こんにちは。
新大阪にあるIndie-us Gamesで3DCGアーティストをしている岸田 保です。
Blender(3DCG)の初心者向けに、シンプルなタブレット端末をモチーフに、全3回にわたって一連の制作過程を解説していきます。
第1回(下記リンク)にて、タブレットのモデリングまで終了しました。続く今回は、マテリアルを設定して、さらにリアルに仕上げていきましょう。
元プロダクトデザイナーが解説。Blenderでリアルな造形を作るには?〜タブレット編〜【第1回】モデリング
はじめに こんにちは。 新大阪にある株式会社Indie-us Gamesで3DCGアーティストをしている岸田 保です。 以前はプロダクトデザイナーとして活動していたこともあり、メカなどのハー...
意図した質感をマテリアルで設定する
今のままではプラモデルで例えると、パーツを単に組み上げただけで全部同じ色になっている状態です(最近のプラモデルは最初からパーツにそれぞれの色がついていて、組み上げただけでも完成度が高い物もありますが……)。
これに塗装をして(お化粧をして)、仕上げていきます。
ます、第1回でモデリングした3つのパーツに対して、2種類のマテリアルを設定します。
<1>本体とボタン……少し光沢のある金属の質感
<2>液晶画面……真っ黒で光沢のある質感
そして最後に液晶画面に発光した画像を表示させます。
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本体とボタンのマテリアル設定
3Dビューポートの右上にある「シェーディング」切り替えボタンを見てください。
デフォルトでは左から2つ目の「ソリッドモード」になっています。
このモードにするとマテリアルは反映されず陰だけが付くので、形状がわかりやすくなります。
これを1つ右隣の「マテリアルプレビューモード」にしてください。
すると、タブレットが真っ白になりました。
これは、デフォルトのマテリアルには真っ白な質感が設定されているからです。
まず本体の「Body」を選択してください。
3Dビューポートから直接選択してもいいですし、アウトライナーから選択しても大丈夫です。
次に、「マテリアルプロパティ」パネルをアクティブにしてください。
マテリアルプロパティパネルの「新規」ボタンをクリックしてください。
すると、新しいマテリアルが作成されます。
その際、マテリアルの名前を「Metal」に変更してください。
このパネルでは、様々なマテリアルを作ることができます。
まずは、金属の質感を設定しましょう。デフォルトでは非金属の設定になっているので、「メタリック」を「1」にします。
そうすると金属の質感になりました。
この「メタリック」のパラメーターは、「0」で非金属、「1」で金属になります。
次に、少し光沢のある質感に変更します。
「粗さ」を「0.35」くらいにしてください。
この「粗さ」のパラメーターは粗さの度合いなので「0」で光沢、「1」で無光沢になります。
値が小さければ光沢が出てグロッシーになり、逆に値が大きければ光沢がなくなりマットになります。今回は少し光沢のある質感にしています。
また、この「粗さ」はコンクリートや水彩紙などの目に見える表面のザラザラの粗さではなく、目に見えない微少な凹凸の粗さのことを表しています。
最後に色を変更しましょう。
「ベースカラー」の色の付いた帯をクリックすると、カラーピッカーがポップアップするので、そこから色を選択してください。
色は何色でもOKです。
以上で、タブレット本体のマテリアルの設定は完了です。
次に電源ボタンも本体と同じマテリアルを設定しましょう。すでに「Metal」マテリアルは作成済みなので簡単です。
ボタンのパーツ「Button」を選択し、「マテリアルプロパティ」パネルから丸いアイコンをクリックしてマテリアルのリストを表示して「Metal」を選択します。
すると、ボタン部分に「Metal」のマテリアルが設定されます。
液晶画面のマテリアル設定
同様の手順で、今度は液晶画面に黒色で光沢のある質感を設定します。
液晶画面の「Glass」を選択し「マテリアルプロパティ」パネルから「新規」ボタンをクリックします。
マテリアルの名前を「Glass」に変更します。
本来、液晶画面の表面はガラスでできているので、透明にして裏面から画像を表示させるのが正しい作り方です。
ですが、今回はできるだけ簡単に仕上げるために、不透明な質感にして表面に画像を表示させます。
非金属なので「メタリック」はデフォルトの「0」のままで大丈夫です。
その上で「ベースカラー」をダークグレーにしてください。「V(明度)」は「0.01」くらいが適当でしょう。
次に「粗さ」を「0.05」くらいにして光沢のある質感にします。
平行投影のままだと映り込みの感じがわからないため、パース表示に切り替えます。
テンキーの「5」か、3Dビューポート右上の「透視/平行投影」のアイコンをクリックして、パース表示にしてください。
そうすると映り込みが入り光沢の感じがわかります。
液晶画面に画像を表示する
最後に、液晶画面に画像を表示させて仕上げましょう。
画像を表示する方法はいくつかありますが、今回は比較的わかりやすい方法で作ります。
考え方として、2枚のレイヤーを使って表現します。
1枚目が先ほど設定した「真っ黒で光沢のある質感」のレイヤー、2枚目がこれから設定する「画像」のレイヤーです。
使用する画像のサイズは「1,920×1,080 pixel」になります。こちらの画像をダウンロードしてください。
▲ もちろん別の画像でも大丈夫ですが、サイズは同じにしておいた方がやりやすいでしょう
液晶画面を選択して「モディファイアープロパティ」パネルから「モディファイアーを追加」ボタンをクリックして、「UV投影」モディファイアーを選択します。
「UV投影」モディファイアーは、指定したオブジェクトから画像をスライドプロジェクターのように投影してマッピングすることができます。
そのためのスライドプロジェクターに当たるオブジェクトを追加しましょう。
[追加>エンプティ>十字]メニューを選び、空(から)のエッジが3本交差したオブジェクトを追加します。
「エンプティ」は、その名の通りメッシュとしては空(から)なのですが位置、回転、スケールの情報を持つ座標点になります。
液晶画面に追加した「UV投影」モディファイアーにこのエンプティを登録します。
液晶画面を選択し「UV投影」モディファイアーのオブジェクトの入力欄の「四角」のアイコンをクリックし、リストの中から「Empty(エンプティ)」を選択します。
これで下準備が整いました。
次に、画面上段の「Shading」タブをアクティブにし、液晶画面を選択します。
すると下図のようなワークスペースの画面になります。
下段が「シェーダーエディター」になり、こちらで調整をしていきます。
「シェーダーエディター」には、ノードと呼ばれる様々な機能がカードになっているものが用意されており、それらを繋いだりパラメーターを調整したりして、見た目を仕上げていきます。
「シェーダーエディター」には2つのノードがあり、それが接続されています。
左側の「プリンシプルBSDF」ノードには先ほど液晶画面に設定した「ベースカラー」と「粗さ」のパラメーターがあり、その設定が右側の「マテリアル出力」ノードに繋がっておりマテリアルとして表現されます。
「シェーダーエディター」は「3Dビューポート」と同じ視点操作で拡大や平行移動ができます。
左側の「プリンシプルBSDF」ノードは「真っ黒で光沢のある質感」の1枚目のレイヤーになります。
それでは2枚目の「画像」にあたるレイヤーを設定していきましょう。
左側の「プリンシプルBSDF」ノードを選択して「shift+D」で複製し、少しずらしておきます。
これで2枚目のレイヤーにあたるノードができました。
1枚目のレイヤーにあたる左側のノードは、もうパラメーターは触らないので閉じて小さくしておきましょう。
ノードの最上段の画像の部分をクリックします。
そうすると小さくなります。見た目の形状も変わるので、わかりやすくなります。
複製した「プリンシプルBSDF」ノードは「マテリアル出力」ノードに繋がっていませんので接続します。
しかし「マテリアル出力」ノードの「サーフェス」ピンは1本しかありませんので、このままでは接続できません。
そこで[追加>シェーダー>シェーダーミックス]メニューで、ノードを追加します。
「シェーダーミックス」ノードは、2つのシェーダーを合成するノードです。
それではノードを繋ぎ直していきましょう。
追加した「シェーダーミックス」ノードの「シェーダー」ピンから「マテリアル出力」ノードの「サーフェス」ピンにドラッグ&ドロップで接続します。
接続を切るときは、接続先のピンから何もないところにドラッグ&ドロップします。
あるいは「ctrl+右ボタン」で線をまたぐようにドラッグすると、切断されます。
同様にして画像のようにピンを接続します。
「シェーダーミックス」ノードのピンの場所を間違えないようにしてください。
閉じている(丸い)「プリンシプルBSDF」ノードは上に、これから画像を設定していく「プリンシプルBSDF」は下のピンです。
それでは画像を追加していきましょう。
画像の追加には「画像テクスチャ」ノードが必要です。
[追加>テクスチャ>画像テクスチャ]メニューを選択します。
ノードを追加したら「カラー」ピンから、開いている2つ目の「プリンシプルBSDF」ノードの「ベースカラー」ピンに接続します。
「開く」ボタンをクリックして、画像ファイルを選択します。
画像を開くとノードの名前がファイル名に変わります。
「リピート」を「クリップ」に変更します。これは画像を繰り返しパターンにするのか、1枚だけにするのかの設定です。
この状態で上段の「3Dビューポート」を見てみましょう。
今まで液晶画面は真っ黒でしたが、うっすらと画像が見えるようになりました。
これは「真っ黒で光沢のある質感」のレイヤーと「画像」のレイヤーを「シェーダーミックス」ノードの「係数」が「0.5」なので半分半分で合成しているからです。
次に、画像が液晶画面に対して大きく投影されているので、ショートカットキーで均等に縮小しましょう。
「3Dビューポート」で「Empty(エンプティ)」を選択します。
「S→0.056」と入力して5.6%に縮小してください。そうすると画像が縮小されます。
よく見ると、画像が正方形になっています。そこで、横方向(X軸方向)だけ調整します。
サイドバーが表示されていない場合はNキーを押してサイドバーを表示してください。
縦に並んでいるタブから「アイテム」タブを選び「トランスフォーム」を開きます。
「スケール」で「X」軸の値を「0.1」に設定します。すると、フルHDの正しいプロポーションになります。
投影している画像のサイズやプロポーションは「Empty(エンプティ)」の「スケール」で調整します。
サンプル画像「1,920×1,080 pixel」以外の画像を投影される場合は、こちらの「スケール」の「X」と「Y」の値で調整してください。
これで画像のサイズとプロポーションが正しく表示されましたが、現状では画像が半透明で合成されています。
液晶画面を選択し「画像テクスチャ」ノードの「アルファ」ピンから「シェーダーミックス」ノードの「係数」ピンに接続します。
そうすると画像の部分だけマスクで切り取られてハッキリとします。Photoshopにおけるレイヤーマスクを作成したことになります。
画像を発光させる
これで液晶画面に画像を表示することができました。
次に画像を発光させてみましょう。
3Dビューポートの右上にある「シェーディング」切り替えボタンを「レンダープレビューモード」にしてください。
「レンダープレビューモード」は光源などを反映した表示になりますが、まだライトを設置していないので薄暗くなっています。
それで液晶画面の画像も暗く表示されていますので、バックライトで光ったようにしましょう。
「シェーダーエディター」で「画像テクスチャ」ノードの「カラー」ピンから、「プリンシプルBSDF」ノードの「放射」ピンに接続します。
これにより、画像部分が放射され発光します。
「放射」ピンの下の「放射の強さ」を「1.3」くらいにして少し強くしておきましょう。
続いて、画像が少し眠たいのでノードを使って彩度とコントラストを上げてみましょう。
まずは彩度からです。[追加>カラー>色相/彩度]メニューで、「HSV(色相/彩度/輝度)」ノードを追加します。
その上で下図のように「HSV(色相/彩度/輝度)」ノードを「画像テクスチャ」ノードと「プリンシプルBSDF」ノードの間に繋ぎ直して、「彩度」を「1.2」くらいに設定します。
次にコントラストを上げます。[追加>カラー>RGBカーブ]メニューで「RGBカーブ」ノードを追加します。
先ほどと同様に、下図のように「RGBカーブ」ノードを「画像テクスチャ」ノードと「HSV(色相/彩度/輝度)」ノードの間に接続して、カーブを「S字」にしてコントラストを上げます。
この辺の調整は、Photoshopのトーンカーブと同じです。
これで画像がハッキリとした調子になりました。
以上で、マテリアルの設定は完了です。
画面上段の「Layout」タブに戻り全体を確認して、保存しておきましょう。
次回(第3回)は、シンプルな室内(背景)を作成した上で、フォトリアルなルックに仕上げる手順を解説します。
第1回は、下記リンクからご覧ください。
元プロダクトデザイナーが解説。Blenderでリアルな造形を作るには?〜タブレット編〜【第1回】モデリング
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