発売から様々なファームアップデートを行ってきたNikon Z 9がついに2度目のメジャーファームウェアVer.3.00へのアップデートを公開した。
このファームウェアアップデートでは様々な機能が搭載され、AFの性能アップなど、静止画と動画両方共に魅力的な内容になっている。ユーザーの声をしっかりと反映させているファームウェアアップデートと言えるだろう。
筆者は先行してファームウェアVer.3.00のβ版でのテスト撮影を行ったので、今回は動画のファームウェアアップデートに関して内容と魅力を紹介したいと思う。
まず、新機能から紹介しよう。
動画の新機能としては大きく分けると3つの機能が搭載されている。「ハイレゾズーム」と「タイムコード同期機能」「高周波フリッカー低減機能」だ。
ハイレゾズーム
まず、ハイレゾズームに関して紹介しよう。
ハイレゾズームは筆者が欲しかった機能の1つで最大で2倍ズーミングが可能だ。4Kで撮影記録する場合は、8Kで撮影しながらクロップする為、一般的なデジタルズームのようなズーム中の解像度低下は起こらない。パワーズームレンズでなくても、手動ズームではできないようなカクツキのない滑らかなズームができるのもポイントだ。
クロップ機能を使うためZ 50mm f1.2 Sなどの明るい単焦点レンズを使用しても、最大2倍の100mm画角のf1.2でのパワーズーム表現のような撮影が可能になるのだ。ズーム速度は「高速」「中速」「低速」の3段階から選択でき用途に合わせることができる。
ズーム操作はマルチセレクターの左右ボタンでズーム操作ができる。その他にも使い易いようにFnボタンやレンズFnリング、レンズのコントロールリングをハイレゾズームに割り当てることも可能だ。
筆者は全て試してみたが、オススメはFn1とFn2をハイレゾズームに割り当てる設定。撮影中も無理のないホールド感で撮影ができたので便利だった。ちなみにコントロールリングをハイレゾズームに割り当てた場合は光学ズームのように任意の速度でズーミングと、使い分けができるので便利だ。
ハイレゾズームは全ての設定で使えるわけではないので、ハイレゾズームができる条件を紹介しておこう。
・動画モードはFX(フルサイズ)のみの対応となり
RAW動画設定時でハイレゾズームは使用できない。
・フレームレートは画像サイズによって変わり、
4Kの場合は30Pまで対応、FHDでは120Pまで対応可能だ。
・電子手ブレ補正もオフになるので注意しよう。
・ハイレゾズーム使用中はAFエリアモードの設定は
ワイドエリアAF(L)になる。
・またハイレゾズームを使用しない際は
OFF設定にしていた方が若干解像は良さそうだ。
ハイレゾズームは実際に使用してみて本当に便利だと感じた。
即日納品などの仕事でもズーミング素材を撮影できるのでウエディングやインタビュー、報道、ドキュメンタリー、ライブ配信など使用用途は多いだろう。また、ズームレンズでも、明るい単焦点レンズでもズーミングできるので光の限られる夜のシーンや被写界深度の浅い撮影シーンでもとても便利だ。
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タイムコード同期機能
次にタイムコード同期機能について紹介しよう。筆者はZ 9を3台運用しているが、やはりマルチカムで大変なのが素材の同期だ。
音とフレームを目視で合わせて編集しているが、正直時間が少し掛かってしまう。しかし、今回のファームウェアアップデートではタイムコード関連の機能が新たに追加・大幅にアップしている。
タイムコードの同期機能は2つあるので紹介していこう。
1つ目はニコン製リモコンによるタイムコードのリセット機能だ。ワイヤレスリモートコントローラーWR-R11aとWR-T10を使うと複数のカメラを同時に録画できるが、今回各カメラにWR-R11aを装着し、WR-T10を使うと同時にタイムコードをリセットできる。
そして、この状態で、ペアリングしたWR-T10のシャッターボタンを押すと全てのタイムコードをリセットできるのだ。
それにより同じタイムコードで撮影することができるという訳だ。
撮影した素材は編集ソフトで簡単に同期できるのでとても便利だ。
この機能によりマルチカム撮影でのワークフローが飛躍的によくなった印象だ。
UltraSync BLUEに対応
タイムコードの同期機能の2つ目は、ミラーレスカメラで初めてUltraSync BLUEに対応した点だ。
UltraSync BLUEはBluetooth経由で様々な対応機器とタイムコードを同期できるアクセサリー機器で、今回のファームアップで、Z 9ともタイムコード同期ができるのだ。UltraSync BLUE対応の製品は様々あり音声機器や映像機器とZ 9のタイムコードを簡単に同期できるので表現の幅とワークフローが飛躍的によくなる。また、配線不要で三脚やジンバルへのマウントへの制限がなく、撮影の自由度が高く、タイムコード同期用アクセサリーを複数購入する必要がなく低コストだ。
さらに、ATOMOS AirGlu™対応製品(UltraSync ONEなど)と接続すれば、デバイスと有線接続、最大2台までの接続対応になり、様々な機材とも同期可能になる。
今回はZ 9とフィールドレコーダー ZOOM F3のタイムコードをUltraSync BLUEを使い同期した。
タイムコードはUltraSync BLUEから接続されたZ 9やデバイスにワイヤレスで転送される。
接続は簡単でZ 9はネットワークメニューからATOMOS AirGlu BT設定からUltraSync BLUEを接続する。
そして、ZOOM F3に別売りのBluetoothアダプターBTA-1を装着してUltraSync BLUEと接続した。そうすることでUltraSync BLUEを中心に全ての機器のタイムコードが同期した。
今回はフィールドレコーダーと高性能ガンマイクをカメラから離した位置に置いて音声を収録し、カメラは望遠レンズを付けて遠くから撮影したがタイムコードはしっかりと同期しており編集時に瞬時に音声ファイルと映像がズレることなく同期できた。UltraSync BLUEはワイヤレスで繋がる為ジンバル撮影などでも使え、とても便利だと感じた。
高周波フリッカー低減機能
新機能3つ目は高周波フリッカー低減機能の追加だ。静止画撮影モードでは以前のファームウェアVer.2.10のアップデートで搭載されていたが、今回動画撮影モードにも高周波フリッカー低減機能が追加された。近年、光源が様々あり予期せぬフリッカーが発生してしまうことが多い。水銀灯やLED、電光掲示板など全てが1/50秒や1/60秒で解決できないのが現実だ。
今回水族館でテストしてみたが、4K 60Pで撮影していたこともあり1/100秒で撮影した際、フリッカーが発生したが、今回追加された機能では、最小1/96段刻みでシャッタースピード設定が可能になので、高周波フリッカー低減機能を活用して細かくシャッター速度を調整することで、フリッカーを低減することができた。また、「フリッカー低減」をしている場合のAF低輝度性能も向上しておりピント精度も上がっているようだ。
作例は水族館で撮影したサンプルを用意した。
4K 60Pで撮影してシャッター速度を1/100秒にするとフリッカーが起こってしまった。
1/108.4秒にすると改善していることが分かるだろう。
AFの精度が向上
次に現性能からさらに、AFの精度が向上している点も見ていこう。特に低輝度、低コントラスト、背景張り付きに対し、さらにAF性能の改善がされている。
動画撮影にとってAFの性能はととても重要で精度がより上がっていることは非常にありがたい。実際にファームウェアアップデート前でも精度は高かったが、今回のファームウェアアップデートでは、AF精度の向上はとても感じられた。AFに関しては静止画も動画でも改善している。これまで苦手とされていた斜めパターンや低コントラスト、低周波パターン、微細パターンなどのシーンでも、より合いやすくなっている。
また、ピントが背景にヌケて張り付いて戻ってこないことが今まであったが、背景にヌケにくくなり張り付きも改善され精度がグッとよくなっている印象だ。少し暗めのシーンや逆光でコントラストが低いシーンなどでもかなり精度高くピントが合い、迷いにくくなっていることが実感できた。さらに、動体検出のアルゴリズムを搭載しており動きのある動物・動体に対するAF追従性を向上している。
今後もまだまだ性能アップが期待できそうだ。
物理フォーマット搭載
最後に、動画撮影には欠かせない物理フォーマットを新しく搭載している点にも触れておきたい。
動画撮影のように大容量のデータを何度も書いたり、消したりしている場合、Z 9で使用するCFexpressメモリーカードの内部が過去データで汚れてしまう。そこで、フラッシュメモリーのコントローラーの掃除(ガベージコレクション)が行われる。そうするとカードの速度低下を招いてしまうことが起きやすいのだ。そこで、撮影前に物理フォーマットを行うことで全てのデータが完全に消去され、ガベージコレクションによる速度低下が発生しにくくなるので安心だ。また、メモリーカードを破棄したり譲渡したりする場合にも、記録データが完全に消去されるようになるのでプロとして、データ漏洩などの心配もなくなり、さらに安心できるようになった。
まとめ
今回のNikon Z 9のファームウェアアップデート Ver. 3.00でも様々な機能がアップしたり、追加されていることが分かっただろう。今回2回目のメジャーファームアップにより、正直、「Z 9 II」と言っていいほど機能・性能が進化し、良くなっている。ユーザーの声の多くを反映していることも今回のファームウェアアップデートから感じることもでき、今後も追加ファームアップで性能アップしていく期待感がある。。
前回の Z 9メジャーファームアップVer.2.00の記事はコチラ
最強カメラに進化!8.3K 60p RAW対応 Nikon Z 9ファームVer.2.00 最速解説
はじめに 2022年4月20日予定で、Nikon Z 9用のファームウェア Ver.2.00が公開になる。 このメジャーアップによりNikon Z 9はさらに進化を遂げ、最強のカメラになること間...
注文してから数か月かかったZ 9は、生産体制が上がったのか徐々に在庫も入っているようなので、、今からの予約でも年内に手に入るかもしれない。これから本格的に動画撮影に使いたい方から、業務で複数台のマルチカム撮影をされる方にも是非使ってほしいカメラだ。また、すでにZ 9を使っている方は是非ファームウェアをVer.3.00にファームアップをしていただきたい。
■Z 9 ファームウェアVer.3.00はコチラから
https://downloadcenter.nikonimglib.com/ja/products/589/Z_9.html
■Z 9 MOVIEスペシャルサイト
https://www.nikon-image.com/sp/movie/z9/
■ワイヤレスリモートコントローラー WR-R11a/T10セット製品ページ
https://www.nikon-image.com/products/accessory/remote/wr-r11a_t10/
■Z 9 ニコンダイレクト限定キャンペーン中
https://shop.nikon-image.com/campaign/z9/index.html?cid=JDCNS201865
■UltraSync BLUE 製品ページ
https://www.wirelesstimecode.com/ultrasync-blue
■ZOOM F3 製品ページ
https://zoomcorp.com/ja/jp/field-recorders/field-recorders/f3/
学べる連載記事「ミラーレスカメラのトリセツ」にて、Z 9の動画設定や、RAW撮影についても解説!
動画撮影の基礎知識から実践的内容までテーマ別に紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
https://vook.vc/list/36
KOJI_UEDA@KOJI_UEDA
米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。ライフワークとして世界中の街や風景を撮影。ドローン撮影や特機での撮影も...
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