こんにちは、ビデオグラファーの松永エイゾーです。
私は普段ドキュメンタリー撮影をすることが多く、そのほとんどがスポーツの試合などイベントが絡むものが多いです。
今回は、そういった類のドキュメンタリー撮影と、ズームレンズの技術力に定評のあるタムロンの大口径ズームレンズ「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」の相性を検証しました。
レンズ選びの参考にぜひ最後まで読んでみてください!
唯一無二の焦点距離
なんと言ってもこのレンズの魅力は、大口径でありながら35-150mmという、焦点距離をカバーした非常に高解像なレンズであるということ。
似たような標準と望遠域をカバーしているレンズはありますが、100mm近辺だと被写体との距離を詰められないようなイベント撮影の場合には、少し物足りなくなることがあります。
特定の誰かのソロショットを狙いたいのにグループショットにしかならず、結局望遠レンズをもう1本用意しなければならない......といった状況になってしまうことも少なくありません。ただ実際、現場でそのようなレンズ交換をしている時間はない! というのも事実です。
時間の融通が利かないドキュメンタリー撮影の現場において、レンズ交換をせずに会場全体と特定の人物を通しで撮影できるのは大きなメリットだと感じました。
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開放F2‐2.8のボケ味と明るさ
このレンズを使ってみて驚いた点は、前述の焦点距離をカバーしつつも、開放F2-2.8という明るさを実現しているところ。特に、標準域(35-70mmあたり)の場合は、F4とF2.8のボケ感の差はかなり顕著になります。
F2.8では、接近して被写体に話を聞くなどするドキュメンタリー撮影時でも、生っぽさを出さずに立体感のある描写を保つことができます。フルサイズのカメラを好んで使用するユーザーの多くは、特に広角〜標準域ではこの生っぽさを避けて被写界深度の浅い描写を求めていると思うので、この1ストップの差は何よりも偉大だと思いました......!
柔らかくナチュラルな描写性能
屋外の自然が入り込む環境で人物を撮るときに、このレンズの強みが特に発揮されると感じました。
印象的だったのが、緑の色調が滑らかに再現される点です。また、そこに人物を配置すると、良い意味で自然の空間に馴染むようにナチュラルに人物を切り取ることができるのも新鮮でした。
カリカリとしたシャープさを求める人には相性が悪いかもしれませんが、人物を柔らかなナチュラルトーンで切り取っていきたい人にはとてもオススメです。
手に馴染む操作性
一部のタムロンレンズは、カメラ側から見てピントリングが手前、ズームリングが奥といった構造になっているものがあり、しばらく敬遠していました。しかし、このシリーズはその点が改善されて、純正レンズとの併用時にも混乱せずに使用できるようになっています!
頻繁にレンズを付け替えるような撮影をすることがある身としては、この一瞬の些細な混乱がないことの優先度が高かったので、嬉しいポイントでした。
20‐40mm F2.8(Model A062) との組み合わせ
今回は、「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」に加えて、「20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)」も試用してみました。
こちらは、質量365gと驚くほど軽く、少し負荷がある「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」(1165g)と2本持ちで撮影を行うならバランスが取れると感じました。
ワンマン撮影時は、1000gクラスのレンズを2本持ち歩くのはかなり負担になり、撮影のクオリティが下がることにも繋がりかねません。そのため、ここまで軽いレンズはかなり重宝されると思います。
また、特にジンバルに乗せたときの相性が抜群に良いと感じました!驚くべきは、20mmと40mm時のレンズの伸縮がほぼないこと。そもそも軽量な時点でジンバルとの相性が良いことは間違いないのですが、伸縮が少ないことでジンバルのバランスを気にする必要がなくなります。
まずは、空間を大胆に見せる20mmを使い、その指で少しズームして被写体を際立たせるジンバルショットへ、など短時間でサイズを切り替えて撮ることができるのは嬉しいですね。
ジンバルのバランスを取る作業は地味に時間を取られるので、撮影順もそのバランスを基準に考えなくてはいけなくなったりと、意外とその代償は侮れないもの。その意味でも、ジンバル使用のハードルを下げてくれる、この設計はありがたいです。
ハンディで「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」を使用してドキュメンタリーショットを重ねつつ、ジンバルに「20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)」を乗せ、大胆なシーン展開に使えそうなダイナミックなショットを撮るなどすれば、レンズ交換を最小限に抑えつつ撮影の幅も広げることができるのではないでしょうか。
作品のクオリティを上げるため、ポテンシャルの高いレンズたちをどう使いこなすかを考えるのも、また楽しいですね。
結論「TAKEの撮影に最適なレンズ」
撮影には大きく2種類があります。
1つ目は、”MAKE”と呼ばれる、撮影のために用意された舞台で撮影が行われるもの。
2つ目は、“TAKE”と呼ばれる、イベントやスポーツの試合など、撮影のために用意されていない舞台にカメラが入るもの。
小規模での映像制作をされている方の大半が、TAKEの撮影を主戦場にしているのではないでしょうか。私もTAKEが多いのですが、今回レビューしたタムロンの「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」は、このTAKEの撮影に最適なのではと実感しました。
例えば、サッカーチームのドキュメンタリーを撮影する場合。
試合の記録となると、前半45分間が始まれば撮影を止めることはできません。また、試合の結果を残すためには、プレー全体が見渡せるようなワイド感がある程度必要になります。そういった時に、35mmあればフィールドとの距離が近くても、試合を俯瞰したような記録映像を残すことができるでしょう。
加えて、150mmあればドキュメンタリーのインサートになるような、悔しがったり喜んだりしている選手の表情など、感情を描写できるようなショットも同じレンズで抜くことができます。
それによって、これまで諦めていた「記録としての事実を伝えるための撮影」と、「感情描写になりうる画力の強い、メッセージ性のある撮影」を同時に試合中にこなせるようになるのは大きなメリットですよね。
試合前後のミーティングなど、特定の誰かが突如大事な話をし始めるような場面でも、全体感を冒頭35mmで押さえつつ、150mmで話している人に向けるといった流れで撮影を行えば、たった1人でその場特有の臨場感のある描写を成立させることができるということです。
欲を言うと、24mm程まで広角域があれば、被写体に近づいてのコメント撮影が可能になるため、ドキュメンタリー撮影にもってこいな最強のレンズになりえます。とはいえ、そこまでいかずとも、あらゆるTAKEの撮影をこの1本のレンズだけで卒なくこなすことができると言っても過言ではないです。
スポーツ撮影の例を挙げましたが、ウェディングや音楽イベントなどの撮影にも全く同じことがいえるはず。また、詳細な撮影情報がまだ降りてきていない状態で撮影に臨まなければいけないような難しい局面でも、このレンズがあれば、フットワークで大抵の部分はカバーすることができるのではないでしょうか。
「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD (Model A058)」は、再現性のない機会をできる限り予測し、どれだけクオリティの高い映像を撮ることができるかが求められているTAKE撮影の強い味方だと、検証を通して感じました。
私のようにTAKEの撮影をしている方には、ぜひ1度使ってみてほしいレンズです。
スマートフォンとレンズを接続し、写真・動画撮影の可能性を広げる専用ソフトウェア
「TAMRON Lens Utility Mobile」は、レンズとスマートフォンを繋ぐことで、スマートフォンを使用してレンズのカスタマイズが撮影現場で手軽に行えます。レンズに触れることなくフォーカシングのコントロールを可能にするなど、ユーザーの写真・動画撮影スタイルの可能性を広げます。
松永エイゾー@matsunaga_eizo
映像ディレクター / ビデオグラファー。 静岡県浜松市出身。 2013年法政大学社会学部を卒業後、旅行会社と映像制作会社を経て独立。 企業やスポーツ系PVや、ドキュメンタリーなどをメインに制作。 人が持つ「熱」にフォーカスした、映像づくりをしている。
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