【Blenderライフハック】第1回:かゆいところに手が届く「環境設定」

2022.12.16 (最終更新日: 2023.01.27)

この連載について

CGアーティストのTaka Tachibanaです。

今回から「Blenderライフハック」と題して、Blenderでの作業効率化をテーマに僕のこだわり効率化術や役立つ情報をまとめた記事を連載していきます。

僕がBlenderを使い始めたのが、3年前。
最近ようやく自分の体を動かすように、そして柔軟に作業ができるようになってきました。

ここまで慣れるのにかなり時間を要しましたが、使っていくうちに「こんなに自由にカスタマイズできるソフトは他にない!」と思うようになりました。

Blenderはその特性上、「無料」(※正しくは、オープンソースソフトウェア)ということが注目されがちですが、柔軟性にも非常に優れたソフトだと思います。

使う人の特性に合わせてカスタマイズできるということは、効率化に直結します。

僕が今後、この連載で紹介していく「効率化術」は全ての人に当てはまるとは言いきれないかもしれません。

ですが、「良いな!」と感じたものは取り入れていただき、日々の作業効率化を目指してもらえれば幸いです。

すでにBlenderに慣れている人でも意外な「知らなかった!」があるかもしれません。

プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。

PR:Vook School

カスタマイズ性が非常に高い「環境設定」

さて、記念すべき第1回のテーマは「オススメの環境設定」です!
Blenderの環境設定は、最上部メニューの[編集→プリファレンス]から行えます。

初回からちょっと地味なテーマですが、Blenderの環境設定は非常にカスタマイズ性が高く、自分に合った環境にどんどん整えていくことでより使いやすく、より効率的な作業ができるようになっていきます。

それでは順番に見ていきましょう!

※この記事を執筆時のバージョンは「3.2.2」です

インターフェイス

解像度スケール

UI全体の解像度を細かく調整できます。


ここまで細かいスケール調整ができるソフトは他になかなかないと思います。
自分のモニターで一番見やすいスケール感にしてみましょう。

▲ 4Kモニターで表示した場合のデフォルト

▲ 上記と同じ条件でスケール値を「1.5」に。ビューポートの見え方はそのままに、文字やアイコンなどスケール感だけ変更できる

ちなみに各ウィンドウ上で[ctrl+中クリック]でドラッグすると、個別にスケール感を調整できます。

▲プロパティウィンドウのみ拡大表示した形。極端な例だがBlenderは多方面でこういった細かい調整ができることが多い

ステータスバー

▲ 各項目にチェックを入れると、画面右下に各ステータスが表示されます。基本的に全部ONにしておくのがオススメ

▲ ここのスターテスでポリゴン数やメモリなどをチェックしながら作業していくと、「こういう作業をすると、このくらいメモリ食うんだ」といった感覚が次第に養われてきます

翻訳

日本語、英語どちらでも基本的には問題ありませんが、こういったDCCツールでのデータ上の表記は英語の方が推奨されます。

もし日本語環境にしたい場合でも[新規データ]のチェックは外しておく方がベターだと、個人的には思います。

例えば、新規メッシュを作成した場合などに自動的に名前だけ英語にしてくれるので、[新規データ]のチェックを外しておいた方が他のソフトとの連携時に文字化けなどを回避することができます。

▲「新規データ」の日本語をONにすると、コレクション内で生成されるメッシュ等までも日本語になってしまう

テーマ

ここで自分の好きなデザインにカスタマイズすることができます。

僕はほとんどデフォルトのままですが、下記のノード曲線は操作性にも関わるので自分好みにカスタマイズしておくと良いですね。

ノードエディター / リンク曲率

 

シェーダーエディターなどノードを扱う際に、リンク(ノード同士をつなぐ線)の曲がり方を調整できます。

直線的にするもよし、グニャッと思っきり曲げるのもよし、自分に合った曲線を。

▲リンク曲線の数字が小さいほど直線的に。こちらは「0」の場合

▲リンク曲線の数字が大きいほど曲線的に。こちらは「10」の場合

アニメーション

タイムライン

「負のフレームを許可」をONにすると、タイムライン上でフレーム0より少ないフレーム(つまりマイナスの値)のエリアまで操作が可能になります。

物理演算やパーティクルなど1フレーム以前の動きが大事になる作業のときに便利です。基本的にONのままで良いと思います。

最小グリッド間隔


タイムラインやグラフエディターのグリッド間隔を調整できます。数値を下げると細かくなるので、ご自身にあった見やすさを探してみてください。

こういった調整ができるのもBlenderの柔軟性を表していると感じます。

▲デフォルトの「45px」の場合

▼数字を小さくすると、細かく表示される。こちらは「16px」の場合

デフォルトの補間

グラフエディターなどのカーブ補間方法で「一定」「リニア」「ベジエ」の中からデフォルトを設定できます。

よく使うものをデフォルトにしておくと、より効率的に。

入力

キーボード&マウス

「テンキーを模倣」をONにすると、メインキーの数字をテンキーの数字として扱えます。

ノートパソコンなどテンキーがないタイプのPCのときに便利です。

ただし、その分メインキーの数字を使うホットキーが無効になるなどいくつかの制限がかかります。

「3ボタンマウスを再現」をONにすると、alt+左クリックが中クリックとして作用する。2ボタンマウスしかないときに有効です。

ただし、その分altキーを伴うホッキーが無効になるなどいくつかの制限がかかります。

※以上のことから、Blenderを使う場合は「テンキー付きキーボード」と「3ボタンマウス」の利用が推奨されます

▲ 「リリースで確定」をONにすると、長押し選択をしているときにマウスボタンをリリースするだけで確定されます。モデリングやリトポロジーなど頂点を多く扱う際に便利です(常にONにする必要はないと思います)

視点の操作

ズーム

「マウス位置でズーム」をONにすると、カーソルがある位置を中心にズームイン・アウトができます。

僕はONにはしてませんが、こちらが好みの人もいるので一度試して見る価値はあります。

キーマップ

ホットキー(ショートカットキー)を自分の好きなキーにリマップすることができます。

Blenderはほぼ全ての機能にホットキーが設定されています。

押しにくい場合は自分の好きなキーにリマップして、どんどん使いやすくカスタマイズしていきましょう。

また最上部のプリファレンス内では、3Dビューの「Tab for Pie Menu」「Pie Menu on Drag」「Extra Shading Pie Menu Items」の3つはチェックを入れるのが個人的にオススメです。

Blenderではこのパイメニューというものをよく使うことになりますが、その操作をより拡張してくれるオプションです。

またお好みではありますが、「Select All Toggles」にチェックを入れると、Aを単独で押すだけで全選択⇄全解除をしてくれます。

システム

Cyclesレンダーデバイス

対応したGPUを積んだPCなら、ここでGPUレンダリングするデバイスを選択できます。

また、Sceneプロパティのデバイスでちゃんと「GPU演算」を選択してあげることも忘れずに。

CPUにもチェックを入れて同時にレンダリングすることもできますが、必ずしも速くなるわけではありません。

GPUだけの方が結果的に速くなることも多いので、自分の環境でテストをしてみて一番効率的な選択をしましょう。

メモリーと制限

アンドゥ回数が設定できます。

デフォルトでは32しかないので、少なすぎるという人は増やしておきましょう。僕は、256にしてます。

ビデオシーケンサー

マッチムーブ(モーショントラッキング)をよく使う人は注目の設定項目です。

「最大メモリキャッシュ」の数値を上げておくと、プリフェッチ(キャッシュ取得)をする際にキャッシュ容量が増えます。

その分メモリは食いますが、スムーズに再生できる範囲が広がるので自分の環境に合わせて設定してみてください。

少し余談ですが、こういった数値を設定する際は、32, 64, 128, 256, 512, 1024...…といった具合に、2進数にする方が良いと言われています。

とは言え「1000」のような数字にしても特に支障はないですが、CGをはじめとするデジタルものはそういった数字を意識して作られているので、2進数に沿った数字の方がより安定するイメージがあります。カメラのSDカードなどの容量も同じ感じですね。

▲Blenderのデフォルト設定の数字もこの2進数を意識されていることが多い

セーブ&ロード

ここで自動保存の間隔や、バージョンをいくつ残すかの設定ができます。

バージョンというのは、Blenderのデータを保存する際に、付属してくるファイルでバックアップデータのようなものです。

デフォルトでは「1」になっており、画像のように本ファイルの横に自動的に別ファイルが生成されていると思います。

バックアップをたくさん取って遡れる手段を多く確保しておきたい人は、ここの数を増やしておくと良いですね。

ちなみに僕は逆に別ファイルが生成されるのは逆に不要に感じるので、ここは「0」にしています。


今回の解説は以上です。

これからも様々な効率化Tipsをお伝えしていければと思っているので、次回もご期待ください。

感想やリクエストもぜひ!

 

  • CGアーティストTaka Tachibana


    台北在住。CAPSULE Inc. / CHINZEI Inc. 所属。福岡で10年間のフリーランスを経て、台湾ではMVやweb広告などの映像制作に従事。その傍ら3DCG・VFXを駆使した作品づくりに取り組む。ASEAN-ROK Film Leaders Incubator日本代表。Short Shorts Film Festival & Asiaをはじめ、国内外70ヶ所以上の受賞・入選歴。https://taka-t.com/

コメントする

  • まだコメントはありません
b3d_lfhck

Blenderライフハック@b3d_lfhck

この連載では、実写VFX系のBlenderユーザーとして知られるTaka Tachibanaさん( @taka_tachibana )が、Blenderによる3DCG制作をより効率的に行うためのTIPSを紹介します。 作業効率を高めるためのBlender...

Blenderライフハックさんの
他の記事をみる
記事特集一覧をみる