【Blenderライフハック】第3回:パイメニューを使い倒す!※データ配布あり

2023.02.27 (最終更新日: 2023.02.27)

CGアーティストのTaka Tachibanaです。

Blenderのあらゆる効率化Tipsをお届けしているBlenderライフハック。第3回目になる今回は、Blenderを操作するには欠かせない存在「パイメニュー」についてのTipsを紹介していきます。

「パイメニュー」とは、上図のように円形のメニューを表示させて操作性を向上してくれるものなのですが、つまりたった1つのキーだけでいくつもの操作が可能になるめちゃくちゃ素晴らしいものなのです。

すでにBlenderを使っている人たちにとってはお馴染みだと思いますが、定番のパイメニューから隠されたパイメニュー機能、そして下図のようなオリジナルのパイメニューを作成するやり方まで解説してみたいと思います。

僕は元々実写制作をしていたのでFinal Cut Pro、Premiere Pro、DaVinci Resolveと様々なソフトを使ってきましたが、この「パイメニュー」という概念に初めて出会ったのがBlenderでした。当初すごく感動したのを覚えています。パイメニューを使い倒せると操作が爆速になりますよ。

それからはもうこのパイメニューの魅力にハマり、今ではオリジナルのパイメニューを作成して活用しています。

有料の外部アドオンが必要にはなりますが、コードの知識がなくても簡単にパイメニューが作れるんです。

今回は、僕が作成したパイメニューデータを配布しますので、気になる方はぜひ使ってみてください!詳細は記事の後半で解説しております。

※この記事を執筆時のバージョンは「3.3.3」です。

標準パイメニュー

Blenderには標準で様々なパイメニューが搭載されていますが、まずは定番のもの、個人的にオススメのものをいくつか紹介します。

標準パイメニューは他にもいくつかありますが、左手で押しやすく使用頻度の高いものを選出しました。

モード [Tab]

デフォルトでは[Tab]キーを押すごとに「オブジェクトモード」と「編集モード」を切り替えることができますが、[プリファレンス→キーマップ]の設定からパイメニューに変更することができます。

[Tab for Pie Menu]をONにすると、モードパイメニューが有効になります。

その下の[Pie Menu on Drag]をONにすると、ドラッグしたときだけにパイメニューが有効になります。好みに合わせて設定してみてください。

シェーディング [Z]

定番のシェーディングのパイメニュー。こちらも[プリファレンス→キーマップ]の設定から項目を追加できます。

[Extra Shading Pie Menu Items]をONにすると、「オーバーレイ切り替え」と「透過表示を切り替え」を追加することができます。僕はこちらを使っています。

スナップ [Shift+S]

  • 「3Dカーソルをワールド原点に戻す」
  • 「3Dカーソルの場所にオブジェクトを移動」
  • 「オブジェクトの原点に3Dカーソルを移動」

……など、非常によく使うスナップ系の操作をまとめたパイメニュー。

視点切り替え [`]


Blenderではテンキー操作での視点切り替えが一般的だと思いますが、実は[`]キーのこちらのパイメニューで同じことができます。

ただ日本語キーボードは [`]キーの位置が左手から遠い場所にあるので使い勝手は良くないかもしれません。

USキーボードでテンキー付きなしの人はこのパイメニューが助けになってくれそうです。

あとテンキー操作って右手をマウスから離してしまうので、それが嫌だって人にもオススメですね(僕みたいに)。

【POINT】
日本語キーボードの方も後述する純正アドオンを有効にすれば、[Alt+Q]で同様の操作を行うことができます。むしろそちらの方が多機能です。

ちなみに、こういったソフトウェアの設定は英語基準で設定されているため、日本語キーボードよりはUSキーボードの方がショートカットキーが押しやすいことが多いです。

トラッキング [E]


モーショントラッキング専用になりますが、非常に便利なトラッキングパイメニュー。

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純正アドオンパイメニュー

実は純正アドオンでさらにパイメニューを拡張することができます。最初から搭載されているアドオンなのでチェックをONにするだけで誰でも使えます。


アドオン設定で[3D Viewport Pie Menus]をONにしてみましょう。

すると見てください。この溢れんばかりのパイメニューたちを。

では、この隠されてきたパイメニューの中からオススメをいくつか紹介しましょう。

アニメーション [Shift+Spacebar]


再生ヘッドを先頭に戻したり、直近のキーフレームに飛んだりできるパイメニュー。

削除 [X]


頻繁に使う削除系のパイメニュー。

原点 [Ctrl+Alt+X]


「ジオメトリを原点に移動」「原点をジオメトリに移動」「原点を3Dカーソルに移動」などの原点操作系パイメニュー。

そして特筆すべきは、[Origin to Bottom]という項目です。原点をオブジェクトの底辺に移動してくれるのですが、もう超絶に便利です。

例えば、地面にビルや植物を配置するときに、そのオブジェクトの底辺に原点があった方が拡大や回転の処理がしやすくなるわけですが、このパイメニューでの処理だと瞬殺です。

「Origin to Bottom」を適用後、[Alt+G]で位置をキャンセルするだけ。すると底辺をピタッと地面に設置することができます(正確にはZ位置0m地点に底辺が移動する)。

これだけのためにこのアドオンを有効にしてもいい、と思えるくらいオススメの機能です。

視点切り替え[Alt+Q]


標準パイメニューで紹介した視点切り替えのパイメニューと同様の操作が可能です。むしろこちらの方が多機能です。

「透視投影」⇄「平行投影」の切り替えや、全体表示、選択をフレームインなどのテンキーで行う操作を網羅し、さらに「カメラをビューにロック」などカメラ関係もまとまっています。

外部アドオンパイメニュー

外部アドオンでもパイメニュー関連のものはたくさんありますが、今まで使った中で使い勝手の良かった「MACHIN3tools」を紹介します(BlenderMarketでは有料なのですが、Gumroadだと無料で入手できます)。

MACHIN3toolsにはたくさんのオリジナルパイメニューが搭載されていますが、その中でも個人的オススメをいくつかピックアップ!

Modes Pie [Tab](モード切り替え)


Modes Pieでは直接「頂点編集モード」「辺編集モード」「面編集モード」に切り替えることができます。

例えば面を編集したいとき、通常は、

  1. 「オブジェクトモード」から「編集モード」に切り替える
  2. 「面選択モード」を選択する

という2段階の操作が必要ですが、Modes Pieだと直接「面編集モード」に入れるので一段階で済みます。よってワンテンポ速く作業に入れます。

Save Pie [Ctrl+S](保存系)


Save Pieには保存や読み込み系のメニューがまとまっています。右下の「Incremental Save」では自動的にバージョンをカウントアップして保存してくれます。地味に便利です。

Align Pie [Alt+A](整列系)


Align Pieには、頂点を揃えたいときに有効な整列系のメニューがまとまっています。

純正アドオンの方でもこの整列パイメニューはあるのですが、こちらの方がシンプルで使いやすくオススメです。

Cursor and Origin Pie [Shift+S](3Dカーソル&原点系)


3Dカーソル系と原点系の二系統を一つにまとめてあるパイメニュー。しかも必要最低限の機能に絞っていてシンプル。標準や純正アドオンのものよりも使いやすいです。

オリジナルパイメニューを作成する


有料(12ドル)にはなりますが、「Pie Menu Editor」というアドオンを使えば気軽に自分だけのオリジナルパイメニューを作成することができます。

ホットキーも自由に設定でき、1つのパイメニューに対して最大10個の項目を登録できます。

しかもパイメニュー以外の多様なメニュー方式でも作成することができますし、なんとマクロ機能まで搭載しています。つまりコードを書く知識がなくても、エクセルのマクロ機能のように自動化処理を構築することができるのです。

この「Pie Menu Editor」は僕にとっては最も欠かすことのできないアドオンです。Blenderの作業効率化にめちゃくちゃ貢献してくれてる素晴らしいアドオンなので、興味のある方はぜひ使ってみてください。

実は「Pie Menu Editor」は、けっこう古いアドオンで近年のアップデートもなく、最近Blender Marketからも姿を消してしまいました。今は唯一Gumroadで購入はできますが、いつか販売しなくなっちゃうのかなぁという心配が正直あります。気になる方は早めにGETしてた方がいいかもしれません。

基本的な設定の仕方

設定は下記のようにとても簡単で、標準の「お気に入りツールに追加」と同じ要領でできます。

  1. 登録したいメニュー項目上で右クリック
  2. 「Pie Menu Editor」を選択
  3. 配置したいパイメニューの位置を選択

アドオン設定画面では登録したメニューの一覧が並び、ここから編集や新規登録、ホットキーの割り当て、マクロ作成などが行なえます。

作成できるメニューは「パイメニュー」だけではなく、いろんなメニュー型式があります。僕は「Pie Menu」「Regular Menu」「Popup Dialog」「Macro Operator」の4種類をよく使います。

詳しい設定の仕方は公式チュートリアルに譲るとして、最後に参考例として僕が今まで作ってきたオリジナルパイメニューをいくつかご紹介します。

【POINT】
ここに読者のみなさまにプレゼント!ということでこちらから僕が作成したオリジナルメニューのカスタムデータを配布します。使ってみたい方はぜひ。

▲設定画面の左下の「Import」から読み込むだけでOK
ホットキーは[Q]キーを中心に割り当てていますが、もちろん自由に設定しなおしていただいて構いませんし、削除したり追加したりご自身のお好きなようにセットアップしてみてください。

Pie Menu - Camera / Keyframe [Q]


個人的にCG制作で必ず行う操作「カメラ」と「キーフレーム」関連をまとめたパイメニュー。左側はカメラ関係、右側はキーフレーム関係に分けています。

左下の「Create Camera From View」は僕がマクロを組んで作成したもので、3Dビューの角度のままカメラが新規作成されるものです。

このようにカメラの作成や切替関係がこのパイメニュー左側のみで大体事足ります。

キーフレーム挿入[I]キーも普通は左手でかなり押しにくいのですが、これだと左手を動かさずに基本的なキーフレーム挿入が行なえます。

Pie Menu - MISC [Alt+Q]


「MISC」とはその他いろいろという意味なのですが、その中でも特に3Dビューの上部にあるメニューをまとめています。


この辺をマウスでわざわざ押しにいくのが面倒だったり、プロポーショナル編集のホットキーは[O]キーなのですが、これも左手で押しにくかったり、、、そういうのを集結させました。

Regular Menu [Shift+Q]


この「Regular Menu」タイプではリスト型としてメニューを作成できます。一覧として登録できるので整理整頓がしやすく見やすいです。またチェックを入れるタイプのメニュー項目との相性がいいと思います。

僕は主にファイル、レンダリング、オブジェクト関係でよく使うメニューをリスト化して登録しています。

Popup Dialog - Display [Ctrl+Alt+Q]


こちらは表示関連をまとめています。レンダーの切り替え、オブジェクトの表示方法、ビューの範囲指定、法線の確認、カメラの範囲指定と各種設定など。

「Popup Dialog」タイプはドラッグでパラメーターを操作したり、ON/OFFでありなしを比較したいメニュー項目との相性が良いです(クリックしてもメニューが消えないため)。

Popup Dialog - Shade / Subdiv [Ctrl+Shift+Q]


「滑らかにしたい!」というときによく使うシェード切り替えと自動スムーズ、「サブディビジョンサーフェス」専用のメニューです。

ぶっちゃけ、このメニューでのサブディビジョンサーフェスの操作はめちゃくちゃ速いです。

Pie Menu - Workspace [Shift+Alt+Q]


ワークスペースもパイメニューで移動ができます。一瞬でワークスペース間を移動できるので意外とおすすめ。

「Basic」は僕が自分で作成したワークスペースなので、みなさんの方では適用されません。お好きなワークスペースを入れてみてください。

Pie Menu - Modifier [D]


モディファイアーもパイメニュー化できます。モディファイアーのパイメニューアドオンは有料販売されているのもありますが、自分で簡単に作成できます。しかも好きなものだけ自由に。

このホットキーだけ[D]キーに設定しています。元々は「アノテーション」機能が割り当てられていますが個人的に使わないので。競合する場合はお好きなホットキーを設定してみてください。

Pie Menu - Macro [Ctrl+Shift+Alt+Q]


最後に、マクロ専用パイメニューです。パスへの追従やよく使うモディファイアーの組み合わせをマクロ化してまとめています。

マクロ自体にホットキーも割り当てれるのですが、このようにマクロをまとめたパイメニューを作った方がホットキーの数を消耗せずにお得です。

ちなみにマクロを作成すると下記のようなことができます。

●Camera Constraint Rig [右]

カメラのパス追従とターゲットトラッキングのリグを一発で呼び出せます。あのめんどくさい作業が一瞬です。「Macro Operator」ではこんなことができちゃいます。

●Bottom to Ground [上]

中盤で紹介した「Pivot to Bottom」をベースにマクロ化させ、原点を底辺に移動させてから地面への設置までを一発で行えます。

●Proximity Effect [左]

個人的に好きなモディファイアーの組み合わせをマクロとして登録しています。こういったよく使うモディファイアーの組み合わせもマクロ化しておくと便利です。

まだ開発途中で一発で全工程賄えてないのですが、適用後にターゲットとテクスチャを選択すればエフェクトがすぐに完成します。

マクロの組み方のコツ

あらゆる操作を自動化できるとても強力なマクロ機能なのですが、作成の仕方がちょっとコツがいるので解説しておきます。

このように自動化したい操作項目を順番に入力していくのですが、主にやり方は2種類あります。

  1. Call Operatorを利用
  2. Scriptingのワークスペースでコードをコピペする

こういった作業に慣れてない方は、直感的に作業できる2個目のやり方がオススメです。

1. Call Operatorを利用

▲ [Macro Operator] を新規作成し、右のメニューボタンをクリック

▲ [Edit Slot]をクリック

▲ 右側のメニューボタンをクリック

▲ [Call Operator] をクリック

▲ 追加したい項目を検索して追加

▲ 任意の項目名を入力してOKをクリック(細かい設定もここで調整可能)

▲ 項目が追加される

これを繰り返して、やりたい作業順に並べていきます。

【POINT】
試してみて上手く指令が通らないときは、種類をデフォルトの「Invoke(呼び出す)」から「Exec(実行)」に変更してあげると上手く通ることがあります。

2. Scriptingのワークスペースでコードをコピペする

こちらの方が直感的にマクロを作成できます。スクリプトのワークスペースでは、Blender上で行われているコードの確認ができます。

作業ごとに左下にコードが記述されていくがわかると思います。マクロ化したい作業をして、そのコードをコピーして設定画面で入力してあげます。

基本的にはこれだけでOK。あとは繰り返していくだけです。最初のうちはこちらの方がシンプルでやりやすいかもしれません。

【POINT】
ちなみにコピペしたコードのままだと都合が悪いときがあります。 今回の場合だと、カメラ追加時の回転の値が作業したときのままなので、「0度」に修正してあげると初期値でカメラが追加されます。 値を修正して「適用」をクリックすると、コードが自動的に書き換わります。


今回は、以上です。

こういったメニューを自作できたりカスタマイズできるのもBlenderの面白いところだなと感じます。パイメニューを使い倒すと本当に作業効率が爆上がりするのでぜひ使ってみてください。

これからも様々な効率化TIPSを紹介していくので、次回もご期待ください。感想やリクエストもぜひ!
 

  • CGアーティストTaka Tachibana


    台北在住。CAPSULE Inc. / CHINZEI Inc. 所属。福岡で10年間のフリーランスを経て、台湾ではMVやweb広告などの映像制作に従事。その傍ら3DCG・VFXを駆使した作品づくりに取り組む。ASEAN-ROK Film Leaders Incubator日本代表。Short Shorts Film Festival & Asiaをはじめ、国内外70ヶ所以上の受賞・入選歴。https://taka-t.com/

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