CGアーティストのTaka Tachibanaです。
Blenderのあらゆる効率化Tipsをお届けしている【Blenderライフハック】。前回の記事では、Blenderの環境設定について解説しました。
今回はワークスペースを中心した効率化するためのTipsを紹介していきます。
ワークスペースの基本である「3Dビュー」「タイムライン」「アウトライナー」「プロパティ」の4つのウィンドウに、「レンダリング」を加えた5種類でジャンル分けしてまとめてみました。
最初に知っておきたかったアレコレTipsをまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事を執筆時のバージョンは「3.3.1」です。
3Dビューポート
画面分割と結合
あらゆる方向から画面を割って自分の好きなようにレイアウトできます。Blenderの柔軟性はまさにここにあり。操作性はちょっと癖があるのですが、すぐに慣れます。Blenderの基本中の基本tips。
▲ウィンドウの隅を内側へドラッグすると分割
▲ウィンドウの隅を別ウィンドウ側へドラッグすると結合
二画面にする方法
3Dビューポートのヘッダー上で右クリックし、[新しいウィンドウにエリアを複製]を選択すると、新しいウィンドウがポップアップされます。デュアルモニターで作業したいときに使えます。
お気に入りツール
Blenderにはお気に入り登録機能があり、[Q]キーを押すと事前に登録した機能を一覧で簡単に呼び出すことができます。
登録するには、任意の項目上で右クリックして[お気に入りツールに追加]を選択。
▲右クリックで[お気に入りツールに追加]
▲[Q]キーでいつでもどこでも呼び出せる
Blenderはよくできていて、ほとんどの項目をこのお気に入りツールに登録が可能です。よく使う機能はここに登録して素早くアクセスできるようにしておきましょう。
スタートアップファイルを保存
オリジナルでスタートアップファイル(起動した直後の状態)を設定できます。
自分が「この状態からスタートしたい!」という状態にしてから、最上部メニューから[ファイル→デフォルト→スタートアップを保存]で登録。Blenderを起動するとその状態からスタートできます。
【POINT】
例えば、デフォルトで配置されてる「キューブオブジェクト」「カメラ」「ライト」。人にとってはこれらを毎回消去するのが煩わしかったりします。そんな場合は全て削除して「スタートアップを保存」すればOK。僕はそうしています。
▲何もない状態からスタートできる
またオブジェクトだけではなく、ワークスペースのレイアウトや各種設定の状態も保存されるので、自分の使いやすい状態で登録しておくとスタートダッシュが切れます。
UIをロードしない
他人が作成したBlendファイルを開くときは、良いも悪いもその人のUI(ユーザーインターフェース)が反映されてしまいます。
が、下記の通りに読み込めば自分のいつもの環境で開くことができます。
STEP 1. 最初にBlenderを起ち上げる。
STEP 2.最上部メニューの[ファイル→開く]をクリック。
STEP 3.読み込み画面がポップアップされるので、[N]キーでサイドパネルを出す。
STEP 4. [UIをロード]のチェックを外す。
統計
右上の[ビューポートオーバーレイ→統計]にチェックを入れると、左上に各ステータスが表示されます。
動作が重くなってきたなと感じるときは、これでポリゴン数などをチェックすると良いですね。僕は基本的にずっとONにして作業しています。
ソリッドビューのランダムカラー
通常ソリッドビューではオブジェクトの色はグレーになっていますが、右上の[3Dビューのシェーディング→カラー]を[ランダム]にすると、ソリッドビュー時のオブジェクトごとの色をランダムに表示してくれます。
▲(左)デフォルト/(右)「ランダム」にした場合
複雑なシーンを構築するときなど、各オブジェクトの区別がしやすくなり視認性が向上します。
【POINT】
同カラー設定内の「マテリアル」はマテリアルプロパティ内でビューポート表示で設定した色、「テクスチャ」ではシェーダーエディター上で接続されているテクスチャのカラー情報が表示されます。これらも視認性を上げるためによく使います。
キャビティ
右上の[3Dビューのシェーディング→オプション→キャビティ]をONにすると、エッジを強調して表示してくれます。
形がはっきり認識できるので、モデリング時などに有効です。
▲(左)デフォルト/(右)キャビティON
トランスフォーム値の一括入力と初期化
サイドパネルなどのトランスフォーム値は上下にドラッグすると、全て一括で入力することができます。
また項目上で[backspace(delete)]キーをクリックすると、数値が初期化されます。デフォルト値を忘れたとき、あるいは戻したいときに便利です。
ビューの焦点距離と表示範囲
広大なシーンを作成しているときなど、視点を遠くにすると途中でクロップされて見えなくなることはありませんか?
この3Dビューの視点範囲はデフォルトでは「0.01m~1000m」と設定されています。見えなくなるのはこの範囲の外になってしまっているからです。また近すぎる場合も同様にクロップされます。
▲(左)デフォルトの1000mを越えた部分は見えない/(右)範囲を5000mまで拡大した状態
そういったときは、サイドパネル→[ビュー]から設定できるので、見える範囲まで広げましょう。
【POINT】
焦点距離も設定できます。広めに見たいときは数値を下げて広角にしてあげたり、パース感をなくしたいときは数値を上げて望遠にするといった、調整が可能です。ちなみに、モデリング時はパース感が少ない100-200mmくらいが適切だと言われています。
後述しますが、カメラ設定でも同様の描写の範囲指定の設定があります。
ローカルカメラ設定
カメラビューにした場合、通常はどのウィンドウも選択した同一のカメラ視点になってしまいますが、各ウィンドウごとに任意のカメラを固定しておくことができます。
サイドパネルの[ビュー]内にある[ローカルカメラ]で任意のカメラを選択するだけでOK。
▲複数台のカメラを各ウィンドウでそれぞれ個別に固定することができる。マルチカムでプレビューしたいときに便利。
操作を繰り返す
[Shift+R]で、直前の作業を繰り返すことができます。同じものを羅列したい場合など、効率化に必須のホットキー。
[頂点選択][辺選択][面選択]を同時に機能させる
編集モードで利用する[頂点選択][辺選択][面選択]は、実はShiftを押しながらクリックしていくと、全てONにして同時に機能させることも可能です。
欠けているファイルを探す
リンクが切れているファイルがある場合に起こる「ピンク現象」。そんなときも、まず最上部メニューの[ファイル→外部データ→欠けているファイルを探す]から、該当ファイルがあるフォルダを指定してあげるだけで、自動的に再接続してくれます。
オブジェクトのモードをロックを解除
なぜかデフォルトでONになってますが、個人的にはずっとOFFでいい機能。
OFFにしておくと、リギングのときにアーマチュアをポーズモードのまま他のオブジェクトを選択できます。
ポーズモード⇄オブジェクトモードの行き来が楽になります。
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タイムライン
プレビュー範囲を指定
ストップウォッチのアイコンをクリックしてONにすると、レンダリング範囲とは別にプレビューの範囲を指定できます。
プレビュー範囲外はオレンジ色で表示されます。
作業中に特定の箇所だけループ再生しておきたいときに便利です。
タイムライン上でカットを割る方法
カメラビューにした場合、通常タイムライン上では1つのカメラのビューしか表示されません。が、編集ソフト近い感覚で、複数のカメラを切り替える(カットを割る)方法があります。
タイムラインのメニューから[マーカー→カメラをマーカーにバインド]で、選択中のカメラを割り当てることができます。
あとは再生するだけで自動的にカメラが切り替わります。
自動キーフレーム機能
通常キーフレームの挿入を行う場合は[I]キーなどで任意に行なっていきますが、ここの「●」マークをONにしておくと、位置・回転・スケールを変化させたときに自動的にキーフレームが挿入されます。
この手法で速く作業できる場合もありますが、トランスフォーム値9つ全てにキーフレームが打たれるので、どうしても煩雑化してしまうのがデメリットです。
アウトライナー
制限の切り替え
右上の漏斗(じょうご)のようなマークから、「制限の切り替え」設定ができます。
デフォルトでは、[ビューレイヤーから除外][ビューポートで隠す][レンダーで無効]の3種類だけですが、[選択可能][ビューポートで無効]も追加可能です。僕はこの2つも追加した状態で、スタートアップファイルに登録しています。
各制限は下記のような性質を持っています。
▼ビューレイヤーから除外(チェックボックスアイコン)
現在のビューレイヤーから除外し、非表示になるだけではなくレンダリングもされません。
▼選択を無効(マウスカーソルアイコン)
対象のオブジェクトやコレクションを選択不可能にします。誤って動かしたくないものがあるときに便利。
▼ビューポートで隠す(目アイコン)
ビューポート上で非表示、つまり「隠すだけ」です(ホットキー「H」と同じ)。見えないだけでそれによる各効果は影響を保ったままです。例えば、別のビューレイヤーやリンク先、パーティクルへの影響やコレクションインスタンスでの複製に対しては有効のままです。
▼ビューポートで無効(モニターアイコン)
上記の「隠す」と非常に似てますが、こちらは非表示にするだけではなく「完全にないもの」にします。つまりそれによる各効果の影響も無効化されます。例えば、別のビューレイヤーやリンク先でも無効になりますし、パーティクルへの影響やコレクションインスタンスでの複製に対しても無効になります。
▼レンダーで無効(カメラアイコン)
レンダリングしないようにします。
ちなみに、Shiftキーを押しながらON/OFFすると、親子付けした子に対しても同時にON/OFFさせることができます。
また、この「制限の切り替え」の設定内では「ホールドアウト」や「間接的のみ」というのも追加できますが、こちらはフォルダ単位での扱いとなり実写合成用にパーツごとにレンダリングしたいときなど、特定の用途で利用します。
階層を選択/削除
右クリックのメニューから、階層になっている(親子付けされている)オブジェクトをまとめて選択/削除ができます。
一気にON/OFFする
Blenderの操作性で快適だなと感じる大きな特徴の一つは、ドラッグで一気にON/OFFすることができる点です。
ドラッグする要領でなぞっていくと、一気に全てをON/OFFすることができます。
名前を一括変換
F2で名前を変更できますが、[Ctrl+F2]で一括で変換することができます。
プロパティ
カメラの表示範囲
前述の3Dビューでの表示範囲設定と同様に、カメラの表示範囲の設定ができます。この範囲外のエリアはクロップされて見えなくなります。
【POINT】
賢い人はここで「じゃあ、初期設定を0.0001m~100000mで登録しておけばいいんじゃね?」というアイデアが思い浮かぶかもしれません。
ですが、広すぎる範囲にした場合、ジャギー(ギザギザ、チカチカしたりする現象)が起きることがあります。
おそらく広すぎる範囲を描写するがゆえ、細かい部分にあてるデータ量が少なくなってしまうからだと思われます。
なので、必要な分だけの範囲を指定してあげることがとても大切です。必要最低限の範囲内に設定してあげることで、最大限にデータを活用できクオリティアップにつながります。
ボリュームの表示範囲(Eeveeのみ)
Eeveeのみですが、上記と同様にレンダープロパティ内の[ボリューメトリック]も表示範囲の指定がありますので、必要に応じた設定が大切です。
ミストパスの範囲設定
カメラプロパティ内の[ビューポート表示→ミスト]をONにすると、ミストパス用のメジャーが表示されます。その後、ワールドプロパティ内の[ミストパス]で範囲指定ができます。
ミストは深度マップとして利用するのはもちろんですが、僕は目視でカメラからの距離感を測るための指標としてたまに使ったりもします。
ワールドの単位や重力設定
シーンプロパティでワールド内の単位を設定することが可能です。
現実と同じサイズのものを作成したい場合などに活用できます。
またワールド全体の重力を変更・固定しておけるので、パーティクルなどのシミュレーション時にその都度重力を調整しなくて済みます。重力Zを「0」にしておけば、終始無重力空間でのシミュレーションができます。
スローモーションのやり方
出力プロパティ内の[タイムストレッチ]機能を使えば、簡単にスローモーションが可能です。逆に早回しもできます。
▲例えば、「新規」を「200」にすると2倍のスローモーションになる
【POINT】
残念ながらこれで可変スローモーションにはできないんですが、僕がそういった演出する場合は「通常速度」と「スローモーション」を2つレンダリングして、編集ソフト上でつないだりしています。
Delta transformで微調整
オブジェクトプロパティ内の[デルタトランスフォーム]は通常のトランスフォームとは独立して、移動・回転・スケールを調整できます。
めちゃくちゃキーフレームを駆使してアニメーションを作ったのに、最後の最後で「ちょっと移動させたい、でもキーフレーム調整めんどくさい」ってことありませんか?
そんなときでも、これを知っておけばちょっとしたときに役立ちます。もちろん予めエンプティなどに親子付けしておくことも大切ですよ。
孤立データとフェイクユーザー
Blenderを使う上で知っておきたい概念として「孤立データ」というものがあります。これはどこにも利用されていないデータのことです。
特にマテリアルを扱う際に要注意なのですが、例えば、マテリアルを作成してもどのオブジェクトにも割り当ててない場合は、「孤立データ」となります。
▲マテリアルの名前の前に「0」がついてるものは「孤立データ」のこと
そしてこの「孤立データ」は、プロジェクトを保存しても次に開くときには自動的に消えることになっています。
一見不便そうですが、膨大なデータを扱うCG制作ではむしろ不要なものは自動的に捨ててくれた方が整理されるというメリットもあります。
もちろん「今は使わないけど保存しておきたい!」という場合もあるでしょう。そんなときは、[フェイクユーザー]という機能を使って守ってあげる必要があります。
▲この盾のアイコンをONにすると、「フェイクユーザー」を設定できる
▲フェイクユーザーにすると、マテリアルの名前の前に「F」がつく。これでデータを守ってくれる
ちょっとややこしいのですが、大事そうなデータはとりあえずフェイクユーザーに設定しておく癖をつけておくといいでしょう。
【POINT】
なぜフェイクという名前なのかというと、「仮で誰かが使っているよ!」としておく→「孤立データにならない」→「自動的に消えない」という仕組みだからですね。
レンダリング
ビューで画像/動画をレンダリング
通常のレンダリングとはちがい、3Dビューに映し出されているそのままの状態をレンダリングすることができます。
上部メニューから[ビュー→ビューで画像/動画をレンダリング]から行えます。プリビスやメイキング作成時に重宝します。
インターフェイスを固定
レンダリング時にインターフェイスを固定し、レンダラに当てるメモリを増やすことを優先できます。
最上部メニューの[レンダー→インターフェイスを固定]をONするだけです。
FlipFluidなどの重たいアドオンは、ここが有効になってないと落ちたりします。レンダリング中に変に触らないためにも、僕は基本的にONにしています。
8つのレンダリングスロット
レンダリング時にレンダー画像がポップアップされますが、ここには8個のメモリスロットが搭載されています。
つまり8種類の異なるレンダー画像をストックしておけるのですが、キーボードの1〜8を押すと各画像に切り替えることができます(プロジェクトを閉じると消えます)。
これの何が良いかっていうと、ブラッシュアップしていくときに以前のものと比較していけるのです。「1つ前のバージョンと比べてどっちが良いだろう」「Aパターン、Bパターンを見比べたい」……そんなときに便利です。というか、なくてはならない機能です。
波形の出し方
ポップアップしたレンダー画像上で「N」キーを押すとサイドパネルが出てくるので、その中の[スコープ]で表示させることができます。
また画像エディター、またはUVエディター上で[Render Result]を選ぶことでもサイドパネルから表示させることができます。
範囲指定してレンダリング
[Ctrl+B]で「レンダー領域」を指定して部分的にレンダリングすることができます。
全体をレンダリングするより短い時間でレンダリングできるので、サクッと部分的にチェックしたいときなどに便利です。
▲通常のサイズに戻したい場合は、出力プロパティ内の[フォーマット→レンダー領域]のチェックを外せばOK
ビューレイヤーごとにレンダリングのON/OFFができる
複数のビューレイヤーが存在している場合でも、特定のビューレイヤーだけレンダリングさせないって、ことができます。
ビューレイヤープロパティ内の[レンダリングに使用]をOFFにしておくと、それを除いてレンダリングしてくれます。例えば、レンダリング後に「特定のビューレイヤーのみ修正したい!」ってときに、必要な分だけレンダリングできるので時間短縮になります。
今回は、以上です。
これからも様々な効率化TIPSを紹介していくので、次回もご期待ください。感想やリクエストもぜひ!
- CGアーティストTaka Tachibana
台北在住。CAPSULE Inc. / CHINZEI Inc. 所属。福岡で10年間のフリーランスを経て、台湾ではMVやweb広告などの映像制作に従事。その傍ら3DCG・VFXを駆使した作品づくりに取り組む。ASEAN-ROK Film Leaders Incubator日本代表。Short Shorts Film Festival & Asiaをはじめ、国内外70ヶ所以上の受賞・入選歴。https://taka-t.com/
Blenderライフハック@b3d_lfhck
この連載では、実写VFX系のBlenderユーザーとして知られるTaka Tachibanaさん( @taka_tachibana )が、Blenderによる3DCG制作をより効率的に行うためのTIPSを紹介します。 作業効率を高めるためのBlender...
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