2021年12月20日(月)にYouTubeで公開された、EXILEと三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE『VIRTUAL LOVE』MV。全編にわたり重厚な3DCG・VFXワークを施すことによって、彼らの世界観を象徴する様々なバーチャル空間がシームレスに描かれた大作である。
リアルに会えない今だからこそ誕生したバーチャルトリップMVであり、本作のショットワークとアセット制作に参加したCGプロダクションとデジタルアーティストは、総勢12組に達した。
前編では、プリプロダクションと実写撮影における取り組みに焦点を当てたが、後編では、ポストプロダクションにおける取り組みを解説していく。それに加えて、後半パートのショットワークを担当したCGプロダクションの画づくりも紹介しよう。
【VFXメイキング】プリビズをフル活用して、実写と3DCGを一体化|EXILE×三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE『VIRTUAL LOVE』MV
2021年12月20日(月)にYouTubeで公開された、LDHを代表するダンス&ボーカルグループEXILEと、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEが初めてコ...
▲ 左から、撮影監督 井村宣昭氏(井村事務所)、エグゼクティブ・プロデューサー 小野田行宏氏(Development)、ディレクター / CGプロデューサー / プリビズ・スーパーバイザー 東 弘明氏(stoicsense)
【お知らせ】
Developmentでは現在、スタッフを募集中です。詳しくは、こちら。
要素を的確に切り分け、同時並行で進めていく
ポスプロの大まかなながれは次の通り。
まずは撮影終了の翌日から3日間を費やしてオフライン作業を実施。それと同時並行で約2週間をかけてトラッキング(マッチムーブ)作業が行われた。
3DCGワークも撮影の翌日から着手。約1.5ヶ月が費やされたという。オフライン作業と同時に開始したCG制作(※仮コンポジット作業を含む)は、11月1日(月)まで作業が続いた。
そして、仕上げの工程となるオンライン編集には約2週間が費やされ、本作は2021年12月20日にYouTubeで公開された。
EXILE×三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE
『VIRTUAL LOVE』MV
Client:avex+LDH JAPAN Inc.
Director / CG Producer / Previz Supervisor:Hiroaki Higashi (stoicsense Inc.)
Director of Photography:Nobuaki Imura(IMURA OFFICE INC.)、Hiromitsu Uemura(IMURA OFFICE INC.)/Lighting Director:Koji Yoshino(LightNix inc.)/Grip Operation:NKL Inc./Matchmove Artist:Yasuhiro Kato/Colorist:Haruka Okutsu(IMURA OFFICE INC.)/Offline Editor:Akiha Midoh(VIXI)、TCM U2(and GRANT)/Online Editor:Manami Kishi/Producer:Takashi Tsujii(GEEK PICTURES INC.)/Executive Producer:Yukihiro Onoda(Development LLC)
Production:Development LLC
一連の撮影素材はRAW現像を行なった後、全てのフッテージのタイムコードをマスターのものに書き換えられた。その後、オフライン編集にてPremiere Pro上で実写プレートとプリビズを見比べながら使用するテイクを決めていったという。
監督 / CGプロデューサー / プリビズ・スーパーバイザー 東弘明氏(以下、東監督):
撮影時の仮編集の段階からオフラインエディターの御堂さんがビデオアシストからキャプチャしたムービーを、プリビズに合わせてスケールや位置をPremiere Pro上で加工してくれていました。
そのおかげで撮影の段階で「2D処理の加工でもここまでプリビズと近づけられるなら、本番のショットワークでCGと実写を一体化できるだろう」といった算段をつけることができました。
もちろん、Premiere Pro上のスケールや位置情報を3DCGソフトに持ち込むことができないので、オフライン編集時に改めて目合わせでプリビズに合わせていく必要があったわけです。
エグゼクティブ・プロデューサー 小野田行宏氏(以下、小野田):
Premiere Proによるオフライン編集では可変処理も行なっていました。撮影素材もハイスピードのものと、ノーマルで撮ったものがありました。
そこでオフライン編集上で可変処理を施したカットについては該当するフッテージを、Flameに読み込んで可変処理をやり直したデータをマッチムーブを担当していただいた加藤泰裕さんと、ロトスコープを担当していただいたRudiezさんに渡して作業を行なってもらいました。
実写と3DCGを一体化させるための創意工夫は、色味の面でも必須となった。
通常のワークフローでは、Log形式の実写素材(フラットなルックのもの)を使ってショットワークを行い、その後で最終的なグレーディングを行う。
しかし、本作ではプリビズで提示されたキーカラーに基づいたライティングや、ムービングライトを用いた撮影を行なっていた。
つまり、動的なライティングやカラーリングが付けられた実写素材と、ショットワークで施された最終的なエフェクトやルックの整合性を取る必要があったわけだが、そうした細かなルックの調整は、全てオンライン編集で仕上げられた。
そこで、シーン用と演者用のそれぞれのLUTを用意したほか、CGチームからはカラコレ済みの連番画像とLogの連番画像の両方が出荷された。こうすることによって、オンラインエディターの岸 愛実氏が使いやすい素材を自身で選べるように準備した。
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実写プレートのカメラワークを3D空間上で成立させるために
ショットワークでは、東監督自身がCGスーパーバイザーを兼務し、12組みものCGプロダクション、アーティストが参加したチームを取りまとめた。
ショットワークに着手するにあたり、本プロジェクトではユニークなアプローチによる「3Dレイアウト」が行われた。
具体的には、加藤泰裕氏がトラッキングしたカメラのデータをプリビズに組み込む作業を3Dレイアウトと称して実施。
そのねらいは、実写プレートの使用テイクに合わせてMaya上で3Dカメラワークを“付け直して”、各ショットワーク担当者へ共有することである。
撮影素材とプリビズにギャップがあるショットを中心に東監督が引き受けた「3Dレイアウト」とは、4種類の(=4台のREDで同時に撮影した)実写プレートを3D空間上で1カット1カメラに一本化することで、ショットワークを担当するアーティストがシーンを構成する全ての要素を一度にまとめてレンダリングできるようにするというもの。
▲ 東監督が作成した3Dレイアウトの例(前半の地下鉄シーンより)。「別々に撮影したショットのカメラデータをCG上でつなげ、1カットに見えるように調整しています」(東監督)。CG上の巨大セットの中に、トラッキングカメラとイメージプレーンをレイアウト、メインカメラがコンスレインでそれぞれのカメラに乗り移って行くイメージ。その際、逆ズームやパンニングなどCG上で再撮影を行い、見栄えや緩急をプリビズに近づけていく
一本化に当たってはオフラインのPremiere Proの仮合成を再調整する必要もあったが、そうした作業も東監督自身で行なった方が的確に判断できる。
言うまでもなく相応の作業負荷が東監督にかかるわけでもあるが、3DCGチームが本来の画づくりに集中するための方策として英断だ。
東監督:
3Dレイアウトを作成することで、プリビズで想定していたよりもロングの構図で撮影できなかったり、カメラの移動距離が足りないところを3DCGのカメラでフォローするといった演出が可能になります。
レンズと画角が合っていれば距離はさらに演出できるので、そういった演出が入ってくるような表現を、監督である自分が前もって指定できたことは本作では有効でした。
ショットワークのチェック時に、そうした演出面からのフィードバックをしようとすると、コミュニケーションが複雑になりますし、時間もかかってしまうので。
これはもちろん、3DCGに明るい東監督だからこそ可能な手法だが、当の本人は「むちゃくちゃ楽しかった」と笑顔。
撮影時の苦労がわかっており、その素材を気持ち良くつなげてプリビズに近づけるため、3D空間上で演出を施していく作業の中、MVの中で世界ができあがっていく感覚こそが喜びだったのだ。
オンライン編集で、実写とCGの見た目の整合性をとる
オンライン編集は約2週間にわたり行われた。先述の通り、実写プレートと3DCGを見た目として一体化させるべく非常に細密な作業が求められた。
例えば実写プレート中の足元の反射や影、サーチライトなどの光を3DCG素材には含まれていないため、フレーム単位ごとに色を拾って馴染ませるといった作業が、岸氏を中心とするオンラインエディターたちによって丁寧に施されていった。
クライアントチェックは、2回行われた。1回目は、CG要素が全て反映されているが、実写とCGのルックが揃っていない状態で実施。そして2回目は、完成版の試写だ。2回と聞くと少ない印象があるが、そこにも小野田氏ならではの配慮があった。
小野田:
いつ、どのタイミングで、誰に、どう見せるのかが大切です。
自分の経験上、ポスプロ工程は2週間あっても最終日の3日前ぐらいまでは見た目としての完成度はずっと60%ぐらいが続いたりします。
それだけ表には見えない複雑な作業が行われているわけですが、最終日の3日前から急ピッチで完成度が上がっていき、クライアントさんに誤解を与えない状態になるのはラスト数時間ということはザラです。
この作品のように3DCG要素が多いプロジェクトの場合、60%の状態ではあえて見てもらわないようにするなど、クライアントの方々にしっかりと説明して理解を得ることがかかせません。
東監督:
そうした意味でも岸さんの追い上げは本当にすさまじくて、自分の予想を超えていました。
18人もの出演者、EXILE作品を中心に過去に描かれてきた多種多様な世界観をまとめあげることで1つのユニバースへと昇華したビジュアル、それを実現するためには並大抵以上の苦労が求められたことは想像に難くない。
非常にチャレンジングだった本プロジェクトについて、東監督、小野田氏、そして撮影監督を務めた井村宣昭氏にそれぞれ総括をしてもらった。
撮影監督 井村宣昭氏:
MV案件でプリビズをここまでしっかりとつくり込むというのは初めての経験でした。
これを具現化させる立場から、どうやってアーティストの撮影をしていくのか、撮影部や照明部、美術部など全スタッフが一丸となって取り組みました。
プロなのである程度は計算できましたが、賭けに出た部分もけっこうありました。
そうした部分を、撮影スタッフだけでなく、ポスプロ工程のスタッフにもくみとってもらうなど、全員の力で挑戦することで完成した作品だと改めて思います。
小野田:
東監督とは「やるからには何か新しいことがしたいよね」と、いつも話し合っています。
今回は、EXILE と三代目 J SOUL BROTHERSがコラボして楽曲を出すという初の試みに対して、こちらからどうやって「新しい要素」を提案するのかと考え続けました。
制作中に印象的だったのが、東監督が「小野田さん。CGでやるのなら、CGでしかできないことをやらなかったら面白くないじゃないですか」と、言われたこと。
「そうですね。じゃあやりましょう」と応えたことで、僕の中でふんぎりがつきました。制作が進むにつれて、その覚悟を日々実感していた作品ですね。
東監督:
全スタッフと同じ方向を向いて、こうやって新しいことに挑戦できるのは本当に幸せなことだと思います。
プリビズを基に撮影プランを立て、完成形を強く意識しながら演出を行うことは監督としてひとつの目標でしたので、それを本作で実践できたことが、本当に嬉しかったです。
自分はこれまでバーチャルな世界観、80年代サイバーパンクを題材とした作品を多く手がけてきましたが近年、XRやAIといったテクノロジーによって、現実がそうしたSci-Fiの世界観に追いついてきていますよね。
これまでは映像として描いてきたけれど、これからはそのバーチャルな世界観自体のクリエイトを小野田さんとやっていきたいよね、と話したりもしています。
今回の作品をつくり終えて、音楽とのレゾナンスによって5分間の短い尺の中に濃密なストーリーを描くことができるMVというメディアの魅力を再認識すると同時に、今後はさらにその先、鑑賞するだけではない、インタラクションのある新しい形のメディア作品も手がけていけたらと感じています。
CG・VFXトピック【Part.2】
本作には総勢12組のCGプロダクションとデジタルアーティストがアセット制作とショットワークに参加した。
前編に続き、後半パートのショットワークに参加したデジタルアーティストたちの画づくりについて、登場シーン順に紹介していきたい。
<1>Lili(EPOCH)
最初に登場するバーチャルライブステージを担当したのは、EPOCHのCG・VFXチームLiliだ。
Q1.担当された作業内容を教えてください
Lili:
ダンスパートの背景となるメインステージの作成を担当しました。
ステージのデザインや造形だけでなく、変化するギミックやエフェクト表現などをトータルで設計しながら組み上げました。
ステージのモデリングとギミック表現
<A> ステージモデルの作業変遷。スケジュールがタイトだったため、ある程度は既存のアセットを組み合わせてステージの造形を進める
<B> 後々アニメーションさせるギミックを考慮しながら質感やセットアップを行う
<C> アニメーション作業のUI。ステージを飛び回るスポットライトがどのようにカメラに収まるかを常に確認しながら、1つ1つタイミングをずらしつつ動きが詰められた
Q2.制作する上でチャレンジとなったことを教えてください。
Lili:
スケジュール内に全てを組み上げるために、作業内容に応じてソフト間のやり取りを極力減らすよう意識しました。
ステージのルックはMaya内で完結させ、LEDなどの発光エフェクトはAfter Effctsのみで仕上げるといった感じです。
またAEのElement3Dを用いて、Mayaと同じ3D環境をAE上にも構築しておくことで、ある程度の修正にもMayaに戻ることなくコンポジット側で対応できるように工夫しました。
ブレイクダウン
<A> 別チームから提供された本シーンの遠景(2D)素材
<B> ベースとなるステージのビューティ
<C> ステージを彩るLED素材
<D> 全ての要素を重ねたショットワークとしての完成形
Q3.制作時のこぼれ話を教えてください。
Lili:
自分たちが一番最後のアサインだったらしく、常に他のチームから一歩遅れた状態での進行だったため内心焦ってました(笑)
その分、多くをおまかせいただけたので、わりと自由に楽しく作業することができました。
<2>UNIT
1つ目のバーチャルステージと、2つ目のバーチャルステージの間には、「東京迷宮」、「ロックダウン中の渋谷」、「"超東京"の渋谷」、そして「"超東京"の首都高」という4つのシーンが続けざまに描かれていく。
それらのショットワークを手がけたのが、UNITだ。
Q1.担当された作業内容を教えてください
UNIT:
上に挙げてくれた4つのシーンの背景制作、アニメーション、そして仮コンポジットを担当しました。
ロックダウン中の渋谷シーン
<A> Mayaシーンファイル。形状的にはシンプルに止めて、写真素材を加工してマッピングすることでディテールを高めている
<B> Mayaから書き出したビューティパス
<C> 実写プレートを合成した、仮コンポジット(ショットワーク)としての完成形
▲ 後に続く、AKIRAのデジタルダブルを用いたシーンのブレイクダウン
Q2.制作する上でチャレンジとなったことを教えてください。
UNIT:
まず、「ロックダウン中の渋谷」シーンについては、最近、映画やMVなどでスクランブル交差点を中心に3DCGベースで渋谷の街並みが描かれた作品が増えているので、そうした作品と比較されることは避けれないな……と、身が引き締まりました。
ほかのシーンとの兼ね合いもあり、限られた期間でクオリティを高める手段として、現実の渋谷の街並みを撮影したスチールをパースマップに利用しました。
スチール撮影は人通りが少ない早朝に行いました。パースマップはカメラの動きが少ないことが条件となるので、運が良かったです(笑)
続く「東京迷宮」シーンですが、背景についてはオーソドックスな作り方でして、このシーンのトピックはAKIRAさんのデジタルダブルでしょうか。
フォトグラメトリーと3Dデータの生成は、レスパスビジョンさんのirisが担当で、そちらから提供されたデータにリトポ(リトポロジー)を施した上でアニメーション等の作業を行いました。
そして、スタッフ間で"超東京"と呼ばれた渋谷の街並みから首都高に続いていくシーンですが、こちらは東監督のイメージに沿った実写プレートとCGカメラの融合がテーマでした。トライ&エラーを重ねながら少しづつクオリティを上げていきました。
カメラワーク的にも背景セットのデータ量が大きくなることが避けれなかったので、1つ1つのモデルはできるだけ軽量化させることで効率的にレイアウトをすることを心がけました。
"超東京"の首都高シーン
<A> Mayaシーンファイル。データ量をできるだけ抑えることを徹底したため、ベベルをかけない奧の建物はシンプルな形状にするといった具合に、作業開始当初からポイントを絞った画づくりが行われた
<B> Mayaから書き出したビューティパス
<C> 実写プレートを合成した、仮コンポジット(ショットワーク)としての完成形
Q3.制作時のこぼれ話を教えてください。
UNIT:
東監督とは長くお仕事をさせていただいています。
良いものは喜んでいただきつつ、「ダメなものはダメ!」と、感情を出してはっきりとおっしゃっていただけるのでやりやすいです(笑)
われわれアーティスト側が提案するポジティブな案を汲みとっていただけるのはありがたいことです。
東監督が標榜された"超東京"のイメージのすり合わせには時間がかかりましたが、最終的には喜んでいただけたので良かったです。
▲ 首都高シーンのプリビズと、完成した映像を比較した動画
<3>画龍
本作には3つのバーチャルステージが登場するが、2つ目のライオンがモチーフのバーチャルステージと、3つ目の羅針盤がモチーフのバーチャルステージを担当したのが、画龍である。
Q1.担当された作業内容を教えてください
画龍:
2つのバーチャルライブステージに登場するアセット制作とショットワークを担当しました。
ライオンがモチーフのバーチャルステージ
▲ 過去のEXILE作品に登場したライオンをあしらったデザインモデル
▲ 仮コンポジット(ショットワーク)としての完成形
Q2.制作する上でチャレンジとなったことを教えてください。
画龍:
以前に担当した、EXILEの作品に登場したライオンや、三代目 J SOUL BROTHERSの作品に登場した骸骨を、この作品向けにリデザインすること。さらに新たなデザインも求められました。
バーチャル空間上のオブジェクトデザインは初めてだったので、様々なリファレンスを勉強しながら、このMVにマッチするようにデザインを昇華させました。最終的にはとても楽しいデザイン作業でした。
骸骨がモチーフのシーン
▲ 過去の三代目 J SOUL BROTHERS作品に登場した骸骨をあしらったデザインモデル
▲ 仮コンポジット(ショットワーク)としての完成形
Q3.制作時のこぼれ話を教えてください。
画龍:
東監督は最初から頭の中でイメージを固めていらっしゃるだけでなく、ご自身でCG制作のカメラワークやビデオコンテまで作成されてしまうスーパーな監督なので、最初からイメージがとても理解しやすいです。
求めていらっしゃるクオリティもとても素敵で、途中難題があったとしても臨機応変に演出面から調整してくださったりと、クリエイティブをとてもよく理解してくださる監督だと思っています。
羅針盤がモチーフのバーチャルステージ
<4>RUNPU
2つ目のバーチャルステージの後に続く、宇宙空間シーン。実はこのシーンのショットワークは、Unreal Engine 4(以下、UE4)によるリアルタイムCGがベースとなっている。
そんな本シーンのショットワークを担当したのは、RUNPU。同社のCGディレクター 大山俊輔氏に一連の制作をふり返ってもらった。
Q1.担当された作業内容を教えてください
RUNPU:
宇宙空間シーンで描かれる背景、コロニー、乗り物(宇宙船、ELLYが乗るバイク)などのモデリングから仮コンポジットまでを担当しました。
実写プレートのカメラワークに基づくCGカメラの作成なども含めて一括で担当させていただきました。
BOTキャラや冒頭の地球などの惑星モデルについてはご提供いただいたものをベースに、画づくりを行なっていきました。
UE4で作成したシーンとプリビズの比較
▲ 宇宙空間シーンのUE4ファイル。「特に難しいことはしていなくて、シンプルなつくりになっています。強いて言えば、チーム内で分業していたのでサブレベルを細かく分けることで極力後出しの負担を減らすことを心がけました」(大山氏)。一連の作業はリモートワークで行われたため、SVNによるバージョン管理を利用していたとのこと
Q2.制作する上でチャレンジとなったことを教えてください。
RUNPU:
今回は、ほぼフルCGということもあって、スケジュールをはじめとする制作条件を考慮しながら、できるだけコストパフォーマンスを高めるための手段として、UE4によるリアルタイムCGをベースに作成しました。
UE4を用いた映像制作のワークフローがある程度、RUNPUで確立されていたこと、コロナ禍への配慮からリモトーワークを行なっていたことから、UEのマルチユーザー編集機能をはじめとするリモートワーク向けの機能が都合が良かったこともあります。
あとは、多少粗削りでも、映像(ムービー)として一定のクオリティで(最終的なクオリティを見越した状態で)雰囲気を出してチェックに出せることもUEを用いる利点でした。
本作でも早い段階から、東監督と細部まですり合わせを行うことができたので「このタイミングで、そんな修正リクエストを言われても……(汗)」みたいなことは、減らすことができたと思います。
最近は、デジタルアーティストの方でも積極的にBlueprintsを扱うようになってきているのですが、アーティストでも親しみやすいビジュアルプログラミングが行えるので(※とは言っても、ベースはエンジニアさんに用意してもらう必要があるのですが、オペレーションのしやすさという面が伝わればと思います)、面倒な作業でも手早く行えることも利点ですね。
ショットワークとしての完成形とプリビズの比較
▲ 「完成した映像ではあまり見えませんが、道路を走るクルマの表現にはAI処理も利用しました。従来は手作業で行なっていたところにAIを利用することで効率良く情報量を増やすことができました」(大山氏)。リアルタイムCGがベースで画づくりを行えたことによって、ギリギリまでディテールを務めることができたそうだ
Q3.制作時のこぼれ話を教えてください。
RUNPU:
今回でELLYさんが乗るバイクは3代目になるのですが、デザイン的に変遷が実感できて面白かったです。
撮影に用いられた初代の造形は年季の入った原チャみたいなものだったのですが、今回はしっかりとデザインされた造形が用いられていて確かな進化を感じました。5〜6代目くらいには、本物の宇宙バイクで撮影してしまうのではないかという勢いを感じます!
今回は、実写プレートに対して、さらにCG上で再撮を行う(=3Dレイアウトを基に、3Dベースでカメラや動きを付け直す)という、自分たちとしては初めてのワークフローでした。
作業を開始した当初は、東監督の意図を理解することと、不慣れなワークフローに苦戦しました(苦笑)
ですが、あのスケール感で撮影できるスタジオが国内には存在しないということもお聞きしていたので、東さんこそチャレンジャーだなあと感じています。
既成概念にとらわれない自由な発想こそが東監督の強みだと思うのですが、それを本当にやってのけてしまうのは、改めてすごいと思いました。
欲を言えば、あともう1か月、作業期間をいただきたかったです(笑)
楽しかったですけど!
【VFXメイキング】プリビズをフル活用して、実写と3DCGを一体化|EXILE×三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE『VIRTUAL LOVE』MV
2021年12月20日(月)にYouTubeで公開された、LDHを代表するダンス&ボーカルグループEXILEと、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEが初めてコ...
INTERVIEW_沼倉有人 / Arihito Numakura(Vook編集部)
TEXT_kagaya(ハリんち)
PHOTO_加藤雄太 / Yuta Kato
Vook編集部@Vook_editor
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