BTOパソコンで知られるマウスコンピューターの動画・映像編集向けシリーズPC「DAIV」。そのデスクトップモデルは、今年1月にシャーシが一新された(※詳しくは、こちら)。
そこで今回は、長野県松本市を拠点に活躍中の映像クリエイターであり、DaVinci Resolve認定トレーナーとしても活躍する井上卓郎氏に、GeForce RTX™ 4090を搭載したハイスペックモデル「DAIV DD-I9G90」をレビューしてもらった。
- 映像家・DaVinci Resolve認定トレーナー井上卓郎(TaQ Inoue)
北アルプスの麓、長野県松本市を拠点に、自然やそこに暮らす人を題材とした映像作品を作ってる。人や自然を演出することなく自然な形で表現することを心がけ、自然の中にゆっくり溶け込みながら撮影しています。
happydayz.jp
日頃から8K動画を制作している井上氏に、DaVinci Resolveによる編集・カラーグレーディングのパフォーマンスを試してもらったので、ぜひ参考にしてほしい。
さらに今回は、井上氏にDaVinci Resolveの作業用PCとして、初心者向けとプロ向けのDAIVをセレクトしてもらったので、そちらも必見!
はじめに〜検証の切り口〜
こんにちは、Happy Dayz Productionsの井上卓郎です。
私は観光系の映像製作やアウトドアメーカーのPR映像、そして最近は博物館などの展示映像の撮影や編集を主に手がけています。
主に1人で撮影からアウトプットまでを行うソロプレイヤーです。映像制作は総合格闘技であり、撮影から編集、カラーグレーディングや簡単なVFXや合成など、なるべく1人でこなせるように日々鍛錬しています。
普段はDaVinci Resolve Studioで作業を完結することが多いですが、After Effectsでのモーション作成、Fusion 360でのモデリング、そしてたまにUnreal Engineを使用することもあります。
表現の幅を広げるためにAIを使った実験にも取り組み始めました。作業マシンはMacBook Proを使うことが多いですが、CG系の作業は1年半前に組んだWindowsの自作PCで行なっています。
最近は8K HDRの映像作品を主に作っているため、ある程度スペックの高いPCが必要です。以下のYouTube動画は、Nikon Z 9の8.3K RAWで撮影したものです。
今回、マウスコンピューターさんからデスクトップパソコン「DAIV DD-I9G90」をお借りして、その性能をレビューさせてもらいました。
DAIV DD-I9G90 主要スペック
OS:Windows 11 Home 64ビット(DSP)
CPU:インテル® Core™ i9-13900KF プロセッサー
メモリ標準容量:64GB(32GB×2 / デュアルチャネル)
ストレージ:2TB M.2 SSD(NVMe Gen4×4)
グラフィックス:GeForce RTX™ 4090
電源:1200W/AC 100V(50/60Hz)【80PLUS® PLATINUM】
公式サイト
このPCは、クリエーターPC「DAIV」DDシリーズの中では最上位機種で、最新のGPUであるGeForce RTX™ 4090を搭載しているので、8K編集など高負荷の作業でも高いパフォーマンスを発揮するとのこと。
普段自分が使っているPCと、どれくらいの性能差があるのか、非常に興味があります。
まさに、プロフェッショナル用途のデザイン
箱から出した最初の印象は、かなり良いデザインだと感じました。
ゲーミングPCのように派手ではなく、事務用のPCのような無機質さもなく、よくある無難なデザインとも異なり、しっかりとデザインされた印象を受けました。
どこにでも馴染むデザインで、創造の妨げにならないのがとても気に入りました。
トップのハンドルと対角の後部底面にはローラーが付いており、足元に置いた時などに引き出しやすくなっています。
このサイズのPCは、裏面のアクセスが面倒になりがちなので、こうしたさりげない配慮が嬉しいです。
背面のインターフェイスにはUSB端子が並んでいますが、USB4やThunderboltのように高速な転送速度の次世代規格には非対応な点が少し残念なところ。
カバーを開けると、まず目に飛び込んでくるのはグラフィックスボード「GeForce RTX™ 4090」の大きさですが、正直思っていたよりも小さかったです。
ケーブル類は上手くまとめられており、内部はすっきりとしています。
水冷CPUクーラーが採用されており、通常作業では音がほとんど聞こえませんでした。ゆとりのある空間でエアフローも安心です。
メモリースロットやPCI Express拡張スロット、拡張ストレージベイには空きがあり、拡張性に富んでいるため、必要に応じてパーツの追加や交換などができるのはこのサイズのPCのメリットだと思います。
DaVinci Resolveで高速パフォーマンスを実現!
映像の取り込みから編集、カラーグレーディング、そして出力まで、ひと通りの動作を試してみました。
私がよく使うフレームレートは30Pですが、今回は60Pで試しました。また、解像度は8K UHD(7,680 × 4,320)で行いました。
通常DaVinci Resolveで高解像度の映像を編集する場合、負荷を軽くするためにタイムライン解像度を落として編集しています。
それが、通常編集では、コマ飛びすることなくサクサク編集できました。
この段階ではまだ処理の重くなるノイズリダクションなどは使用していませんが、ストレスをまったく感じずに8K/60Pの編集ができました。
“いじわるテスト”で見えた、DAIVの真価
いろいろな負荷をかけ、どこまで耐えられるか試してみました。
基本的に「8K UHD 60P」のタイムラインフレームレートでテストを行いました。
パフォーマンスモードを使わずに編集してみる
DaVinci Resolveには「パフォーマンスモード」という機能があり、PCのスペックに合わせてプレビューや再生時の解像度を低くすることで処理負荷を軽減し、高速な編集作業を実現することができます。
そこで、あえて「パフォーマンスモード」を無効にした状態で試してみました。
ノイズリダクションなど重い処理は使わず、通常のグレーディングと少し処理の重いFUSIONタイトルを使ったタイムラインを再生してみたところ、60fpsをキープすることができたのは驚きでした。
いじわるテストといったらコレ、“ノイズリダクション”
映像編集において、映像のノイズや粗い部分を修正するために使われるノイズリダクションは、重い処理の代表格とも言えます。
今回、私がよく使う設定で試してみました。
パフォーマンスモードを無効にした状態では 12fps前後の再生しかできませんでしたが、パフォーマンスモードを有効にしたところ 約25fpsまで改善しました。
さらに、タイムライン解像度を4K UHDで編集すれば60fpsで再生できることもわかりました。
「これまでの涙ぐましい努力は何だったのか?」と、思わせる驚きの結果でした。
3機種を比較! 出力テスト速度測定
ノイズリダクションをかけた1分間の映像クリップを、8K UHD 60PでH.265マルチパスエンコードで書き出すのに要した時間を、DAIV DD-I9G90、私の自作PC(2021年に組み立てたもの)、普段編集作業で使っているMacBook Pro(M1 Max, 2021, Mid)の3台で比較してみました。
DAIV DD-I9G90 | 自作PC 2021年に組立 |
MacBook Pro M1 Max, 2021, Mid |
|
---|---|---|---|
CPU | Intel Core i9-13900KF プロセッサー | AMD Ryzen 9 5950X 16-Core Processor 3.40 GHz |
AMD Ryzen 9 5950X 16-Core Processor 3.40 GHz |
GPU | NVIDIA GeForce RTX 4090 24GB | NVIDIA GeForce RTX 3090 24GB | 32コア共有メモリー |
メモリ | 64GB | 64GB | 64GB |
その結果は、下表の通り。
DAIV DD-I9G90は、圧倒的な速さで出力を完了しました。
DAIVは、4分5秒。自作PCは、5分21秒。MacBook Proは、9分でした。
映像編集には、持ち運びができるMacBook Proを使うことが多いのですが、今回の結果には驚かされました。
特にMacBook Proとの比較でDAIVの処理時間は半分以下。客観的な数値に出ると、少しショックを受けました(苦笑)
私のPCはどちらも約1年半前の機種ですが、最新のDAIVのパフォーマンスには感心するばかりです。
今回、負荷をかけたテストをする中で、1つだけ問題が発生しました。
重い処理をさせると、私の使っているUPS(無停電電源装置)が悲鳴をあげていたので、もしこのクラスのPCを使うのであればUPSの見直しが必要になるかもしれません。
ビデオグラファー的なPC選びの基準
私がPCを選ぶ際の基準は、主にDaVinci Resolve Studioを使用することを考慮しています。
処理の重いノイズリダクションやAIを使ったオブジェクト選択、モーション作成がスムーズに行えることを重視し、RAW映像のデータサイズが非常に大きいため、外部メディアと接続するための高速端子の有無も重要視しています。
また、将来的な拡張性も考慮し、PCI Expressやメモリースロットの空きスペースの数も重視しています。
ただし、予算も限られているため、予算内で最高のスペックを優先的に選択するようにしています。
私が重視する優先順位は、次の通り。
第1位 GPU
第2位 CPU
第3位 メモリー
第4位 接続端子(インターフェイス)
第5位 拡張性
今回はDAIVシリーズの中でもハイスペックな機種をお借りしましたが、DAIVシリーズには入門機からハイスペックのプロ仕様まで幅広いラインナップがあります。
そこで、モデルの解説とスペックを参考として、エントリー向けとミドルレンジの2機種を選んでみました。参考になれば嬉しいです。
まずは、エントリーモデル。
これから動画編集を始めたい人へ
DAIV 6N (プレミアムモデル)
- インテル® Core™ i7-12700H プロセッサー
- GeForce RTX™ 3060 Laptop GPU
- M.2 SSD:1TB(NVMe Gen4×4)
続いては、プロユースとして必要十分なミドルレンジ。

GPUメモリが16GBあるので、DaVinci Resolveによる高度な編集ができます。
PC本体だけで40万円を少し超えますが、ディスプレイなど、動画編集に必要な周辺機器を含めても50万円を超えないラインで選びました。
少し話がそれますが、私のPCはどちらも1年半以上前の機種なので、そろそろ次のPCの購入を検討するタイミングかもしれません。
その中で最近考えていることは、「これから映像制作のスタイルは、ガラッと変わるのではないか?」という点です。
テレビというのは8Kまで進化するというロードマップが策定されていますが、DAIV DD-I9G90があれば8Kの動画編集においては、今後しばらく通用する十分なスペックを持っています。
今回のレビューでPCの進化も行くところまで行ったなと思いました。
その一方では、ここ数ヶ月のAIの進化を見ていると映像制作のかたちは大きく変わると確信しています。
AIが全部編集してくれるとかも考えられますが、そういう派手な部分ではなく、DaVinci Resolveのマジックマスクのような編集を助けてくれるAIを使った技術がどんどん増えていくはずです。
私も映像編集以外でAIを色々と試していますが、クリエイティブ系のAI技術はかなりのPCパワーを必要とします。
これからも想像もしない技術がどんどん出てくることを考えると、DAIV DD-I9G90のような拡張性の高いPCは初期投資は高くても、カスタムをすることで長く使えるのではないかと考えています。
まとめ
DAIV DD-I9G90は、DaVinci Resolveを使った映像編集においてとても良いパフォーマンスを発揮しました。
フレームレートや解像度など、負荷がかかる条件下でも、サクサクと編集ができ、仕事のストレスが大分減りそうな印象を受けました。
特に、ノイズリダクションなどの重い処理でも、他のマシンと比較して高速に処理され、出力のDAIVの速さには特に驚かされました。
その上で、気になったのは次の2点です。
・重い処理をする場合は、GPUがフルで稼働し電力消費が大きくなるため、UPS(無停電電源装置)の見直しが必要かも……
・USB4やThunderboltといった高速な転送速度の次世代規格には非対応な点。拡張ボードなどで対応ができれば良いのですが……
それ以外はデザインの素晴らしさも含めて、まったく気になりませんでした。
DAIV DD-I9G90であればこれからどんどん台頭してくるAI技術にも対応できるスペックです。初期投資は高くてもオススメできるクリエイター向けの本格PCだと思いました。
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OS | Windows 11 Home 64ビット (DSP) | Windows 11 Home 64ビット | Windows 11 Home 64ビット (DSP) |
CPU | インテル® Core™ i9-13900KF プロセッサー | インテル® Core™ i7-12700H プロセッサー | インテル® Core™ i7-13700KF プロセッサー |
GPU | GeForce RTX™ 4090 | GeForce RTX™ 3060 Laptop GPU | NVIDIA RTX™ A4000 |
メモリ | 64GB (32GB×2 / デュアルチャネル) | 32GB (16GB×2 / デュアルチャネル) | |
ストレージ | 2TB M.2 SSD(NVMe Gen4×4) | 1TB M.2 SSD(NVMe Gen4×4) | |
価格 | 679,800円~(税込) | 309,800円~(税込) | 419,800円~(税込) |
詳細はこちら | 詳細はこちら | 詳細はこちら |
GPUメモリ的にノイズリダクションなどの重い処理は少し大変ですが、一般的な動画編集用途には問題ないスペックだと思います。
ハイスペックな薄型軽量ノートPCなので、場所を選ばず編集作業が可能なのもポイント。