データレベルの処理方法

DaVinci Resolveのマニュアルに書いてあることと照らし合わせながらなのですが、こうやって記事にすることでスンナリ頭に入ってくることもあると思いまして、今回制作ノートにまとめて見ました。自分でも理解出来る内容だけを書いたので、相変わらず専門性に欠けるかもしれません。

まずDaVinci Resolveで作業する上でデータレベルについて、自分が持っていた質問をいくつかあげました。

  1. ビデオレンジとフルレンジは何が違うのか?
  2. 素材のデータレベルはどこで見るのか?
  3. タイムラインのデータレベルはどうやって管理するのか?
  4. ブロードキャストセーフティはどうやって確かめるのか?
  5. 書き出しの際のデータレベルはどれを選べば良いのか?

マニュアルを読みながら自分の言葉で解釈込みで説明しようかと思います。(参照マニュアルはこちら

今回はDaVinci Resolve 14はスコープが全て10bit表示になっているので、それに合わせて説明します。

ビデオレンジとフルレンジ

はじめに

ビデオレンジはリーガルレベル(Legal Level)と呼ばれたり、フルレンジはデータレベル(Data Level)と呼ばれたりExtended Range, Studio RGBと呼ばれたりすることもありますが、同じものを指しています。そのためリーガルレベルとデータレベルなどは使わず、ビデオレンジとフルレンジで今回は統一して話を進めようと思います。

普段見ているTVだったり、PCで見る動画サイトの動画はほぼ全てビデオレンジのはずです。YUVがディファクトでビデオレンジだからです。放送用に使われる動画データはほぼ全てYUVを使って、4:2:0などカラーサブサンプリングのデータ圧縮がされています。YUVでもフルレンジで書き出すことも出来ますが、ほぼ全ての動画プレイヤーがビデオレンジYUVには対応しているために基本はビデオレンジのはずです。そういう背景の元でDaVinci Resolveに関係のある話を進めます。

階調の差

RGBやYUV(輝度と2つの色度を分けてデータ記録をするカラーモデル)は整数値(英語ではIntegerと言います)を使って、黒から白まで色深度に合わせた階調が決まります。

YUVとRGBの違いについての説明はこちらにアップしてます。

制作ノート :YUVとRGBの違い

DaVinci Resolve 14のマニュアルによると、10bitは1024(2の10乗)の階調で映像を表現することですが、ビデオレンジは黒から白までをの64-940だけで階調を表現します。これと違いフルレンジは黒から白までを4-1023の階調で表現します。この場合4が黒、1023が白です。ビデオレンジの場合は64が黒、940が白になります。

YUVはモニター出力する際にRGB変換されます。その際YUVのデータレンジはコーデックによってビデオレンジからフルレンジに伸長 (数学的にビデオレンジからフルレンジに引き伸ばしてデータ値を変換すること)されてRGBモデルで再生されるので、基本的には違和感無く映像を見ることが出来ます。伸長することをスケーリングと呼んだりもします。

間違ってデータレベルが読み込まれてしまうと…

これとは違い伸長されずに黒が浮いて白が暗く見えるのは、ストレート変換された状態のことだそうです。これはビデオレンジのRGB値が伸長されずにフルレンジの値として判断されているためです。フルレンジにビデオレンジがストレート変換された場合はビデオレンジでは黒だった色もフルレンジでは黒よりも明るい色として画面に表示されます。白も同じく白よりも暗い色で表現されます。


備考:データレベルを変えた同じクリップ(右側が間違ったレベルで入力されている)

注意点

ビデオレンジのデータが伸長されるかストレート変換されるかは、動画がデータレベルの属性のメタデータを維持したままエンコードされているかの有無によるもの。有名どころはATOMOSの外部レコーダーを使った場合ですが、データレベルの属性が記録されません。LOG収録機能が備わっているカメラは多くの場合フルレンジ収録が多いようですが、ATOMOSの外部レコーダーを使って収録した場合属性が記録されないために、フルレンジYUVでの収録でもPremiere などのNLEではビデオレンジとして取り込まれるために64以下が黒つぶれし、940以上も白飛びする素材になってしまいます。


参照:Cinema 5D - ATOMOSなどで外部収録した素材が右側(カメラ内部収録した素材は左側)

ただしフルレンジ収録したデータは記録されているので、32bit浮動小数点数の演算を使うエフェクトでビデオレンジ内に64以下の情報と940以上の情報を戻してやれば見ることが出来ます。またデータ属性をフルレンジにしてやればデータレベルの素材として扱うことも出来ます。(参考フォーラム:Set as Data or Video levels confusion at Lift Gamma Gain

DaVinci Resolveに取り込む素材がビデオレンジなのかフルレンジなのかは毎回確認する必要がありそうです。素材を取り込んだ際に正しくレンジが表現されない場合はクリップ属性を変えてやれば大丈夫です。(後述)

ビデオレンジとフルレンジの階調の違いは、877階調(ビデオレンジ)と1020階調(フルレンジ)の差分の143階調です。色の種類で言えば143x143x143で2,924,207色の表現の違いです。10bitでモニタリング出来る場合、300万色という色の表現力の差がどれくらい表現の幅を狭めるかは分かりませんが、階調の幅が広がるほど高コントラスト部分、つまり被写体のエッジ部分、の階調表現が正確になるため映像は明瞭に見えやすくなるはずです。

素材のデータレベルはどこで見ることが出来るか?

素材のデータレベルはクリップ属性を見ることで知ることが出来ます。方法はメディアページのメディアプール内にある素材を右クリックして、クリップ属性を選択します。データレベルというカテゴリーの中にAUTO、ビデオ、フルの3つから選択することが出来ます。

AUTOにしておくと、DaVinci Resolveが自動的にコーデックからデータレンジを推測します。RAWデータはフルレンジのRGBに変換されます。動画はカメラによってフルレンジ収録とビデオレンジ収録のカメラがあります。例えばCANONのEOSシリーズは全てのMOV動画がフルレンジです。GH4, GH5などはビデオレンジとフルレンジの両方が設定出来ます。ビデオのデータレンジの入力値を確実にしたい場合は、ビデオかフルを選びます。

先ほどの話に出てきたATOMOSで外部LOG収録した動画は多くの場合フルレンジ収録なので、このクリップ属性をフルにしてやることで正しく表示されます。

備考

たたフルレンジのYUVで収録する場合の動画のことをフルレンジYUVと呼ぶそうです。階調を出来る限り広げて収録することが出来るというメリットがあリます。

参照:EOS MOVIEの主な仕様

備考ですがLUMIXのGH4では、0-255(フルレンジ)、16-235(ビデオレンジ)、16-255の3つのデータレンジを選べるそうです。最後の16-255っていうのはフルレンジとして扱うのでしょうか。GHシリーズ持っていないので分かりません。

タイムラインのデータレベルはどう管理されているか?

全て非圧縮の32bit フルレンジで加工される

メディアプールに取り込まれた素材はコーデックやメタデータによってデータレンジが判断されます。正しく判断されていない場合はクリップ属性でAUTOから正しいデータレベルへ変更します。

元データの色深度が8bitであれ、12bitであれ、ビデオレンジであれフルレンジであれ、作業空間は全て32bit フルレンジのRGBデータへ変換されます。たとえ撮影素材がビデオレンジでもDaVinci Resolveのグレーディングページ右下にあるスコープで見ている情報は、全てフルレンジのRGBデータになっているということです。

Premiere ProはタイムラインがYUVデータ

ちなみにPremiere Proはタイムライン上ではRGBに変換されることなくYUV素材のまま編集します。もともと出自がNLEのPremiere Proなので、DaVinci ResolveのようにRGBでのグレーディング作業が少なかった背景によるものだと思います。

モニターのビデオ出力もビデオレンジとフルレンジのどちらかを選択

プロジェクト設定のマスター設定を選択して、ビデオモニタリング欄からモニターに出力するデータレベルを選ぶことが出来ます。

モニター側の入力設定が出力側と同じデータレベルになっていれば正しいレンジで表示されます。

3D LUTはフルレンジのRGBに対応

3D LUTは全てRGBデータに適応されます。ポストプロダクション作業でLUTを適用するとフルレンジのRGBデータに変換され、利用可能な全てのデータを使って内部処理を行います。そのため3D LUTはビデオレンジのYUVデータがフルレンジに正しく伸長されたRGBデータ、もしくは最初からフルレンジのRGBデータに適応される必要があります。


参照:LEGAL AND EXTENDED – SDI-SIGNALS AND LUTS IN LIVEGRADE

DaVinci Resolve

データ属性に合わせてビデオレンジの素材はフルレンジに自動的に伸長されます。そしてRGBデータとして全てのグレーディングが処理されます。そのため3D LUTを使うときに何か特別他の作業と違うことは何もありません。

Adobe Premiere Pro CC

基本的にYUVのまま作業するPremiere Proの場合は、3D LUTを適応した場合やYUV/32bitマークのついているエフェクトを適応した場合にのみ、素材単位でフルレンジのRGB変換(必要に応じて伸長)されてLUTやエフェクトを適応されるようです。

TV放送規格 = ビデオレンジ

放送規格内であることを確認する作業(ブロードキャストセーフティ)は、HD放送規格のBT.709やUHD放送規格のBT.2020のデータレベルが、合法なレベル(ビデオレベル)から出していないかを確認することです。そのためビデオレンジはリーガルレベル(合法的なレベル)とも呼ばれたりします。

僕はテレビのお仕事をしていないので詳しく知りませんが、ビデオレンジからはみ出しているデータレベルをリーガルの範囲に戻すためにハードウェアにビデオ信号を送って、リーガルレベルの外のデータをリーガルにリマップして書き出すツールもあるそうです。アメリカでの有名どころはハリスと呼ばれるリーガライザーです。どちらにせよ個人が持つような機材の価格帯では無いと思うので、ある程度TVに卓越したポストプロダクションの会社が購入するようなツールになると思います。

実際に放送用データのDI作業を自宅のPCでするとは思えませんが、ある程度のところまでグレーディングがリーガルレベルに収まるように管理することが出来る方法はあります。

  1. 波形モニターを使ってリーガルレベルを確認しながら作業
  2. OUTPUT 1D LUTに簡易リーガライザーを作成(別途記事にします)
  3. Sat vs Satを使ってハイライトやシャドウの部分の彩度を落とす

などです。


参照:ブロードキャストセーフティを確保する工程アドバイス

色域を超えた彩度の色があるかどうか(Out of gamutとも言います)、ということもブロードキャストセーフティの工程に含まれます。そのためにベクトルスコープを使って彩度の最大値を調整する作業もDaVinci Resolveですることが出来ます。


備考:左上の部分(オレンジから赤にかけての部分)が放送規格を超えた彩度の部分

書き出しの際のデータレベルはどれを選べば良いのか?

基本的に「自動」で大丈夫

DaVinci Resolveはタイムラインのグレーディングを全て32bit浮動小数点数のRGBフルレンジで行います。そして書き出しの際にコーデックに従ってYUVかRGBデータとしてエンコーディングされます。その際にコーデックに応じたデータレベルへ再度リマッピングを行います。そのため基本は「自動」で大丈夫なはずです。


備考:データレベルの設定は、デリバーページのレンダー設定の中のAvanced Settingsの中に含まれています。

またビデオレンジかフルレンジかという質問は、最終的に書き出したデータの用途によって決まります。データの行き先によって求められているものは大抵決まっていると思いますので、それに応じるだけで良いということです。

WEB配信の動画データはほぼ全てビデオレンジになるためリマッピングが行われます。VFXソフトウェアとデータを共有するためにOpenEXRなどを書き出す場合、映画をDPXで書き出す場合、アーカイブとしてApple Prores4444やDNxHR444で書き出したい場合は、データレベルをフルにすることでRGB4:4:4でのを書き出しになります。

参考リンク

この記事を書くにあたって参考にさせていただいたサイトをまとめてご紹介します。

Blackmagic DaVinci Resolve 14 Manual
http://documents.blackmagicdesign.com/DaVinciResolve/20170907-f39416/DaVinci_Resolve_14_Reference_Manual.pdf

有名どころ企業 - Light Illusion
https://www.lightillusion.com/data_tv_levels.html

有名どころ企業 - Pomfort
https://kb.pomfort.com/livegrade/hd-sdi_devices/legal-and-extended-sdi-signals-and-luts-in-livegrade/

フォーラム
http://www.liftgammagain.com/forum/index.php?threads/data-levels-to-video-levels-in-premiere-pro.7324/
https://forum.blackmagicdesign.com/viewtopic.php?f=2&t=23705
https://forum.blackmagicdesign.com/viewtopic.php?f=21&t=49408

個人サイト
http://shootdatapost.com/blog/2012/8/1/arri-alexa-legal-vs-extended.html
http://www.camerakun.info/tec_spwhite.html
http://www.hingsberg.com/2014/10/video-data-levels-demystified/

チュートリアルサイト
https://mixinglight.com/color-tutorial/legalizing-video-davinci-resolve/

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