音割れやノイズ...悩ましい"音"のトラブルは、Premiere Proで解決できる! 整音時に使える編集テクニックを紹介|VGT2022

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2022.08.01 (最終更新日: 2022.08.07)

2022年6月10日(金)から11日(土)にかけて、日本最大級の映像クリエイター向けイベント『VIDEOGRAPHERS TOKYO(VGT:ビデオグラファーズ・トーキョー)』が3年ぶりにリアルで開催された。

本稿では、11日のセッション『音のトラブル!アドビでカバー!音編集テクニック』をダイジェストでお届けする。

音割れやノイズといった悩ましい音のトラブルは、ビデオグラファーについて回るものだ。プロはどのようにしてトラブルを回避しようと心がけているのか。そしてトラブルに直面した際には、どのように対処して作品を仕上げているのか。

映像講師の山下大輔氏が、映像ディレクター・プランナーの飯田雄平氏をゲストに迎え、映像にとって重要な「音」について語り合いながら、Premiere Proでの処理を実演した。

  • 映像ディレクター・プランナー 飯田雄平

    長野県小布施町出身、立命館大学映像学部卒。博報堂グループのデジタルコミュニケーションカンパニーである株式会社スパイスボックス所属。主にノンフィクションベースの映像制作や、デジタルコミュニケーションプランニングを担当。Vookや玄光社などで記事執筆も行う。

  • 映像講師山下大輔

    Adobe Community Evangelist。主に映像制作を生業とするユーザー向けにセミナーを行う。Premiere Pro、After Effectsを得意とする。スキルシェアを主とした活動を行いつつ、Facebook上でAfter Effects User Group の運営、自身のサイトEverydaySkillShareを運営。モーショングラフィックスをもっと盛り上げたいと常日頃思っている。

現場では、音に関して考えることを減らす

このセッションで飯田氏は、都道府県民共済グループの公式インスタグラム『ゆるカチライフ』のコンテンツを事例に「音の演出」について企画時、撮影時、そして編集時の順に紹介していった。

飯田氏がディレクションする『ゆるカチライフ』は、「ゆる〜く肩の力を抜く時間とカチッとスイッチを入れてがんばる時間。“ゆる”と”カチ”のバランスを大切に考える生き方=ゆるカチライフのヒント」を届けることを目的としたアカウント。様々な人物を取材したノンフィクションコンテンツだ。

▲『ゆるチカライフ』における音での演出のポイント

飯田氏は、動画が単調にならないようなリズム感のBGMと、それに合わせたカット切り替えを意識しているという。そしてノンフィクションコンテンツであることから、「作りもの」感を出さないために、環境音や生の音などその場で収録したものを混ぜている。

ここから収録についての本題に入る。

飯田氏は「音収録はたいてい、問題が発生する」ものであり、万が一、録音ができていなければ編集で対処することもできないことから、現場でのリスクヘッジに必死だと話す。


録音部が不在の現場では、飯田氏が音の面倒も見なければならないが、映像、カメラワーク、被写体とのコミュニケーションに時間を割くため、音に関してあまり考えないで済むような準備をして臨んでいるという。

そのひとつとして、ワイヤレスマイクやピンマイクは極力使わないようにしている。ワイヤレスは、電子レンジが近くで動き出したときや大人数が集まったときなどに、電波状況が悪くなりやすいからだ。そもそもピンマイクは衣擦れの音に配慮が必要になるなど、装着も難しい。

▲飯田氏が音について考えることを減らすために行なっていることや、収録の際に気をつけていること

また、「編集でできることを知って、現場でできることを決める」のがとても大切だと話す。

飯田氏:編集で修正できることをしっかりと知っておくことで、現場の判断が速くなります。

山下氏::編集でできることは、意外に少ないですよね。その心構えを持っておくほうが、事故を防げるように思います。

飯田氏:「編集でなんとかしよう」だと、だいたい失敗します。なので、クリアな音で録ることが大前提で、それを磨くのが編集やMAであるという考え方を大事にしています。良いマイクを選ぶよりも、しっかり録ることです。

▲インタビュー収録時の機材構成。バックアップのために何重にも録音している

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カット編集時・整音時に意識していることとPremiereの機能

では、カット編集時にはどのようなことを意識したり、作業したりしているのか。飯田氏は5つを挙げる。

飯田氏が重宝しているのは、Premiere Proが持つ3つの機能「同期機能」、「リミックス機能」、「自動書き起こし機能」だ。

例えば、カメラに接続していないピンマイクで収録した音と、カメラの音をリンクさせる際には同期機能を使用する。「本当に優秀で、すごく助けられています」と信頼を寄せる機能だ。

話題は整音に移り、飯田氏は3つのポイントを明かす。

1.インタビュー編集では、場の雰囲気を表現するため、ピンマイクとガンマイクの音を重ねる

その場面で何を聞かせたいのか、その時々によって音の演出を考え、ノイズをあえて残すことも意識しているそうだ。山下氏も「ノイズというとネガティブに聞こえますが、空気感を表現してくれる場合もあります。空気を残す方が、ストーリーがぐっと上がるときもありますしね」と応じる。

2.場の反響が強い場合、リバーブ除去をかける

「場の反響」とは、例えばガンマイクで狙ったときに、跳ね返った音も収録されてしまう場合を指す。少し聞こえにくくなってしまっていると感じたとき、リバーブ除去機能でかなり聞こえやすくできるという。

3.Premiere完パケの場合、ナレーションではクロマノイズ除去を活用

飯田氏はクロマノイズ除去を「とりあえず乗せとけば、勝手にいい感じにしてくれる」と紹介。また、ノイズリダクション機能についても頻繁に使用しているという。

音声の処理でよく使う機能

セッションの後半では、実際にPremiere Proを使って機能を紹介した。

[ラウドネス]
様々なカメラやピンマイクで収録した場合などにおいて、音声のバランスがズレることがある。そんなときに利用したいのがラウドネスだ。山下氏は「難しい話は抜きにすると、聞き取りやすい音になるようレベルを合わせてくれる機能」だと説明する。

ラウドネスは、アドビのAI技術であるAdobe Senseiが実装された機能だ。音を聞き取りやすくするための平均値を機械学習で算出し、いろいろな人物が話している音やBGMを聞き取りやすいバランスに調整してくれる。

▲ウィンドウ[エッセンシャルサウンド] > オーディオタイプ[会話]を選択すると[ラウドネス]が表示される。クリックすると表示される[自動一致]を押せばラウドネスを適用できる

[ノイズを軽減]、[雑音を軽減]、[ハムノイズを除去]
画面上において、ラウドネスの下に位置する[修復]をクリックすると現れるのが、[ノイズを軽減]雑音を軽減]、[ハムノイズを除去]だ。クロマノイズや雑音、エアコンの動作音などが強すぎるときなどに、これらの機能を少しずつ適用しながら調整していく。このとき、あまり大きく適用しすぎないように注意したい。

[リバーブを低減]
[修復]のいちばん下にあるのが[リバーブを低減]。音がこもってしまっているときや、反響が強いときに適用することで、音がクリーンになる。ただし、適用しすぎて「真っ白」な音にはならないようにしたい。

山下氏は、BGMのボリュームが大きい場合にはキーフレームを少し下げることで、インタビューが含まれるトラックの音声を聞き取りやすくできることがあると話す。ただし、BGMを下げすぎるとノイズがかなり目立ってしまうため、キーフレームの低減量はマイナス10程度でまず様子を見てみると良い

[リミックス]
『ゆるカチライフ』では毎回、キャストが変わり、設定が変わり、ロケーションが変わり、尺も変わる。そこでBGMは、AuditionとPremiere Proのリミックス機能を使って尺を調整しているという。

機能を使う際には、[リップルツール]のアイコンを長押しすると現れる[リミックスツール]に切り替える。あとは[クリップ]を選択するだけだ。

山下氏:リミックスを使うことによって、クリップを一気に縮めることができます。リミックスをかけると、頭と終わりの部分はそのまま生かして、その間にループのポイントを作ってくれます

このループポイントを調整したいのであれば、ウィンドウ[エッセンシャルサウンド] > オーディオタイプ[ミュージック]選択し、デュレーション]をクリックする。補間方法に[リミックス]を選択することで、カスタマイズ項目[セグメント[と[バリエーション]が表示され、これらを動かすことでループポイントを切り替えることができる。

▲リミックス機能を適用後、微調整を施す山下氏。違和感がある場合は[バリエーション]と[セグメント]の数値を変えれば、少しずらすことができる

自動文字起こしとキャプションで音声を補足

飯田氏が「最近とても感動した機能」と話すのが、「自動文字起こし機能」だ。これにより、インタビューの字幕入れ作業にかかる時間が3分の1程度に短縮できたという。

さらに山下氏は、音声処理の限界を補う手段としてテロップを紹介する。

山下氏:テロップを打つことで、音を文字で補足できます。音のトラブルがあって何を言っているかわからないので文字を入れようというときにも、素早く使えるありがたい機能です。精度がどんどん上がっているので活用すると良いと思います。

それでも、自動文字起こしが間違えていることがありますが、簡単に打ち替えできます。シーケンスに貼り付ける機能もあり、喋っていても聞こえないところに関しては、テキストで補足するという選択ができるようになります。

▲ウィンドウ[テキスト] > 文字起こし]を選択すると[自動文字起こしを開始]が表示されるのでクリック。言語などを設定して[文字起こしを開始]を押せば処理が始まる

文字起こし機能が搭載された当初はサーバーに音声を送って処理していたが、最新版ではオフラインでも文字起こしができるようになり、処理速度が高速になった。なお、文字起こししたい言語で1度も処理したことがない場合には、初回のみネットに接続しておく必要がある。

最後に飯田氏は、まとめとして次のように話した。

飯田氏:機材も編集ソフトもかなり進化しているので、いろいろな機能を知ってその恩恵を受けてください。そして、本当に忙しい業界なので、「ゆる」な時間を過ごしてください。

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以上が、VGT2022 カンファレンスセッション『表現の幅を格段に広げる、Adobe Stockの世界』セッションレポートとなります。

他のセッションの様子は下記リンクから。

"リモートで映像編集を共有”する、Frame.io 活用術。ビデオグラファーの映像制作はより円滑に|VGT2022

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TEXT_加藤学宏 / Norihiro Kato
EDIT_山北麻衣 / Mai Yamakita(Vook編集部)
PHOTO_山﨑悠次 / Yuji Yamazaki

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