8月末にDaVinci Resolve 19が正式リリースされ、DaVinci Resolve Replay Editorが出荷開始になったことにより、誰でもBlackmagic Replayの仕組みを使ってスローリプレイをライブプロダクションで使えるようになりました。そして9月にはDaVinci Resolve Replay Editorの公式のマニュアルがリリースされました。4月に発表されてから首を長くして待っていた方にとって、これは朗報ではないでしょうか。
ただまだこのマニュアルは英語版のみの提供で、まだリプレイシステムをどうやって組めばいいのか、機器と機器をどうやって接続し、DaVinci Resolveでどうやって設定すればいいのかなど、ユーザーの方々が理解しづらい点もいくつか残っていると思います。そこでこの記事ではDaVinci Resolve Replay Editorの使い方についてご紹介したいと思います。これさえ読めば、Blackmagic Replay(システムの名前)とDaVinci Resolve Replay Editor(専用キーボードの名前)について理解できるように、まあ少なくとも、すべてではないにせよ、概要をおぼろげにも理解できるようになるような記事にできればいいなと。
DaVinci Resolve Replay Editorの基礎的な使い方についてはこちらの動画にもまとまっています。
本格的なリプレイに必要な5種類の製品
DaVinci Resolve ReplayはPC/Macに接続すればすぐに使えますが、リプレイをするにはもっと細かな下準備が必要になります。構成の詳細はこちらの記事でまとめてありますが、ここでも改めて何が必要なのかご紹介します。
Blackmagic Replay推奨システム構成 〜自分だけのスローリプレイシステムを作るための機材一覧〜
べつの記事でご紹介したとおり、DaVinci Resolve 19ではリプレイの機能が大幅に追加されました。そしてDaVinci Resolve 19を中心とした、ブラックマジックのエコシステム...
1. DaVinci Resolve Replay Editor
Blackmagic Replayを使うには、DaVinci Resolve Replay Editorが必須です。DaVinci Resolveをマウスで操作することによってある程度の操作は可能ですが、スロー再生や同じ場面の別アングルでの再生など、Replay Editorのキーボードでしかできないこともあります。
2. HyperDeckシリーズ
収録デバイスとして現行のHyperDeckシリーズが必要になります。Blackmagic Replayを成立させるには、NAS収録に対応したHyperDeckが必要になり、NAS収録に対応しているHyperDeckは現行のモデルのみだからです。入力系統分ご用意ください。現状では下記の製品がNAS収録に対応しています。
・HyperDeck Studio HD Mini
・HyperDeck Studio HD Plus
・HyperDeck Studio HD Pro
・HyperDeck Studio 4K Pro
・HyperDeck Extreme 4K HDR
・HyperDeck Extreme 8K HDR
・HyperDeck Shuttle HD
よく聞かれる質問として、Blackmagic Replayの対応しているコーデックについて知りたいというものがありますが、このリプレイシステムではHyperDeckを使うため、HyperDeckで対応しているコーデックであればBlackmagic Replayで使えます。つまりProRes、DNxHD、DNxHR、H.264/H.265といったコーデックです。
3. Cloud Storeシリーズ
収録先のネットワークストレージ(NAS)としてCloud Storeシリーズが必要です。HyperDeckでProResなどに圧縮(エンコード)されたファイルが、グローイングファイルとしてCloud Storeシリーズに保存されます。DaVinci Resolveはそのグローイングファイルを常に参照することによって、最新の状態のファイルを読み込んでリプレイに使うことができます。
現行の全Cloud Storeシリーズ製品がBlackmagic Replayに対応していますが、念のため以下に製品名を載せておきます。
・Cloud Pod
・Cloud Dock 2
・Cloud Dock 4
・Cloud Store Mini 8TB
・Cloud Store Mini 16TB
・Cloud Store Max 24TB
・Cloud Store Max 48TB
・Cloud Store 20TB
・Cloud Store 80TB
4. UltraStudio 4K Mini、もしくはMedia Player 10G
Blackmagic Replayでは、DaVinci Resolveの搭載されたMac/Windowsから信号を出力したり、そこへ信号を入力したりするのにI/Oデバイスが必要となります。そこでおすすめはUltraStudio 4K Mini、もしくはMedia Player 10GというI/Oデバイスです。どちらもThunderboltでMac/Windowsと接続するように設計されていて、Blackmagic Replayでのフィルキー出力に対応しています。
5. PC/Mac
Blackmagic ReplayはWindowsでもMacでも動作しますが、Macの方がおすすめな理由がいくつかあります。ひとつは上記のとおりThunderbolt接続が必要であることです。MacにはThunderboltが当然のように搭載されていますが、WindowsではまだThunderboltが搭載されているものは少数派です。もうひとつはBlackmagic Replayが多くの場合ProResを使うことです。最近のMacにはProResのハードウェアデコーダーが搭載されているので、複数系統のProResファイルをDaVinci Resolveで扱うとき、Macではそれらのファイルがサクサクと動く傾向があります。これはDaVinci Resolve Replay Editorのジョグの滑らかさにも直結します。
ちなみに前提としてお伝えしておくと、DaVinci Resolveでリプレイのために使うページはカットページです。このカットページを見ながらDaVinci Resolve Replay Editorを操作するわけです。DaVinci Resolve Replay Editorの接続はUSBでもBluetoothでもどちらでもかまいません。
簡易的なリプレイのために必要な製品
「そこまで本格的ではなくてもいい」というと語弊がありますが、じつはATEM Mini ISOシリーズでも同じようなリプレイができます。具体的にいうとATEM Mini Extreme ISO、ATEM SDI Extreme ISOを使うと、上記のリプレイに近いことができます。近いこと、と断るのは、いくつか制限があるからです。たとえばコーデックです。HyperDeckを使うとProResで収録できるので、DaVinci Resolve上でグローイングファイルをジョグするときもサクサク動きます。しかしATEM Miniシリーズで収録できるコーデックはH.264であり、これは画質が劣るだけではなくジョグのときの動きがあまり滑らかではありません。
ただ「こういうものだ」と割り切ってしまえば、なかなか悪くないリプレイ機として機能します。もともとは予算が足りない方のためのひとつの回避策として生み出された機能ですが、これでじゅうぶんという方もいらっしゃるでしょう。ATEM Mini Extreme ISOやATEM SDI Extreme ISOをお持ちの方は、DaVinci Resolve Replay Editor(とUltraStuido Monitor 3Gなどの出力デバイス)を導入すれば、すぐに簡易的なリプレイシステムができあがります。
Blackmagic Replayの接続と設定
Blackmagic Replayはターンキーではなくご自身でお好きなシステムを作ることができるため、システムのバリエーションが何百通りも考えられます。同じようなシステムはあっても、完全に同じシステムは存在しづらく、みんなが思い思いのシステムを組み立てられます。だからなかなかここで系統図を示して接続の例をご紹介するのが難しいのですが、いくつかのルールをお示しすることはできます。接続や設定において注意すべきポイントをまとめてみます。
カメラ信号のタイムコードの同期を合わせる
リプレイに使う信号はSDIであれHDMIであれHyperDeckに入力する必要がありますが、それぞれのHyperDeckに入れる信号のタイムコードは同期している必要があります。たとえば4カメのリプレイをするなら、4台のHyperDeckにそれぞれの系統を入れる必要があるのですが、その4系統の信号はタイムコード同期のとられた状態である必要がある、ということです。
ただなかなかカメラ側で出力信号のタイムコードを揃えるのは難しいかもしれません。そこで出てくるのがATEMスイッチャーです。リプレイをするならそれと同時にATEMスイッチャーを使っている可能性が高いと思いますが、そのスイッチャーを使うことによって信号のタイムコードを揃えられます。
マニュアルから図を抜粋します。ここではATEM 2 M/E Constellation HDを例にとってみましょう。カメラから出てくる信号のタイムコードが揃っていなければ、ATEMスイッチャーをあいだに入れることによって、ATEMスイッチャーのタイムコードを載せた信号をATEMスイッチャーのAux出力から出して、それぞれのHyperDeckに入れられます。最近のATEMスイッチャーは自由にAux出力をルーティングできるので、Aux 1にはカメラ1、Aux 2にはカメラ2、という具合に、Aux出力にそれぞれのカメラ信号を割り当てるといいでしょう。そうすると元のカメラ信号にATEMスイッチャーのタイムコードが重畳された信号をHyperDeckに入れることができ、それによって同期が取れた形でDaVinci Resolve上でリプレイの操作ができます。
カメラをATEMスイッチャーに入力
ATEMスイッチャーのAux出力をHyperDeckに入力
ATEM Software ControlでAux出力をルーティング
ATEMスイッチャーのタイムコードがAux出力に重畳
ATEMスイッチャーを使わないタイムコード同期の方法もあります。HyperDeckのタイムコード入出力を数珠つなぎにしてループする方法です。これでもタイムコードを揃えることはできます。どういう方法を採るにせよ、HyperDeckで収録する時点でタイムコードが揃っていればいいわけです。
HyperDeckのタイムコード出力をべつのHyperDeckのタイムコード入力に数珠つなぎ
親のHyperDeckは「ビデオ入力」もしくは「内部」、子のHyperDeckは「外部」の設定に
HyperDeckの収録先設定とカメラ番号設定
HyperDeckの収録先をCloud Storeにするには、HyperDeckでの設定が必要です。HyperDeckとCloud Storeを同じIPネットワークに入れたあとで、「ストレージ」のタブで「ネットワークの場所を設定」のボタンを押すと、HyperDeckから見えるCloud Storeが表示されます。そこで収録先を指定しましょう。カメラごとにフォルダを分けて収録することもできます。
「ネットワークの場所を設定」でCloud Storeを参照
収録先フォルダ設定
そして忘れやすいポイントが、HyperDeckのカメラ番号設定です。HyperDeckの設定画面に入って、「セットアップ」のタブにいくとカメラ番号の設定があります。
カメラ番号設定
カメラ番号を指定(1、2、3、4・・・という数字がわかりやすいと思います)
UltraStudio 4K Mini(Media Player 10G)の接続
UltraStudio 4K Mini(Media Player 10Gでもいいですが)はリプレイシステムのI/Oデバイスとして機能し、ThunderboltでPC/Macからもらった信号をSDIとして出力したり、あるいはその逆のSDIで来た信号をThunderboltに変換してPC/Macに流し込んだりすることができます。UltraStudio 4K Miniで使うSDI端子は3つあります。
・SDI A出力
フィル信号の出力用です。
・SDI B出力
キー信号の出力用です。透過の情報を送るために使用されます。黒が透過なし、白が透過ありです。
・SDI入力
Input Viewボタンを押したときに出てくる映像を決められます。ATEMスイッチャーのマルチビュー出力がおすすめです。HyperDeckで収録されている信号とタイムコード同期が取られていれば、Input Viewボタンを押してリアルタイムのマルチビュー映像を見ながら、POIを打つことができます。
ATEMスイッチャーのマルチビュー画面をUltraStudio 4K MiniやMedia Player 10GのSDI入力に接続
そうするとInput Viewを押したときにライブのマルチビュー画面をモニタリング可能に
DaVinci Resolveの入出力設定
上で接続した入出力をDaVinci Resolveで見えるようにするために、DaVinci Resolveの環境設定の「ビデオ&オーディオ入出力」のタブでUltraStudio 4K MiniやMedia Player 10Gを選択します。
DaVinci Resolveの環境設定
ちなみにATEM Mini Extreme ISOやATEM SDI Extreme ISOを使っている場合、USBでMacと接続するとキャプチャデバイスの欄にBlackmagic Designと出てきます。これはATEM Mini シリーズのウェブカム出力です。ATEM Software ControlでUSB出力をマルチビューにすれば、上記のUltraStudio 4K Miniを使った場合と同じようなことができます。
ATEM Miniシリーズのウェブカム出力を選択
ATEMスイッチャーの設定
I/Oデバイスでフィルキー信号を出力することのメリットは、ATEMスイッチャーでわざわざ選択しなくてもリプレイをすぐに流せることにあります。もちろん「リプレイシステムはあくまでリプレイ映像を作ってくれればよくて、それを流すか流さないかはスイッチャー側で決める」という考え方もあるわけですが、このフィルキー信号の仕組みによって、より効率よくリプレイを放送や配信に載せることができ、DaVinci Resolve側で動きのあるトランジション(スティンガー)を加えることもできます。
フィルキー信号の合成には、ATEMスイッチャーのDSK、つまりダウンストリーム・キーヤーを使うのをお勧めします(アップストリーム・キーヤーでももちろん大丈夫ですが)。設定としては、フィルソースにUltraStudio 4K MiniのSDI Aの信号、キーソースにSDI Bの信号を選ぶといいでしょう。あとはDSKをオンにすれば、DaVinci Resolve側でRun(ラン)を押したときにリプレイ映像がATEMのプログラムに上からかぶさります。
あとはDaVinci Resolve側でMute Replay Hardware SDI Outputs(リプレイハードウェアのSDI出力をミュート)を有効にしましょう。ここを有効にすることで、Runを押してからDumpを押すまでの送出のあいだ以外のときには、フィル信号もキー信号も真っ黒になり、ATEMのDSKでリプレイ映像が載らない状態になります。Auto Stinger On(スティンガーを有効)も有効にすると、登録されているスティンガートランジションが使用されます。
ATEMのDSK設定
DaVinci Resolve側で「リプレイハードウェアのSDI出力をミュート」
「スティンガーを有効」
DaVinci Resolve Replay Editor用語集
ここでBlackmagic Replayで使われる用語をまとめておきます。DaVinci Resolve Replay Editorにはあまりにたくさんのボタンが搭載されているので怖気づいてしまうかもしれませんが、じつは編集用のボタンも多く、純粋にリプレイに使われるボタンは決して多くありません。10個もないくらいです。これらの用語やボタンを覚えれば、リプレイはすぐに習得できるはずです。
POI
Point of Interest(関心点)の略。時間に置かれる概念で、Blackmagic Replayの核心。サッカーのシュートの瞬間、野球のホームランの瞬間など、リプレイをしたい箇所におく。Set POIボタンを押すと再生ヘッドがある位置に置かれる。Input Viewでリアルタイム映像を見ているときにSet POIボタンを押すと、その時点の入力信号のタイムコードにPOIが置かれる。
Multi Source
マルチソース。現在収録されているグローイングファイルがタイムコードに基づいて分割画面で表示される。
Run
ラン。送出開始。これを押すとビューア上部が赤くなり、リプレイ映像が送出されます。UltraStudio 4K MiniやMedia Player 10GのSDI A、SDI Bのフィルキー出力を使っていて、ATEMスイッチャーのDSKで正しく設定されている場合には、SDI Bのキー信号が白くなり、ATEMのDSK経由でリプレイ映像が表示されます。その反対の概念はDump(ダンプ)。これを押すと送出が止まります。SDI Bのキー信号が黒くなり、リプレイ映像がATEMで表示されなくなります。
Input View
入力ビュー。UltraStudio 4K MiniやMedia Player 10Gに入力されている信号を見ることができます。スイッチャーのプログラム映像やマルチビュー映像を入れておけば、リアルタイムの映像を見られます。
Stinger
スティンガートランジション。ATEMスイッチャーにもとからある概念で、動きのあるダイナミックなトランジションを指します。UltraStudio 4K MiniやMedia Player 10GのSDI A、SDI Bのフィルキー出力を使うことで、DaVinci Resolve側で登録しておけば、Runした瞬間とDumpした瞬間にスティンガートランジションが載ります。アルファチャンネルがついている素材であれば、連番ファイルでも動画ファイルでもDaVinci Resolveに読み込んで、スティンガートランジションとして登録できます。
スティンガーを登録するには、メディアプールの下のAuto Stingersのセクションを使います。
スティンガーは6つまで登録でき、その6つはDaVinci Resolve Replay Editor上で切り替えられます。Sel Sting(Select Stinger)ボタンを有効にして、Titleボタンの裏メニューであるStinger 1〜6ボタンを使います。
DaVinci Resolve Replay Editorの3つの基本操作
さあ、接続と設定が終わったらいよいよDaVinci Resolve Replay Editorを使ってみましょう。このリプレイシステムではいろんなことができるので、すべてをここで網羅するわけにはいきませんが、よく使うオペレーションをまとめておきます。スローリプレイ、マルチアングルリプレイ、ハイライトリプレイです。
スローリプレイ
このリプレイシステムの醍醐味であるスローリプレイを見てみましょう。使うのはDaVinci Resolve Replay Editorの左下のLive Speedボタンと、その下のスライダーです。
マルチソース画面でスローしたい箇所を選び、カメラ番号を選択します。Runボタンを押して送出開始します。
スローにしたいところでLive Speedボタンを押し、スライダーを下げてスロー再生をします。一番上が100%、真ん中が50%、一番下が0%です。0%の状態だと、右側のジョグホイールが使えます。
スローが終わったらDumpで送出を停止します。ここでAuto Stingerがオンになっていると、スティンガートランジションが再生されますが、スライダーが途中にあって映像がスロー再生されているときでも、スティンガーは100%の通常の速度で再生されます。
スローに必要な操作はこれだけです。簡単ですね。もしAI(DaVinci Neural Engine)を使った滑らかなスローを希望するなら、オプティカルフローをオンにしましょう。
まずDaVinci Resolveのプロジェクト設定の「マスター設定」の一番下に行き、「リタイム処理」を「オプティカルフロー」、「動き推定モード」を「スピードワープ(速度優先)」にします。
そしてカットページのリプレイ設定を開き、Enable Optical Flow for Replay(リプレイでオプティカルフローを有効化)を選びます。これでDaVinci Neural Engineが使える設定になります。途中のフレームがAIによって自動生成され、ハイスピードカメラいらないんじゃないかというくらい滑らかなスローが、スライダーの操作に合わせて、リアルタイムでガンガン作られていきます。
マルチアングルリプレイ(同じシーンを別アングルで次々にリプレイ)
これもリプレイシステムで多くの方がやりたいことではないでしょうか。シュートの瞬間やホームランの場面を、さまざまなアングルから再生して、場合によってはスローをかけながら再生したい。これがBlackmagic Replayのシステムを導入する大半の方が望むことだと思います。Blackmagic Replayを使えば、オンエアにのっていなかったアングルからの映像も、リプレイとしてオンエアにのせることができます。ポイントは、文字どおりPOI(ポイント・オブ・インタレスト)を打つことです。
リプレイしたいシーンにPOIを打ちましょう。Set POIボタンを押します。ここで注意しないといけないのは、POIは厳密にはイン点を打つのとは違うということです。たとえばサッカーでシュートが決まったころをマルチアングルでリプレイしたい場合を考えてみましょう。イン点だとシュートを打つ前に置きたくなりますが、POIを打つべきところはまさにシュートが決まったタイミングです。そこがリプレイの核心となるタイミングであり、リプレイの支点ともいうべき時間だからです。マルチソース画面の下の音声波形が表示されている箇所にPOIのマークがつきます。
POIよりちょっと前にジョグで戻って、Runボタンで送出開始します。
しばらく進んだら、同じシーンを別のアングルで再生します。ここでDaVinci Resolve Replayの真価が発揮されます。POIの何秒前から何のカメラで再生したいかを考えて、秒数のボタンを押しながらカメラアングルボタンを押します。たとえばPOIの5秒前からカメラ2で再生したいときには、5 Secのボタンを押しながら、Cam 2のボタンを押します。そうすると再生ヘッドが戻ってPOIの5秒前からカメラ2の映像が再生されます。これを繰り返せば、同じシーンをいろんなアングルで再生できます。
終わったらDumpで送出停止し、ライブ映像に戻ります。
Input Viewボタンと組み合わせれば、POIはもっとパワフルになります。リアルタイムの映像をモニタリングしつつ、いいシーンがあったらすぐにSet POIボタンを押すことでそこをPOIとして登録できるからです。Input Viewの状態でSet POIボタンを押すと、自動的にマルチソース画面に戻ります。POIがビューアのスクロールバーの右側(つまり記録しているデータの一番最新の箇所)に出現します。
POIは一度に一箇所にしか打てませんが、過去のPOIの場所をマーカーとして記録しておくことができます。デフォルトでは、Set POIボタンを二度押しするとPOIが消え、そこにマーカーが残ります。もしうまく残らないときには、POIのダイアログのConvert to marker on clear(POI消去時にマーカーに変換)にチェックが入っているか確認しましょう。
ハイライト作成
Blackmagic Replayの素敵なところは、リプレイ再生とハイライト作成が融通無碍に一体となっているところです。リプレイ再生とハイライト作成は本来べつのオペレーションですが、それらを容易に行き来できます。Blackmagic Replayのバックにはパワフルな編集ソフトであるDaVinci Resolveが控えているので、通常のリプレイシステムでは考えつかないようなハイライト編集が実現できます。ここではハイライト関連の操作をいくつかご紹介します。
・毎回リプレイした内容を自動的にタイムラインに入れたい
リプレイコントロールメニューから、Add All Replays to Timeline(すべてのリプレイをタイムラインに入れる)を選択します。
そうするとリプレイが終わるたびにその内容が、トランジションや速度変更などのエフェクトも含んだ形でタイムラインに追加されます。つまりRunを押してDumpを押すまでの内容がタイムラインに記録されるわけです。
・先ほどリプレイした内容を自動的にタイムラインに入れたい
Add All Replays to Timelineが有効になっていなくても、リプレイコントロールメニューから、Add Most Recent to Timeline(最近のリプレイをタイムラインに入れる)を選択すると、最も最近リプレイした内容がそのままタイムラインに追加されます。
もしくはビューア上のここの箇所を押しても同じように最近のリプレイ内容がタイムラインに放り込まれます。
・新しいタイムラインを作りたい
リプレイのたびに新しいタイムラインを作りたい場合、もしくは野球ならイニングごとにタイムラインを変えたい場合には、DaVinci Resolve Replay EditorのNew Timelineボタンを押しましょう。
・タイムラインをハイライトとして送出したい
編集が終わってハイライトが完成したら、それを送出します。Blackmagic Replayでは、用意しておいたハイライトをハーフタイムなどに簡単に送出できます。編集途中で送出するタイミングになったとき、すぐにタイムラインの先頭に戻る必要がありますが、DaVinci Resolve Replay EditorではCueボタンがあり、それを押すとタイムラインの先頭に戻ることができます。そうするとタイムラインの周りに赤い線が出て、送出の準備が整ったことを示します。
あとは通常どおりRunボタンを押すと送出が始まります。タイムラインから送出する場合には、再生ヘッドがタイムラインの最後まで到達すると、Dumpボタンを押さなくても自動的にライブ映像に戻ります。これは便利ですね。
もしタイトルやエフェクトが重くてリアルタイム再生ができるか不安な場合には、レンダーキャッシュをオンにしておきましょう。
そうするとタイムラインのキャッシュが必要な箇所に赤い線が出て、キャッシュが取られます。キャッシュが取られると青い線になりますが、カットページではすぐにその線は消えます。赤い線がなくなったら、それはちゃんとすべてのキャッシュが取られたことを意味します。
Blackmagic Replayは自動的に送出の残り時間を計算します。だからタイムライン再生中にスロー再生をすると、右上の残り時間が正確にアップデートされます。もしハイライト再生中にディレクターさんから「あと10秒伸ばして!」という無茶振りが来たとしても、ここを見ながらスローの調整をすれば、その期待に簡単に応えられます。
コメントする