こんにちは。
新大阪にあるIndie-us Gamesで3DCGアーティストをしている岸田 保です。
Blender(3DCG)の初心者向けに、シンプルなタブレット端末をモチーフに、全3回にわたって一連の制作過程を解説していきます。
前回はマテリアルを設定しました。今回が最終回で無料の家具などのアセットを配置してレンダリングをしていきます。
元プロダクトデザイナーが解説。Blenderでリアルな造形を作るには?〜タブレット編〜【第1回】モデリング
元プロダクトデザイナーが解説。Blenderでリアルな造形を作るには?〜タブレット編〜【第2回】質感設定
背景に家具と水差しを配置する
家具や小物をモデリングするのは大変なので、ここでは無料のアセットのモデルを利用しましょう。
下記のサイトにアクセスしてください。
こちらのサイトは商用利用可能な3Dモデルやテクスチャがダウンロードできます。
右下のModelesを選択してください。
次に検索欄に「table」と入力してテーブルを検索しWooden Table 01の画像をクリックします。
右上の欄のBlenderマークを確認し、隣の[Download]ボタンをクリックしてデータをダウンロードします。
同様に「jug」で検索しJug01のデータもダウンロードしてください。
ダウンロードした2つの圧縮データを展開(解凍)して、タブレットのBlenderデータが入っている同じ場所にフォルダーごと置いてください。
展開したフォルダーの中にはBlenderのデータと「textures」フォルダーがあり、このフォルダーの中にアセットで使用されているテクスチャの画像データが含まれています。
フォルダーの場所が変わると参照切れになり正しくテクスチャが表示されなくなりますので、タブレットのBlenderデータが入っているフォルダーに置いてください。
さて、準備が整いましたのでダウンロードしたアセットをタブレットに持ってきます。
IllustratorやPhotoshopではコピー&ペーストで持ってきますがBlenderの場合は[アペンド]という機能を使います。
タブレットのBlenderデータを開きます。
作業がしやすいようにワークスペースは[Layout]にして、3Dビューは[マテリアルプレビュー]モードにします。またパースはOFFにして「平行投影」にしておきましょう。
次に[ファイル→アペンド…]メニューを選びます。
まずはテーブルから読み込みますので展開した「WoodenTable_01_4k.blend」フォルダーを開きます。
フォルダーの中の「WoodenTable_01_4k.blend」というファイルをダブルクリックします。[アペンド]ボタンはまだ押しません。
そうするとBlenderファイルの中のデータを見ることができますので「Object」フォルダーをダブルクリックして開きます。
フォルダーの中には「WoodenTable_01」というオブジェクトがありますので、こちらを選んで[アペンド]ボタンをクリックします。
そうすると3Dビューポートにテーブルが読み込まれます。
テーブルの位置を調整しましょう。
今回はタブレットは動かさずに、追加したテーブルの方を動かします。
まずテンキーの「1」を押して真正面からの視点に変えます。
テーブルを選んだ状態で「G→Z」キーで、テーブルの天面がタブレットの底に触れるくらいに下げます。
斜め上からの視点にします。
このままですとタブレットの方向とテーブルの木目の方向が同じになりますのでテーブルを少し回転させましょう。
「R→Z→20」と入力してZ軸に20度回転します。20度は大体の目安ですので見た目で決めてもらっても大丈夫です。
同様にして水差しも読み込んで、タブレットの横にレイアウトします。
テーブルと水差しの細かい位置調整はカメラアングルを決めてからしますので、大体で大丈夫です。
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カメラアングルを決める
1回目のモデリングの時にデフォルトのカメラは削除していますので、まずは[追加→カメラ]メニューで新しいカメラを追加します。
カメラアングルは3Dビューで大体のアングルを決めてから、微調整をカメラからの視点で確認しながら行いましょう。
まずテンキーの「5」を押して、平行投影からパースに切り替えます。
3Dビューとカメラの画角が同じになるようにそれぞれの焦点距離を100mmに設定しましょう。
今回の場合、焦点距離は少し長めに設定してパースがあまりつかないようにします。
まず3Dビューの焦点距離を設定します。サイドバーの[ビュー]のタブをアクティブにして、[ビュー]を開き「焦点距離:100mm」に設定します。
次にカメラを選択した状態で、プロパティパネルの[オブジェクトデータプロパティ]の[レンズ]を開き、こちらも「焦点距離:100mm」に設定します。
3Dビューの操作で下記の画像くらいのアングルに調整します。後で微調整をしますので大体で大丈夫です。
次に「Ctrl + Alt + テンキー0」を押します。あるいは[ビュー→視点を揃える→現在の視点にカメラを合わせる]メニューを選びます。
そうすると下の画像のように3Dビューの視点位置にカメラが移動しカメラからの視点になります。
モチーフがズレていても構いません。後で調整します。
レンダリングされる範囲は通常の明るさになっており、またレンダリング外は薄くグレーがかかったようになります。
レンダリング範囲が小さいと確認しにくいので通常の3Dビューの操作で範囲を拡大表示します。
中ボタンマウスで視点の角度を変えると、カメラビューから3Dビューに自動的に切り替わりますので、そういうときはテンキー「0」を押してください。カメラビューに切り替わります。
もう一度押すと、3Dビューに切り替えることができます。
ここからカメラアングルの微調整をしていきます。
サイドバーの[ビューのロック]から[カメラをビューに]をONにしてください。これでレンダリング範囲は固定で、3Dビューの操作のまま調整することができます。
この状態で3Dビューの操作を使ってフレーム内にレイアウトしていきます。
タブレットが下の画像くらいになるようにフレームの中に収めます。
これでもいいのですが水差しを微調整しましょう。
「G」キー(移動)と「X」キーや「Y」キーを使って位置を調整し、また「S」キー(拡大縮小)でサイズを少し小さくし、「R」キー(回転)と「Z」キーで絵柄がもっと見えるように回転します。
厳密に下の画像のようにする必要はありませんので大体で結構です。
ライトを配置する
カメラアングルが決まったので、次はライトをセッティングします。
タブレットの液晶画面が光って目立っていますので、今回はシンプルなエリアライトを1灯だけにします。
セッティングしやすいようにテンキー「0」を押して3Dビューにします。また、同じくテンキー「5」を押してパースをOFFにして平行投影にします。
そうすると下の画像のようにカメラの表示が机を突き抜けたようになっていると思います。特にこれでも問題はないのですが、見た目が感覚に合わないのでカメラの表示を小さくしましょう。
カメラを選択した状態で「S」キーを押して、縮小します。表示が縮小されただけなので焦点距離や画角が変わることはありません。
それでは[追加→ライト→エリア]メニューからエリアライトを追加します。
そうすると原点位置にエリアライトが追加されますので、少し後ろ側からタブレットに当たるように位置と角度を調整します。
位置の調整は「G」キー、角度の調整は「R」キーを使います。テンキー「3」を押して真横からのアングルで操作するとやりやすいでしょう。
ライトのオブジェクトプロパティパネルを見てると「パワー:10W」、「シェイプ:正方形」、「サイズ:1m」になっています。
このパネルでは光源の強さを「パワー」で、範囲を「サイズ」で、形状を「シェイプ」で調整することができます。
レンダリングをしてみて調整が必要な場合に変更すればいいでしょう。今回はデフォルトのままでいきます。
「シェイプ」には正方形、長方形、ディスク(円形)、楕円がありますので目的によって変更できます。
レンダリングをする
それではレンダリングをしていきます。
まずテンキー「0」でカメラビューに戻ります。3Dビューは[レンダープレビュー]モードにします。これでレンダリングした状態で確認できます。
次に[レンダープロパティ]パネルからレンダーエンジンを[Cycles]に変更します。
BlenderにはEeveeとCyclesという主に2種類のレンダリング手法があります。
Eeveeの特徴はレンダリングの速さです。さまざまな計算を簡略化しつつ綺麗な表現を実現しています。CGをリアルタイムにレンダリングする必要があるときに使われます。
Cyclesはパストレーシングという映像系で使用されることが多いレンダリング方法です。描画に時間がかかるもののより丁寧でかつ正確な描写を行うことができます。
次に「ビューポート」と「レンダー」の「最大サンプル数」をそれぞれ「64」と「256」に変更しておきます。
デフォルトでは「ビューポート」が「1024」、「レンダー」が「4096」となっており若干高めですので、ご使用の環境によってはレンダリングに時間がかかることがあるためです。
このサンプル数が多いほどレンダリングの品質が上がりますが、その分時間がかかります。
また[レンダー]の[デノイズ]をONにしてきます。この設定でレンダリングしたときに出るノイズを軽減してくれます。
ビューポート上である程度確認できるようになったので、ライトの位置や強さ、液晶画面の発光の強さなどの微調整をしてもらっても構いません。
[出力プロパティ]パネルで出力サイズやファイルフォーマットを変更することができます。とりあえずデフォルトのままでいいでしょう。
ではレンダリングをしましょう。
[レンダー→画像をレンダリング]メニューを選びます。
そうすると[レンダー]ウィンドウが開きレンダリングが開始されます。
最初は荒いですが徐々にきれいになっていきます。
画面下のプログレスバーが「100%」になると自動的にプログレスバーが消えますのでレンダリングが完了したことが分かります。
完了したら[画像→保存]メニューからレンダリングした画像を保存します。
完成したレンダリング。
通常は1回のレンダリングで終わる事は無くモチーフの配置やカメラのアングル、照明の位置や強さ、サンプル数などの調整をして何度もレンダリングを繰り返して作り込んでいきます。
このあたりは実際のブツ撮りの写真撮影と同じです。
これで3回続いた記事は終了です。皆さんも今回作成したものをベースにモチーフやライトを追加したりして、自分なりのイメージを作成していってください。
ありがとうございました。
岸田保@
3DCGアーティスト。プロダクトデザインをしていたので、ハードサーフェースものが得意です。ZBrushCentralのTop Rowを10回。ZBrush2021βテスト参加。
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