PCの基礎解説&選び方 | 3DCG制作におけるCPU・GPUの役割とは?

Sponsored by 株式会社マウスコンピューター
2023.02.24 (最終更新日: 2023.03.13)

BTO パソコンで知られるマウスコンピューターの3DCG・映像制作向けシリーズ PC「DAIV」。

Blender ユーザー向けにピックアップした3モデルを比較・検証した第1弾に続いて、第2弾となる本企画。

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今回は、3DCGプロダクション「StudioGOONEYS」でシステムエンジニアを務める吉田和貴氏草柳研也氏に、PC 選びに欠かせない基礎知識の解説から、スペックの異なる 3 つのノート PC で Maya を使用したパフォーマンス検証まで実施してもらった。

前編3DCG制作向けノートPC | Mayaを使って、価格別3モデルの実力検証に続き、後編となる本稿では「PC の基礎解説&選び方 | 3DCG制作におけるCPU・GPUの役割」を紹介する。

3DCG制作向けノートPC | Mayaを使って、価格別3モデルの実力を検証!

BTOパソコンで知られるマウスコンピューターの3DCG・映像制作向けシリーズ PC「DAIV」。 Blender ユーザー向けにピックアップした3モデルを比較・検証した第1弾に続いて、第2弾とな...

吉田和貴/Kazuki Yoshida
東京デザイナー学院出身。在学時は、After Effects での2Dグラフィックのコンポジットなどをメインに学ぶ。入社3年目。
草柳研也/Kenya Kusayanagi
日本工学院・CG映像科出身。在学時は3DCG制作を学び、CG系専門学校の教員を経て、昨年、システムエンジニアとして中途入社(1年目)。趣味は自作PC。

制作用PCで重要になるスペックとは

DAIVのようなBTOパソコンを購入する際には、スペックについてある程度の知識を持っていることが望ましい。そこで今回はまず、3DCGや映像制作で重要になる PC のスペックとパーツについて理解を深めていこう

吉田 和貴氏(以下、吉田):ざっくりと言えば、CPU は頭脳、メモリは作業机、GPU は映像出力処理装置、VRAMはGPUの作業机、SSDや HDD といったストレージが保存箱です。

それぞれ、次から詳しく見ていく。

CPU(Central Processing Unit、中央演算装置)

PC における“頭脳”に当てはまる CPU

Intel 製であれば Core i7 や i9 などのことで、基本的に数字が大きい方が性能が良い。そして、ハイフン以下の数字 2 桁は世代を表す。例えば、Core i9-12900H であれば第 12 世代、Core i7-13700F であれば第 13 世代というわけだ。制作用 PC の場合、i7 または i9 を搭載した PC が多い。

メモリ(RAM、Random Access Memory)

メモリは、PC を置く“作業机”といえる。

机は広ければ広いほど作業効率が上がり、スピーディに作業ができる。昨今では16GBや32GBが一般的だが、ハイエンドでは128GB~256GBを搭載することも珍しくなくなった。

草柳 研也氏(以下、草柳):StudioGOONEYS の場合、コンポジターやエフェクター向けのマシンには RAM を 64GB 以上、重い案件にアサインされる方には 128GB を積むようにしています。
一方、モデラーやアニメーターは、約 2 年前までは 16GB だったのですが、現在は 32GB。よりプレビューを速くするためです。

メモリを増やすことによって、例えばMaya ではアニメーションのプレイブラスト(簡易レンダリング)を書き出す際などに、処理時間の短縮が感じられるという。

なお、今回検証するノート PC の場合、CPU の負荷が高くなりコアボードの温度が上昇すると、それ以上温度を上げないようロック数を落としてパーツを熱暴走から守る「サーマルスロットリング」という機能がある

草柳:この現象が起こると作業効率が下がってしまうため、マウスコンピューターさんも販売している、ノート PC の下に敷くクーラーパーツを活用することをオススメします。PC を傾けて置ける台にもなるので、作業自体もしやすくなりますよ。

クーラー使用イメージ

GPU

GPU(Graphics Processing Unit、画像演算装置)と CPU の違いについて吉田氏は、「計算をしてくれる専用の計算おじさん(CPU)と、画面を書き出してくれる美術おじさん(GPU)がいる、そういう認識です」と解説。

より詳しく説明すると、与えられた処理を上から順番に1つずつ行うのを得意とするのがCPU与えられた処理を特定のグループに切り分けて(インスタンス化)並行してまとめて行うのを得意とするのがGPUということだ。

多くの場面において、画面を書き出す際には並行で一気に処理するため、GPUが主流で使われている。

具体的な GPU のスペックとして、NVIDIAの GeForce シリーズの場合、GTX シリーズより RTX シリーズの方が新しい。また、レイトレーシング(光の反射や屈折の描画)を、リアルタイムでより高速に描画するためのRXコアが搭載されている。

世代表記は多岐にわたり複雑だが、現行ベースでは 4桁の数字のうち前の 2 桁が世代を表すため、例えばRTX 2080とRTX 3070では3070のほうが新しく性能が良い。そして、下の 2 桁は 50 から 90 まであり、数字が多い方が性能が良いということになる。

なお、GeForce シリーズはゲーミング PC もカバーする GPU だが、コンテンツ制作用に特化したプロ向けの GPU として、NVIDIA RTX A4500 といったものもある。

また、安価なノート PC の場合、Intel であれば「Iris Xe グラフィックス」といった内蔵 GPU を搭載したモデルもあるが、性能としてはかなり限られることは覚えておきたい。

CGプロダクションのスタッフ用 PC は、何を担当するかによってスペックが変わっていくが、特に「プレビュー作業でより多くの時間を使うモデラーやリガー、アニメーターのPCは、コスパの良いGPUと性能の良いCPUが大切だと思います」と吉田氏は話してくれた。

ストレージ

ストレージについては、ハードディスクよりも高速で読み書きができる SSD が主流になっているが、SSD にもさらに違いがある。
吉田:従来から知られているのはハードディスクをひと回り小さくしたカード状の SSD です。

SSD にはもうひとつ、M.2 SSD という、メモリのように細長い板のような形状のものがあります。むしろ最近ではこちらの方が主流で、NVMe という接続方式を採用しているため転送速度が速くなってきています。

草柳:ただし、M.2 SSD を効果的に用いるには熱対策がかかせません
デスクトップの話ですが、長時間運用すると熱がこもって性能が低下してしまったケースがありました。そこで、ヒートシンクとファンを使って別途排熱構造を作って運用しています。

データのバックアップは必須

StudioGOONEYS では、作業データはストレージサーバ上で運用しており、毎週日曜にバックアップのタスクをスケジュールしている。全ストレージデータの中から編集差分を検出して、バックアップサーバにコピーするというものだ。

それだけでなく、各デザイナーの PC についても、それぞれバックアップ用デバイスを用意してもらっている。

草柳:どんな PC も故障からは逃れられませんからね。せっかく作ったデータがバーンと全部消えてしまうことは珍しくないですから、外付けの SSD か HDD で定期的にバックアップするのが大事です。

3DCG 制作を始めたばかりの人や個人クリエイターは見落としがちだが、ぜひ覚えておいてほしいポイントだ。

各セクションごとに重要視する項目

PC を選ぶ際に気を付けるべきポイントを、職種別に順位付けしてもらった。前段で PC のスペックとパーツについて理解を深めた上で、各項目をチェックしてみよう。

モデラー/リガー/アニメーター

  1. なるべく性能が良く、コスパの良いCPU
  2. 単体クロック数の高いCPU
  3. CPUのコア数に合ったメモリ(32GB程度)

コンポジター/2Dデザイナー

  1. できれば64GB以上のRAM
  2. 読み書き速度が速く、容量の大きいディスク
  3. 転送速度の速いLANポート

エフェクター/ジェネラリスト

  1. 性能の良いグラフィックボード(RAMが多ければ多いほど良い)
  2. 64GB以上のRAMが望ましい

レンダーPC (Maya 、Houdini)

  1. コア数の多いCPU
  2. CPUクーラー
  3. 放熱用のヒートシンク
  4. VRM回路を冷やすファン

レンダーPC(After Effects、Nuke)

  1. 大量のRAM
  2. RAM4GBに対して1コアのCPU
  3. CPUクーラー
  4. VRM回路を冷やすファン

Mayaでは、CPUとGPUがどう働いているのか

ここからは、特にCPUとGPUが 3DCG 制作でどのような役割を果たしているかについて、Mayaの特徴を踏まえながら解説していく。

Maya での作業の大半は、ビューポートを通してシーンを見渡し、操作して行われる。このビューポートは現在の Maya において「ビューポート 2.0」というハードウェアレンダラにより描画されており、この描画スピードは CPU と GPU の両方に依存する

吉田:ビューポート 2.0 は作業時のプレビュー処理ということですが、GPU は 3D モデルやエフェクト、パーティクルなどオブジェクトの位置を計算して表示しています。一見 GPU で完結していそうですが、そうではなく、オブジェクトやリグのデフォーム、エフェクトのノードなどの計算は CPU が行なっているので、両方に依存するのです。

今回、After Effects、Nuke、Unreal Engine、Houdini を使用する場合の編集作業時とレンダリング処理時における特徴や注意点についても解説してもらった。各ツールをよく使うという方は、ぜひ参考にしてみてほしい。

After Effects


【デザイナーPCでの編集作業時】
・大量のキャッシュが生成されるため、高速な M.2 SSD、RAM は 64GB 以上が望ましい
・GPU は GTX 1660 Ti / Super でおおよそ問題ない

【レンダリング処理時】
・CPU のマルチスレッド処理ではコア数よりクロック数を重要視するため、1 コアのクロック数がブースト時に 4.5Ghz 以上出るものを選ぶと良い
・最近では、性能を効率よく使用するためにAfter Effects自体がアップデートされているため、使用するバージョンによって要求スペックが変わることもおさえておくと良い

Nuke


【デザイナーPCでの編集作業時】
・高速なデータの読み書き環境とキャッシュを保持するための RAM が必要
・GPUは GTX 1660 Ti / Super でおおよそ問題ない
・GPUアクセラレーションを利用する場合は、CUDAに対応するGPUを購入した方が良い

【レンダリング処理時】
・CUDA レンダリングや 3D を扱うプラグインを使用しないのであれば、GPU はそこまで重視しなくてもよい

Houdini


【デザイナーPCでの編集作業時】
・シミュレーションの試行錯誤などを行う場合、RAM は 32GB 以上が望ましい
・より高速に処理したい場合は、RAM を増やすのがオススメ

【レンダリング処理時】
・Mantra と Karma の 2 種類のレンダーノードがあり、Mantra は CPU を、Karma は GPU を使用してレンダリングを行う(Houdini 19 以降は Karma でも CPU レンダリングが可能)
・流体シミュレーションを行う場合は、64GB 以上の RAM が望ましい

Unreal Engine


【デザイナーPCでの編集(レンダリング)作業時】
・基本的にゲームエンジンではリアルタイムレンダリングを行うため、GPU が重要
プロジェクトの起動時、素材の読み込みには GPU の VRAM を使用するため、大量のオブジェクトを扱うゲームやライブ案件などでは、12GB以上のVRAMが望ましい。
なお、RTXシリーズを採用しておくと、リアルタイムでよりリッチな画作りができる
・ミドルレンジでよい場合、TGP(消費電力)が 160W の GeForce RTX 3060 などが選択肢にあり、より快適さを求める場合は GeForce RTX 3080 もある
・CPU のコア数も重要視され、3Ghz 以上のクロック数であれば安定して動く

マルチコア CPU の性能を活かす評価モード

また、CPU については、1 つの CPU に複数の頭脳が詰まった「マルチコア」が主流であり、Maya でもマルチコアの性能を活かしてビューポート表示を高速化する「評価モード」の使い分けもポイントとなる。

Maya の評価モードは DG(Dependency Graph)、シリアル、パラレルの 3 種類があり、Maya 2015 以前は DG のみだった。
吉田:パラレルが全てのコアを使ってシーンのノードを並行処理するため、最も高速です。シリアルはコアを 1 つだけ使ってパラレルと同じ処理をするもので、どちらかというとデバッグや検証用の機能です。

従来の DG が今も残されている理由は、レガシー機能の用いたシーンでプレビューにエラーが出てしまうことがあるため。過去の案件を操作する場合に用いられるほか、リガーやジェネラリストの中には好んで DG を使う人もいるそうだ。

なお、シリアルが存在する理由も DG のそれと似た部分がある。

吉田:デザイナーからよく聞くのが、ペイントエフェクトや PFX といった機能を使ったシーンをパラレルで処理しようとすると、その機能が並行処理に対応していないため警告が出て勝手にシリアルに移行されるといったことが起こるようです。

数えきれないほどの機能を備えた Maya だからこその現象だが、気づかないうちに問題のあるシーンが完成してしまわないよう、覚えておきたい。

ソフトウェアレンダリングとハードウェアレンダリング

Maya には、標準で CPU を使うソフトウェアレンダリングと、GPU を使うハードウェアレンダリングという 2 種類が搭載されている。

吉田:速度はハードウェアレンダリングの方が高速ですが、GPU 特有のノイズが乗ってしまいます。そのため、基本的にスタジオや個人制作でクオリティの良い映像をレンダリングする際にはソフトウェアレンダリングをかけることが多いですね。

Maya に標準搭載の Arnold レンダラは、ハードウェアレンダラとしてもソフトウェアレンダラとしても利用できるが、吉田氏は、やはりノイズの問題からソフトウェアレンダラとして利用することを推奨する。

吉田:GPU レンダリングの場合、仕様的に構造物などの入り組んだ場所や、間接光が入っていくところに対するアンビエントオクルージョン処理の計算などは、ノイズが入るリスクが高まると思います。

StudioGOONEYSが選ぶ、オススメPCは?

ここまでのPC選定のポイントを踏まえ、3DCG制作にオススメのノートPCを3台ピックアップし、Mayaを使ったパフォーマンス検証を行なってもらった。
アニメーションプレビューのfpsや、ソフトウェアレンダリング時間など細かく比較・検証。

検証結果の記事はこちら

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PC選びの参考に、ぜひ目を通してみてほしい。

DAIV 4NDAIV 4NDAIV 6P-RTDAIV 6P-RTDAIV 6HDAIV 6H
CPUインテル® Core™ i7-1260P プロセッサーインテル® Core™ i7-12700H プロセッサーインテル® Core™ i9-12900H プロセッサー
メモリ16GB (8GB×2 / デュアルチャネル)32GB (16GB×2 / デュアルチャネル)
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