“縦型動画の代名詞”を決めるアワード。勝敗を分けたのは、”納得感”のある企画力!|- Nikon Presents - Vertical Movie Award 2022 グランプリ『Develop』

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スマホの登場で、定着しつつある縦型動画。
SNSではVlog的な投稿がコンテンツの多くを占めるが、作品性の高い映像も着実に増えている。

そんな時代を見越して昨年から開催されているのが、ニコンが主宰する縦型動画のアワード「- Nikon presents - Vertical Movie Award (以下、NVMA)」だ。

2022年2月27日に受賞作品が発表され、記念すべき第1回となった「NVMA2022」のグランプリに輝いたのは、森下 大監督の『Develop』。

義足の女性が写真を通して新しい人生の一歩を踏み出す姿を描いた本作は、この時代を生きる多くの人々に勇気を与える作品となっている。

今回は、『Develop』を完成させるまでの森下監督の思考の過程を追っていく。


『Develop』
Dir:森下 大(特殊映材社)、Cast:今西柊子、Producer:伊藤俊介(特殊映材社)、DP:佐藤雅樹(SWITCH)、PM:武井 瑞穂、St:SHIKI、HM:金子愛里

“縦型動画”という新しい挑戦

──審査員の満場一致でグランプリに決定した『Develop』、おめでとうございます。受賞されての感想は?

『Develop』監督・森下 大(以下、森下):
あそこまで褒められると思っていませんでした。素直に嬉しいです。

賞金もいただけたので、これで次回作が撮れるという喜びもあります。

「なぜ、この企画なのか。なぜ、この演出なのか。」といった、納得感を大事にして作りました。

なので、審査委員を務められたshuntaroさんの「途中から『あっ、そういうことか』ってわかって、自分の中での納得感がすごくあった」というコメントは嬉しかったです。ねらいがしっかりと伝わったんだな、と。

▲ 『Develop』の監督を務めた、森下 大(もりした まさる)氏。本職では、特殊映材社に所属するディレクターとして、主に広告案件を手がけている

──まさに縦型の画角ならではの演出でしたね。実際に撮ってみて「縦型」はどうでしたか?

森下:
縦型……難しくて(苦笑)
「縦の映像における納得感って、何だろう?」的なところから着想したんですが、その正解を知ってる人って、まだ少ないはず。僕も模索中です。

通常の(横型の)映像フォーマットに慣れている身としては、正直使いにくいんですよね。縦であるがゆえに見たいものが見えなかったり、切り取り方が難しい……。じゃあ、もうそれを企画にするしかないな、って考えていきました。

それに映像の質感や綺麗さで勝負するのも、今の時代難しいとも感じていました。

情緒的に気持ちは良いんですけど、納得感を込めるなら別の要素が必要だと思っています。

しかもビデオグラファーのみなさん、めちゃくちゃ上手いじゃないですか。

海外まで見渡すと、ライティングやグレーディング技術、CGとのなじみ方のクオリティにしてもかなわないな〜って、思う。

じゃあ、このアワードで自分が戦えるところ、って言ったらやっぱり"企画"しかなかった。

『Develop』では、あえて(カメラワークを)ヘタウマな見せ方をしているのですが、光学機器のメーカーであるニコンが主催するアワードで、果たしてそれが受け容れられるのか、正直、挑戦でした。

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納得感のある企画力を支える、PM(プロダクションマネージャー)の経験

──その企画についてですが、NVMA2022への応募を決めてから、「縦型動画」というお題に向けてアイデアを練っていったのですか?

森下:
撮りたいものは常に何本もストックしているのですが、そのひとつとNVMA2022のテーマ「新しい挑戦」がつながりました。

以前に、今西柊子(いまにし とうこ)さんのあるインタビュー記事を読んだときから興味を持っていました。

写真が趣味の女の子がいて、物語が進むにつれて義足であることがわかってくる……的な、ラフなアイデアの段階だったのですが、「こんな企画を考えています。出演していただけませんか?」と、SNSで直接連絡を取ったことをきっかけに動き出しました。

──その行動力、見習いたいです。

森下:
僕は、気になる人がいたらすぐに連絡をするようにしています。

今、脚本の勉強をしているのですが、作家の榎本憲男さんに直接連絡を取って、個人指導していただいています。

まだまだ怒られてばかりですけど(苦笑)、将来長編に挑戦したいと思っているのでコツコツと筋トレのごとく精進しています。

▲ 森下氏が自身の考えをまとめるために作成したメモのひとつ

──物語が進むにつれて、縦型動画を上手く活かして種明かしされる演出ですが、どのように構成を考えていったのでしょう?

森下:
先ほどもふれましたが、縦型動画って難しいなってところから始まっていて、ヒントになったのが、Tokyo Darkroom(※作中に登場する暗室のロケ地でもある)の瀬戸正人さんがふと言われた「縦って、のぞき心をくすぐるよね」という言葉。

これがメチャクチャ刺さりました。そこから父親の視点という設定にたどり着きました。

この設定にすることで、低予算での撮影による多少のブレなども演出として活かせることになりました。

──点と点がつながりながら、物語に集約されていくようですね。

森下:
メタっぽい話になりますが、僕は広告(CM制作会社)出身ということもあって、大枠から考えるようにしているんです。

NVMAはニコン主催のアワードなので、企画や演出の、落としどころはニコンでありたい。

──それが写真や暗室という設定につながったのですね。

森下:
写真を撮って現像するシーンで使っているのは、ニコンF3のフィルムのカメラ。そして昔ながらのカメラ(F3)を撮影しているのは、現在のミラーレス一眼のNikon Z6Ⅱです。

──なるほど! そういった作品の枠を超えたところまで練られているんですね。

▲ 撮影に使用したカメラ機材は、Nikon Z6Ⅱ。レンズはニコンZマウントで、Nikon NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S、マウントアダプターFTZを装着して使うNikon oldレンズのNikon Ai Nikkor 24mm、Ai Nikkor  35mm、Ai Nikkor  50mm、Ai Nikkor  85mm、Ai Nikkor  105mm、Ai Nikkor  135mmが用いられた

森下:
縦型のアイデアを考える時って、どうしてもビジュアルから入りがちだと思うのですが、企画からアプローチしていくことが大事だと思います。

僕はもともとCM制作会社で、プロダクションマネージャー(PM)をしていました。

PMって、映像制作の全工程を見られるポジションです。

一流のプロフェッショナルに囲まれて企画から納品までに携わっていると、映像制作の最上流が、”企画”であり、土台になるアイデアの部分であることに気づかされました。

そこをしっかりと練ることによって作品の強度が増していく。その経験が活きているんだと思います。

▲ 今西柊子さんに提示された、企画コンテより。「縦型動画」や「ニコンが主催するアワード」といったキーワードが、しっかりと作品に反映されている

──ほかにも作品や企画をブラッシュアップするための工夫があれば教えてください。

森下:
オフライン編集の段階でいろんな人に観てもらい、意見をもらうようにしています。

フィードバックの基準は、こちらが意図した物語が伝わっているかどうか。

本作の場合、当初は動画内にテキスト(スーパー)を載せていませんでした。

ところが、テキストなしの状態では企画意図が伝わりにくいことがわかりました。

そこでテキストを載せたのですが、説明的になるのは避けたかったので、落としどころとして、父親が撮った娘の写真のタイトルのようなコピーにまとめるという演出にしました。

そのさじ加減が難しかったです。観てもらっては修正してをくり返しました。

──実際の撮影ですが、縦で撮ったのですか? それとも通常の横画角で撮影したものを編集でトリミングされたのでしょうか?

森下:
全カットを縦で撮りました。

撮影では、“生感”を大事にしました。

撮影は当社の佐藤雅樹に担当してもらいました。

父親が撮っています、という雰囲気を出すために、あえてフォーカスを合わせる前から回したり、ファミリームービーの質感で、臨場感を出していく。古典的ですけど、リハーサルからカメラを回して今西さんの自然な感じを捉える工夫などもしましたね。

▲ 現場スタッフはカメラマン、カメラアシスタント、制作、ヘアメイク、スタイリストと、監督の森下さんという合計6名。制作期間は、企画に約2ヶ月。撮影期間は2日間、ポスプロに約1週間を費やしたという

映像作家にとって、アワードの意義とは?

──映像作家として、受賞の前後でキャリアにおける変化はありましたか?

森下:
誤解を恐れずに言うと、この業界(広告系の映像業界)って、賞の実績がないと戦えないところが正直あるんですよ。

実際に、企画の段階で競合(コンペ)になったとき、NVMA2022グランプリを受賞してからは企画が通りやすくなりました。

まだまだですが、仕事量も徐々に右肩上がりです。

この賞をいただいて、監督としてやっとスタートラインに立てたと実感しています。

今後は大規模なプロジェクトを手がけていきたいと思っているので、自分のリールをつくるという意味でも、引き続き国内外の様々なアワードに挑戦していきたいです。

森下:
NVMAはまだ若いアワードですが、縦型動画の答えを模索しながらみんなで作っていけるところが魅力だと思います。

そしてアワードであれば、何でもいいわけでもありません。

小さなアワードを含めると、アワード自体の数はそれなりにありますが、NVMAのようにしっかりと賞金が用意されていて、さらにカメラ機材などの副賞もあるアワードとなると、なかなか存在しないと思います。

▲ 手にするのは、NVMA2022グランプリの副賞「Nikon Z 9+Z 24-70mm f/2.8S」

森下:お金が全てじゃありませんが、健全な環境とは、資金があり、なおかつやりがいもある状況だと思います。どちらもないと、継続することが難しい。

そうした意味でもNVMAの優勝賞金50万円というのは、本気を感じます。しっかりとしたアワードだな、というのが第一印象でした。

実は、個人的にはLINE NEWS VISOIN賞をねらっていました。

この賞を獲得すると、LINE NEWS VISIONで新シリーズ映像の制作権利と、その制作費のサポートを受けられるというものでしたが、商業作品の実績をつくりたいクリエイターにとってはすごく魅力的だと思います。

受賞することで次回作の機会が提供されるというのは、モチベーションが上がります。

──ところで森下さんのアイデアの源は、どこからやってくるのでしょう?

森下:
面白そうな人がいたら、直接会いに行くようにしています。

ネットで情報を漁るよりも会って話をすることが、一番情報が更新されますから。

あとは僕、海外の短編映画をめちゃくちゃ観ます。

言葉がわからない外国作品もたくさんありますが、母国語ではない人が観ても感覚的に共有できてるようにつくられているし、表現と企画に一貫性があって納得感がハンパない作品が多いんです。

例えば、『THE VAN』という作品は、トラックの荷台で格闘技をする短編。試合に出場しているのは難民で、3回勝ったら国から出るための資金が提供されるという設定。

その画角が1:1のアスペクト比なんですけど、それがトラックの荷台のサイズと同じ! 何となくのアスペクト比じゃないんです。

もちろんストーリーもすごく良い。サンダンス映画祭ロカルノ国際映画祭で上映されるような短編は傑作ばかりです。

グランプリ受賞クリエイターが語る、縦型動画の可能性とは?

──今後も縦型動画に挑戦していきますか?

森下:
チャレンジしたいですね。

縦型という表現は、まだまだ可能性があると感じています。未知なる表現がいっぱいあるはず。

例えばホラー。スマホで観る縦型って没入感があるから、何かがどこかから覗いてる………そんな話も考えられますよね。

もしくは事件をこっそり撮影してるような、ドキドキ感を盛り込んだ企画とかも面白そう。これからオリジナルの表現がどんどん生まれてくるはずです。

▲ 『Develop』では、CMの現場で培った経験と、短編映画への情熱から、森下さん流のハイブリッド映像コンテンツを目指した

──最後に「NVMA2023」に応募しようと思われているクリエイターさんへ、アドバイスをお願いします。

森下:
僕ごときが言うのもおこがましいですが、表現から入るのではなく、企画から考えてみることをオススメします。

横長の画角を3本重ねた縦型動画もある。一遍ごと時間軸がずれて物語が進行し、最後にそれらが繋がるしかけだったり……。

縦の構図である根拠がしっかりと込められた企画を突き詰めていくことで、オリジナリティの高い作品が生まれるんじゃないかと思います。

──大きなヒントになりそうです。ありがとうございました!

"縦型動画の代名詞"となる作品をめざせ!「-Nikon Presents- Vertical Movie Award 2023」応募受付中!

詳細は、特設サイトをご覧ください。

TEXT_山本加奈 / Kana Yamamoto(NEWREEL)
PHOTO_加藤雄太 / Yuta Kato

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