日本各地の名山を登る様子をシネマティックな映像で届けるYouTubeチャンネル『オトナ女子の山登り』。
モデルとして活動する山下舞弓(やました まゆみ)さんが企画から撮影、編集までを一人で行なっています。
四季折々、ありのままの自然の姿を、オシャレな音楽とやさしい語り口で発信する山下さん。山頂からの眺めは、まるで実際にその場にいるかのような臨場感と美しさで、思わず息を呑んでしまいます。
モデルとYouTube、二足のわらじで活動する山下さんが、多忙な中でも動画を作り続けることができる原動力とは? 山登りYouTuberならではの苦労や、機材の話も伺いました。
- ゲストYouTuber山下 舞弓
長野県在住。高校生のときからモデルとして活動。2012年に初めての登山で南八ヶ岳の赤岳に登って以来、山登りが趣味に。2020年から登山の様子や山ごはんなどを届けるYouTubeチャンネル『オトナ女子の山登り』を運営
いつの間にか変わっていた、「見てくれる方のために」
Vook:本日はよろしくお願いします。
山下:こちらこそ、よろしくお願いします!
Vook:まず初めに、YouTubeを始められたきっかけから教えてください。
山下:Instagramでショート動画を出すことはありましたが、本格的にYouTubeを始めたのは2020年の1月からです。
Vook:率直に、ここまでやってきて、いかがでしたか?
山下:正直、こんなことになるとは思っていませんでした!
大人になってから山登りを始めたのですが、山が大好きになり、この魅力を多くの方に伝えたいと思う気持ちが強くなりましたね。
また、山をはじめ自然を題材にした映像作品を作られている「Happy Dayz Productions」の井上卓郎さんが大好きで、いつかこんな動画が撮れたら良いなという憧れもあって始めたのがきっかけです。
「Happy Dayz Productions」井上卓郎さんの動画
山下:私はモデルやリポーターの仕事を経験してきたので、自分を出して発信していこうと、今のスタイルで作ることにしました。
とは言え、初めのうちはあくまで仕事のメインはモデルであって、YouTubeは趣味の一環でやっていました。そしたら、ありがたいことに、あれよあれよと登録して下さる方が増えていきました。
Vook:「山ごはん」で山下さんのことを知ったファンも多そうですね。
山下:そうですね。
2020年に人気コミックの『山と食欲と私』と、YAMAPさんによる「THE 山ごはん王決定戦」という企画があって、初代の山ごはん王に選ばれました。
山下:「自分の得意な分野で山ごはんの魅力を表現する」という課題の下、私は父と一緒に登山をして山ごはんを楽しむ動画を作りました。そのときの動画を見て「山ごはんの人」と覚えていて下さる方も多いですね。
Vook:どんどんとファンが増えていく中で、動画づくりに変化はありましたか?
山下:最初は本当に自己満足のために作っていましたが、気づいたら「見て下さる方のために作ろう!」というマインドに変わっていたんですよね。
例えば、山の地図や高低差などより詳しい情報を入れるようにしました。少しでも工夫して動画にすれば、動画を見てから「行ってみたい!」と思ってもらえる人が増えるかなって。
いつの間にか、モチベーションの方向が変わっていたのは、正直驚いています。
プロのビデオグラファーを目指す学校、はじまる。入学生募集中。
PR:Vook School
無理はしない。自分に正直に、楽しく動画を作れるように
Vook:山下さんは動画からも、そのポジティブさがすごく伝わってきますが、3年近くも続けていれば、辛い時期もあったのではないでしょうか?
山下:そうですね……。自分の動画だけなら良いのですが、企業さんからいただいたお仕事には締切がありますし、モデルの仕事や、他のやりたいことが重なると、いっぱいいっぱいになってしまうときもありますね。
Vook:そんなときはどのように対処されているんですか?
山下:例えば、YouTubeは毎週金曜日の21時にアップすると決めているんですが、他の仕事が立て込んでいて編集できないときは「今週は休みます!でも、来週は良いものを出すので楽しみにしていてください!」みたいに宣言しちゃいます。
私の山登りのスタイルも「無理をしない」ことを大切にしています。自分に正直に、楽しくいられるように。辛いことを続けていたら自分からイヤになっちゃうと思うので。
あと、自分へのご褒美を決めるようにしていますね。「これ終わったら旅行に行こう!」とか「お酒をいっぱい飲もう」みたいに。
私が金曜日の夜にアップすると決めているのも、がむしゃらに編集をして、肩の荷が下りたあとに、夫と晩酌するためだったりします(笑)
Vook:そうなんですか(笑) 特別な意図があるのかと思っていました。
山下:でも、一番はYouTubeが好きなんです!
編集をするのも楽しいですし、ファンの方のコメントを読むのも大好きです。「よかったです」とか「感動した」ってコメントをしてくださる方がいて、それを読むのが本当に幸せで。皆さんからのコメントが一番のご褒美なのかもしれませんね。
以前いただいたコメントがとても温かくて...。
「舞弓さんの動画で元気をもらっています。舞弓さんが見てきた世界を純粋な気持ちで表現されていて、本当に大好きな動画です。山の良さを難しく考えずに教えてくれていて、本当に良いなって思います」
というような、思いがけないコメントをいただいて......泣けてきちゃいました……。
私の視聴者さんには、こういう方が多いんです。良いコミュニティなんですよね、すごく温かくて。
Vook:本当に山と、山下さんの動画を好きな方が集まっているんですね。
山下:山登り系のYouTuberさんはたくさんいらっしゃって、それぞれに個性がある中で、私の映像が好きで観に来てくださる優しい方ばかりです。
山の撮影にぴったりな「神レンズ」
Vook:山下さんの動画は、ワンカットの数秒のために、何度もカメラをセットして、撮影して……と、相当、時間をかけていらっしゃることが想像できました。
山下:そうですね。少し大変ではあるのですが、全体の情景がイメージできるように、手持ちの一人称視点と、自分が歩いている様子を第三者視点で撮影した映像とを、組み合わせています。
Vook:たくさん画が変わることで、飽きずに楽しく見ることができますね。ちなみに、普段はカラーグレーディングで色を調整したりするのでしょうか?
山下:基本的には色は調整していませんね。LUMIXで撮れるそのままの色が好きなので。
Vook:今日はカメラを持ってきてくださいました。
山下:はい、「LUMIX DC-G100」を使っています。
山下:山登りにはコンパクトで軽いG100がぴったりです。
レンズは9mmの単焦点「LEICA DG SUMMILUX 9mm」をメインに使っています。軽いですし、置き撮り、マクロ、風景まで、これ1本で撮ることができます。
LEICA DG SUMMILUX 9mm / F1.7 ASPH.
https://panasonic.jp/dc/products/g_series_lens/leica_dg_summilux_9.html
山下:汎用性がとても高くて、今年の6月にこのレンズが出てからは、G100の出番がさらに増えましたね。
Vook:私も使ったことがありますが、ものすごく使いやすかったです。かなり寄ることもできますね。
山下:約10cmまで寄れます。しかもF1.7なので、背景もしっかりぼかせます。太陽のキラキラも作りやすくて、このレンズのおかげで映像の幅を広げることができました。
Vook:9mmのレンズが発売される前は、何を使っていたのですか?
山下:その前は14-140mmのレンズと、30mmのマクロレンズを使っていました。
LUMIX G VARIO 14-140mm / F3.5-5.6Ⅱ ASPH. / POWER O.I.S.
https://panasonic.jp/dc/products/g_series_lens/lumix_g_vario_14-140_ii.html
LUMIX G MACRO 30mm / F2.8 ASPH. / MEGA O.I.S.
https://panasonic.jp/dc/products/g_series_lens/lumix_g_macro_30.html
山下:今は基本的に、この9mm / F1.7のレンズを付けていて、山頂では14-140mmレンズに付け換えて、ズームで撮影しています。
あと、手持ち用のカメラとして「DJI Pocket 2」も使っています。
DJI Pocket 2
https://www.dji.com/jp/pocket-2
Vook:ありがとうございます。それにしても、このレンズカバーの端っこの部分、すごく使い込んでいる感があって良いですね。
山下:やばい、やばい(笑) 私、本当によく岩とかにぶつけて凹ませてしまうんですよね。
山下:DJIも見てやってください(笑)
Vook:この感じは初めて見ました(笑) とてもアクティブに活動されているのがよく分かります!
山下:ここまで使い込んでいるのを見せるのは、少し恥ずかしいですね(笑)
Vook:これまでのカメラの変遷はいかがですか?
山下:最初にOLYMPUS「OM-D E-M10 」を買いました。
その後、4Kが撮りたくなったときに、LUMIXさんからG100が発売されて「コンパクトで持ち運びしやすそうだなぁ」と思い、以後はG100をずっと使っています。
Vook:やはり、山登りをする上で、機材の重さや機動性は意識されますか?
山下:大事ですね。特に私は体力がある方ではないので、疲れてしまうと「撮るのが面倒だな」ってなりがちで。
正直な話、最初はG100でどんどん撮っていくんですが、バテてしまったら、最後はDJI Pocket 2だけ、なんてこともあります(笑)
「しんどいな」と思うときは、撮る量を減らしたり、軽いカメラだけを使うようにしています。ここも「無理をせず」です。
Vook:他に何かオススメのアイテムがあれば教えてください。
山下:撮影とは離れますが、私の中で、AirPods Proが重要なアイテムなんです。
Vook:AirPods……ですか?
山下:はい、AirPodsです。周囲の雑音をかき消すことができる「ノイズキャンセリング」機能が付いているのですが、これがとっても編集の役に立つんです。他のイヤホンでは聞き逃してしまうような細かい音まで聞こえるので、雑音を取り残さないようにチェックできるようになりました。
Vook:なるほど。それは初耳です。
では最後に、これからYouTubeを始める方、挑戦してみたいと思っている方に、何かアドバイスがあれば、ぜひお願いします。
山下:他の方と似たような感じになってしまうかもしれませんが……。楽しんでやることだと思います。それに尽きるのかなって。
とにかく自分が楽しむ。辛いときは、休めばいい。
これから始めるなら、自分が楽しくて、長く続けられること、興味があるものを発信してください。そしたら「次はこれをやろう」って、どんどん前向きに続けられると思います。
インタビューの途中で山下さんの口から自然とこぼれた「あたたかい、良いコミュニティ」という言葉が印象的でした。
真っ先に見てくれる方のことを思い、無理をせず、丁寧に動画を作られている山下さん。短い時間の中でも、ファンとの間に築かれた必然の信頼関係を垣間見ることができました。
Vookは、これからも動画をつくり続けるYouTuberのみなさんを応援します。そして、これから動画制作を始める方々の後押しができるようにコンテンツを取り揃えています。
ぜひ、Vookのサービスをチェックしてみてください。
前回のゲストYouTuber「SOLOMON STUDIO」の記事はこちらから
【SOLOMON STUDIO:インタビュー】短期集中で作品に熱量を込める。注目のAPEXコスプレイヤーが動画づくりで大切にするもの
2022年1月にYouTubeにアップされた1本のコスプレ動画に、たくさんの称賛の声が集まっています。 『APEX LEGENDS』のキャラクターの動画を制作したのは、福岡県のダイニングバーから...
INTERVIEW_菅井泰樹 / Taiki Sugai(Vook編集部)
TEXT_水野龍一 / Ryuichi Mizuno
PHOTO_大竹大也 / Daiya Otake
DESIGN_松儀愛侑 / Ayu Matsugi
カンタンじゃないよ YouTuber@youtuber_is_not_easy
動画制作を経験をしている方は、1本の動画を作り上げるために必要なパワーがどれほどなのか知ってるはずです。そして、こだわり続けることがさらに大変なことも知っています。YouTuberは、カンタンではありません。その1本の動画に強いこだわりを持ち向き合うYouTu...
コメントする