【インハウスのはじめ方】やりたいことありきで映像制作を学べたことで、社内全体で動画制作スキルが向上。|NTTコムウェア

近年、映像制作をインハウス(社内)で行う企業が増えている。
その背景にあるのは、映像制作のテクノロジーや機材の進化による低価格化と、インターネットの発展による動画コンテンツの視聴が定着したことだろう。

そうした映像制作ニーズの高まりを受けるかたちで2021年11月に開校したのが、Vookスクール「ビデオグラファーコース」である。

本稿では、同コースの法人プランの第1号となった、NTTコムウェア株式会社(以下、NTTコムウェア)にて、社内向けの動画配信や映像コンテンツ制作に取り組んでいる谷脇洋文氏と橋本卓実氏の両氏に、Vookスクール「ビデオグラファーコース」受講にいたった経緯・動機から、受講した感想、そして受講前と後での変化(成果)について話を聞いた。

インハウスによる映像制作を検討している方々、導入済みの方々の参考になれば幸いである。

▲ 右から、橋本卓実氏、谷脇洋文氏(以上、NTTコムウェア)。両氏のインストラクターを務めた伊藤洸一(Vookスクール マネージャー)

動画配信を皮切りに、映像制作全般にチャレンジする

谷脇氏と橋本氏が所属するNTTコムウェア 技術企画部では、主にシステム開発の基盤技術とそのノウハウを社内に提供しており、両氏はそれらのプロモーション業務を手がけている。

従来は展示会、オフラインのセミナー等、リアルで対面するかたちのプロモーションに重きを置いていたため、ウェビナーなどのオンラインによる企画はほぼなかったという。

だが、コロナ禍の到来によってリアルに集うことが難しくなったことから、動画配信を導入することになったそうだ。

その後、社内でコラボレーション(コミュニケーション)ツールが導入され、動画配信が可能な環境が整ったことから、谷脇氏は個人的に映像制作を学んでみることにした。そうした取り組みのひとつがVookスクールへの問合せだったと、谷脇氏はふり返る。

NTTコムウェア 谷脇洋文氏(以下、谷脇):
学生の頃に業務用ビデオカメラを使っていて、少し経験があったので、まずは自分でやってみようと。UdemyでAfter EffectsやPremiere Proの講座を受けてみました。

個人的に学ぶ分には有意義だったのですが、仕事としてプロ仕様の機材を使い、さらには組織的に運用していく術を学びたかったため、内容にギャップを感じました。

そこで、より本格的に学べる手段を調べていたところVookスクールを知り、1日体験入学に参加したのです。

ただ、このときは授業料の支払い方法は請求書払いに対応していなかったり、スクールが利用できるのも平日は夕方以降だけだったため、企業向け研修として同僚と一緒に学ぶのはハードルが高いとも思いました。

谷脇:
そこで、ダメ元で「法人契約はできませんか?」と問い合わせたところ、すぐに柔軟に対応しますと、お返事をいただいたのです。

一方、会社の取り組みでは、会議室をスタジオ化し、オンラインセミナーの配信を始めました。

ですが、われわれとしては配信だけでなく、PR動画などの映像コンテンツも制作していく必要があると考えていました。

具体的にはPremiere Proによるカット編集や、After Effectsを使ったアニメーションやエフェクト技法なども身につけたかった。

そうした想いをVookスクールさんは丁寧にヒアリングしてくださり、われわれ向けに独自のカリキュラムを提案してくれました。

おかげで上司に相談したときも「ぜひ行きなさい」と、すぐに承認を得ることができました。

会社勤めの身としては、オンラインとオフラインのハイブリッドで学べることもVookスクールの魅力でした。

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法人ごとにカスタマイズされたカリキュラム。一番大事なのは「目線を合わせること」

法人プランの場合は、まず面談を重ねてカリキュラムを決めていくという。

NTTコムウェアの場合は当初、配信に関する学習をメインにする方向で考えたそうだが、先述のとおり映像制作についても学びたいことがわかった。

また、Vookスクールでは「講師」「生徒」という主従の関係ではなく、ゴールとその先を見据えて互いに目線をしっかり合わせて進めていくことを大切にしていると、Vookスクールでマネージャーを務める伊藤洸一は語る。

Vookスクール マネージャー 伊藤洸一(以下、伊藤):
こちらとしては良い映像を作れるようになっていただきたいと考えているのですが、それ以上にスクールを卒業(カリキュラムを修了)された後のことにも配慮しておくことが重要だと考えています。

この点が曖昧だと、映像制作の作業内容があまりにも多岐にわたるため「(学んだことは)自分自身と会社にとって、何の意味があったのか不明確」といった事態に陥りかねません。

スタート当初は、どの要素をどれぐらいの広さと深度でレクチャーすべきか、よく考える必要があります。

今回NTTコムウェアさんの講習は全8回で組ませていただいたのですが、最初の2回を通して方針を定めました。

▲ 谷脇氏と橋本氏の意向をふまえて、伊藤が最終的に組んだ全8回のカリキュラム

伊藤:
初回はVookスクールではなく、こちらがお伺いして、どういった機材を使われているのか等を確認させていただきつつ、映像制作に関する基礎的な座学と、映像を撮るときの姿勢などの講義を行いました。

▲ 座学に用いられたスライドの例

伊藤:
その後は、Vookスクールに来校していただき、一般的なプロの配信現場で使われている機材をご覧になってもらいながら、それらの必要性を学んでいただきながら、カリキュラムを決めていきました。

配信後のアーカイブ動画の編集(コンテンツ化)もインハウスで行う可能性が非常に高いとのことだったので、「配信」をゴール設定にするのではなく、「映像制作+配信」という内容にしました。

映像制作にも触れていただくことで、結果的に配信クオリティーを高めることもできます。

もちろん、配信についてもまだわからないところがあるということでしたので、そうした悩みも解消できるようにしました。

NTTコムウェア 橋本卓実氏(以下、橋本):
配信と編集スキルを身につけたいとは思っていたものの、それを実現するにはどう取り組めばいいのか当初はイメージがありませんでした。

ですが、実際の設備やプロの撮影現場を見学させていただくことで、谷脇と「自分たちが目指している姿って、こういうのだよね」といった話ができるようになり、「(理想を実現するためには)次に何が必要なのか」といったことも話せるようにもなりました。

谷脇:
毎回、われわれの課題感を吸い上げていただき、「そういうことなら、次回はこういう内容にしましょうか」とか、「ちょうどいいタイミングで、実際に撮影を行うので見学されますか?」などと、提案していただけたのがありがたかったです。

プロの現場を見学する機会を設けていただけたことで、学ぶべきことを具体化することができました。

周りの人を巻き込むことで良いながれが生まれた

実はVookスクールのカリキュラムを修了後もしばらくは、様々なトラブルに見舞われたという。

本番で音が出ない、マクロの組み方や機材の設定など……決められたカリキュラムをこなしていくだけでは、実際に業務として取り組む上では足りないものに気づけなかったと、谷脇氏。

谷脇:
やはり実際にやってみないと気づけないことがありますね(苦笑)

スキルや体制など、毎回の配信後に課題を吸い上げて、解決していきました。最近は安定していますし、ライブ配信を月1〜2回行いつつ、収録はほぼ毎週行うまで頻度を増やせるようになりました。

回数を重ねていくにつれて、「どうやって配信しているの?」とか、「こちらで動画を撮れると聞きました」などと人伝いに広まっていき、少しずつ配信だけでなく、動画制作に関する社内からの問合せが増えていきました。

配信スタジオを見学に来た方からネタを提供してもらい、出来上がった映像を見て、また新たな問い合せが舞い込む……世間的にも高まっている動画ニーズを先取りすることができました。

▲ 講習に用いられたスライドの例

谷脇:
収録した動画をどのように編集するかは、われわれが編集まで手がける場合もありますが、自分たちで行うチームもいます。

後者の場合は、お手伝いすることもありますが、その場合も最初に一連の手順を教えますが基本的には自分たちでやってもらうようにしています。
自分たちの経験からも実際にやってみないと気づかないことが多いので。

ほぼ全員が「やってみたら、意外と簡単じゃん」などと、動画を作れるようになりますね。

伊藤:
通常のVookスクールでは、卒業制作の課題が用意されています。

ですが、法人プランの場合は通常の業務でお忙しい方が大半なので、講習内で、企画・撮影をしていただき、編集以降の作業はカリキュラム終了後に取り組んでいただくスタイルを取っています。

講習の一環でデモンストレーションを行なった後、撮影本番では軽くフォローするだけで撮影も編集も率先して取り組まれていました。

おふたりともNTTコムウェアという日本を代表するシステムインテグレーターの方なので、映像技術についてはすぐに理解されますし、実技についてもコツをつかむのが本当に早かったです。

▲ 今回の講習内で谷脇氏と橋本氏が撮影、編集を行なったムービーのキャプチャ。撮るだけでなく、自分たちも被写体になることで撮られる立場の気持ちが理解できたという

キーワードは「ナチュラル」。演者が気持ちよく話せる演出と視聴者を巻き込む構成も重要だと気づいた。

講習をふり返って、伊藤氏がよく口にしていた「ナチュラル」という言葉が印象に残ったと、谷脇氏。

見映えが「ナチュラル」であることはもちろんだが、演者が「ナチュラル」にリラックスして話せるための雰囲気づくりも大事であると教わったことが心に響いたそうだ。

谷脇:
配信でも撮影でも、カメラを前にすると緊張してしまい何回も台詞を間違えてしまうことも多いです。

そんなときは、「何回でも撮り直して大丈夫ですから。編集もこんなに簡単にできるんですよ。ちょっと、やってみましょうか?」などと言いながら、その場で編集してみるとリラックスしてもらえますね。

いわゆる「編集点をつくる(後で編集しやすいようにするため、意識して間を取る)」的なことを伝えながら、カメラの前でも自然体で振る舞ってもらえるようにすることを心がけています。

あとは、音や光。

撮影では、とりあえず光を当てれば大丈夫だろうと思っていたところ、伊藤さんがセッティングされた照明で撮った映像を見て「この立体感は何だ!」とショックを受けました。

カメラ(撮ること)ばかり意識してしまっていたわけですが、良い映像をつくるには空間を演出することが大事なんだと実感しました。

橋本:
私が講習で一番印象に残っているのは、構成の大中小というもの。

編集のテンポなど、どうすれば視聴者を惹き込めるのかという映像の見せ方です。

普段から当たり前にテレビを見ているので感覚的にはわかっていたはずですが、教えてもらえたことで自覚できました。


▲ NTTコムウェア向けカリキュラムに用いられた映像編集に関するスライドの例。各シーンが複数のカットで構成されていることが、視覚的にもわかりやすく解説されている

卒業後もアフターサポートがあると嬉しい

谷脇氏は現在、2022年8月に開校した「モーショングラフィックスコース」の入校を検討しているそうだ(※2022年8月取材時点)。

静止したスライドが続くと、見る側がマンネリを感じてしまうので、映像が華やかになるモーショングラフィックスに魅力を感じたのだという。

▲ Vook school モーショングラフィックスコース説明動画

最後にビデオグラファーズコースを終えたおふたりへ、Vookへの要望と今後の展開について話を聞いた。

谷脇:
撮影、編集、モーショングラフィックスなどは、今まさに必要なスキルですが、次はおそらくVRなどですよね。

Vookさんでも、VRなどのXRコンテンツにも注目されていると思うのですが、これまでの映像制作や動画配信とはまた別の技術基盤が求められるはずなので、われわれも遅れないようにしなければと、思っています。

その意味では、法人プランでも卒業生同士で交流ができるようなしくみがあると、お互いに切磋琢磨しながら成長し続けられると思います。

橋本:
2ヶ月間というのは、思ったよりも短かったですね。

今回は基礎的なところをひと通り学ばせてもらえましたが、卒業後もトラブルに直面したときに相談にのってもらえるサービスがあると、嬉しいですね。ぜひ検討していただけると(笑)

TEXT_石﨑あす加 / Asuka Ishizaki
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(Vook編集部)
Special thanks to Vook School

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