BTOパソコンで知られるマウスコンピューターの3DCG・映像制作向けシリーズ PC「DAIV」。
Blender ユーザー向けにピックアップした3モデルを比較・検証した第1弾に続いて、第2弾となる本企画。
【Blender】VFXアーティストが選ぶ!DAIV PC!ポイント解説つき
BTOパソコンで知られるマウスコンピューターの動画・映像編集向けシリーズPC「DAIV」。本稿では、映像ディレクター・VFXアーティストの涌井 嶺氏に、スペックの異なる3モデルを試用して検証して...
今回は、3DCGプロダクション「StudioGOONEYS」でシステムエンジニアを務める吉田和貴氏と草柳研也氏に、PC 選びに欠かせない基礎知識の解説から、スペックの異なる3つのノートPCでMayaを使用したパフォーマンス検証まで実施してもらった。
まず前編となる今記事では「3DCG制作向けノートPC | Mayaを使って、価格別3モデルの実力検証」を、後編となる記事では「PCの基礎解説&選び方 | 3DCG制作におけるCPU・GPUの役割とは?」を紹介する。
吉田和貴/Kazuki Yoshida
東京デザイナー学院出身。在学時は、After Effectsでの2Dグラフィックのコンポジットなどをメインに学ぶ。入社3年目。
草柳研也/Kenya Kusayanagi
日本工学院・CG映像科出身。在学時は3DCG制作を学び、CG系専門学校の教員を経て、昨年、システムエンジニアとして中途入社(1年目)。趣味は自作PC。
今回検証する3台はこちら!
今回検証したのは、DAIVノートPCのうちの3台。
3DCGデザイナーの日々の作業を模して、Mayaでの操作や処理スピードをベンチマークしていく。
※DAIV 6P-RTとDAIV 4Nの試用機は、メモリを32GBにカスタマイズ|追加料金:15,400円(税込)
アニメーションプレビューのfps検証
まずは、アニメーションプレビューのfps検証を行なった。検証には、GYAROMI『クトゥルフオイド』のフリーリグを使用。24fpsで作られた14フレームループアニメーションだ。
© Gyaromi
【GYAROMI(ギャロミ)】
「あなたの隣にいるかもしれない、ダウンの中に潜む怪物達!!それが『オイド』!!!」というコンセプトの元、イカしたストリートスタイルに身を包む『オイド』たちを制作する、人気急上昇中のソフビメーカー。
・ショップ:https://gyaromi.official.ec/
・公式Twitter:https://twitter.com/gyaromi
・公式Instagram:https://www.instagram.com/gyaromi/
<検証内容>
このモデルに対して2種類のサブディビジョンレベルでスムーズメッシュプレビューをかけ、74000ポリゴン、140000ポリゴン、300000ポリゴンで表示する。これらのシーンについて、最大フレームレートを30に設定してから、ビューポートでのアニメーションプレビューを実行した際のフレームレートとCPU使用率を比較した。
評価モード : Parallel
GPUオーバーライド : 有効
キャッシュ : 無効
メモリリミット : デフォルト(50%)
74000ポリゴン
①DAIV 4N
②DAIV 6P-RT
③DAIV 6H
140000ポリゴン
①DAIV 4N
②DAIV 6P-RT
③DAIV 6H
300000ポリゴン
①DAIV 4N
②DAIV 6P-RT
③DAIV 6H
74000ポリゴン×5
①DAIV 4N
②DAIV 6P-RT
③DAIV 6H
比較・検証結果
検証結果としては、DAIV 6HとDAIV 6P-RTについてはアニメーターが快適に作業できるフレームレートのしきい値である20fpsを越えており、日々の制作作業で頻繁に遭遇するシーンの操作にも耐えられることがわかった。
続いて、アニメーションが設定された5つのキャラクターモデルを同一空間内に配置したシーンのプレビューを実施。同様にフレームレートとCPU使用率を比較した。
検証結果としては、「モデルが増えるとリグの処理数も増えるので、CPUの使用率に大きな差出てきています。ただし、DAIV 4Nは負荷がかかりすぎないようにリミッターがかかって、使用率が大きく跳ね上がりませんでした」と草柳氏。
ソフトウェアレンダリング時間の検証
続いて、ソフトウェアレンダリング時間の検証には、GYAROMI『クトゥルフオイド』フリーリグの74000ポリゴンのモデルを使用。
© Gyaromi
ラメ感・ツヤ感たっぷりのリッチな質感が特徴のモデルで、レンダリングによる CPU 負荷はかなり高くなる素材である。
これをArnoldでフルHD、160フレームをレンダリングした。
比較・検証結果
レンダリングを開始してから完了するまでにかかった時間は、DAIV 6Hが2分25秒、DAIV 6P-RTが3分37秒、DAIV 4Nが6分18秒。上位2モデルと4Nの差は少し開いている一方で、6Hと6P-RTの差はあまりない。これはつまり、6Hのスペックが高いがゆえ、負荷が低いまま推移したものと想像できる。
Zabbixによるハードウェアの監視結果
検証の最後に、ネットワーク管理ソフトウェアの「Zabbix」を使って、CPU・GPU・メモリの使用率と、CPU温度を計測してもらった。
CPU・GPU・メモリの使用率
CPU温度
吉田:DAIV 4Nについては、入門者用のマシンとしてはまんべんなくいろいろ使って賢くやっているなという感じです。もちろん6P-RTや6Hと比べるとレンダリング時間はかなり長くなってしまいますが。消費電力が少なめなので CPU の平均温度 50℃ あたりをキープしていて、デスクでレンダリングしていても問題なさそうです。
DAIV 6P-RT は安定度が高い結果に。一般的に、CPU 温度が 80℃ 近辺を超えると処理が遅くなり、パーツの寿命も短くなるが、6P-RTの場合、レンダリング中でも 65〜67℃ ぐらいに抑えられていた。
吉田:GPUの処理が強く入る箇所に関しても、必要なフレームがあればGPU処理が入って、そのGPU処理が必要なくなったら離すという感じでとても効率が良いですね。
DAIV 6H は、CPU・GPU 使用率がどちらも低く、まだまだ余力があるという印象。
吉田:プライベートでイベントの裏方をやったりするのですが、リアルタイム処理ではこのくらいのスペックが必要になるので、持ち運びができるこれはすごく助かりますね。
総評
3DCG 制作の導入としては DAIV 4N で問題ない
3DCG 制作はそもそもが PC のスペックを要求するものだが、これから 3DCG を始めるような初心者であれば DAIV 4N から手を付けても良いだろうと、吉田氏。
吉田:個人的に気に入ったのが、今回検証した中で唯一 DAIV 4N だけが、LAN を接続するためのポートを備えているところです。より軽く薄くを追求すると、どうしても側面のポートの数が制限されたりするので、そういうところも気にして選んだ方が良いかと思います。Wi-Fi で繋ぐと、どうしても転送速度に対して制限がかかってしまうことがあるので。
草柳:最近のノートPCは Wi-Fi を前提にすることが多く、有線やHDMIを省いて、いわゆるUSB Type-CやThunderboltで映像出力を全部まかなってしまうのも増えてきている印象ですね。
DAIV 6P-RT は、価格とスペックのバランスが ◎
吉田:DAIV 6P-RT は、総合的に見て最もコスパは良いと感じました。普段使いのデスクトップが別にあって、ラップトップにデータを移して外で作業やチェックをできるようにしたいという人に特にオススメできます。
今回の検証やベンチマークでは、DAIV 6P-RTとDAIV 6Hの間に特段大きな差が生じなかったことから、ある程度の作業までであればこちらの6P-RTで完結できそうだ。
外で制作作業を完結させるなら、DAIV 6H
ハイエンドの DAIV 6H は、Core i9-12900H と GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU のパワーが生きる作業でその優位性が際立つ一台。
吉田:緻密で巨大なシーンデータを扱う 3DCG 制作案件や、Nuke・After Effects などによるコンポジットまで見据えた場合には、とても頼もしい選択肢になります。
最近ではコンポジットツールはもちろん、ライブ配信ツールや Web ブラウザまで GPU アクセラレーションに対応しているため、DAIV 6H に搭載された RTX 3070 Ti Laptop GPU のパワーは多方面で活かされるはずだ。
制作環境全体のチューニングも大切
制作環境としての PC はいわば屋台骨だが、それを支える環境にも配慮をしてほしいと話す草柳氏。
草柳:例えば、今回のようにノート PC の場合はマウスを別に用意しますよね。たかがマウスと思われるかもしれませんが、良いものを選ばないとすぐに手が疲れてしまいます。他にも、例えば長時間作業する体を支える椅子も大切です。
数年ごとに買い換えが必要となる PC だからこそ、適切な知識を持ち、時折その情報を更新していくことが求められる。本稿がそのアップデート作業の一助となれば幸いだ。
コメントする