OBS Projectにより開発運営されている無料のライブ配信・録画ソフトウェア「OBS Studio」のVer29.0.0(ベータ版)が公開された。
公開場所はソースコード管理サービスの「GitHub」で、以下のURLからダウンロードが可能。
<OBS Studio 29.0 Beta1>
https://github.com/obsproject/obs-studio/releases
ダウンロード並びにインストールが完了すると、現在インストールされているOBSのバージョンも自動的にアップデートされる。
なお、最新バージョンにバグがあるなどの理由で以前のバージョンへ戻したい場合は、同ページ内で以前のバージョンをダウンロードするとダウングレードが可能。
今回公開されたベータ版では、「音程・声量を均一化する音声フィルタの追加」「最新エンコーダの対応領域拡大」などが実装されており、配信者に嬉しい大型アップデートとなっている。
本番環境への反映はまだ先となるが、以下にアップデートの概要を記載する。
なお、本日紹介している内容は以下の動画でも確認できる。
OBS Studio Ver29.0.0 変更点
AV1エンコーダの使用域拡大や新規音声フィルタなどが追加されたOBS Studio Ver29.0.0。
まずはOBS側が「Features」としている、大きな特徴について解説する。
プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。
PR:Vook School
AV1エンコーダの新規対応
高性能なエンコーダ「AV1」の対応機種が拡大した。
AV1エンコーダは従来のエンコーダと比較して、同一ビットレートであっても映像を滑らかに表示することができる機能性の高いエンコーダだ。
具体的には、AMD AV1 EncoderをRDNA3 GPUを保有するデバイスに新規追加、Intel AV1 EncoderをArc GPUを保有するデバイスに新規追加した。
これにより、上記のデバイスを使用している配信者にとっては大きく配信画質が向上することになるだろう。
音声フィルタ「3-band equalizer」「upward compresor」の追加
これまでOBSでは音声フィルタに乏しく、性能の良いフィルタを追加したい場合は「VSTプラグイン」と呼ばれる外部からインストールした音声フィルタを新規追加するという手順で行われてきた。
今回のアップデートでは、2つの便利な音声フィルタが追加された。
3-band equalizer
「イコライザー」とは、高音や低音を均等にするもの。実際のUIは以下の通り。
High/Middle/Lowに分かれたパラメータで構成されており、「High」のデシベル数を大きくすると高音が聞こえやすくなり、Lowのデシベル数を大きくすると低音が聞こえやすくなる。
調整方法は使用する音域によって異なるが、基本的にはHighを6.0~8.0、Middleは調節せず、Lowを4.0~6.0で調整すると良いだろう。
upward compressor
OBSに「コンプレッサー」という音声フィルタは従前から存在していた。コンプレッサーは「閾値を超える音量が出たときに、その音を小さくする」というものであったが、今回の「アップワードコンプレッサー」は機能が異なる。
アップワードコンプレッサーは、「特定の音声ソースの音量を引き上げ、かつ引き上げた音量が閾値を超えないようにする」という2つの機能を持ち合わせている。
各項目の説明は以下の通り。
・比率:フィルタをかけたソースの音量をどのくらい大きくするか。初期設定では「0.5:1」つまり「2倍にする」という状態。比率を小さくすればするほど、音量は大きくなる。
・閾(しきい)値:フィルタをかけたソースの音量の最大値。どれだけ比率を小さくしても、実際の音量は閾値を超えないように調整される。
・アタックタイム:フィルタが適応されるまでの時間。
・リリースタイム:フィルタ適応が解除されるまでの時間。
・ゲイン:全体の音量を底上げする。
OBS Studio Ver29.0.0 その他のアップデート
Ver 29.0.0では、これらの他にも様々なアップデートがされている。
リプレイバッファの改善
指定した時間を過去に遡って録画することが可能な機能「リプレイバッファ」。
従来はリプレイバッファの駆動メモリは8GBが限界であったが、PC内部のRAMに合わせて限界値が「RAMの75%」まで拡大された。
これにより、例えば16GBのRAMを保有するデバイスでは、12GBを使用したリプレイバッファの処理が可能となった。
ブラウザドックの改善
指定のURLを入力することで好きなWEBページを表示できる機能「カスタムブラウザドック」。
このブラウザドックを右クリックすると、「ミュート」「Inspect」という2つの選択肢が追加されている。
ブラウザドックで追加したページは音声出力が可能なため、事故を防ぐ目的で音声のミュートが追加されている。
また、Inspectを押すとページ情報が表示されるよう仕様追加された。
NVIDIAのプリセット変更
NVIDIAのエンコーダを使用している場合、出力設定で変更できる「プリセット」の値がP6からP5に変更になっている。
プリセットは数字が小さくなればなるほど配信画質が荒くなり、配信は来る苦なるという性質を持ち合わせているので、今回のプリセット変更によって配信者は「前よりも少し画質が荒くなったかな?」と感じる可能性もある。
MacOSのアップデート
一部のMacOSにおいては、HEVCエンコーダが新たに追加。
また「ScreenCaptureKit」と呼ばれる画面キャプチャソースはバグ多いため削除された。
仮想カメラバグの解消
ZoomやGoogle Meetなどで使用可能な仮想カメラであるが、全てのビデオ通話アプリへ対応しているわけではない。
今回のアップデートでは、これまで使用不可であった「Webex」「Go To Meet」への仮想カメラ連携が可能になった。
細かい点で言えばその他にも様々なアップデートやバグ修正がされているが、詳しくはリリースを参考にしたい。
再掲となるが、本日紹介している内容は以下の動画でも確認できる。
OBS Studioとは?
有志の開発団体である「OBS Procject」によって開発・保守されているオープンソースのフリーソフトウェア。
大きく「ライブ配信機能」と「録画機能」の2つを有しており、
誰でも無料で簡単にライブ配信に画像やテロップ、BGMや動画などの差し込みが可能。
YouTubeやTwitchをはじめとした様々なライブ配信プラットフォームで利用が可能で、多くの配信者に最も便利な配信ソフトウェアとして認知され、世界中で利用されている。
OBS Projectの公式HPはこちら。
<OBS Project Official HP>
https://obsproject.com/ja
また、OBS Projectが公式運営している問い合わせ窓口はこちら。
<OBS Project Official Discord>
https://discord.com/invite/obsproject
Discordでは、質疑応答に加えてデベロッパーたちの様々な会話が繰り広げられている。
ユーザーからの要望にいち早く対応し、有志でアップデートを続けているOBS Studio。
Ver 29.0の本番リリースに向けて、明るい未来が広がっていそうだ。
ひとみマン@OBSスクール学長@
無料のライブ配信ソフト「OBS」のプロ。日本初のOBS専門スクール「On Air」学長。OBSの使い方がわからない、質の高いライブ配信を行いたいという方はYouTubeチャンネルをご覧ください。ライブ配信代行やOBSに関する質問、セミナー登壇などのご相談はTw...
コメントする