【トリセツ Vol.2】ムービー撮影の前に抑えておくべきテクニック&ポイント講座

PR
Sponsored by Nikon
2022.08.31 (最終更新日: 2022.12.12)

みなさんはミラーレスカメラで動画撮影をしていますか?

近年では動画撮影機能を備えた一眼レフやミラーレスカメラが数多く登場し、誰もが気軽に動画撮影を楽しめるようになりました。一方で上手な動画撮影のために覚えなければいけない知識は多く、写真撮影以上に高いハードルを感じるユーザーも少なくありません。

今回はフォトグラファーの上田晃司さんによる、Nikonのカメラを使った動画撮影の基礎講座の第2回目。実際にカメラを持ち出してムービー撮影に挑戦する前に準備しておくべき各種設定やテクニックについて、より実践的な観点からお話しいただきました。

参考動画

覚えておきたい動画撮影の基礎知識とは

──第1回目の講座では、Nikon Z シリーズのラインナップの特徴から、動画を構成する要素の基礎知識についてお話しいただいた上田さん。第2回目の今回はどのようなお話しをしてくれるのでしょうか。

第1回目では基礎的な用語についてお話ししましたので、今回は撮影時の注意点やモードを選ぶ基準、カメラ以外のツールの選び方など、より実践的な応用編についてお話ししたいと思います。

解説の一部にはZ シリーズ特有の機能紹介も交えていきます。みなさんの悩みを解決するような機能があるかもしれません。ミラーレスカメラで動画撮影を始めたい方はぜひ参考にしてください。

【トリセツ Vol.1】カメラと動画設定の基礎篇

【トリセツ Vol.1】ミラーレスカメラを使いこなす!Nikon「Z シリーズ」で始める動画撮影講座

多種多様なカメラが登場し、動画制作が身近になった昨今。まずはミラーレスカメラの使い方を詳しく学んで動画撮影を楽しみましょう! 今回はフォトグラファーの上田晃司さんに、Nikonのカメラを使った動...

【6月末まで】資料請求すると抽選で3名に10,000円分のAmazonギフトカードをプレゼント! さらにオンライン相談会では、参加者全員にAmazonギフトカード2,000円分をプレゼント! この機会をお見逃しなく!

PR:Vook school

解像度(画像サイズ)の使い分け

──撮影を始める前に決めなければならない要素のひとつが解像度です。8K、4Kと表現される解像度とは何を意味し、どのように決めればよいのでしょうか。

解像度=映像を構成する画素数

撮影時に選ばなければならないもののひとつが解像度です。解像度の表記は、映像がいくつかの点(画素)で構成されているかを表しています。

8K UHDは7,680×4,320=約3,300万画素、4K UHDは3,840×2,160=約830万画素、フルHD(2K)は1,920×1,080=約207万画素です。

8K UHDは7,680×4,320=約3,300万画素、4K UHDは3,840×2,160=約830万画素、フルHD(2K)は1,920×1,080=約207万画素です。解像度を上げると映像が細かくキレイになる反面、8Kは4Kの4倍、フルHDの16倍の画素数が必要なため、録画データのサイズは比例して大きくなっていきます。

8K UHD 4K UHD フルHD(2K)
7,680×4,320 ピクセル 3,840×2,160 ピクセル 1,920×1,080 ピクセル
約3,300万画素 約830万画素 約207万画素

解像度選びは最終フォーマット次第

では、撮影の際にどの解像度を選ぶかの基準についてお話しします。現在主流といえる解像度は4Kであると思います。YouTubeなどを見てもまだまだフルHDが多いのですが、ダウンコンバートで後から解像度を下げられますので、4Kでの撮影が無難です。

しかし、高解像度で撮影するのが正解かというと、必ずしもそうとは限りません。僕が撮影をするときには、必ず最終フォーマットを確認してから解像度を選んでいます。最終フォーマットをフルHD以上にしないと決まっているプロジェクトでは、8Kで撮影してもそのまま公開されることはありません。

また、撮って出しのデータをそのまま納品しなければいけない仕事においては、最終的にフルHDで使うのに8Kのデータを渡されても困ってしまいます。高解像度の動画はデータ量が大きいだけでなく、再生するマシンのパワーも要求しますので、ビジネスPCだとそもそも再生できないことにもなりかねません。こういった観点から、できるだけ最終フォーマットを意識した解像度で撮影したいと思っています。

ただし、最終フォーマットが未定の場合やクロップ(フォーカスしたい動画の一部分を切り抜く編集技法)を使った表現を予定している場合には、意図的に高解像度を上げる場合もあります。最終フォーマットがフルHDなら、4Kで撮影しておけば4倍の大きさ、8Kなら16倍までクロップできますので、編集を前提として高い解像度で撮影するケースは少なくありません。

8K品質の4K動画を撮影できる「オーバーサンプリングの拡張」

8Kの動画が美しいのは間違いありませんが、現在は8K動画を楽しめる再生機器やモニターが普及していないこともあり、撮影の現場は4Kが主流です。そうした環境でも8Kのような美しい動画を撮影したいと思うなら、Z 9に搭載された「オーバーサンプリングの拡張」を使った撮影がオススメです。

画像はZ 9の画面。「オーバーサンプリンの拡張」をONにすることで使用可能。

オーバーサンプリングとは、8.3K(8,256×4,664)の画素数を使いながら4Kを撮影する機能です。一度8K以上の解像度で撮影した映像を4Kサイズで記録するため、最初から4Kで撮影するよりも高精細な動画に仕上がります。

Z 9のVer.2.0.0のファームウェアアップデート以前は4K30Pまでしかオーバーサンプリングに対応していませんでしたが、現在は4K60P、4K50Pにも対応していますので、実用にも十分耐えられる動画が撮影可能です。

Log撮影と各設定について

──撮影時の選択のひとつがビデオフォーマットです。編集を前提にした撮影では、多くの場合、Logデータで撮影、またRAWデータでの撮影が行われます。ここではNikon Z 9で保存できるデータの形式と特徴について上田さんに教えていただきましょう。

HDR・SDR・HLG

ここ数年「HDR(ハイダイナミックレンジ)」という表現技術が広がってきました。HDRは従来の表現である「SDR(スタンダードダイナミックレンジ)」よりも幅広い色の表現ができる技術です。SDRとは異なる設定で撮影する必要があり、Z 9ではN-logというデータ形式で保存されます。

logデータ撮影し編集でカラーグレーディングを行えば、自由な色表現が可能だが、その分データ量が多くなる

HDRは非常に豊かな色の表現ができる一方、対応しているテレビやモニター、ケーブルなどの機材を使用しないと、色のくすみや全体的な暗さが発生してしまう場合があります。そうした事情もあり、僕はほとんどのケースではSDRで撮影しています。

なお、近年ではHDRから派生した「HLG(ハイ・ブリッドログ=ガンマ)」という技術が生まれました。HLGは下位互換性のあるHDRといえる技術で、HDR対応テレビにはHDRクオリティで、HDR非対応テレビならSDRクオリティで再生が可能です。現時点ではあまり広がりを見せていない技術ですが、グレーディングを気にせず再生できるHLGには個人的に期待しています。

RAW動画(N-RAWとProRes RAW)

Z 9は、Ver.2.0.0のファームウェアアップデートから8.3KのRAW動画が内部保存できるようになりました。保存フォーマットは「N-RAW」「ProRes RAW HQ」の12bitRAWの2種類です。

最強カメラに進化!8.3K 60p RAW対応 Nikon Z 9ファームVer.2.00 最速解説

はじめに 2022年4月20日予定で、Nikon Z 9用のファームウェア Ver.2.00が公開になる。 このメジャーアップによりNikon Z 9はさらに進化を遂げ、最強のカメラになること間...


N-RAWとProRes RAWについてはこちらの記事でも解説しています

N-RAWは8.3K60Pや4.1K120pなどクロップ無しで、かつ外部モニター不要で内部収録が可能であり、時短・高機動力を発揮します。撮影した映像はBlackmagic Design社のソフトウェア「DaVinci Resolve(8K書き出しはver.17.4.6以降)」や、Grass Valley社の「EDIUS X(Ver.10.32以降)(※)」でRAW現像すれば映像データとして編集できるようになります。

※・・・Win版のみ。10bitに変換されます。

ProRes RAW _HQで内部収録できるのは4.1K60Pまでですが、N-RAWに比べ非常に汎用性が高いのが特徴です。Adobe Premiere ProやFinal Cut Proといった一般的なソフトでRAW現像できますし、他のメーカーのアプリや録画ソフトで収録したデータを同じタイムライン上で扱えるお手軽さがあります。またZ 9はRAW動画撮影時にはFHDでのプロキシー用ファイルを同時記録でき、8K RAW動画が扱いやすくなったのもポイントです。

基本機能だけでRAW収録をできるのはZ 9だけですが、Z 6シリーズとZ 7シリーズでもNikonの有償サービスに依頼することでできるようになります。内部収録できるのはZ 9だけであり、Z 6・Z 7シリーズはRAW収録ができる外部レコーダーが必要です。

Z 6・Z 7シリーズで外部収録をする場合、ATOMOSの「NINJA V」やBMDの「Video Assist 12G HDR」などの外部レコーダーとHDMI A-C端子ケーブルが必要になる

カメラにモニターやバッテリーをつけないといけないので手荷物が多くなるのはデメリットですが、内部記録の連続撮影時間が29分59秒に制限されているのに比べ、外部レコーダーを使えばそれ以上の連続撮影が可能というメリットがあります。

カメラに外部レコーダーを設置した様子

ビット深度と階調について

動画には、使える色の階調という概念があります。使える色の種類はbit深度と表現され、身近なところで使われる8bitは約1,677万色。10bitは約10億7,374万色と、表現のなめらかさに大きな差があります。

bit数は撮影フォーマットによって異なります。HLGやN-logは10bit。RAWデータは12bitまで扱えます。なお、表示が可能な色数は表示するモニターにも左右されます。そのため気軽に見る程度なら8bitでも十分豊かな色表現といえますし、よりこだわったグレーディングを目指すなら10bit、12bitに増やしていくとよいでしょう。

また、bit深度と一緒に語られるのがクロマサブサンプリング(※)です。4:2:0というような表示がされ、色に影響を及ぼさないようにデータ量を削減する設定として、撮影時に選ぶことができます。4:4:4はキレイな色だけれどデータ量が多く、4:2:0はデータ量が軽いメリットがありながら色に影響がでやすい設定です。こちらも最終的なアウトプットの形式やグレーディングの有無などを参考に選ぶとよいでしょう。

ProRes RAWのグレーディング画面。12bitまでデータ保存でき、より深く色の表現が可能。その代わりデータ容量が多くなる

※クロマサブサンプリング・・・映像の圧縮方法。人間の目は輝度の変化よりも色の変化に疎く、このことを利用して輝度情報を維持しつつ、クロマ情報(色)のみ圧縮する方法

タイムラプス撮影

タイムラプスとは、時間の経過をぎゅっと圧縮する映像表現です。日の出から日没までの間をずっと撮影していたような表現を見たことがある方も多いと思います。動画全体の中でのアクセントとしてや、時間や日程の経過を早回しで表現する際に使用することが多くある長時間撮影テクニックのひとつです。

タイムラプス撮影には2種類の方法があります。

①インターバルタイマー撮影

撮影時間や撮影の間隔を自由にセットでき、自動で撮影した複数枚の静止画を保存します。この1枚ずつの静止画を後処理し組み合わせ、より高画質なタイムラプス動画に仕上げたい方はコチラの手法で撮影される方が多いです。また静止画と編集後の動画の両方のデータを保存してくれるのは、Z シリーズの中でもZ 9にしか搭載されていない機能です。

②タイムラプス動画

こちらは全てのZ シリーズに搭載されています。インターバル撮影同様に、撮影時間や撮影間隔を自由に設定できますが、静止画は残らずに動画だけが保存されます。

星景のタイムラプス動画を撮影する際に便利な「スターライトビュー」という機能も搭載されています。

星空をしっかりと撮影できる「スターライトビュー機能」。フレームレートは下がってしまうが、暗闇の中でも構図を決める際にとても役に立つ機能

またZ 5以降のZシリーズのタイムラプス動画には「露出平滑化」という機能がついています。これは前に撮影した静止画と明るさが極端に変わらないよう、自動的に露出を調整してくれる機能です。

朝から夜までや、夜から朝日を定点で撮影している時など、撮影露出環境の明るさが大きく変わるシーンにおいても、仕上がりが極端に暗くならないように露出の変化をなめらかにしてくれます。数時間撮影した中でのたった1枚の露出失敗で作品が台無しになってしまうような事を防いでくれる安心機能です。

これはNikon Zシリーズが誇るとても素晴らしい機能ですので、ぜひみなさんにも使っていただきたいと思っています。この際の撮影テクニックとして、僕は露出平滑化を使う時は、絞り優先オートとISO優先オートにセットしています。

「露出平滑化」は、明るさが大きく変わる朝から夜まで定点撮影などの環境でも、仕上がりが極端に暗くならないように明るさの変化をなめらかにしてくれる機能

ハイフレームレート撮影

僕が知る限り、Z 5を除く全Z機種はハイフレームレート撮影に対応。120Pで撮影した動画を30Pや60Pの美しいスローモーション動画に変換してくれます。Z 9はボディ内でスローモーション動画を生成できませんが、4.1K120PをN-RAWで撮影が可能です。

ハイフレームレートを使用すれば、動物の動きや、飛行機や列車など速い動きのものも緻密に撮影することができる

フォーカスの設定とテクニックですが、近年のミラーレスはオートフォーカス機能が非常に充実しており、人物や顔、瞳AFは大体搭載されてきておりますので積極的にAFも活用しカメラとレンズ毎の特性を感じ使いこなしてみてください。

その中でもAF性能が特に強いのがZ 9で、9種類の被写体検出に対応しています。人物、犬、猫、鳥、バイク、自転車、列車、飛行機の検出ができますので、マニュアルではピントを合わせにくい、追いきれない動体被写体相手でも安心してAF撮影が可能です。

また、被写体がフレームから外れた時にオートフォーカスを止める「被写体被検出時のAF駆動」という機能があります。

たとえば追っている人物が木の陰に入ってしまうと、一般的なカメラでは木や葉っぱにピントを持っていかれてしまいます。しかし被写体被検出時のAF駆動を無効にしておけば、人物が木に隠れるとオートフォーカスを止めてくれます。

被写体被検出時のAF駆動を無効にしておけば、人物が木の陰に入ってしまっても、ピントは人物の位置にあったままで、手前の木にフォーカスが動かないようになるAF設定のテクニック

マルチカム(複数カメラでの同時撮影)について

ライブ配信やハウツー動画、イベントやインタビューの現場で活躍するマルチカム(複数のカメラで同時撮影し切り替え編集する手法)は、ひとりで全て準備するのは少し大変です。後の編集も考えると、同時に録画スタートしてくれるとうれしいですよね。その希望を叶えてくれるのが、対応カメラの10ピンターミナルに装着し使用するニコンワイヤレスコントローラーの「WR-R11a/T-10セット」です。

まずWR-R11aをカメラにセットし、リモコンであるWR-T10のスイッチを押せばリモートで撮影を開始できます。複数台のカメラを同時に連動するように複数個WR-11aをセットしておけば、2台でも3台でも同じタイミングで録画スタート。また録画中はWR-11aの赤いランプが光りREC中の確認もできますのでREC押し忘れの心配もなし。まったく同じ尺で撮影できますので、後の編集の負担も大きく減らせます。

なお、利用前にはカメラの録画ボタンをカスタムで変更し、シャッターボタンで録画を開始できるように設定しておく必要がありますのでご注意ください。

スタジオ撮影・ライブ配信撮影

Z シリーズでのライブ配信はあまりイメージがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが、Z 9、そしてZ 6llはオートフォーカスで、顔認識を行いしっかりと被写体を捉えてくれるので安心してライブ配信を行うことができます。

さて、Z シリーズでのライブ配信をする際にやっていただきたい設定が、Z 9では2つ、その他のカメラでは1つあります。

まずZ 9の場合は、HDMI設定の「出力映像への情報表示」をオフにします。

もうひとつ、全機種共通の設定はカスタムメニューのAEロック・タイマー内にある「パワーオフ時間」、「半押しタイマー」を「制限なし」にすることです。これによってカメラが勝手にパワーオフになり急に撮影が止まってしまうことを防ぐことができます。逆に、この設定をしないとすぐに電源が落ちてしまいますので、ご注意いただければと思います。

動画撮影・編集に便利な機材・附属品

──動画撮影はカメラだけで完結するものではありません。撮影に必要な機材や附属品、編集に必要な環境など、揃えなければならないものは少なくありません。実際に上田さんが使っている機材を見てみましょう。

収録用のメディアは何を選ぶ?

動画撮影において非常に重要なものといえば、第一に収録メディアが挙げられます。

メディアは様々なメーカーが出しており、それぞれ同じようなスペックが書いてあります。しかし僕も様々なメディアを使う中で、突如録画が止まってしまうようなことも多く経験してきました。Z 6やZ 7で4K動画を撮影する程度であればあまり大きな差はありませんが、Z 9で撮影した8K動画をProRes RAW HQやN-RAWで記録しようというようなときには顕著な差が出ると思います。

僕は基本的に使用するメディアは「推奨メディア」と指定されているものを使っています。Z 9の撮影において最も高い頻度で使っているのがProGrade社製の「CFexpress」です。Z 9はProGrade社のCobalt 1700Rのメディアなどを推奨規格のメディアとしています。8Kを4:2:0 10bitでの長時間収録やYouTube用の動画撮影などをしてきましたが、これまでに止まったことは一度もありません。

ProGrade社 CFexpress
https://www.amazon.co.jp/stores/page/75466CF4-E9FD-41F3-8FA6-34BC78FC48F2?ingress=0&visitId=3ec8991a-8116-47a9-ac88-d0e5609b919c

また、Nikonが出している純正メディアMC-CF660Gの660GBも、非常に高い信頼性があります。僕は純正のXQDカードを使っていましたが、こちらもまったくトラブルはありませんでした。4Kの撮影程度なら余裕を持ってこなせますので、撮影する動画の最終フォーマット次第では純正メディアもオススメです。

Nikon純正 CFexpress
https://shop.nikon-image.com/front/ProductVWC00203_2315

SDカードを使う際には、動画撮影に適した規格のカードを選ぶのが重要です。通信速度を表す規格がいくつもある中、動画撮影向けとして判断したいのが「UHS」という規格です。ローマ数字で「I」「II」「III」と表記されており、数字が大きいほど転送速度が速いことを意味しています。

「II」か「III」なら4K動画程度ならば問題ありません。Iの場合はさらにUの中に書いてある数字に注目し、3なら4K撮影が可能。1は十分な通信速度が出ないため、避けた方がよいでしょう。

もうひとつ注目したい規格が「ビデオスピードクラス」です。カード上には「V30」「V60」「V90」と記載されています。数字が大きいほど通信速度が速いことを意味しており、V30以上であれば4K録画には十分耐えられます。

なお、僕は録画したデータをPCに転送するためのカードリーダーにも注目しています。カードリーダーは安い商品も存在していますが、価格によって性能は大きく変わると感じています。可能であればメディアと同じメーカーのカードリーダーがオススメです。

搭載バッテリーの違いについて

最近のミラーレスカメラは、USB給電可能なモデルが増えてきました。ニコンZシリーズ現行機種ではZ9はもちろん、Z 6II、Z 7II、Z 5、Z fc、そして最新小型軽量機種のZ 30はUSB給電可能。Z 6、Z 7、Z 50はできません。

USB給電の可否 機種
USB給電が「可能」 Z9、Z 6II、Z 7II、Z 5、Z fc、Z 30
USB給電が「不可能」 Z 6、Z 7、Z 50

このUSB給電、そしてUSB“充電”はカメラ本体だけでなく、バッテリー側が対応しているか否かも判断する必要があります。長らくNikonのカメラに使われてきたバッテリー「EN-EL15」シリーズのうち、EN-EL15および15aはUSB給電・充電に対応しておらず、充電器を使う必要があります。USB給電・充電を利用する際には、EN-EL15bまたは15cを使いましょう。

USB給電・充電が可能な「EN-EL15c」
https://shop.nikon-image.com/front/ProductVFB12801

バッテリーの持ち具合についても少し触れておきます。Z 6やZ 7で使われているEN-EL15シリーズのEN-EL15cは約100分ほどの動画撮影可能時間 (電池寿命)がありミラーレスの中では比較的長持ちで、1時間程度撮影できればいいという程度のもち具合です。

僕はおおよそ1日の撮影で3〜4本、なかなか電源を切れないような日には5〜6本使いますので、万が一の備えも含めて10本ほど用意しています。

Z 50、Z fc、Z 30の小型モデルに使われているのが「EN-EL25」。非常に小さなサイズですが、EN-EL15シリーズと同様におよそ1時間程度撮影可能です。小さめのロケに持っていくときは4本程度、旅行に持っていくときは2本程度を用意しています。

EN-EL25
https://shop.nikon-image.com/front/ProductVFB12501

Z 9は「EN-EL18d」という大型のバッテリーを採用していますが、動画撮影可能時間 (電池寿命)約170分となっており、これはかなり持ちます。USB給電を挟んでいる影響もあると思いますが、仕事で一本完全に使い切った記憶はありません。外のロケでも1時間半程度はまったく心配なし。念のため予備は持っていきますが、これまで一度も交換したことがないほど安心感があるバッテリーです。

EN-EL18d
https://shop.nikon-image.com/front/ProductVFB12901

動画編集用のパソコンは何を選ぶ?

撮影した動画は必ず編集することになります。動画編集にはどの程度のスペックのPCが必要かと聞かれれば「予算に縛りがなければ高級なもの」と答えます。僕はロケが多いので、出先でも使えるノートのMacを使っています。Windows機も持っていますが、Final Cut Proというソフトを使う関係でほとんどMacを使っています。

8K動画を扱うなら、Macでいえば上位モデルにオプションを全て乗せたくらいのつもりでいた方がよいでしょう。僕が今使っているのはM1 MAXというチップを積んだMacBook Proです。8Kでもバリバリ動いてくれるので、ストレスなく編集できて助かっています。

もし4KやフルHDしか使わないようなら、エントリーモデルでも十分でしょう。何もオプションを乗せない状態でも対応できると思います。

Z シリーズの撮影支援機能

──ここまでは、よりハイレベルな動画撮影に必要な設定について教えていただきました。ここからはZ シリーズ特有の撮影支援機能について語っていただきます。

8K録画中のピント位置拡大

Nikon Z シリーズ、特にZ 9には豊富な撮影支援機能が備わっています。まず紹介したいのが8K録画中のピント位置拡大機能。カメラ背面にある虫眼鏡ボタン(+マーク)を押すと、録画中にピントが合っている部分を拡大できます。これはZ 9だけの機能です、意外にも他社含めほとんどのカメラには未搭載でした。

人物やインタビュー、ライブ配信時など撮り直しができない8Kや4K録画中は、よりシビアなピント合わせが求められる為、さらに外部モニターをつけている際は撮影画面と拡大画面の2画面でピントも確認できるので、とても便利な支援機能です。

ちなみにZシリーズはどの機種も画像モニターが非常にキレイなのも録画時に確認しやすく、また撮影中のモチベーションが上がるのもポイントですね。

50%、100%、200%から録画中も拡大表示選択が可能になり、ピントが浅い単焦点の明るいレンズ使用時も瞳AFと併用し、さらに撮影がしやすくなった

ウェーブフォーム・ヒストグラム表示

こちらもZ 9だけの機能ですが、背面モニターにウェーブフォームとヒストグラムを表示できます。動画の露出感を見るにはヒストグラムよりもウェーブフォームが有効ですが、Z 9シリーズ以外で表示させるには外部レコーダーやモニターが必要です。

ウェーブフォームモニター表示(2種類から選択)と、逆RECを防ぐ赤枠表示

Z シリーズの使い分け

──Z シリーズを多数所持し、実際に仕事でも使い分けているという上田さん。それぞれの機種をどのように使い分けているのでしょうか。最後にシチュエーション別、目的別のZ シリーズの使い分けを聞いてみましょう。

僕は基本的に自前で揃えた機材を使います。現在はZ 9が3台、Z 6シリーズも3台。Z 7は初期型が1台。そしてZ 5、Z fc、Z 50、Z 30です。ほとんどの撮影はZ 9で行いますが、4Kで十分な現場、長く撮影はしないけれど長時間拘束されるような現場はZ 6IIを多用します。

このあたりの使い分けの基準は、予算の影響も少なくありません。Z 9で使うProGradeの650GB CFexpressだと1枚10万円以上しますので、予算次第では使えないこともあります。一方のZ 6IIはSDカードやXQDで撮影できるので、Z 9に比べると予算面はかなり抑えられます。ただし、デメリットというわけではないですが、Z 6IIには29分59秒の壁がありますので、長時間回しっぱなしにするときには外部レコーダーが必須です。

プライベートで撮影するなら、Z 30は本当に使い勝手がいいカメラだなと思っています。大事な仕事の撮影は少し難しいですが、YouTubeレベルならまったく問題ありません。レンズはもちろんZマウントなので、F2.8ズームでもつければそれなりにぼけ感も得られます。山登りやアウトドアなど機動力が求められる場面なら、特に撮影を楽しめるのではないかと思います。

まとめ

今回はフォトグラファーの上田晃司さんに、動画撮影に必要な知識の応用編とZ シリーズによる問題解決方法についてお話しいただきました。カジュアルなモデルからトッププロ向けまで豊富なバリエーションを揃えるZ シリーズ。カメラの買い換えを考えている方は、ぜひNikonのZ シリーズもご検討ください。

学べる連載記事「ミラーレスカメラのトリセツ」のそのほかの記事については、まとめページよりご覧ください。
動画撮影の基礎知識から実践的内容までテーマ別に紹介しております。

https://vook.vc/list/36

初心者の方にオススメのZ 30の特徴について
以下のレポートで詳しく解説しております。
Z 30、Vlogeカメラ購入のご検討されている方はぜひご参考ください。

Nikon「Z 30」レビュー 動画機に本気を出してきた最新鋭のAPS-Cエントリーモデル

Nikonは、Vlogなどの動画撮影に最適な新型ミラーレスAPS-Cモデル「Z 30」の発売を発表しました。エントリーモデルとして誕生するZ 30は、どのような特徴をもつカメラなのでしょうか。 ...

記事内でも紹介されたZシリーズのフラッグシップモデル Z 9のムービー撮影に特化したスペシャルコンテンツページが新しく公開されましたので、こちらも必見です!

■Nikon Z 9 ムービースペシャルコンテンツページ<NEW>
https://www.nikon-image.com/sp/movie/z9/
 
■Z 9動画専用カタログPDF<NEW>
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_9/pdf/z_9_movie.pdf
 
■Nikon Z 9 製品ページ
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_9/
 
■Nikon Z 7II 製品ページ
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_7_2/
 
■Nikon Z 6II 製品ページ
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_6_2/
  
■Nikon Z 5 製品ページ
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_5/
 
■Nikon Z 50 製品ページ
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_50/
 
■Nikon Z fc スペシャルコンテンツページ
https://www.nikon-image.com/sp/zfc/
 
■Nikon Z 30 スペシャルコンテンツページ
https://www.nikon-image.com/sp/z30/

  • 上田晃司/Kouji Ueda

    米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をしながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。 帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。 現在、妻のコムロミホ氏と共にYoutubeチャンネル「写真家夫婦上田家」で、カメラのテクニックやレビューを配信中。

コメントする

  • まだコメントはありません
nikon

nikon@nikon

【Nikon Imaging Japan公式アカウント】 【Picture Perfect】プロクオリティの「写真」と「映像」の表現を広げる。 URL:https://vook.vc/p/nikon-z 【意外と知らない「写真」と「映像」の違い】まとめペ...

nikonさんの
他の記事をみる
記事特集一覧をみる