リファレンス

今までガンマについて2つの制作ノートでまとめてみました。今回はそれを読んでいただいたことを前提としてノートを進めます。上記の2つの制作ノートはこちらからご覧ください。なおリファレンス用のスクショはDaVinci Resolve 14 スタジオを使います。

  1. 「ガンマ」が分かりにくいから調べてまとめてみた。

  2. 色空間を考える上での3つの要素:トランスファーカーブ、色域、ホワイトポイント

RCM = DaVinci Resolve考案のカラーマネージメントツール

Resolve Color Management(以下RCMで統一します)はプロジェクト設定のカラーマネジメントから設定することが出来ます。DaVinci Resolve 14では4つのカラーマネジメントが存在します。

  1. DaVinci YRGB
  2. DaVinci YRGB Color Managed
  3. ACES cc
  4. ACES cct

RCMはこの2つ目の「DaVinci YRGB Color Managed」を選択することで使えるようになります。尚、DaVinci YRGB Color Managedを選択するとこのようになります。

この際に注目するのが、

  1. 入力カラースペース
  2. タイムラインカラースペース
  3. 出力カラースペース

の3つです。

「タイムラインから出力への色調マッピング」「タイムラインから出力への色域マッピング」については試したことが無いので深く触れませんが、主にHDR制作したものをSDRマスターへ直したり、またはその逆を行う場合に使える機能みたいです。SDR <> HDRのリマッピングをする際に、輝度や彩度が高い部分を調整するためのもの、みたいですねw

今回の制作ノートは主に以下の点について書きました。

  • DaVinci YRGBとRCM(DaVinci YRGB Color Managed)の違い
  • 3つのカラースペースの役割(入力、タイムライン、出力カラースペース)

についてです。

DaVinci YRGBとRCM(Color Managed)の違い


参照:Ripple Training

「シーンリファード」と「ディスプレイリファード」

この違いを考える上で「シーンリファード」と「ディスプレイリファード」という言葉を使います。これらの言葉は「状態」を示す指標で、数学的な単位があるわけでも無いし、どこかの団体が決めた規格でも無いものです。

英語カタカナ表記なのでパッと見ても非常にわかりにくい言葉ですが、リファードというのは「Referred」という英単語で、「何かを参照にしている」状態を表します。この場合「シーン」か「ディスプレイ」を参照するという意味です。「シーン」というのはモニター画面では無く実世界での光の情報のことを言います。

収録された素材の状態を以下のように判断することが出来ます。

  • 「シーンリファード」= 「実世界の光の情報を出来る限り正確に記録しようとする状態」
  • 「ディスプレイリファード」= 「特定のデバイスに依存した色作りがされた状態」

例えばDSLR 7Dなどの動画撮影をした場合は、sRGBのディスプレイリファードな収録方法になります。これはPCで動画を見る際に最初から良く見えるよう、Canonが独自に色を補完しルックを焼き込んで収録することを意味します。RED EPICなどはRED RAWで撮影したものをシーンリファードな色空間にディベイヤーします。シーンリファードであることはディスプレイで見たときに綺麗に見えることを意図したものではありません。あくまで実世界の光の情報を出来る限り正確に記録することを目的としているため、LOGカーブのOETFを使って出来るだけフラット(眠い)状態で収録します。

つまりポストプロダクションにはディスプレイリファードな素材とシーンリファードな素材を扱う環境がそれぞれ必要になります。そしてDaVinci YRGBは完全なディスプレイリファードな作業環境、RCMはシーンリファードな作業環境とDaVinci Resolve 14のマニュアルには書かれています。ただシーンリファードな作業環境という言い回しがシックリくる感じがしないので以下のように言い換えても良いかと思います。

  • 「シーンリファード」= 「編集素材のカラーマネジメントが出来る作業環境」
  • 「ディスプレイリファード」= 「特定のディスプレイに依存した状態の作業環境」

DaVinci YRGBはディスプレイリファード

DaVinci YRGBではディスプレイリファードな素材も、シーンリファードな素材(LOG)も全てのRGB値がタイムラインカラースペースを参照にして表示されます。また出力するカラースペースも選択することが出来ません。そのためタイムラインカラースペースがディスプレイの持つ色空間と同じであることが必須になります。

グレーディングしているRGBデータが書き出した動画のRGBデータと同じであることを保証するのは、正しくキャリブレートされたモニターしかありません。

DaVinci YRGB Color Managed (RCM)はシーンリファード

DaVinci ResolveのRCMでは素材の入力カラースペースを指定する機能と、出力カラースペースを指定する機能が増えました。取り込んだメディアの収録された状態をDaVinci Resolveに認識させることが出来るので、出力される動画のカラースペースを確認することが出来ます。

3つのカラースペースの役割

RCMには入力、タイムライン、出力というカラースペース設定があります。RCMの仕組みを簡単にまとめてみました。

  • 入力カラースペース = 収録した素材のカラースペースを選択します。
  • タイムラインカラースペース = グレーディングを行う作業用のカラースペースを選択します。
  • 出力カラースペース = 入力カラースペースを変換する(統一する)出力用のカラースペースを選択します。

タイムラインカラースペースの役割

タイムラインカラースペースのメリットは、自分がグレーディングしたい環境を選べる点にあります。タイムラインカラースペースは直接素材の色空間を変換するものでは無いのですが、DaVinci Resolveに搭載されているグレーディングの各ツールの入力(マウスやコントロールパネル)に対する反応をタイムラインカラースペースの素材をグレーディングしているように模倣してくれます。これは感覚的なものなので自分が使い慣れている色空間が良いと言われています。

LOG素材をそのままグレーディングする方はARRI LOG-Cを選ぶ方が多いようです。これは多分にARRIのLOGカーブがフィルムルックを作るのに適しているからだと思います。LOG-CはRec.709と比べてコントロールに対する色や輝度の対応が少し敏感になります。Rec.709はすごくゆっくりなイメージがあります。Rec.2020などはめちゃくちゃ早く彩度があがるイメージです。

RCMを使うメリットで便利だなと思うこと

  1. 不特定多数のカメラブランドが持つRAWデータやLOGデータの入力カラースペースを出力カラースペースに瞬時に変換しつつ、グレーディングの仕様をタイムラインカラースペースで統一することが出来ること。
  2. 出力カラースペースを変えることで違う出力環境に一瞬で切り替えられること。(ディスプレイリファードでは無く、シーンリファードであるということ)
  3. LUTを使わずにカラースペースを変換出来ること

出力カラースペースとタイムラインカラースペースを同じにすると…

タイムラインカラースペースで選択した色空間がそのまま出力カラースペースになります。またグレーディング作業を行うのはタイムラインカラースペースのままです。出力カラースペースをバイパスにすることでも同じことが出来ます。バイパスとはBypassのことで、要はスルーするってことです。


出力カラースペースがタイムラインと同じ場合

出力カラースペースがバイパスの場合

入力カラースペースをバイパスすると…

DaVinci YRGBと同様に収録クリップが持つRGB値がタイムラインカラースペースにて表示されます。タイムラインカラースペースと同じ色空間を入力カラースペースで選択しても同じことがおこります。

RAWデータは直接タイムラインのカラースペースにディベイヤーされる

RAWデータは各社ブランドによって特定のLOGガンマと広色域に変換することを推奨していますが、RCMではRAWデータは直接タイムラインカラースペースへとディベイヤーされます。ディベイヤーされた後でも、グレーディングページでRAWデータを編集することが可能ですが、色域とエンコーディングガンマ(OETF)は選択出来ないようにになります。

LUTとRCMの違い

RCMはLUTでは無い

LUTとRCMはどちらもカラースペースを変換することが可能です。

ただし変換方法が違うため結果として変換後のルックも同じにはなりません。RCMで変換した場合は階調からはみ出した(潰れた/白とびした)情報も正しく記録しています。そのため変換後に階調の外に出た情報が記録されない、というLUTの弱点は克服しています。つまりRCMはLUTよりも高度な変換方法ということです。

ただしLUTをルックとして使っている場合は、その見た目が大事なのでRCMを使うだけでLUTを使う必要が無いかと言うとそういうわけでもありません。あくまで色空間を変換する方法がRCMとLUTの2つあって、それぞれ結果が違うということです。

クリップごとに入力カラースペースを変換する

プロジェクト設定でプロジェクト全体の入力カラースペースを選択することも出来ますが、全ての素材が同じカメラで撮影されているわけではありません。複数の入力カラースペースが混在する場合は、クリップごとに(もしくはスマートビンでカメラごとにまとめて)入力カラースペースを入力出来ます。素材を右クリックして入力カラースペースの中から必要な色空間を選択します。

素材ごとに選択した入力カラースペースは、プロジェクト設定ページで選択している入力カラースペースを上書きして保存されます。

役に立ったフォーラムのスレッド紹介

Blackmagic Designのフォーラムはかなり有益な情報がたくさん集まっていますので、ぜひご覧ください。

フォーラム
https://forum.blackmagicdesign.com/viewtopic.php?f=21&t=62223
https://forum.blackmagicdesign.com/viewtopic.php?t=52845

Light IllusionのLUTについてのブログです。
https://www.lightillusion.com/luts.html

いつものDaVinci Resolve 14マニュアル。RCMについては135ページからあります。
http://documents.blackmagicdesign.com/DaVinciResolve/20170907-f39416/DaVinci_Resolve_14_Reference_Manual.pdf

13クリップする
クリップしておくと
あとからいつでも
見返したりできます。

コメント

  • 宮本琳
    初めまして。最近鎌田さんのノートを知り、かなり勉強させていただいています、宮本と申します。
    わかりやすくたくさんの情報をありがとうございます。

    最近カラーマネージメントについて色々調べていてこのノートもとても参考にさせていただいています。

    ”LUTとRCMはどちらもカラースペースを変換することが可能です。ただし変換方法が違うため結果として変換後のルックも同じにはなりません。RCMで変換した場合は階調からはみ出した(潰れた/白とびした)情報も正しく記録しています。そのため変換後に階調の外に出た情報が記録されない、というLUTの弱点は克服しています。つまりRCMはLUTよりも高度な変換方法ということです。”

    ↑この部分なのですが、LUTで色域を709に変換するより、RCMで変換したほうが、あとで飛んだり、潰れたりしてもよく戻ってくる、ということでしょうか?

    ちなみに、SONYのS-Log2を編集する場合の話なのですが、
    RCMで色域を709に変換する場合と、SONYのLUT(From_SLog2SGumut_To_LC-709_.cube)を使って色域を709に変換する場合、
    RCMで709に変換すると、ガンマカーブも709になり、100%のところで白が飛んでしまうので、飛びがちですが、
    LC709のLUTを使うと、色域は709に収めつつも、カーブはLCを使い、うまいこと飛ばないように調整してくれている、と、メーカーの方が説明をしていました。


    そのように、最近は色域変換について知り、勉強していて気づいたのですが、
    OSIRISやImplzなどの市販のフィルムLUTは、それぞれS-Log用やBMCC Film用などありますが、
    LUTを適応した後は色域も709に変換されるものなのかご存知ないでしょうか?

    メーカーが作っているLUTは放送規格に変換するためのもの、
    市販のLUTは規格変換というより見た目を作るためのもの、と考えたとき、
    市販のLUTを使う際の色域変換がわからなくなってしまいました。

    放送するためにログで撮影した素材は709に変換する必要がある?のなら、
    市販LUTは色づくりのためだけなのか、色域も変換してくれているのか、、

    RCMで色域を709に変換してから色を作る、メーカーのLUTで色域を変換してから色を作っていく、この二つについて勉強したら、
    市販のフィルムLUTの使い方があやふやになってしまいました。。

    素材そのままの状態に、それぞれのログに対応したLUTをかけるだけだと思うのですが、「色域変換」という作業はどこにいってしまうのかと。

    私自身もしっかり理解できておらず、質問すら正しくできていないかもしれませんが、何かこのことについてご存知でしたら是非教えていただきたいです。

    長々と失礼しました。

    宜しくお願いいたします。
  • hal55

    hal55hal55

    18.09.17
    とても良くまとめられていると思いますが、
    「scene-referred」
    「intermediate-referred」
    の2つを混同されているのかな?と感じました。