この記事ではDaVinci Resolve 18.5の新機能のうち、Resolve FXに関するものを紹介します。
Resolve FX リライト(有償版のみ)
今回のアップデートで追加されたResolve FXは1種類のみです。しかしこの1種類だけでもお腹いっぱいになってしまうくらいパワフルなエフェクトで、普通にプラグインとして販売したらかなりの値段になってしまうのではないかと思うくらいの威力があります。
「リライト」というのは、照明の当てなおしのことを意味しています。撮影時とは違う光の当て方をしているように再現することです。これまでも照明の当てなおしはできないことはありませんでした。カラーページのパワーウィンドウを使えば、たとえばこの動画の3:04から説明してるように、被写体への光の当たり方を自分好みに変更して、視聴者の視線を誘導することができました。
しかし今回追加されたResolve FXのリライトは、そのさらに先をいきます。パワーウィンドウを使った場合には、光の当たり方は基本的には一様でフラットになってしまいますが、Resolve FXのリライトは、映像を分析して深度マップを作り出すことで、被写体の奥行きも考慮に入れた形で──つまり3次元的に──ライトを当てることができます。
シンプルな使い方
最もシンプルな使い方は、エフェクトをノードに投げ込んでひとつのノードですべてを操作する方法です。カラーページでResolve FXのリライトをドラッグ&ドロップでノードに追加します。
映像が白黒になり、丸いアイコンと放射状のアイコンが表示されます。どちらも操作可能で、放射状のアイコンは光源、丸いアイコンは光の及ぶ範囲を示します。
エフェクトの設定セクションでは、「リライトのマップをプレビュー」という項目が有効になっています。これがデフォルトです。このモードでは、グレーディングが適用される範囲がプレビュー画面に示され、表示が白くなればなるほどグレーディングが適用される度合いが高くなります。
深度マップを確認するには、その上のOutput Surface Mapにチェックを入れます。
注意しないといけないのは、このリライトのResolve FXをノードに適用しただけでは、設定の「明るさ」などの項目を動かしたとしても、映像には何も変化がないということです。このリライトのResolve FXでできるのは、グレーディングを適用する範囲を決めることだけであり、明るさや色を変える作業はカラーホイールやカスタムカーブなどのツールに委ねられます。そういう意味では、このリライトのResolve FXのやっていることは、パワーウィンドウとクオリファイアーに近いと言えます。
実際に光の当てなおしをするときには、上の2つのチェックボックスはオフにしておきます。操作するのはカスタムカーブでもカラーホイールでもいいですし、明るさだけではなく色を加えたっていいわけです。たとえばカラーホイールのガンマのマスターホイールをあげてみると、映像の中の明るさの中間部分が持ち上がりますが、深度マップを使っているので、単にパワーウィンドウを使ったのとは異なる結果になります。
リライトは明るさを加えるためだけに使われるわけではありません。ガンマのマスターホイールを下げると、照明が当たりすぎたところを、自然でさりげない形で暗くすることができます。これもパワーウィンドウを使う場合に比べると優れた結果が得られます。下の例では、床を暗くしています。
オリジナル
リライトを使った場合
パワーウィンドウを使った場合
より賢い使い方
リライトは上記のように簡単に使えますが、問題がひとつあります。それはかなり処理が重いことです。深度マップを使っていることもあり、エフェクトとして重いのは当然といえば当然なのですが、日常的に使うにはちょっと重すぎるかもしれません。しかしありがたいことに、その問題を緩和するため、このエフェクトにはあらかじめ回避策が用意されています。
回避策は、ノードを分けて、ノードキャッシュを使うということです。上のセクションではひとつのノードでリライトのすべての処理を済ませましたが、そのぶん処理が重くなり、マシンスペックによっては反応が悪くなったり、再生がほとんどで
コツは深度マップの作業を別ノードに分けることです。このエフェクトの中で、深度マップを生成する作業が最も重い箇所なので、その処理をべつのノードでやらせて、そこのノードのキャッシュを取ることで、実際のリライトの作業はサクサクと進めることができます。
- ノードツリーを上の画像のように組みます。画像の02、03のノードにはどちらもResolve FXのリライトが適用されています。
- 画像の02のノードで、Output Surface Mapを選択します。
- 画像の03のノードで、Surface Mapの項目でUse Input 2を選択します。これで02のノードから出力される深度マップが03のノードで使用されることになります。
- 02のノードで、ノードキャッシュを取ります。右クリックしてノードキャッシュをオンにします。もしキャッシュの生成が始まらない場合には、「再生」のプルダウンメニューで「レンダーキャッシュ」の設定が「スマート」(自動)か「ユーザー」(手動)になっていることを確認します。自分で指定したノードやクリップしかキャッシュを取りたくないときには、「ユーザー」を選択するといいでしょう。
- ノードが青くなったらキャッシュが完成したことを示しています。あとは03のノードで色や明るさを変えます。最も処理が重い深度マップを生成するプロセスが終わっているので、カラーホイールを動かしたときの反応やライトを移動したときの反応がスムーズであるだけではなく、処理を終えて再生をしたときになんのカクツキもなくスイスイと走るのがおわかりいただけるはずです。
複数の光源を使いたい場合には、以下のようにノードツリーを作るといいと思います。
応用編
リライトには3種類のモードがあります。「指向性」、「ポイント」、「スポットライト」の3種類で、デフォルトは「ポイント」です。
指向性 → 方向性のある光。
ポイント → 光源から周りに広がる光。
スポットライト → 円錐型の光。
この中で「指向性」は、特定の面のみにライトを当てたいときに便利です。
オリジナル
リライトマップ
わかりやすくするために青色を加えると
これで床を暗くします
リライトはべつのツールと組み合わせて使うこともできます。たとえばマジックマスクと組み合わせて使うと、特定の被写体を外した状態でリライトをすることができます。
マジックマスクなし
マジックマスクあり
このリライトエフェクトはFusionページでも使えます。リライトというResolve FXはマスクを作るためのものなので、それ自体では機能しません。カラーコレクターなどのツールの青い入口(エフェクトマスク)に接続することではじめて使えるようになります。
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Resolve FXノードの挙動改善
カラーページのノードツリーでResolve FXがさらに使いやすくなりました。Resolve FXをドラッグ&ドロップでノードに適用すると、必要な数の入口が自動的に生成されるようになりました。今までは同じ操作をしても入口が増えなかったので自分で右クリックして追加する必要がありました。その必要がなくなったわけです。
もうひとつ、ノードセクションの何もないところにResolve FXをドラッグ&ドロップしたときの挙動も変わっています。これまではその操作をするとResolve FX専用のノードが作られましたが、今回からは普通のノードにResolve FXが適用された状態でノードセクションに加わることになりました。
もし何らかの理由で以前のようにResolve FX専用ノードを作りたい場合には(あまりその必要が生じることはない気がしますが)、Option (Alt) を押しながらResolve FXをドラッグ&ドロップしてください。そうするとカラーホイールやカスタムカーブなどのツールに影響を受けない、純粋にResolve FXのためだけのノードが生まれます。
Resolve FX グローに「エフェクトを反転」を追加
Resolve FX グローに「エフェクトを反転」のチェックボックスが加わりました。これまでグローがかかっていたところにグローがかからなくなり、グローがかかっていなかったところにグローがかかります。結果として暗部がぼやけてふわっとした感じになります。
オリジナル
通常のグロー
ダークグロー
Resolve FX フリッカーの追加にアルファモードを追加
フリッカーの追加を使用したときにそのフリッカーをアルファチャンネルとして使用できるようになりました。たとえばカラーホイールで色を加えると、その色がフリッカーとして明滅します。
Resolve FX カラースペース変換に反転のボタンを追加
カラースペース変換に反転ボタンが加わりました。入力カラースペース・ガンマと出力カラースペース・ガンマを簡単に入れ替えられます。
Resolve FX グローと光線に「明るい領域を復元」する項目を追加
2種類のResolve FX、グローと光線に「明るい領域を復元」する項目を追加しました。白飛びしてしまった箇所をある程度戻せるようになります。
オリジナル
通常の光線
「明るい領域を復元」した状態
OFXアルファの自動有効化
18.1からOFXアルファという項目がノードを右クリックしたときに現れるようになりました。ここで「有効化」、「ミキシングに使用」と選ぶと、そのノードのResolve FXで抽出したところを対象にグレーディングが適用されます。たとえばResolve FX 3Dキーヤーで特定の箇所を抽出し、そこだけグレーディングしたいときなどに便利です。18.5からは、わざわざこれらの項目を選ばなくてもいいように、「有効化」、「ミキシングに使用」の項目が自動で有効になるようになりました。
DaVinci Resolve 18.5の公式マニュアル(ここだけの話、この一連の記事の種本のひとつ)にはこういう文章があります。
有効化→ デフォルトで有効。チェックを外すと、このノードのResolve FXのエフェクトがアルファチャンネルを作ったとしても、そのアルファは無視される。わざわざエフェクトを使ってアルファチャンネルを生成したのに、せっかく作ったものを一切合切捨ててしまうのはなぜなのか、それは推測の域を出ないが、とびっきり奇妙で複雑な状況がもたらされて、そういうことが必要になるかもしれないので、一応オプションとして残してある。悪いことは言わないから、とにかくここはオンにしておくことだ。
「とびっきり奇妙で複雑な状況」ってどんな状況なんでしょうね。
さまざまなResolve FXの機能改善
- Resolve FX 深度マップのブランキング領域の扱いが向上
- Resolve FX パッチリプレイサーのエッジの品質が向上
- Resolve FX ビューティー、水彩画、スタイル変換の処理速度がNVIDIAシステムで最大2倍に
- Resolve FX レンズブラー、アパーチャー回折の処理速度がNVIDIAシステムで最大1.5倍に
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