こんにちは。林です。
今回は僕がいつも行っている、
世の中の色を分類する→それぞれの分類に沿った色を作成→それらを混ぜてグレーディングする
という手法のうちの最初の項目、「世の中の色を分類する」について解説していこうと思います。
グレーディングの方法はたくさんあると思うのですが、林は1年ほど前から上記のアプローチでグレーディングしています。
メリットは下記です。
- 初めに色を分類するので、色に対する理解が深まる
- 分類した色に対応するグレーディングの色(LUT等)を予め作っておけるので、時短になる
- LUTを混ぜることで、どのような方向へのグレーディングも可能且つ複雑な色が出せる
この方法にしてから、グレーディングの時間が大幅に短縮され、かつクオリティも安定しました。
また、修正が必要な際にもLUTの混ぜ方を変えるだけなので、短時間かつ論理的に修正が可能となりました。
このグレーディング手法を行うために最初に必要な色の分類について詳しく解説していきます。
世の中の色を4つに分類する
具体的には、このような4つに分類しています。
・フューチャリスティック
・シネマティック
・フィルムライク
・レトロ
ここでそもそも「シネマティックなどという色は存在しない」「シネマティックは映画の色とかけ離れている」という議論はあるのですが、ここでは便宜上名前をつけるために「シネマティック」や「フィルムライク」という名前を使っています。
また、シネマティック○○等の動画が流行ったことにより、確実に人々の中に「シネマティック=こういう色」という言葉と関連付けられたイメージが植え付けられてきているのは事実です。そのため、概念としてのシネマティックを「都合よく利用していく」ことには実利があると考えています。
ここではそれぞれの色の厳密な定義はさておき、「印象」を最も重視して分類していきます。
この「印象」がまさに色を捉える上でのキーワードになってくると僕は考えています。
フューチャリスティック
これのみ、林独自の言葉になっています。
NFTを始めとする2021年以降のデジタルイメージによく見られるようになった色の傾向で、近未来的な印象を感じさせる色味の総称です。
大きな傾向としては
・極端な彩度の抜き
・主にシャドウ領域に青orパープルが入る、冷たい印象
・グレインが弱め
が挙げられます。
例外として、近年流行っている2色ライティング(Vookさんのビジュアルも2色ライティングが多いですよね)をベースにした「サイバーパンク的な色」もフューチャリスティックの亜種として存在します。
シネマティック
シネマティックムービー、シネマティックVlogの登場などで2017年頃から流行り始めた色の傾向です。
この色の傾向がここまで流行り、今ももてはやされる理由は「8bitなど低品質のムービーの色をカバーする方法として非常に優秀であったから」、また映画の世界の色とかけ離れているのは「映画の世界ではもっと高品質のカメラが使われているから」という考察をしているのですが、その話はまた別の記事で!
シネマティックの傾向は、
・一方向への大きな色転び(主にグリーン、たまに赤系も)
・シアンがかった青
・ローキーなものが多い
・ハイライトのMAXを少し下げている(255→220くらい)
が挙げられます。
Youtube等で見る映像作品の多くがこの傾向で、現在の一大トレンドになっています。
最近では、CinePrint16を発端とした「彩度高め、ハレーション強め」の映像もポストシネマティックとして大きな広がりを見せつつあります。
フィルムライク
言わずと知れたフィルムライク。こちらも気軽に使うと論争が起きる言葉ではありますが、ここでは
・輝度中央付近での多彩な色転び
・ホワイトバランスでのグリーン方向への変化
・ややハイキー傾向
・グレイン強め
のような特徴があるものをフィルムライクと定義します。
シネマティックがかっこよさを感じさせるものであるのに対し、フィルムライクはどこか優しさを感じるのが特徴です。
もしかすると具体的な色で捉えるよりも「優しさ」のような言葉で捉えたほうが色に対する分類としては適切で、本来人間の解像度が高いのはそのような形容詞的な捉え方なのかもしれません。
レトロ
見るからにレトロですね。ではレトロの特徴は何でしょうか?
言葉にしてみると、
・極端な色転び
・極端なフェード(フェード=黒が締まっておらず浮いていること)
・彩度、輝度低め
あたりが特徴だと思います。
特に、フェード=「褪せている」印象を付加してあげると一気に「レトロだな」と感じる色合いになります。
まとめ
以上、世の中の色をざっくり4つに「印象」で分類してみました。
林が行うのは、上記の4分類の色の印象をさらに細分化して12種類のグレーディングに落とし込み、そしてその12種類の色を絵の具のように混ぜることにより、印象をコントロールしながらグレーディングしていく手法です。
これにより「シネマティックとフューチャリスティックの中間くらいの印象」などをグレーディングで作り出していきます。
記事で解説するには非常に煩雑な量となってしまいますが、
先日、このグレーディング手法を誰でも簡単に使えるようにするグレーディングシステム「Monet(モネ)」をリリースしました。
詳しくは林のYoutubeチャンネルにて紹介しておりますので、色の分類→混合という手法に興味が湧いた方は是非観てみて下さい。
最後までお読み頂きありがとうございました!!
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