元プロダクトデザイナーが解説。Blenderでリアルな造形を作るには?〜タブレット編〜【第1回】モデリング

2022.11.02 (最終更新日: 2022.11.23)


 

はじめに

こんにちは。
新大阪にある株式会社Indie-us Gamesで3DCGアーティストをしている岸田 保です。

以前はプロダクトデザイナーとして活動していたこともあり、メカなどのハードサーフェースモデリングを得意としています。

さて、今回はBlender(3DCG)の初心者向けに、シンプルなタブレット端末をモチーフに、全3回にわたって一連の制作過程を解説していこうと思います。

▲ 作例の完成イメージ

プロダクトデザインの観点からリアリティを込めるテクニックをできるだけシンプルかつ、わかりやすく解説するつもりなので、ぜひ皆さんの制作に役立ててください!

記事の構成としては全3回を予定しています。

第1回 モデリング
 タブレットの形状をモデリングしていく手順を解説します。
第2回 質感設定
 タブレットを構成する金属やガラスなどの質感を設定する手順を解説します。
第3回 ライティング&レンダリング
 シンプルな室内(背景)を作成した上で、フォトリアルなルックに仕上げる手順を解説します。

この講座で使用するBlenderのバージョンは9月1日の時点で最新版の3.2.2を使用しています。

基本操作に不安がある人は先にVookの過去の記事を読んでおいてください。

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本体の直方体を作る

Blenderを起動し、[ファイル>新規>全般]メニューを選びます(スプラッシュ画面から[新規ファイル>全般]でもかまいません)。

すでに立方体カメラライトの3つが3Dビューポートに作られています。これらを全部選んで削除します。操作はビューポート上にカーソルを持っていきAキー(全て選択)→Xキー(削除)です。

今回作るタブレットのサイズです。
・横:24cm(0.24m)
・縦:16cm(0.16m)
・厚さ:0.6cm(0.006m)

手順としては横:24cm(0.24m)、縦:16cm(0.16m)の平面を作り、その後に0.6cm(0.006m)の厚みを付けます。

まず縦横の平面が作りやすいようにパースをOFFにするためにテンキーの「5」を押します。

テンキーがない場合は、画面右上の[透視/平行投影]のアイコンをクリックして、平行投影に切り替えます。

次に真上からの視点で操作しますのでテンキーの「7」を押して視点を変更します。

テンキーがない場合は右上の3つの軸が交差している表示のブルーの「Z」クリックします。

[追加>メッシュ>平面]メニューを選びます。

すると、正方形の平面が追加されます。

デフォルトでは一辺が2mになっていますので、まずタブレットの高さの0.16m(16cm)にします。

数値での設定の方は画面の左下に現れるオペレーターパネルから設定します。閉じている場合はクリックして開いてサイズの欄に0.16と入力してください。

オペレーターパネルは視点移動の操作などをすると消えてしまいますが、「F9」キー[編集>最後の操作を調整]メニューから再表示することができます。

これで元になる平面ができました。

タブレットのような左右対称のものは片側だけ編集すれば、もう片側を自動的に編集してくれるミラー(対称化)モディファイアを使うと便利です。

モディファイアとは、PhotoshopレイヤースタイルIllustratorアピアランスに当たるもので、様々な効果を非破壊で付加する機能です。

対称化をするときに標準アドオンのAuto Mirrorを使ってミラーモディファイアを追加しましょう。

Auto Mirrorは対称化するときに余分なメッシュを自動で削除する機能があり、とても便利な標準アドオンです。

Auto Mirrorを有効にしていない場合は、[編集>プリファレンス]メニューを選び、「アドオン」タブ「mirror」を検索して、Auto Mirrorアドオンにチェックを入れ有効にします。

サイドバーが表示されていない場合は「N」キーを押してサイドバーを表示してください。

縦に並んでいるタブから「編集」タブを選び「Auto Mirror」を開きます。

先に作った平面を選択した状態でX軸がONになっているのを確認してから、「Auto Mirror」ボタンをクリックします。

そうするとミラーモディファイアが追加されます。

確認するには右側プロパティのパネルの「スパナ」のアイコンをクリックして、「モディファイアプロパティ」パネルをアクティブにします。

これで右側(X軸のプラス側)を編集したときに反対側も同時に編集されます。

現在は横・縦どちらも16cm(0.16m)になっているので、次は横幅を合わせていきましょう。

タブレットの横幅は24cm(0.24m)なので、左右に4cm(0.04m)ずつ広げればピッタリのサイズになります。

ミラーモディファイアを設定したので右側だけ移動します。

では、平面を選択した状態でメニューあるいは「Tab」キーから「編集モード」に入ります。

「辺選択」モード右端の辺を選択します。

「G」キー→「X」キー→「0.04」と入力します。すると、X軸のプラス方向に0.04m移動します。

ミラーモディファイアをかけてあるので同時に反対側の辺も移動します。

これでタブレットのベースとなる平面ができました。

次に厚み0.6cm(0.006m)を付けていきます。

視点を斜め上からに変えて「A」キーを押して全部の辺を選択します。ミラーモディファイアがかかっているのでX軸のプラス側だけ選択されます(画像では右側)。

次に、ツールバーの「押し出し」アイコンを選択します。

そうすると選択されているところに「+」の表示がでますので、これを上方向(Z軸のプラス方向)に適当に押し上げます

左下のオペレーターパネル「Z」に正確な数値の「0.006」を入力します。

最初はツールバーのアイコンから操作した方がわかりやすいですが、慣れてくるとこの一連の操作をA(全選択)→E(押し出し)→「0.006」で実行できるようになります。

いったん「オブジェクトモード」に戻りサイズの確認をしてみましょう。

作成した立方体を選択した状態でサイドバーの「アイテム」タブを開き「寸法」を確認します。

画像のようにX:0.24mY:0.16mZ:0.006mになっていれば大丈夫です。

角にベベルを取る

次に四隅の角半径1cm(0.01m)のベベルを作ります。

芸術やデザインの世界では、「神は細部に宿る。(God is in the details.)」という言葉が知られています。

ディテールの造形では、ベベルを丁寧に施すことが重要です。

それでは作業を進めていきましょう。再度「編集モード」に入り「辺選択モード」角の2つの辺を選択します。

複数の頂点、辺、面を選択するにはIllustratorと同様にshiftキーを使います。

次にツールバーの「ベベル」を選択して、少しだけ引っ張ります

引っ張ることで選択した辺の部分にベベルが作成されます。細かい設定は左下のオペレーターパネルで行います。

「幅:0.01m」「セグメント:16」と入力します。

「ctrl+B」ベベルのショートカットになっています。
次にベベルを作るときに使ってみましょう。

上面のエッジ部分にC面(セグメントが1のベベル)を作ります。

ツールバーの一番上の「ボックス選択」を選びます。

「alt」キーを押しながら、上面のエッジをどれかひとつをクリックします。長い辺がクリックしやすいでしょう。

そうすると繋がっている辺をループ選択することができます。

次に「ctrl+B」でベベルを取りましょう。

「ctrl+B」を押してカーソルを移動します(この時マウスのボタンを押す必要はありません。マウスを移動するだけです)。

そうするとベベルを作ることができます。このときセグメントの数は先ほどの「16」になっていて細かすぎるので、マウスホイールを回してセグメント数を「1」にします。

セグメント数の変更はオペレーターパネルからでもできますので、マウスホイールをどちらに回していいのかが分からない場合そちらから設定しましょう。

オペレーターパネル「幅:0.0005m」「セグメント:1」と、入力します。

0.0005m0.5mmになります。かなり小さいC面ですが、C面やベベルがない角(ピン角)はケガをする恐れがあるので、工業製品では細部にこういった処理を施します。

次に同様の手順で底面のエッジ幅が2mm(0.002m)セグメント数が4ベベルを作りましょう。

まず、「alt」キーを押しながら、底面のエッジをクリックします。

「ctrl+B」を押してカーソルを移動します。

オペレーターパネル「幅:0.002m」「セグメント:4」と入力します。

スムーズシェードを設定する

「オブジェクトモード」に戻りましょう。

この状態で角の部分を良く観察するとエッジが立ってカクカクしています。

オブジェクトを選択した状態で「右クリック」してメニューを表示して、「スムーズシェード」を選択します。

そうすると全体にスムーズがかかりますが、今度はエッジが立って欲しいところまでスムーズがかかりヌルッとしています

そこで、右側の「オブジェクトデータプロパティ」パネル「ノーマル」「自動スムーズ」チェックを入れます。

これは、チェックの横の数字は面と面の外角がこの数字以下の場合にスムーズがかかるという設定です。

C面と接する面の外角は45度ですので、スムーズがかからずエッジが立つわけです。

最後にオブジェクトの名前をアウトライナーで「Body」に変更しておきましょう。

液晶画面のガラスを作る

先ほど作成した本体のメッシュを複製して液晶画面のガラスを作成します。

「オブジェクトモード」「Body」を選択します。次に「shift+D」キーを押し、続いて「Enter」キーを押します。これで、同じ場所に「Body.001」という名前のオブジェクトが複製されました。

先に名前を「Glass」に変更しておきましょう。

また、同じ場所に「Body」があると作業がしにくいので「Glass」だけ表示しましょう。

アウトライナー「Body」の方の目のアイコンで非表示にしてください。

この後の作業で「面を差し込む」という作業をするのですが、この時にミラーモディファイアがかかっていると作業がしにくいので先に適用します。

「モディファイアプロパティ」パネルミラーモディファイアのメニューから「適用」を選択してください。これでミラーモディファイアが適用(固定)されました。

この状態で「編集モード」に入り選択モードを「面選択モード」に切り替えます。

上面の左右の大きな面を両方選択します。

次に「面を差し込む」アイコンを選択して、黄色の円の線部分から中心に向かってドラッグします。ドラッグは適当な距離でかまいません。この後オペレーターパネルから正確な数字を入力します。

オペレーターパネル「幅:0.007m」と入力し7mmほど内側に押し込みます

「面を差し込む」ショートカット「I」キーなので、慣れてくるとIキー→「0.007」を使う方が早いでしょう。

選択されている押し込んだ面だけが必要ですので、それ以外の面は削除します。

「ctrl+I」で選択を反転します。「X」キーのメニューから「面」を選択削除します。

残っている2つの面に厚みを付けて液晶画面を作りましょう。

今回はツールバーの「押し出しを」使わずにショートカットで作ってみます

2つの面を選択「E」キー→「0.0005」と入力し0.5mmの厚みを付け、本体部分と少しだけ段差を設けます。

このままでもいいのですが、もうひと手間かけましょう。

上面のエッジ部分に0.2mmの細いC面を取ります。こういった細い面取りのことを「糸面取り」といいます。

これを入れることでレンダリングをしたときにハイライトが入り、リアリティーが上がります

現在、上面の面部分が選択されている状態なので、[選択 >ループ選択>境界ループを選択]メニューを選びます。

そうすると自動的に「 辺選択モード」に切り替わり、選択していた面の境界部分のエッジが選択されます。

この状態で「ctrl+B」でベベルを取ります。
オペレーターパネル「幅:0.0002m」「セグメント:1」を設定します。

C面が取れたら「オブジェクトモード」に戻り、本体のオブジェクトを表示して確認しておきましょう。

電源ボタンを作る

最後に図のような形状の電源ボタンを作ります。

サイズ3×15×3mmくらいになります。

ボディは平面から作り始めましたが、ボタンは立方体から作っていきましょう。

[追加>メッシュ>立方体]メニューを選び、オペレーターパネル「サイズ:0.003m」を設定します。

すると、ワールド原点3mmの小さな立方体が挿入されます。

本体と重なっていてわかりにくいので、3Dビューポートの右上「透過表示」をONにします。

ボタンの位置を移動するときには真上から見た方がわかりやすいので、テンキーの「7」を押します。

「編集モード」に切り替えて、「A」キーで全選択「G」キーを押して本体の右上の方に移動させます。

今度はテンキーの「3」を押して真横からの視点に切り替えて、高さ方向を調節します。

「G」キー側面の垂直に立ち上がった平面部分に移動します。
もう透過表示は必要ないのでOFFにします。

ボタンを長細くします。
「S」キー→「Y」キーY方向に拡大します。大体長さは15mmくらいでいいでしょう。

編集がしやすいようにボタンだけを表示しましょう。

「/」キーを押します。

すると、「ローカルビュー」になり、選択していたオブジェクトのみ表示されます。編集したいオブジェクトに集中できるので便利な機能です。元の表示の「グローバルビュー」に戻すには、再度「/」キーを押します。

次にベベルを取って米俵型にしましょう。

一度にベベルを付けるので、図にある4つの辺を「辺選択モード」で選択します(画像では、わかりやすくするために透過表示にしてあります)。

「ctrl+B」でとりあえずベベルを取り、「オペレーターパネル」「幅:0.0012m」「セグメント:4」に設定します。

次にボタンを押す面のエッジ部分にC面を取ります。
「alt+クリック」エッジ部分をループ選択します。

「ctrl+B」でとりあえずベベルを取り、「オペレーターパネル」「幅:0.0003m」「セグメント:1」に設定します。

元の表示の「グローバルビュー」に戻りましょう。「/」キーを押します。

もし、ボタンの位置を調整するのであればで「A」キーでボタン全体を選択し、「G」キーで移動して調整をします。

このとき「G」キーの後に軸方向の「X」「Y」「Z」キーを押すとその方向にだけ移動できます。

調整が終われば「オブジェクトモード」に戻ります。
ボタンを選択した状態で、右クリックしてメニューを出し「スムーズシェード」を選びます。

続いて、右側の「オブジェクトデータプロパティ」パネル「ノーマル」「自動スムーズ」にチェックを入れ「30°」にします。

最後に右上の「アウトライナー」で名前を「Button」に変更しておきましょう。



これでモデリングは完成です。

「ファイル>名前を付けて保存」メニューから、保存しておきましょう。

いかがでしたか?

次回(第2回)は、タブレットの各部ごとに、マテリアルやシェーダを使いながら質感を設定していきます。

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岸田保@

3DCGアーティスト。プロダクトデザインをしていたので、ハードサーフェースものが得意です。ZBrushCentralのTop Rowを10回。ZBrush2021βテスト参加。

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