2022年12月15日(木)に発売された、キヤノンのフルサイズミラーレス一眼カメラ「EOS R6 Mark II」。
2020年に発売されたEOS R6の魅力はそのままに、新開発による有効画素数最大約2,420万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーやボディー内に搭載された5軸手ブレ補正機構、「EOS iTR(※1) AF X」による優れた被写体検出性能とトラッキング性能を実現。さらには、R6では30分に制限されていた映像収録が最大6時間にまで強化された。
※1: intelligent tracking and recognition
今回、EOS R6ユーザーのSOLOこと、片桐空飛氏に「EOS R6 Mark II」を使って、ファッションムービーを制作してもらった。
他のクリエイターがやらない表現を追求したいと語るSOLO氏に、EOS R6シリーズを用いることで実現した画づくりを聞いた。
好きだから撮り始めた
SOLO氏は、現在23歳。
アパレル関連の映像で注目されるようになり、最近、法人化するまでに至った、勢いのある若手クリエイターだ。
片桐空飛/Sorato Katagiri(SOLO)
1999年、名古屋市出身。高校卒業後、18歳でカナダへ渡り現地の大学へ進学。大学在学中に、個人的なVlogやシネマティック・ムービーを撮り始める。帰国後、YouTubeで公開した作品がきっかけに、商業案件を手がけるようになりフリーランスの映像クリエイターとしての活動を始める。2022年に法人化。斬新なカッティングやエフェクトを駆使したファッションムービーを得意としながらも、観光PVから企業のプロモーションビデオまで、多才なジャンルの映像制作に取り組んでいる。
@sorato_katagiri
SOLO氏はほんの2年前まで、カナダのブリティッシュコロンビア州ビクトリアに留学する大学生だった。
映像制作を始めたきっかけは、カナダでの3年間にある。
自身の境遇に相通じるものを感じたArata氏のYouTube(@Aratavlog)で、留学生活を綴るVlogや、留学生活を3分でまとめたシネマティックを見て刺激を受け、自身もYouTubeへの動画投稿を始めたのだ。
また、Arata氏と同じくニューヨークで留学生活を送るHaruki氏のYouTube(@HarukiAnoku)からも多くを吸収したという。
片桐空飛氏(以下、SOLO):
ですが2020年、コロナ禍に入ったため帰国しました。
その後、なかなかカナダに戻ることができず、地元(名古屋)で悶々とした日々を過ごしていました。
毎日とてつもなくヒマで、ゲームをしたりマンガを読んだりしていたのですが「このままじゃダメだ」と思い、留学していたときに始めたYouTubeへの動画投稿を再開しました。
【東京VLOG】大学生映像クリエイターが本気で東京を撮影したらこうなる|SOLOチャンネル
SOLO:
趣味でシネマティックVlogやファッションムービーを作り始めました。
自分が好きなブランドの服を友人に着てもらい、そのブランドのPV的な動画を勝手に作ってSNSで公開していました。
あるとき、Instagramで僕の映像を見てくださったアパレルブランドの方から「うちのブランドでもこういう映像を作りたいと思っていました。仕事としてお願いできませんか?」と、DMをいただいたのです。
“こうなったら良いな”が、現実になった瞬間であった。
そんな原体験を胸に、映像のクリエイティブを仕事にすることを真剣に考え、意を決して上京。
SOLO氏の独創的な作風は注目をあつめ、人気YouTuberや著名な俳優の映像案件も手がけるようにもなっていく。
そして氏の23歳の誕生日である今年11月27日(日)に、法人化(株式会社STRANを設立)。
社名「STRAN」は、“変な、一風変わった、未知の”といった意味をもつ「STRANGE」から取った。
SOLO:
(STRANという社名には)観た人を圧倒するような映像クリエイティブを、企画から制作まで一貫して手がけていくという思いを込めました。
作品づくりで一番大切にしているアイデアや発想を、自分の個性として映像に落とし込んで、他のクリエイターの作品と差別化していきたいと思っています。
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ダイナミックなカメラワークと編集による作り込み
「プロになってからは全てEOS R6で撮っている」と、語るSOLO氏。
そんなSOLO氏に、新機種「EOS R6 Mark II」でファッションムービーを撮ってもらった。
SOLO氏が制作したのは、2022年11月16日(水)から28日(月)までの期間限定で渋谷パルコ「YEN TOWN MARKET」内にオープンされていた日本サッカー協会(JFA)オフィシャルグッズストア「JFA STORE」のプロモーション映像。
JFA STOREをロケ地に、魚眼レンズ「EF8-15mm F4L フィッシュアイ USM」を使用した様々なアングルのカットが、めまぐるしく移り変わる、インパクト十分、ユニークさ満点の縦型動画だ。
SOLO:
魚眼レンズを使った映像って、固定カメラのものが多くないですか?
だったら、思いっきし動かしたら面白い画が撮れるんじゃないかと。
自分らしさを大切にする、SOLO氏ならではのアイデアだ。
撮影は、現場重視。
現地で被写体となるモデルや店舗のデザインを確認しながら構図とカメラワークを決めていく。
今でも企画、撮影、そして編集までをワンストップで行うビデオグラファースタイルで制作することが多いという、SOLO氏。
本作の撮影も、スタッフはSOLO氏とアシスタントの2名のみ。
2時間ほどで撮り終えたそうだ。
動画記録サイズは、4K / 60fps。
ガンマはCanon Log 3を使い、撮影素材の総尺は約40分とのこと。
撮影後は、Premiere Proで編集作業を実施(30fpsで完パケ)。
短いカットを次々とリズミカルに繋ぎ、大胆なトランジションやエフェクトを積極的に用いて仕上げた。
SOLO:
撮影も編集もトランジションも、海外のクリエイターの作品を観たりもしつつ完全に独学です。
いつも誰もやったことがない表現を創り出そうと、試行錯誤を重ねています。
今回もクライアントさんに「好きにやってもらってOK」と言っていただけたので、楽しみながら、あれこれと試した結果こうなりました。
ファッションムービーの制作では、大胆なトランジションやエフェクトを積極的に試せることも魅力だという。
SOLO:
自分は元々、シネマティックな作風から映像制作を始めました。
シネマティックムービーにはタイトルワークやトランジションなど、ある主のセオリーがあります。
ですが、ファッションムービーの場合はブランドごとに世界観が様々なので基本的には自由です。
トランジションなどを思う存分使えるのが楽しいですね。
EOS R6 Mark IIの高速AFを活かした画づくり
本作の撮影は全て手持ちで、ジンバルなども利用していない。
「似たような動きになってしまう」からだ。
手持ちで、大胆に動かしながら動きの速いカメラワークで撮影できる(フォーカスが外れることが少ない)のは、R6の強みのひとつだとSOLO氏。
SOLO:
普段からカメラをけっこう大胆に動かすことが多いのですが、R6は手ブレ補正とオートフォーカスがすごすぎて、ブレやフォーカスのことはほぼ気にせずに撮ることができています。
今回の撮影に使用されたEOS R6 Mark IIのボディには、ジャイロセンサー、加速度センサー、撮像センサーによって高精度にブレを検知できる手ブレ補正機構が搭載されている。
手ブレ補正機構搭載のRFレンズと組み合わせることで、協調制御により最大8.0段の手ブレ補正効果が得られる。
トラッキング性能の優秀さも今回のような撮影で威力を発揮する。
ディープラーニングを活用した被写体の特徴情報の抽出能力を備えたEOS iTR AF Xが、被写体を捉えて離さない。
今回の撮影では、瞳をAFの対象に設定してしまえば、後はフォーカスのことを気にせずに撮ることができたそうだ(※2)。
※2: キヤノンの被写体検出AFに関する詳細は、特設サイトを参照
SOLO:
フォーカスについてはR6の頃から高いパフォーマンスを発揮してくれていたのですが、Mark IIになってさらに良くなっていて、手ブレ補正も含めて完成度が増したような印象を持ちました。
ほかにもSOLO氏は、EOS R6 Mark IIを試用して実感した優位性として、動画の連続記録時間が最長で6時間まで伸びたこと(※3)と、フルHDで撮影したときのフレームレートが最大180pになった(※4)なったことを挙げた。
※3: EOS R6は、映像の収録時間は最長30分
※4: EOS R6は、フルHD撮影で最大120p
SOLO:
編集時にスローモーションのカットを挟みたいとき、120pの素材だともの足りなく感じるときがあるんですよね。
EOS R6 Mark IIでは、フルHDなら180pでも撮れるようになったところも嬉しいです。
R6から正統進化を遂げた、EOS R6 Mark II。
現R6ユーザーのSOLO氏は「期待通り」と評価した。
自然な色の入り方もEOSシリーズの魅力
SOLO氏にとって、カメラは単なる道具以上の存在。
SOLO:
これまで撮った作品は、何と言うか“R6がなかったら、撮れない映像”だと思っています。
自分なりにR6を知って使いこなしているから撮れるし、作ることができた。
カメラは相棒みたいな存在で、EOS R6に合わせて自分のスタイルを変えている面もあります。
アクティブに動き、時にはカメラを振り回すような撮り方をして、強めに編集をかけるというのがSOLO氏の現在のスタイル。クリエイティブ面の次の課題は、“構図”だと考えている。
SOLO:
幅広いフィールドで活躍したいと思っています。
その意味では、しっかりとした構図で綺麗な画を撮るテクニックを磨くことも大切。
(友人であると同時に、ビデオグラファーとして先輩でもある)SHOGOくんはめちゃくちゃ構図が上手くて、気持ち良い画を撮るので自分もがんばらないとな、って。
SOLO氏は、今回の試用したEOS R6 Mark IIとは別に、EOS C70の購入も検討中だという。
構図を意識しながら、ホテルや観光ビルなどを撮る仕事もしていきたいと考えているからだ。
EOS C70は、映画をはじめとする本格的な映像制作用途のラインナップ「CINEMA EOS SYSTEM」の新コンセプトモデルである。
CINEMA EOSとして初めてRFマウントを採用しており、小型軽量で高い機動性を有する。Canon Log 2が使用でき、最大で16+ストップのダイナミックレンジを実現する、プロユースのシネマカメラだ。
SOLO氏がキヤノン製カメラにこだわる理由は、やはり“色”。
ピーター・マッキノンやロリー・クレイマーなど、海外のビデオグラファーからも支持される理由はそこにあると考えている。
SOLO:
言葉で表現するのが難しいのですが、キヤノンのカメラはコントラストが綺麗で、色の入り方が好きです。
撮りっぱなしでも綺麗な色味なので、自分が好きな画をストレートに表現できるのが魅力です。
とはいえ、色味はまだ勉強中だとも語る。
SOLO:
SHOGOくんに自分の作品の感想を聞くと、『まだ、Z世代の色味だな』(※5)とか言われてしまいます(苦笑)
インパクトだけでなく、深みのあるを色を表現できるようになりたいですね。
※5(編注): Z世代を否定する意味合いではなく、若い世代のクリエイターや視聴者が好みそうな、ある種の定番化してしまった色味を意図したものだと思われる。
最後に、今後の目標を聞いた。
SOLO:
3つあります(笑)
1つ目は、アディダスのような世界的なスポーツブランドや、ヴィトンのようなハイブランドの案件を手がけること。これは、プロとして活動を始めたときから掲げている目標でもあります。
2つ目は、渋谷のスクランブル交差点の大型ビジョンを自分の作品でジャックすること。
そして3つ目は、海外でも活動できるようになること。
自分が映像制作を始めたのはカナダでの経験があったからですし、海外にはすごい映像を撮るクリエイターがたくさんいます。
実力がないと生き残れない世界ですが、将来は海外を活動の拠点にしつつ、日本の仕事も海外の仕事も手がけていきたいです。
将来について語るSOLO氏の目はキラキラと輝いていた。
INTERVIEW_菅井泰樹 / Taiki Sugai(Vook編集部)
TEXT_kagaya(ハリんち)
PHOTO_山﨑悠次 / Yuji Yamazaki
Vook編集部@Vook_editor
「映像クリエイターを無敵にする。」をビジョンとするVookの公式アカウント。映像制作のナレッジやTips、さまざまなクリエイターへのインタビューなどを発信しています。
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