2022年1月にYouTubeにアップされた1本のコスプレ動画に、たくさんの称賛の声が集まっています。
『APEX LEGENDS』のキャラクターの動画を制作したのは、福岡県のダイニングバーから生まれたコスプレ動画チャンネル「SOLOMON STUDIO」。
SOLOMON STUDIOのメンバーは2022年8月に東京・幕張で開催した「RAGE Apex Legends 2022 Summer」で、公式コスプレイヤーとして参加し来場者から注目を浴びた。
二次元をリアルの世界で忠実に再現したコスプレと、質の高い映像の組み合わせは、いよいよコスプレ動画時代の到来を予感させます。
今回は、SOLOMON STUDIOの中心メンバーである、「オクタン」でお馴染みのきょへさん「ジブラルタル」でお馴染みの大佐さん、のお二人に、コスプレを動画作品にする難しさや、こだわりを伺いました。
- コスプレイヤー きょへ
コスプレ動画チャンネル「SOLOMON STUDIO」の運営・編集を担当。APEXコスプレではオクタン役で人気を集める。2022年8月に東京・幕張で行われた「RAGE Apex Legends 2022 Summer」にて、公式コスプレイヤーとして「オクタン」で参加。「オクタン」の他にも、人気FPS『VALORANT』の「チェンバー」などのコスプレも行う。
- コスプレイヤー大佐
「機動戦士ガンダム」をはじめとするサブカルチャー・コスプレが楽しめる、福岡のダイニングバー「ソロモン」の店長。得意分野はコスプレ衣装の造形。2022年8月に東京・幕張で行われた「RAGE Apex Legends 2022 Summer」にて、公式コスプレイヤーとして「ジブラルタル」で参加。「ジブラルタル」の他にも、人気ジャンプ漫画『僕のヒーローアカデミア』の「オールマイト」などのコスプレも行う。
- YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@solomonstudio4332
写真から動画へ、最大限のパフォーマンスが伝えられるようになる
Vook:「SOLOMON STUDIO」さんの活動を拝見している中で「コスプレ×動画」に大きな可能性を感じています。本日はよろしくお願いします!
きょへ・大佐:よろしくお願いします!
Vook:早速ですが「SOLOMON STUDIO」についてお聞かせください。
きょへ:「SOLOMON STUDIO」としてYouTubeを始めたのは、1年くらい前でしょうか。それより前は大佐が個人的にコスプレの動画をアップして登録者数900人ぐらいまで育てていたアカウントでした。
大佐:気がついたら、今の「SOLOMON STUDIO」のアカウントになっていましたね(笑) それからも動画は上げ続けていて、ありがたいことに2000人もの人に登録してもらっています。
きょへ:それまでにも僕たちは、6〜7年前からコスプレの活動をしていました。Vookさんがおっしゃるように「コスプレ×動画」に可能性があるからYouTubeに力を入れているというわけではなくて、純粋にコスプレが好きで、その中で「表現」の一貫として動画に力を入れている感じです。
Vook:個人的にはコスプレを動画の作品として見たのは初めてでしたので衝撃を受けました。まだまだ世の中の空気感として「コスプレ=写真」というイメージがあるかと思います。
きょへ:それでいうと、僕の中で動画を撮ることで、ファンの皆さんに最大限のパフォーマンスを届けられると思っています。コスプレって世界観も含めての作品なので、そういった作品ごとの雰囲気は写真よりも、動画の方が空気感も含めてたくさんのことを表現できると思っています。
Vook:そうして作られたのが、「APEX LEGENDS」のコスプレ動画だったのですね。
現時点で3.8万回も再生されている
大佐:たくさんの方に見ていただけて、本当にありがたいです。
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短期的に集中することで、熱中して作品を作ることができる
Vook:「コスプレ」については詳しくなく表面的なことしか分からないのですが、この「APEX LEGENDS」のコスプレ動画を作るのに、どれぐらいの期間を費やしたのですか?
大佐:実は、動画を作り始めることになってから約3週間ほどで、この動画ができているんですよ。
Vook:3週間……ですか? それはすでにコスプレの衣装ができている状態で?
大佐:いえ、一から企画して3週間です。きょへ君が急に「3週後に撮影するから」と言い出して、そこから衣装やら撮影の準備やらをはじめたんです。
Vook:衣装だけでなく、ロケ地の調整から、撮影、そして編集まで、3週間はちょっと無理があるスケジューリングだと思うのですが......。
大佐:正直、登場するレジェンド(※)の数も多いし、「パスファインダー」というレジェンドは全身機械で3週間では絶対に間に合わないと思ったんですよ。だけど、きょへ君は「みんなで一緒に作れば大丈夫!」って(笑)
大佐:結果としては、なんとか間に合わせることができましたが、かなり大変でした。
Vook:プリプロ(※)などは、どなたが担当したのでしょうか?
大佐:企画とか関係各所との調整は、きょへ君がやってくれました。衣装はみんなで作ったり、僕が全部作ったりと、その時々の状況でやりくりしていますね。今回、3週間というタイトなスケジュールで準備をしましたが、短く詰め込んだことで逆に熱量を持って取り組めたと思います。
※レジェンド・・・APEX LEGENDSに登場するキャラクターの総称
※プリプロ・・・プリプロダクションの略。撮影当日までに行う撮影準備のこと
Vook:実際の撮影日について、お聞かせください。
きょへ:撮影は福岡の貸しスタジオを中心に撮影を行いました。実際の撮影日は1日だけで、カメラマンには、いつも一緒に作品を作っている「コスプレスタジオNEIGE」のなおきさんに入ってもらっています。
大佐:なおきさんもきょへ君も映画好きで、撮影中は二人を中心に話し合いながら「こんな感じで撮りましょう」と、都度作品の方向性を詰めていっています。
きょへ:コスプレイヤーさんには、事前にある程度の撮影の内容はお伝えしておいて、動作の練習をしてきてもらいます。で、当日は実際に撮影してみてチェックをしながら、「ここはこうしてみようか」と詰めていってます。この辺の撮影方法は、一般的な映像制作のやり方と変わらないと思っています。
コスプレ動画に求められる世界観づくり
Vook:ありがとうございます。コスプレの再現度の高さや、細かい動きなどは目を見張るものがあります。
きょへ:ありがとうございます。どの作品でも、もしそのキャラクターがリアルな世界にいたとしたら、どういう振る舞いをするのか、一人ひとり想像を膨らませて追求するようにしています。
大佐:実は先ほど、撮影は1日だけといっていたのですが、僕のジブラルタルの撮影だけ追加で行ったんですよ。1日目で色々撮影をしたのですが、結局「ジブラルタルなのに、この動きしてないよね?」ってなり、1日目で撮影したシーンはほとんど不採用になって、追加で撮影したシーンが採用になりました。
きょへ:ジブラルタルってゲームの中で“ハカ”(※)を踊るんですよ。APEXを知っている人なら誰でも知っていることなにの、その撮影を行なっていなかったのです。
※ハカ・・・ニュージーランドのマオリ族が踊る民族舞踊のこと
大佐:「ジブラルタルがハカしないのはダメでしょ!」って怒られて。ハカだけ別撮りしました(笑)
Vook:コスプレは、まだまだスチールがメインの世界だと思いますが、動画作品にするときの違いをどのように感じていますか?
きょへ:そうですね。コスプレイヤーの視点で言えば、動画の方が一つひとつの動きに対して、表現の幅が求められます。
大佐:コスプレ造形的な話で言うと、静止画であれば、あとからシャドウを入れたりすることもできますが、動画ではそれが簡単にはできません。なので、予め衣装に影や汚れを入れておいたりすることも必要になってきますね。
Vook:「動画用」に衣装もチューニングするんですね。
きょへ:動画用というより「リアルに見られたとき用」と言ってしまっても良いですね。
写真やSNSを通しての見られ方をさらに飛び越して「リアルに自分たちを見てもらったときに、すでにそのものが作品として出来上がっている」、「100%の状態にしておく」くらいの気持ちで作り込んでいます。
大佐:そうですね。基本的に1キャラクターの衣装は1ヶ月かけて作り込んでいます。
Vook:作り込みの気合いが伺えます...!
大佐:実は、その「世界観づくり」で、失敗したことがあって...。
Vook:と、いうと?
大佐:実はAPEXの動画の一部に「日本語」が一箇所だけ映っているのです。
Vook:...?
きょへ:「APEXの世界」は、いくつもの惑星が存在してそれぞれその世界で使われている言語があります。APEXならいろいろな惑星が存在して、その中に「ソラス」という惑星があり、「ソラス」の言葉があります。なので、動画の中に「日本語」があってはいけないのです。
視聴者さんは、せっかくApexの世界観を楽しんでいるのに、日本語を見つけてしまうと一気に現実に引き戻されてしまいますよね。そのゲームの世界、コンセプトを感じられるように、「俗世界」を感じさせないことには気を使わないといけないのです。
Vook:たしかに。作品の世界のルールを徹底的に順守しないといけないんですね。世界観と言えば、Apexから離れてしまうのですが「Distiny2」の動画も拝見しました。
Vook:こちらの動画も、最初の水をすくい上げる仕草など、場所を含めた世界観づくりが秀逸でした。
大佐:ありがとうございます。あの動画も本当に頑張りました。ロケーションはカメラマンさんが探してくれて、最初は湖に入りたかったんですが、管理人さんに「絶対ダメ」と言われました(笑)
あの動画で最も思い出に残っているのが、羽を広げるシーンです。
大佐:糸で羽を引いて開くつもりだったのですが、きょへ君が糸を切っちゃったんですよね。どうやって撮影するかみんなで相談して、羽を広げて閉じるシーンを撮影した上で、それを逆再生することにしました。
Vook:撮影現場ではトラブルはつきものですよね。どうやってそのトラブルを解決するかは、求められる能力の一つかと思います。
きょへ:個人的に感じるのは、アクシデントを乗り越えて作り上げた作品は、厚みが増すと思っています。目には見えないけど感じられるストーリーというか。「また同じ現場に行けば、同じものが撮れる」にはしたくないんですよね。
その瞬間、その時間でみんなで作ったものは、そのときにしかできない作品にしたいんです。だから「アクシデントも込みで一つの作品」という感覚を大切にしています。
一人ではコスプレ動画は作れない
Vook:これからコスプレ動画を始める方へのアドバイスであったり、映像作りで欠かせないマストアイテムがあれば、教えてください。
大佐:気持ち? 愛が必要だと思っています!
それは大前提ですが、"アイテム"というと、「化粧落とし」ですかね。いつも撮影現場で化粧落としがなくて、困るんですよ。どこでもすぐに手に入るものって、案外必要な時に持っていないってことがありませんか? 撮影でも実はありそうなものがなくて困ることがありますし。だから、コスプレを生業にしている僕らからしたら、「化粧落とし」は必須のアイテムです。
Vook:たしかに...ありそうなものが、その場になくて困ることは撮影現場でよくあることですね。きょへさんはいかがですか?
きょへ:真面目な話をすると、やっぱりうちの場合は「仲間」ですかね。
良い作品を作ろうと思ったら、結局、一人では作れません。「みんなで」いいものを作るっていうのが、僕たちの終着点ではないですが、目指していることなのかなって思います。
Vook:まさに、「チーム」を大切にするというのは大事なことかと思います。特に、SOLOMON STUDIOさんは、チームとしてしっかり成り立っているようにも見えます。
大佐:少し言葉のニュアンスを変えると「チームを作ろう」というよりは、みんなが「楽しもう」「面白いことをしよう」と、集まっている感じです。
きょへ:「◯◯を手伝ってください!」みたいな、人の集め方をしないようにしているんですよ。「こういうことやりたい!」って言い出した時に、みんなの方から声を掛けてくれます。
大佐:「仲間作り」って本質的なことだと思うんです。チーム、仲間で何かをするときって、それぞれが仲間のために自分はどうあるべきか、どう貢献できるかを考えるようになるじゃないですか。
作品作りを通してその体験を経ることで、作る前と後とでは、自分が大きく変わっていることに気付けると思います。それがまた、喜びにもなるのかなって。
俺、今、めちゃくちゃ良いこと言ったね(笑)
Vook:ありがとうございます。今はワンマンでも映像作りができる世の中ですが、SOLOMON STUDIOさんからは、「仲間」と共に作品を作り上げる大切さを、より強く感じられました!
面白いことをしよう、自分たちが楽しもうと、自然と集まった「仲間」によって、質の高い映像作品を生み出しているSOLOMON STUDIOさん。
1人でもカメラを持ってミニマムに撮影ができるようになった時代だからこそ、他者と協力して1つの大きな作品を作り上げようという「動画づくりの原点」に立ち返ることも大切なのかもしれません。
そして、なんとSOLOMON STUDIOさんの人気FPSゲーム『VALORANT』の新作コスプレ映像が制作中です。
また、これまでチャンネル名であった「SOLOMON STUDIO」は福岡県のダイニングバーを営んでおり、2022年12月15日(木)新たに「SOLOMON STUDIO」の名前で店舗をOPENすることになりました。
「SOLOMON STUDIO」の情報はこちらで発信:https://www.youtube.com/channel/UC86wI7W-FoIO0zhb4gO3UeA
Vookは、これからも動画をつくり続けるYouTuberのみなさんを応援します。そして、これから動画制作を始める方々の後押しができるようにコンテンツを取り揃えています。
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