。
この場合はテープの糊がメディアの接点側に残らないような粘着テープを選定してください。
この目的は使用済みメディアと未使用メディアと取り違えないようにすることにあります。使用済みメディアをまたカメラに戻してフォーマットしてしまった、というトラブルは実はデータ関連のミスの多くをしめています。
『自分はそんなミスはしないぜ!意識高いから!』
という過信は捨ててください。徹夜の撮影でも、嵐の中での撮影でも、メディアを触っている時に突然誰かに話しかけられても一切の動揺なく、人的ミスを絶対にしない、という人はいません。
ロールチェンジ前後のメディア残量やロールナンバー表示を確認する
特に撮影現場でデータを消去しなければならない場合、そのメディアが確実にコピー済みであるか、取り違えていないかを充分に確認した上でフォーマットを開始する必要があります。
現場で撮影メディアをフォーマットしなくていい方は、それがベストです。
カメラによってはメディアのレンタル料金が1枚¥35,000/dayというものもあるので、誰もがいくらでも現場に持っていける訳ではないと思います。
例えば収録用メディアが3枚あり、R-4が必要になった場合、R-1を消去することになると思います。当然、その場合のR-1は前述の結論②〜⑥をクリアしていることが必須です。
ロールチェンジ後、さっきの例だとR-1がカメラに挿さっていることになります。
ここで自分を疑います。
「本当に今挿さっているのは、R-1であっている?」
「R-1は消していい状態?」
「間違ってR-3を再度挿してしまってたりしない?」
カメラ表示でA001(R-1)という表示が出ているか、R−3のメディア残量をロールチェンジ前に確認しておき、その残量とことなっているか確認する、場合によっては一度再生してみてR-1の収録データであることを確認する。
そのくらい念には念を入れて、一呼吸置いてからメディアをフォーマットします。
データ管理では、常に自分を疑うことです。
指差し確認をするくらいの慎重さが必要です。
ARRIやSONY等の業務用カメラでフォーマットした素材は、どうやっても復旧できないレベルで消去されます。
安全なコピーとは
データをコピーする際の厳格なルールを決め、遵守することです。
先ほどの、
② かならず撮影メディアの中身は全部コピーする
③ かならず撮影メディアから2箇所以上にコピーする
④ かならず撮影メディアから1箇所以上にベリファイコピーする
⑤ かならずコピー後のフォルダの容量やファイル数を比較して確認する
⑥ かならずメディアを消す前に映像や画像をチェックする
これを実行すると人的ミスを回避でき、まず問題が発生することはありません。
弊社では、以下のようなルールを策定し、全スタッフがこれを守っています。
AとBはお客さんに納品するドライブ、虎徹①②と書いてあるものは社内保管用のRAIDやSSDです。メディアから直接AやBにベリファイコピーするという方法もあるかと思いますが、撮影フォーマットが4Kや6KのRAWデータの場合などにはAやBがかなり高速なものでない限り、運用上追いつかなくなると考えます。
それぞれの撮影素材やペースに合わせて、②〜⑥が守られている自分ルールを策定することはよいとおもいます。
ベリファイコピーとは
ベリファイとは実証するという意味で、データの書き込みが正常に行われるか確認することです。 データの書き込み直後にベリファイを行うことで、書き込み失敗に起因するエラーを防ぐことができます。
その分、コピーにかかる時間が倍増します。
単なるドラッグ&ドロップでは、HDDやケーブルといったハードウェアの不具合やOSのエラーなどで、一見完璧にコピーされているように見えても、データが欠損している事があります。ベリファイを行う事で、これを回避できます。
ベリファイコピーができるソフトウェア
DITは映像データのコピーに特化した、下記のようなソフトを使用しています。
○ Pomfort Silverstack
○ Hedge
○ Yoyotta
これらのソフトはデータのベリファイコピーだけでなく、レポート機能やトランスコード機能が付いていたりと便利な一方、それなりに高価です。
データを低価格で安全にベリファイコピーしたい、という方は
○ RapidCopy
をまずは使用されると良いと思います。
コピー元とコピー先のフォルダを指定し、ベリファイにチェックをいれてスタートするだけです。素晴らしいソフトです。
データの世代に注意
③に関して、メディアからHDD Aへ、HDD AからHDD Bへコピーする人がいます。
これはデータコピーでよくある間違いです。
HDD Bは元データであるメディアから見ると"孫"になっています。
これだと、万が一"子"であるHDD Aのデータになにか欠損があったら…当然HDD B
のデータも壊れていることになります。
必ずメディアから2箇所へのコピーを作成することを厳守してください。
まとめ
再度書きます。
データコピーで大切なことは、
① かならず撮影済みメディアの差替えのルールを徹底する
② かならず撮影メディアの中身は全部コピーする
③ かならず撮影メディアから2箇所以上にコピーする
④ かならず撮影メディアから1箇所以上にベリファイコピーする
⑤ かならずコピー後のフォルダの容量やファイル数を比較して確認する
⑥ かならずメディアを消す前に映像や画像をチェックする
です。
そして、自分を疑うこと。
撮影現場では時としてお祭りのような気分になりますが、データ管理にそれらを持ち込んではいけません。自分の中のもうひとりの人格を呼び出すのです。
そして厳しく冷静な目で、データを扱う自分の作業をチェックしてください。
と、すこし悍ましいタッチで説明してみました。
そのくらいの緊張感を持ってデータ管理を考えるべきであるが故、DITやDM(データマネージャー)をチームにアサインすることをお勧めします。
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