【Blenderライフハック】第4回:すぐに役立つカメラ機能TIPS ※アドオンも紹介

2023.03.29 (最終更新日: 2023.03.29)

CGアーティストのTaka Tachibanaです。

Blenderのあらゆる効率化Tipsをお届けしているBlenderライフハック。第4回目の今回は、カメラ関連のTIPSを紹介していきます。

CG上のカメラは現実のカメラととても共通点が多く、実写制作者の人は最も馴染みやすいパートだと思います。

今回はカメラ関連のTipsやアドオンの紹介に加えて、現実のカメラとの比較や学び方を綴ったコラムも書いてみました。ぜひ参考にしてみてください。

※ この記事を執筆時のバージョンは「3.3.4」です。

基本的なTIPS

カメラ作成ホットキー(ショートカットキー)

[Shift+A→R](または[Shift+A→R→C])という順番でキーを押すと素早くカメラを作成できます(※)。

※ 英語設定にしている場合のみ

カメラビューとパイメニュー

カメラビュー(カメラの視点)に切り替えるホットキーは、お馴染みテンキーの[0]ですが、[`]キーでカメラビューを含めた視点切り替えのパイメニューを出すことができます。

また純正アドオンの「3D Viewport Pie Menus」を有効にすると[Alt+Q]で同様のパイメニューが扱えます。

詳しくはこちらの記事で解説しています↓

【Blenderライフハック】第3回:パイメニューを使い倒す!※データ配布あり

CGアーティストのTaka Tachibanaです。 Blenderのあらゆる効率化Tipsをお届けしている【Blenderライフハック】。第3回目になる今回は、Blenderを操作するには欠か...

カメラをビューにロック

カメラビューのままカメラを動かしたい場合は、[N]キーでサイドパネルを出し「カメラをビューにロック」にチェックを入れます。

よく使う操作なので、[Q]キーのお気に入りツールに登録しておくと便利です。

アクティブカメラの判断

アクティブなカメラ、つまりレンダリングで使用されるカメラは上部の三角形が黒で塗りつぶされています。逆にアクティブでないカメラは上部の三角形の中が透明になっています。

▲左がアクティブな状態、右が非アクティブな状態

複数のカメラがある場合の判断材料になります。

今の視点にカメラを合わせる

[Ctrl+Alt+テンキー0]で現在の視点にカメラを合わせることができます。

ローカルカメラ設定

カメラビューにした場合、通常はどのウィンドウも選択した同一のカメラ視点になってしまいますが、各ウィンドウごとに任意のカメラを固定しておくことができます。


サイドパネルの[ビュー]内にある[ローカルカメラ]で任意のカメラを選択するだけでOK。

▲複数台のカメラを各ウィンドウでそれぞれ個別に固定することができる。マルチカムでプレビューしたいときに便利。

フォーカスのコツ

カメラプロパティでピントを合わせる焦点オブジェクトを選択できます。

ただしオブジェクトの原点にフォーカスが固定してしまうため、近づいたときに目などの重要な部分にフォーカスが合わないことがあります。

なので基本的にはフォーカス専用のエンプティを作って親子付けしてあげる方が制御が楽で細かいコントロールができます。

カメラの表示範囲

カメラの表示範囲の設定ができます。この範囲外のエリアはクロップされて見えなくなります。遠くのオブジェクトが見えなくなったときなどはこちらをチェックしましょう。

【POINT】
 「0.0001m~100000m」など、広すぎる範囲にした場合、ジャギー(ギザギザ、チカチカしたりする現象)が起きることがあります。
 
 おそらく広すぎる範囲を描写するがゆえ、細かい部分にあてるデータ量が少なくなってしまうからだと思われます。
 
 なので、必要な分だけの範囲を指定してあげることがとても大切です。必要最低限の範囲内に設定してあげることで、最大限にデータを活用できクオリティアップにつながります。

リミットやミストの範囲表示

先ほどのカメラの表示範囲に補足して覚えておいたら便利なのが、リミット(カメラの表示範囲の限界)やミスト(Z深度)の範囲を表示をさせることができます。

カメラプロパティ内の「ビューポート表示」で設定ができます。ONにするとカメラからメジャーのように線が飛び出し表示してくれるので目視でその距離感を確かめることができます。ボリュームの範囲指定の参考としても使えます。

外枠の透明度


[カメラプロパティ→ビューポート表示]の「外枠」の値で、カメラの外枠の領域の不透明度を調整できます。カメラに映る部分だけ集中して見たいときは「1」にするとカメラ範囲外が完全に不透明になります。反対に「0」にすると透明になります。

コンポジションガイド


構図を決めるときに役立つガイドを表示させることができます。上図は、「三分割」を表示させた例です。

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応用TIPS

手ブレの表現

カメラの位置と回転にキーフレームを打ち、グラフエディター上のモディファイアーで「ノイズ」を追加すると不規則な動きをカメラに与えることができます。

上手く調整してあげれば、手持ち撮影したような揺れを再現できます。

アナモフィックレンズの表現

実写の世界では、シネマティックな表現としてアナモフィックレンズを活用することがあります。縦長のボケなどが代表的な特徴なのですが、似たような表現がBlender上でも再現できます。

[カメラプロパティ→被写界深度→絞り→比率]の数値を2くらいにすると縦長になり、アナモフィックレンズを使ったようなボケ感を出すことができます。

【POINT】
後ほど紹介しますが、外部アドオンを使えばオールドレンズのようなさらに独特のボケ味もカスタマイズ可能になります。
▲外部アドオン「Cam FX」を使えばカメラのセンサー前に自動的にフィルターが挿入され、味のあるボケ感を作り出すことができる

タイムライン上でカットを割る方法

カメラビューにした場合、通常タイムライン上では1つのカメラのビューしか表示されません。が、編集ソフト近い感覚で、複数のカメラを切り替える(カットを割る)方法があります。

タイムラインのメニューから[マーカー→カメラをマーカーにバインド]で、選択中のカメラを割り当てることができます。

あとは再生するだけで自動的にカメラが切り替わります。

カメラをパスに追従

カメラアニメーションはカメラ自体にキーフレームを打ってもよいのですが、それよりもパスに追従させる方が制御が簡単です。

▼やり方
1.カメラとベジェカーブを用意
2.カメラのオブジェクトコンストレイントプロパティで「パスに追従」を追加
3.「ターゲット」にベジェカーブを選択
4.下図のように設定し、「オフセット係数」にキーフレームを打ちアニメーションさせる

注意点としては、カメラそのものの位置パラメーターは「0」にしておかないと、パスの位置とずれてしまいます。

ターゲットに向き続ける

パスに追従することに加えて、「カメラをどの方向に向かせるのか」もオブジェクトコンストレイントを使えば制御が楽になります。

▼やり方
1.カメラのオブジェクトコンストレイントプロパティで「トラック」を追加
2.「ターゲット」に追従させたいオブジェクトやエンプティを選択
3.下図のように設定

ターゲットはオブジェクトを選択してもいいのですが、別途ターゲット用のエンプティを用意してあげるとさらに幅広い調整ができます。(オブジェクトとカメラを別々に制御できるため)

またコツとしてはエンプティにノイズで動きを与え、より自然さを感じるカメラワークにしています。ノイズ的な動き(ズレ)がないと完璧過ぎる動きになって機械的なCGっぽさ出てしまいます。

追加カメラリグ

あまり知られてないのですが、実は純正アドオンで「Add Camera Rig」というのが存在します。


こちらを有効にするとすでにセットアップされたカメラリグを使用することができます。

▲カメラの新規追加時に新たなRigの項目が追加される

Dolly Camera Rigの操作感はこんな感じです↓

これに加えクレーン独特の動きを再現したリグがCrane Camera Rigです↓

実写撮影はこういう特機と呼ばれるものを使って撮影することがあるので、CG上で実写的なカメラワークを表現したいときにも有効です。ターゲット操作はポーズモードで行うためBlender初心者の人には扱いにくいと思いますが、中級者以上の人は使ってみるのもありだと思います。

もちろんこれらのリグをパスに追従させることも可能です。

僕はこちらの作品を制作した際に利用しました。

※0:21〜のシーンなど

外部アドオン

Shot Manager


カメラ関連のアドオンで個人的に一番おすすめなのはこの「Shot Manager」です。カメラ~レンダリングに関して様々な設定が行なえ、効率化にめちゃくちゃ貢献してくれます。僕はもうこのアドオンなしでは生きていけません。

特筆すべきは、カメラごとにレンダリング範囲や出力先を指定できること。たったそれだけのことなのですが、Blender単体だとそれができないのです。(これがないとカメラを切り替えてレンダリングするときに、範囲や出力先を毎回指定し直す必要があります。)

ちなみにバッチレンダリングも可能になり、寝ている間に複数のレンダリングを自動的に実行させることができます。

Photographer


現実のカメラの操作感に近い感覚で各種設定が可能になるアドオン「Photographer」。

各カメラのセンサーサイズのプリセットやフォーカスピーキング、ボケ味やビネットをカスタムしたりなどいろいろとできます。実写から入った人は使うと楽しい&入れておいて損はないアドオンです。

カメラだけではなくライトの操作性も向上します(1ストップごとに光量を調整できるなど、非常に便利です)。

Cam Fix


カスタムボケやレンズ汚れが表現できるアドオン「Cam FX」。よりフォトリアルな表現を求める人にオススメです。

Flared


この「Flared」を使えばリアルなフレア表現が可能になります。

フレアは「Optical Flare」などでコンポジット時に入れる方があとあと調整がしやすいというメリットがありますが、Blender内でもフレア表現を楽しめます。使ってみると感動しますよ。

Camera Shakify


あの有名なBlenderアーティストIan Hubert氏によるリアルな手ブレ表現アドオン「Camera Shakify」。

記事内でも紹介したノイズでの手ブレ表現でも十分通用するケースは多いのですが、こちらは実際に手ブレしている実写映像を分析して再現しているのでまさに「リアル!」な動きです。

【コラム】現実のカメラとの比較&学び方

カメラや照明に関しては、3DCGの解説書だけではなく実写のカメラ関連の書籍で学ぶのもオススメです。というのも、3DCG上のカメラは現実のカメラを再現するように作られているため、その根本の原理を学ぶことはとても大切なんです。

今回の記事では詳しいカメラ自体の解説は省きますが、下記のような要素は実写もCGもほとんど同じ感覚で扱えます。

▼実写とCGで同じ感覚で扱えるカメラ要素
* 絞り
* シャッタースピード(シャッターアングル)
* 焦点距離
* センサーサイズ
* 被写界深度
* フレームレート
* フレームサイズ

実写と同じく「絞り」は大切な要素です。ただBlender上では「被写界深度」の調整という意味合いがほとんどで、絞りによる露出の調整やシャープさの変化はありません。(前述したように絞り羽根やボケ味の調整は可)

シャッタースピード(シャッターアングル)に関しては、レンダープロパティの「モーションブラー」の設定で調整できます。

モーションブラーに関してはRSMBなどを使って、コンポジット時に追加する手法もあります。

シャッターの数値を下げるとモーションブラーが小さくなり、反対に数値を上げるとモーションブラーが大きくなります。

シャッターのデフォルトの値は「0.5」なのですが、これはシャッタースピードでいうと「1/フレームレート×2」、シャッターアングルでいうと「180度」と同じことがいえます。つまり普段肉眼で見ている残像に一番近い感覚の標準値です(※)。

※ この辺は、実写撮影の経験がない人には難しすぎるのでわからなくても気にしなくて大丈夫です!

このように3DCGのカメラは実際のカメラを再現するように作られています。

実際にミラーレスカメラなどを手に取り撮影してみるとその感覚が一番身につきますが、書籍やチュートリアルを見て学ぶだけでもかなり勉強になると思います。Vookでも下記のような講座や記事がたくさんありますので覗いてみてください。

映像制作基礎講座 〜クリエイターが知っておくべき映像制作の基本〜

映像制作を行うためには、カメラ、レンズ、三脚、音声などの撮影現場の知識から、データ管理や編集な...


今回は、以上です。

これからも様々な効率化TIPSを紹介していくので、次回もご期待ください。感想やリクエストもぜひ!
 

  • CGアーティストTaka Tachibana


    台北在住。CAPSULE Inc. / CHINZEI Inc. 所属。福岡で10年間のフリーランスを経て、台湾ではMVやweb広告などの映像制作に従事。その傍ら3DCG・VFXを駆使した作品づくりに取り組む。ASEAN-ROK Film Leaders Incubator日本代表。Short Shorts Film Festival & Asiaをはじめ、国内外70ヶ所以上の受賞・入選歴。https://taka-t.com/

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