<Composer's Note> #2. 作曲家に音楽制作依頼するときに既存の音楽をつける?つけない?後編

はじめに

前回は、既存の曲をあててから音楽制作を依頼する時(テンプトラックを使用して音楽制作依頼をする時)についてお話しました。今回は、何も曲をつけずに映像ドラフトだけを送って作曲依頼をする時のメリットデメリットや流れ、注意点をご紹介します。

まず、どんな時にテンプトラックをつけないで音楽依頼することがあるのでしょう?

曲を探す時間がなかったり、テンプトラックとして見つけた音楽がイマイチだったり、色々な理由はあると思いますが、中でも1番多いのは映像に音楽があった方が良い気がするのだけど、どんな音楽をつけたらいいのか分からない、もしくは、そのシーンに音楽が必要なのかすら分からない場合です。そんな状況の中で監督さんも作曲家にどう説明をしていいか検討がつかないと思います。
だからといって、ドラフトだけ送って何もコメントせずに何か曲作って!と頼むことはリスクが大きいでしょう。

それでは、一体どんなことに注意してディレクションすれば、納得のいく音楽に近づけるのでしょうか?

制作依頼時の基本やメリットデメリットを見てみましょう。

テンプトラックを使わないメリットデメリット

テンプトラックを使わずに音楽制作依頼することのメリットは、作曲家に余計な音楽的先入観を与えずに率直なアドバイスをもらえることです。もちろん、作曲家の経験やセンス、趣向が合うかどうかで結果の良し悪しは変わってきますが、映像の新鮮な見方ができる良い機会でもあります。
 他にも、シーン中に表現したいことがたくさんあったり、状況・情景がよく変わる場合などはテンプトラックを制作すること自体困難になるので、直接ディレクションする方が手取り早いこともあります。

しかし、ディレクションがうまくいかないと余計な時間がかかったり、双方の意見が合わずに作品を完成させられないなんて最悪なケースもあります。出来上がりにオープンでいて仕上がりまでお任せなんてこともありですが、作曲家としてもちゃんとディレクションがある方がやりがいもあるでしょう。

では、何をどう話したら自分の意図が作曲家へ伝わりやすくなるのでしょうか。

監督と作曲家の間で行われる“スポッティングセッション”と言われる映像に音楽をどうつけるか話し合うミーティングで、基本的にどんな話をしていくのか追ってみましょう。

スポッティングとは

スポッティングとは、音楽をどのシーンで、どんな曲をどのように使うか決める重要な話し合いのことです。
映画ならシーンごとに音楽をつけるかつけないかを決めたり音楽がどこから始まりどこで終わるか、音楽が切り替わるタイミングを決めたり、どんな音楽をつけるかなどを話し合います。

一番良いのはスクリーンを一緒に観ながら直接あってノートをとるのが良いと思いますが、遠方の場合はスカイプなどでスクリーンシェアをしたりして話し合うこともあります。

スポッティングセッションで必要なもの、注意すること

スポッティグセッションへ向けての準備

  • 出来ればカットがロックされた映像で進める :スポッティングの際には、カラーや音効などが最終でなくても大丈夫ですが、カットがロックされているものが好まれます。どうしても編集がそこまで進んでいない場合は作曲家の方にその旨を事前に伝えましょう。
  • 映像にはタイムスタンプ(SMTP)をしておく。 :スポッティングで正確なタイミングを決めていくのでタイムコードがすぐに分かるように映像に焼いておくことでズレが生じないようにします。映像と音の同期を確実にするためのビープ音の入ったカウントダウンマークをつけられれば尚良いです。
  • フレームレイトは事前に確認しておく。 :もらった映像データからフレームレイトを確認することはできますが、事前に双方でレイトを確認しておけば、後々の他のプログラムで作業を行ってもタイミングのずれが起きたりするトラブルを回避できます。
  • スポッティングセッションを行う前に事前に作曲家に映像を送っておく。 : 作曲家にプレビューしてもらっておいた方が事前に作曲家なりのアイディアや質問の用意ができるのでスポッティングがよりスムーズに進みます。

話す内容

話す内容は掘り下げると山ほどありますが、基本的なことは Where, Why, What, Howです。

  • Where? どのシーンに音楽をつけるか、どのカットから音楽が入り、どこでどう音楽を切るか(カットアウト、フェードアウトなど)
  • Why? 何のために音楽をつけるのか:アクションシーンに勢いをつけたい、登場人物の心情を表したい、カフェのBGMとして音楽をつけたい、カットの繋ぎをスムーズにしたい、コラージュのシーンに合わせて音楽で時間経過を表現したい、次のシーンの展開を予測させたくない、など。
  • What? どんな音楽をつけたいか:ここは作曲家側からの提案が多い部分になると思いますが、すでに音楽的イメージや音楽ジャンルがある場合は伝えましょう。それも含めて提案してもらうことが良いでしょう。 音のイメージの伝え方は Nao Satoさんの『作曲家とのやり取りをスムーズに!音のイメージの伝え方』でも紹介されています!
  • How? どう制作するか:音楽によっては歌手が必要になったり、生楽器の録音をします。だいたいは作曲家にお任せでよいと思いますが、歌詞の提案をしたいなど特に要望があれば相談しましょう。

* 音楽知識がない方は無理に音楽用語を話そうとせず、撮影中に俳優さんに指示をしているような感じで作曲家にも指示を出すと良いでしょう。
* セッション中、長編映画などの長い映像の場合は音楽のあるシーンだけ確認しながら話を進めたいところだと思いますが、音楽のないシーンも早送りでも良いので一緒に確認しながら話し合うことで全体のバランスや音楽の入らないシーンでも作曲家側から提案などがある可能性もあります。

【まとめ】

  • 映像につける音楽のことを話し合うことを”スポッティングセッション”という
  • テンプを使用しない場合はより作曲家の個性を出すことができるがディレクションの仕方がとても重要である
  • 映像とタイミングを合わせるのでタイムコードの準備やカットロックをしている方が好まれる
  • スポッティングセッションでは、音楽が必要なシーンのWhere, Why, What, Howを話し合う

監督さんとのコミュニケーションは千差万別。いっぱい話して細かくディレクションしてくれる人もいれば、もちろん、ものすごいざっくりな人もいて、そこから何かを汲み取って制作に挑むのが映像音楽作家の醍醐味でもあると思います。相性の部分も大きいので、どう伝えるのが正解なわけでもないと思います。
 スポッティングの後にドラフトを制作し、はじめて監督さんに曲を聴かせる時はいつも緊張してます。返事が来るまで気が気でないですね。それはきっとみんな一緒かな。ダニーエルフマンとティムバートンの関係が実に面白かったので、今回はこちらの映像をシェア(英語のみですが)。
ティムは1度もダニーの曲が大好きだと言ったことがなく、 曲を聴いて髪の毛を抜いたときはだめで、何か物思いにふけってるような表情で少しうなずいたときはOKだとかw そんな感じで物言い少ない偉大な監督はたくさんいるんですねー。これはもう信頼関係できてないとできない神業です。

来年もどうぞ宜しくお願いいたします!
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