FUJIFILM Xシリーズの魅力とは?
世の中に撮影できるデバイスが溢れているこの時代、
みなさんはカメラに何を求めますか?
仕事として撮影を行なっている方にとっては「信頼性」や「機能性」かもしれません。日常的にいつでも写真や動画が撮りたいという方は「小型・軽量であること」、もしくは撮れる画が好みにあっていることかもしれません。
私がカメラに求めたいのは「美学」です。
それは言い換えると主義や主張とも言っていいかもしれません。
カメラは写真や動画を撮るための道具ですが、道具というのはもちろん使い手のやりたいことや考え方によって選ぶものが変わってくるものです。あらゆる使い手に対応してくれる汎用性の高い道具も良い道具ですが、それとは別の軸で「どんなことのために使って欲しいのか」という主張がハッキリと見えてくる道具というものもあります。
私は、数ある日本のカメラメーカーの中でも
FUJIFILMは最もそうした美学を持っているメーカーだと思っています。
特にFUJIFILMのXシリーズは、そのデザインやAPS-Cセンサーのコンパクトなサイズ感から、ガチガチの「仕事用/業務用」というイメージよりも、「ストリート・フォトグラファー」や「世界各国を旅しながら作品を作っていく写真家」たちの道具であり、カメラと2人きりで、この世界の一コマを切り取っていくための道具という世界観を勝手に感じていました。
▼ FUJIFILM X Series のYouTubeチャンネルでも多くの写真家の撮影風景がアップされています。
私は写真家ではなくドキュメンタリー映像作家ですが、そうした写真家的な世界観に憧れを持っている人間でもあり、そんな「写真家のように映像作品を撮りたい!」という気持ちもあって、これまでにFUJIFILM X-T4を使って作品づくりを行ったりもしてきました。
▼ これまでにX-T4で撮影した作品
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美学と機能性の両立
そんな美学を持っている(と私が勝手に思っている)FUJIFILM Xシリーズの中で、フラッグシップに当たるのがX-H2SとX-H2。この2機種はXシリーズの他のカメラと少し違い、美学に徹するのではなく機能性と美学を両立させることを目指したカメラなのかなと私は思っています。
例えばカメラ上面のダイヤル類。
フィルムカメラのようにシャッタースピードやISOなどを設定できる個別ダイヤルがあることが、Xシリーズの多くのカメラの特徴でもありましたが、X-H2S/X-H2ではダイヤルはモードダイヤルの一種類になり、設定項目が表示される液晶画面が配置されることで、より素早く使えること、機能的に使いやすいことを重視したデザインになっていると感じます。
このように、これまでのXシリーズの良さやコンセプトを生かしながら、より多くの用途にも対応できる機能性を持ったカメラがX-H2S/X-H2だと私は思っています。
今回は、その2機種の中でもより動体撮影を重視して作られた「X-H2S」をお借りすることができたので、使ってみて感じたことを書いてみようと思います。
動画カメラとしてのX-H2Sの基本性能は?
収録形式・フレームレート
このカメラは、FUJIFILM Xマウントと約2616万画素の裏面照射積層型APS-Cセンサーを搭載したモデル。収録できる動画の解像度とフレームレートについては以下のようになっています。
[6.2K(3:2)]・・・29.97p/25p/24p/23.98p
[DCI4K(17:9)]・・・59.94p/50p/29.97p/25p/24p/23.98p
[4K(16:9)]・・・59.94p/50p/29.97p/25p/24p/23.98p
[Full HD(17:9)]・・・59.94p/50p/29.97p/25p/24p/23.98p
[Full HD(16:9)]・・・59.94p/50p/29.97p/25p/24p/23.98p
[DCI4K(17:9)ハイスピード動画]・・・120p/100p
[4K(16:9)ハイスピード動画]・・・120p/100p
[Full HD(17:9)ハイスピード動画]・・・240p/200p/120p/100p
[Full HD(16:9)ハイスピード動画]・・・240p/200p/120p/100p
収録形式は最大解像度の6.2Kの場合でもH.265 All-Intra 4:2:2 10bitを選ぶことができる他、ProRes422HQ / ProRes422 / ProRes422LTの本体収録にも対応しています。(ProRes収録はCFexpress Type Bカードのみ対応。またハイスピード動画には非対応)
このように多彩な解像度・フレームレート・コーデックに対応し、動画撮影カメラとしての充実度が非常に高くなっているのがこのX-H2S。
動画記録時間も飛躍的に向上し、別売りで専用の外付け冷却ファンも用意されました。ほとんどの場合で必要ないと思いますが、真夏などの外気温が高い時に60pや120pなどで長時間収録する場合にはあると安心なアイテムだと思います。
やっぱり素晴らしいフィルムシミュレーション
個人的にFUJIFILM Xシリーズの最大の魅力だと思っているのがこのフィルムシミュレーションの機能です。
これは簡単に言ってしまうとどのメーカーにもあるカラープロファイルやカラープリセット的な「撮れる色味をカメラの中で選ぶ」という機能なのですが、FUJIFILMの場合は搭載されている色のプリセットが、これまでにFUJIFILMがつくってきたフィルムの色味を活かしたものになっているのです。
昨今は動画でもRAWやLogで撮影しカラーグレーディングすることが人気ですが、必ずしも全ての映像制作でカラーグレーディングをする必要があるというわけではないと思います。
撮って出しでそのまま使える画が撮りたいけれど、できればその画はフィルムルックにしたい、ビデオっぽい画ではないものにしたいという場面もあります。そんな時にこのフィルムシミュレーション機能を使うと、フィルムを知り尽くしたFUJIFILMが作った19種類のフィルムルックを選んで使うことができます。これはXシリーズにしかない大きな魅力です。
個人的にはその中でも特にクラシックネガが大好きで、X-T4を使う際はほとんどこれを使って撮影をしていました。(記事の頭のほうで載せている2つの作品もクラシックネガで撮影しています。)
カラーグレーディングを自分でやる場合でも、昨今はフィルム的な色調を目指してグレーディングをする場合も多いのではないかと思います。上手い方は自分で色を作り込んでいけばいいと思いますが、グレーディングに自信がないけれど完成の画はできるだけ美しくしたい...という場合は、そもそもこのフィルムシミュレーションを使ってフィルム調のカラーで撮影してしまった方がいいんじゃないかな...?と思います。
XシリーズのカメラではX-H2Sから初めて搭載されたノスタルジックネガをベースにして簡単なVlogを撮ってみました。なんてことのない日常ですが、フィルムシミュレーションのおかげで何となく雰囲気ある仕上がりになってくれました(笑) ノスタルジックネガもお気に入りになりそうです。
また、X-H2SではLogも2種類になり、よりダイナミックレンジの広いF-Log2も搭載されました。カラーグレーディングを行いたい場合のポストプロダクションでの自由度もより向上しています。
APS-Cに特化した充実のレンズラインナップ
FUJIFILM Xシリーズは、APS-Cセンサーのカメラです。
他のメーカーからもAPS-Cセンサーのカメラは多く発表されていますが、FUJIFILM XシリーズはAPS-C専用のシリーズであることに特徴があります。
多くのメーカーのAPS-Cカメラは、フルサイズのカメラマウントと同じマウントを使用しています。そのためどうしても(特に単焦点の)良いレンズはフルサイズ用のもので、APS-C専用のレンズは選択肢が多くないということになりがちです。
FUJIFILM XシリーズはAPS-C専用のシリーズのため、用意されているレンズも全てAPS-C用で、全体的にコンパクトでありながら高品質で選択肢が多く、このレンズ群が使えるというだけでXシリーズは魅力的だなと個人的には思っています。特に広角単焦点レンズはAPS-Cカメラだと選択肢が少なくなりがちですが、Xシリーズであれば多様な選択肢があります。
単焦点では、比較的最近発売されたXF18mmF1.4 R LM WR、XF23mmF1.4 R LM WR、XF33mmF1.4 R LM WRなどは動画撮影時のAFの挙動なども非常に改善されていて、X-H2Sとぜひ一緒に使いたいレンズだなと思います。
X-H2SとX-H2どちらを選ぶべきか?
X-H2Sには外観はほとんど同じですが、約4020万画素の別のセンサーが搭載された姉妹機であるX-H2というモデルがあります。
センサーの解像度が違うため、X-H2は最大8K収録ができ、X-H2Sは最大6.2K収録となっています。一方でX-H2Sには裏面照射積層型CMOSセンサーが採用されており、より読み出しが早くローリングシャッターの歪みが出にくくなっていたり、4K120pの収録ができるという利点があります。
そのため、できるだけ大きな解像度(8K)で撮影したいという方はX-H2を選ぶのが良いと思いますが、6.2Kでも十分と考える方はローリングシャッター歪みも少なく動画撮影の総合力が高いX-H2Sを選ぶのが良いのではないかと個人的には考えています。
▼ X-H2については以下の記事で伊藤さんがレビューされているので、ぜひそちらの記事もご覧ください!
New Standard camera「X-H2」review
ビデオグラファーの伊藤です。 ウエディングの撮影編集を中心に活動しています。 今回「X-H2」の製品レビューを行う機会をいただだきました。 動体撮影重視「X-H2S」が既に販売開始していたことも...
「楽しく撮影する」と「しっかり撮影する」の両方に対応できるカメラ
冒頭でも少し触れたように、一人一台当たり前のようにカメラ付きのスマートフォンを持っている時代になりました。そんな中でも撮影専用のカメラを持つ価値とは何でしょうか?
それは「撮影体験の楽しさ」と「仕事として使う専門の道具としての信頼性」の2方向にあるのではないかと個人的には感じています。
カメラをもって、レンズを選び、被写体と向き合い、出てくる色の細かな違いに美を求める。ちょっと懐古主義的かもしれませんが、そうしたある種の書道や茶道をはじめとした「道」のような、自分との対話としての撮影体験の質の高さは、やはり汎用的なスマートフォンよりもカメラの方に分があるのではないかと思います。またそれとは別方向として、仕事として確実な結果を残さなければいけない場合、信頼性のある専用デバイスが必要な場合もあるでしょう。X-H2Sはこの両方向の両立を行おうとしているカメラだと私は思います。
フィルムシミュレーションを使うことで、撮ったその場でいい感じの色で写っていることがわかるのは撮影体験として非常に心地が良いですし、Xシリーズの中では大きめなカメラですが、昨今のミラーレスカメラ市場全体の中で見ると、レンズと合わせても日々持ち運ぶこともできるサイズ感。これらの要素が楽しく撮影をできる撮影体験を約束してくれます。そしてきちんと作り込んだ、しっかりとした撮影をしたい場合でも対応できる機能性の高さも兼ね備えており、これ一台で仕事でもプライベートでも安心感を持って撮影を楽しませてくれるというカメラだなと言うのが、今回私がX-H2Sを使ってみた感想でした。
ぜひ一度みなさんもX-H2Sを手に取ってみて、その撮影体験の楽しさを感じてもらえればと思います!
伊納 達也@tatsuyaino
伊納達也 ノンフィクション映像作家 コミュニティをテーマとしたドキュメンタリーフィルムの制作や、企業のCSV/CSRなどの持続可能な取り組みに関する映像制作を行う。 (経歴) 東映シーエム株式会社で制作進行として勤務後、2014年から株式会社u...
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