2017.12.13 (最終更新日: 2020.07.30)

クリエーター用PC(後編)その他のパーツ選定

クリエーター用PC(後編)その他のパーツ選定

2018年10月INTELの9900K発売により、情報を更新しました。
前編ではCPU選択の話をさせて頂きました。クリエーター用PC(前編)
詳細はそちらをご覧いただければと思いますが、まとめると下記になります。

9900Kがコア数も多くクロックも高く、安定して高いパフォーマンスを示すのでクリエーター用CPUの最有力候補
Premiere特化タイプなら、より多コアのハイエンドプラットフォームも候補となる

今回は、その他のお勧めのPCの構成は?というお話をしようと思います。PremierePro CC(以下Pr)についてのお話ですが、ダビンチやFinalcutやVegasなどのその他の動画編集ソフトでも、ある程度共通する話かと思います。GPU(グラフィックカード)、メモリー、ストレージ(HDDやSSDやm.2 SSD)、電源についてお話ししようと思います。
BTOや自作での編集パソコン構成の一助となれば幸いです。

【GPU(グラフィックカード)選択】

PremiereProCCでのGPU選択で、多くの人が困るのが、
(1) AdobeのHPをみると、推奨GPUリストに最近のGPUが載っていないけれど大丈夫?
(2):nVidiaとAMDのGPUはどちらを選択したら良いの?
(3):クリエーター用となると、よくQuadroが必要というけれどめっちゃ高くない?
(4):どのGPUがおすすめ?

といったことがあげられると思います。

(1)最近のGPUを選択して何の問題もありません。以前のPrでは、GPU支援が効くGPUがAdobeのHPのリストのとおり限られていました。そのため、Prのインストール時に出来るファイルの一部を書き換えることで、対応リスト以外のGPUでGPU支援が効くように、裏技的なものを使う必要がありました。しかし最近のPrでは、リスト以外のGPUもきちんと自動認識してGPU支援が効くようになっていますので、心配いりません。実際にリストには780はあるものの780Tiはありませんが、小細工することなく自動認識でGPU支援が使用できていますし、最新のGTX1080や1070なども問題ありません。

(2)現在GPUチップのメーカーはnVidiaとAMDがあります。どちらのメーカーのGPUでもGPU支援がききますが、PrのGPU支援(Mercury Playback Engine)は、もともとnVidiaのCUDAにあわせて開発された技術です。最近は消費電力と性能の面でもnVidiaが優勢ですし、特段のこだわりがない限りnVidiaのQuadroやGeforceでよいと思います。

(3)特別な場合を除いてはGeforceの方がコストパフォーマンスが圧倒的に高いです。PrのGPU支援のパフォーマンスはCUDA数に左右されますが、同じCUDA数のGeforceとQuadroでは圧倒的にGeforceの方が安いからです。特別な場合というのは、3DCGソフトといった倍精度演算を必要とする場合と、10bit出力です。倍精度演算はGeforceで削られている苦手な演算であるため、倍精度演算も使用する場合はQuadroを選択する必要があります。またGeforceは8bit出力までで10bit出力ができません。もし10bitでのモニタリングが必須なら(モニターも10bit対応のものが必要)、Quadroを選択する必要があります。
注意:Geforceでは10bitファイルが編集出来ないわけではありません。モニタリングが10bitで出来ないだけで、色深度の恩恵(バンディングがおきにくい、グレーディングでの自由度が高く破綻しにくいなど)はきちんと享受できます。
 裏技的な事としてQuadroとGeforceを両方つけて、モニター出力はQuadroで10bit出力して、PrのGPU支援ではGeforceを指定するといったことも可能だと思います。が、ドライバー関連のトラブルが起きることもあるようで、自己責任で。

(4)GPUの選択について
私は3DCGソフトは触ったこともないので、PrでのGeforceの選択についてお話します。
もしカット編集のみであれば、GPUの必要性は低いですが、グレーディングなどGPU支援が有効な編集においては、適切なGPUがなければコマ落ちが激しく編集になりません。

4K60Pや4K30P10bitを扱う場合はGTX1070以上を推奨、最低でもGTX1060 6GBバージョン
4K30P8bitやFHDまでの場合は、GTX1060 3GBでも問題ないと思います

GTX1080Ti>GTX1080>GTX1070Ti>GTX1070>GTX1060 6GB>GTX1060 3GBの順で性能が高いです。注意するべきなのが、GTX1060にはビデオメモリーが6GBと3GBのバージョンがありますが、実はメモリー量だけでなくCUDA数も違うので、別物のGPUと考えなければなりません。
GPUの選択次第で、レンダリング時間やLive Playback性能が左右されます。前編のCPU編でも引用したサイトでGPUの検証も行っており、レンダリング時間の差が検証されています。
pugetsystemsより
しかし、Live Playbackの性能に関しては検証されていませんでした。
私はGH5の4K30P10bitや4K60P8bitファイルを編集・グレーディングしますが、今のところGTX780Tiで十分なコマ落ちしないLive Playback性能が得られています。CUDAコア数×コアクロック数は、GTX780Ti>GTX1060 6GBですが、世代が新しいことも考慮するとGTX1060 6GBでGTX780Tiと同等のGPU支援性能があると予想されます(あくまで予想)。GTX1070であれば、確実にGTX780TiのGPU支援性能を超えます。
ちなみに、PhotoshopやAfter Effectsは、GTX1060 6GBで十分なようです。
Photoshop CC 2017 NVIDIA GeForce GPU Performance
After Effects CC 2015.3 Pascal GPU Performance

【メモリー】

32GBは必須で、複雑な編集をする場合は64GBがお勧めです 。

一部のゲームやアプリケーションでは、メモリの速度でパフォーマンスが左右されるものがありますが、Prに関してはメモリー速度はあまり関係ありません。圧倒的に重要なのがメモリの搭載量です
FHDまでは16GBのメモリーで足りましたが、4Kでは確実に不足します(4K30P8bitでもアウトです)。メモリーが不足すると、Live playback時のコマ落ちが激しく増大します。前編で述べたPC構成で、4K30P10bitのカット編集・グレーディング・トランジション・タイトルを入れた2分半足らずの動画で試しました。メモリーを32GB搭載すると全3940コマ中、7コマ程度のほぼ無視してよいコマ落ちでしたが、16GBとしてみると500コマ(実に1/8)を超える極めて多いコマ落ちでした。32GB搭載時の再生中にメモリ使用量をモニタリングしていると、16GBを超えるメモリ使用量が頻発していました。そのため最低でも32GBは必要で、複雑な編集を想定している場合は64GBが安全だと思います。
ただ2017年12月現在、メモリー価格が著しく高騰しています(昨年の底値の2~3倍の価格)。8700K(メモリーはデュアルチャンネル動作)を想定している場合はほとんどのマザーボードでメモリースロットが4個ありますから、16GB×2を搭載して2スロットは空きにしておいて、足らない場合は後で16GB×2の追加が無難かと思います。8GB×4としてしまうと、追加時に16GB×4を買いなおす羽目になります。
Core i9 7900X(メモリーはクアッドチャンネル動作)以上を想定している場合は、ハイエンドですからメモリーも16GB×4が良いかなと思います。

【ストレージ】

システムストレージ(Windows10などのOSを入れる): 普通のSATA SSD
編集用ストレージ : NVMe接続のm.2 SSD
(低発熱・価格とパフォーマンスのバランスからsamsung 960evo)
保存用ストレージ : 必要な容量のHDD

ストレージとは、HDDやSSDなどいわゆる記憶領域です。昔はHDDが主流でしたが、円盤が高速回転してアームについた針でデータの読み書きを行う動作原理上、ランダムアクセスが極めて遅いといった欠点があります。そこを改善したのがNANDフラッシュメモリーとコントローラーで出来たシリコンステートディスク(いわゆるSSD)です。ただ容量に対しての値段が高いです。

SSDには現在主に3種類あり、端子規格と接続規格によって次のように分類できます。
①SATAケーブルで接続する従来からのSATA規格のSSD
②m.2ソケットに装着して、通信がSATA規格のm.2 SATA SSD
③m.2ソケットに装着して、通信がPCI-E規格のm.2 NVMe SSD

NVMe SSDは通信規格が高速ですので、SATAのSSDに比較して、シーケンシャル(連続した)読み書きが圧倒的に高速です。
M.2 SSDでも独走態勢に入ったサムスン「960 EVO」レビュー

SATA規格は実効転送速度が600MB/sの縛りがありますので、シーケンシャル速度で劣ります。反面、ランダム速度やアクセスタイムは、NVMe SSDとSATA SSDでそれほど変わりません。そのためOSを入れるシステムストレージに、NVMe SSDを使おうがSATA SSDを使おうが、体感できるような差は生まれません。つまり、OSディスクはSATAケーブルで接続する従来からのSATA規格のSSDで問題ありませんし、そのほうが安価です。
HDDは容量あたりの単価が安いですからデータストレージとしてお勧めですが、反面、編集中のデータを入れるストレージとしてはお勧めできません。HDDでは編集中の動画データへのアクセスが間に合わずに、HDDに由来するコマ落ちが多発するからです。前述の全3940コマの動画のLive playback再生では、NVMe SSD(PX-256M8PeGN)に動画データを入れた場合では7コマ落ちだったのが、HDDに入れた場合では200~400コマ落ちと洒落にならないレベルで増加しました。そのため、HDDを保存用ストレージとしてデータを保管し、編集時は該当するデータを一旦NVMe SSDにコピーして編集するといった使い分けが、コストとパフォーマンスの点でお勧めです。GH5程度のビットレートであれば、最近の高速なタイプのSATA SSDでも問題ないです。しかし、今後よりビットレートが増えてくるであろうことを考えた場合、またRAW動画といった極めてビットレートの高い素材を扱う場合は、NVMe SSDが第一候補だと思います。

さて、超高速なNVMe SSDですが、小型で高速ということで問題になるのは発熱です。コントローラーが高温になると、サーマルスロットリングといって、速度制限がかかりそれ以上コントローラーが発熱しないように安全機構が働きます。私の使用しているPX-256M8PeGNも発熱が多いため、別途ヒートシンクをつけて運用している状態です。しかし最近発売されたsamsungの960 proとevoは性能も最高峰ですがコントローラーの発熱も少なく、非常に優秀なNVMe SSDといえます。
M.2 SSDでも独走態勢に入ったサムスン「960 EVO」レビュー

普段使いでは、特にヒートシンクなどつけなくても問題ないと思います。Proではより高性能なMLC NANDで値段が高く、evoはTLC NANDで安価になっています。TLCはMLCに比べて、書き込み性能で劣りますが読み込み性能では同等ですので、編集中のデータ置き場としてはevoがコスパが良いと言えます。

【電源】

不要に大容量の電源ユニットを搭載する必要はありません。電源計算機というものがあり、構成ごとのピーク消費電力の指標を計算してくれます。例えば、Core i7 8700K、GTX 1070、HDD3台、DVD1台、メモリー4枚、ケースファン4台として入力すると379ワットと出ました。
電源計算機

余裕を持たせて600ワット程度あれば十分だと思います。Core i9とGTX1080Tiを選択した場合でも、精々750ワットあれば十分だと思います。電源計算機で出た値の2倍の容量の電源を買うべきだという方もいますが、そこまで必要ありません。上記構成で高負荷のゲームをしても、最大で精々300ワット程度で、Prでの編集であればピークもより低いことは確実です。

余談:またネットの記載で時々ある間違いが、
600ワットの電源で80%の効率ものだと出力は480ワットまでになる!
といったものです。効率80%の600ワット電源は、あくまで最大出力600ワットです。コンセントから750ワットとって80%の600ワットまで出力できて、残り150ワットが変換時のロスで電源からの発熱として消えるということです。お間違えの無いように。

【まとめ】

なるべく分かりやすく実例をあげてとやっていたら、この長さになってしまいました。ここまで読まれた方、有難う御座いました、またお疲れ様でした。
最後に構成案を示して終わりたいと思います。

コスパ重視構成
Core i7 9900K
メモリー32GB
GTX1070もしくはGTX1060 6GB
OSドライブ SATA SSD
編集用ストレージ samsung 960evo又はSATA SSD
保存用ストレージ HDD
電源 600ワット

Premiereパフォーマンス重視構成
Core i9 7940以上
メモリー64GB
GTX1080もしくはGTX1080Ti
OSドライブ SATA SSD
編集用ストレージ samsung 960evo又は960pro
保存用ストレージ HDD
電源 750ワット

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    コメント

    • Takuya Shimizu
      いいね!したいけど、このサイトにはその機能がないので、その意思だけを置いておきます。

      いいね!
    • Tomohiro Ota
      お気持ち嬉しいです。有難う御座います!
    • kyantokumen z.
      YouTubeでお仲間とのスタビライザー動画をよく拝見していました!こちらでもお見掛け出来るとは。僕のような永遠の初心者にとても分かりやすく今後も参考にさせていただきます~
    • Tomohiro Ota
      有難う御座います、光栄です。アマチュアで趣味でやっているだけなので、至らない点も多いと思いますがよろしくお願いします。
      また動画での活動度をあげていけたらと思っています。
    • nagatyo
      私も「いいね!」しておきます。
      ありそうでなかなかない情報がギュギュッとまとまっていてとてもわかりやすかったです。
      私は1年くらい前に動画編集を始めて、重い重いと手探りでPCを強化してきましたが、紆余曲折あったものの結果としてまさにこちらで解説しているような結論に至り、この記事に早くたどり着いていたらなぁと思いながらしみじみこの記事を読んだところです。
      少し本題から外れてしまうかもしれませんが、1つだけ気になったので質問させてください。
      HDDは保存用ストレージとして、編集中はSSDにコピーして、という部分があったかと思います。私もまさに同じことを考えたのですが、言うは易しで、実際にはもとの場所とコピー先の二重管理になってしまうし、過去のプロジェクトファイルを開いたときに、「あれ?どのファイルコピーすればいいんだっけ?」みたいな感じで運用がとても大変になり、結局編集するときだけSSDに乗せるという運用を諦めた経緯があります。
      もしもこんな仕組みで簡単に運用されてる、とか、実はPremiereProのこんな標準機能を使えばできるよ、みたいなものがあれば、教えていただけると幸いです。
      今後ともがんばってください!
    • Tomohiro Ota
      至らぬ点もあると思いますが、ある程度の道しるべになったらと思い書きました。お褒めのお言葉ありがたいです!
      ファイルはプロジェクト毎にフォルダ管理するのが、あとで一番分かりやすいと思います。例えば2018年2月8日のプロジェクトであれば、フォルダ名を「20180208プロジェクト名」として、その編集で使用したファイル(動画ファイル、音源など)を全てこのフォルダに入れておくなど。もし過去の撮影ファイルもつかったなら、それも入れておく(過去のファイルなど一部は2重保存になりますが、HDDは容量単価が安いですし。)。
      こうすると、過去のプロジェクトを開く際には、HDDからそのフォルダをSSDにコピーすればOKですし。

      ファイルの場所が分からなくなってしまった際
      過去のプロジェクトを開いた際に、リンク切れとなっていてもファイルの名前はプレミアのタイムラインで表示されます→Windowsのファイル名検索で同名のファイルを探してもらう→場所が分かれば再リンク→同じフォルダ階層にそのプロジェクトで使用したファイルがあればプレミアがその他のファイルも自動で再リンクしてくれます。

      動画ファイルのビットレートが高くなければ、HDD保存で編集時にもそこから読み出しで問題ないと思います。昨今のALL-intraファイルやRAWファイル、外部レコーダーでのProresファイルなどは、ビットレートが高いのでHDD読み出しだと厳しいかとは思います。
    • nagatyo
      なるほど、何か専用の機能があるというわけではなく、そのプロジェクトのファイルをすべて1つのフォルダにまとめることであとでコピーしやすくして、うまく運用対処してるということですね。
      私が今までやっているスタイルだと少しマッチしない部分もありますが、試行錯誤しつつうまく取り込んで行こうと思います。
      わざわざ回答していただきどうもありがとうございました!
    • Tomohiro Ota
      とんでもないです。お力になれずにすみません。
    • たけした
      「いいね」させていただきます!
      とても分かりやすい記事でした。
      私が欲しかった情報が全て詰まっていたと言っても過言ではありません。
      動画編集用PCの構成をどうするか数ヶ月悩んでいましたが、この記事を見て解決しました。
      この記事に出会えてよかったです、ありがとうございました!
    • Tomohiro Ota
      お返事が遅くなりすみません。参考になりましたら、非常にうれしいです。
      ごく最近、intelのメインストリーム(普及価格帯)CPUに動きがありました。あと数日で、9900Kという8コア16スレッドのCPUが発売されます。クロックも非常に高く、動画編集においてもハイエンドの7900X(10コア20スレッド)を超えるパフォーマンスを持っています。非常に有力な選択肢になるとおもいますので、お知らせさせていただきました。