撮影機材の最適な運搬方法とは
ロケ撮影の際、撮影クルーが数人以上いるような撮影であれば、金属製のハードケースやPelicanケースなどに機材を入れ、車や飛行機などで移動・運搬を行うことも多いと思います。
しかし、私のようにドキュメンタリーを中心に制作していたり、ワンマンで撮影を行うビデオグラファー的なスタイルで活動する人は、電車などの公共交通機関を使い、1、2名で機材を運搬しなければいけない場合がほとんどなのではないでしょうか?
そんなビデオグラファースタイルでの最適な機材運搬の方法を見つけるために、これまでにかなりの数のカメラバッグを試してきました。今回はその経験を元に、カメラバッグの種類別で長所と短所をまとめてみたいと思います。
01. バックパック
カメラバッグの基本のひとつがバックパックだと思います。カメラ用バックパックは写真用のものを中心にかなり多くの数があります。以下は私が思うバックパックの分類の図になります。
まず、カメラバックパックは大きく「すぐ撮影できる型」と「運搬特化型」の2つに分類できるかなと思っています。(上の表の横軸です。)
・すぐ撮影できる型:バッグの側面などにカメラを取り出せる開口部があったりして、背負ったまますぐにカメラを取り出すことができるものです。バックパックを背負いながら移動し、撮影していくスタイルに向いています。
・運搬特化型:より多くの機材を運べることを重視する方向性で、側面などに開口部のないシンプルなタイプです。現場に移動したら機材を取り出し、バッグ自体はどこかに置いておいて撮影をスタートするようなスタイルの場合はこちらが便利です。
この横軸とは別に、もうひとつ分類の仕方として縦軸に取っている「タウンユース」と「アウトドアユース」があります。これはどんな環境で撮影することを想定しているかの違いです。
・アウトドアユース:太いウエストベルトで重さを軽減させたり、汗を逃しやすい背面になっていたりという過酷な移動にも耐えられるようにアウトドアバッグの機能を持たせているタイプです。有名なメーカーだとf-stopやMindShiftGearがこのタイプを得意としています。
・タウンユース:公共交通機関などを使って移動したり、街での撮影を想定しているタイプです。ウエストストラップが細めだったり、全体的にスタイリッシュなデザインで作られていることが多い印象です。
この2軸で分けた4つのタイプから、自分のスタイルに合ったものを選ぶのがよいかなと思います。以下は私が考えるそれぞれのタイプ別のおすすめバッグです。参考までにご覧ください!
a.「すぐ撮影できる × タウンユース」タイプ
このタイプのバッグは、有名メーカーの高級なものからお手頃なものまで数多く出ています。オススメするのは定番になってしまいますが以下の2つです。両方、実際に使ってみて良かったものです。
Peak Design Everyday Backpack 20L
街でもよく見る、Peak Design一番人気のバッグです。Peak Design製品は安くはないですが、生涯保証がついており、機能しなくなるような故障が発生した場合は修理してもらうことができます。(私も実際に修理・交換をしてもらったことがあります。)しっかり長く使うことができオススメです。サイズは20Lと30Lの2種類があります。※買う場合は国内正規品を買い、レシートを保存しておきましょう
側面と上にのみ開口部があるタイプのため、入れた機材を一覧することはできません。色々な機材を持っていき現場で組み立てて撮影するようなスタイルには向かず、カメラだけをサッと取り出して撮影するようなライトなスタイルに向いています。
Lowepro BP450AW II
こちらも有名メーカーLoweProのバッグです。販売店によってセールをやっていたり安くなっていることもあるので、安く売っているサイトを探してみるといいかもしれません。サイズは350と450の2種類があります。
このバッグは「すぐ撮影できる × タウンユース」として紹介していますが、上記の表のちょうど中間に位置しているバッグと言えると思います。タウンユースですがウエストベルトが太めで重さを軽減しやすく、背負ったままカメラも取り出せますし、運搬量もしっかり確保できます。4つの分類のどのスタイルがいいか決めきれない!という方にはこれがお勧めです。
b.「運搬特化 × タウンユース」タイプ
このタイプも各メーカーから数多く販売されています。一番シンプルな作りのタイプといえます。
thinkTANKphoto StreetWalker HardDrive V2.0
このタイプで一番オススメなメーカーはthinkTANKphotoです。スポーツや報道の写真家のためのバッグを作っているメーカーで、品質は折り紙つきです。私は色々なメーカーのカメラバッグを使ってきましたが、最終的にthinkTANKphotoに戻ってきました。
その中でこのタイプでオススメなのはStreetWalker HardDrive V2.0です。かなりの容量があり深さもあるので映像用の機材も入りやすくなっています。StreetWalkerの特徴として高さがあるということがあり、私は身長高めなのでこのStreetWalkerが好きですが、あまり背の高いバックパックは使いにくいという場合は、同じくthinkTANKphotoから出ているエアポートシリーズの方がよいかもしれません。
▼ エアポートコミューター
Manfrotto PRO Light フロントローダー バックパック M
三脚メーカーとして有名なマンフロットのバッグです。このPRO Lightシリーズのバックパックは何種類か出ており、背面から開くか前面から開くかの開口場所の違いやサイズによって選べます。このフロントローダーは最もベーシックと言えるモデルです。
thinkTANKと比べると全体的に壁が薄くペラペラとした印象はありますが、その分軽量になっているというメリットもあります。値段も2万円台で手に入ることが多いため、安めで軽めなものを探している方にはオススメです。
このフロントローダーは片側の側面にのみ開口部があるので、すぐ撮影できる型としても使うことができます。背面が開くバックローダーは側面に開口部はありませんが上部に機材と別に荷室を作ることができ、洋服なども持っていきたい場合には向いています。
c.「すぐ撮影できる × アウトドアユース」タイプ
MindShiftGEAR ローテーション
ここでご紹介するのはthinkTANKphotoのアウトドア向けブランドMindShifGearのバッグです。(最近MindShifGearはthinkTANKphotoブランドを統合されたので徐々にMindShifGearのロゴは無くなるようです。)
バッグの下部分が回転するようになっており、背負ったままウエストバッグが前に移動できるような構造になっています。回転する部分に機材はあまり多く入れられませんが、完全に背負ったままカメラを取り出せるという面白い機構のバッグです。
d.「運搬特化 × アウトドアユース」タイプ
MindShiftGEAR マインドシフトギア バックライト 26L
再びMindShiftGEARのバッグです。こちらはローテーションのような変わった機構はありませんが、アウトドアユースを想定して背負いやすい構造になったバッグです。サイズが3つあり、私は中間の26Lを愛用しています。機材以外にも洋服なども比較的入りやすいので、これだけで一泊の撮影なども対応できます。デザインが良いかは意見が分かれそうですが笑、使いやすいです。
02. ショルダーバッグ
カメラにリグを組んでマイクやモニターをつけて使用することがありますが、バッグパックだとどうしても毎度分解して収納する必要がでてきてしまいます。一方、ショルダーバッグの場合は高さがあるものが多いのでリグを組んだままの状態で収納することが可能です。車での移動が中心でバッグから取り出してすぐに撮影したい場合などはショルダーバッグが便利かなと思います。短所としては、移動時にショルダー部分にのみ重さがかかってくるのでバックパックタイプよりも重さを感じやすいと言うところと、スペースを有効活用しにくいので収納量が落ちる部分です。
Manfrotto Pro-light 34.9L MB PL-CC-192N
マンフロットのショルダーバッグシリーズです。サイズのバリエーションが多いのでカメラに合わせて最適なものを選ぶことができます。
ただし大きいものは飛行機の機内持ち込みサイズを超えることがあるので注意して選んでください。
03. カメラローラーバッグ
道が舗装された都会での撮影で多くの機材を楽に運びたい時に便利なのがこちらです。スーツケースなどと同じように4つの車輪がついていて前後左右に自由に動かせるタイプのものと、車輪が2つで前後にしか動かないものがあります。2つ車輪のものは移動しない時に勝手に移動しないという長所があります。好みにあわせて選ぶのが良いかなと思います。
thinkTANKphoto ビデオトランスポート18
カメラローラーバッグを多種発表しているシンクタンクフォトのビデオ用に作られたモデルです。写真用のものより外装がハードになっているのが特徴です。
thinkTANKphoto エアポートローラーダービー
こちらは4つ車輪のモデル。移動はしやすくなります。
04. ローラーバッグ
カメラ用のバッグではなくトラベル用で車輪のついた普通のローラーバッグです。(下の写真の左下にあるようなものです。)私は三脚やライトスタンドなどをまとめてこのローラーバッグに入れて移動するというスタイルが気に入って、ずっとこのタイプのバッグを使っています。
オスプレー シャトル130
長さがあるので三脚なども収納しやすいタイプです。
自分の入れたい機材の長さに合わせて選んでください。
残念ながらこのオスプレイのバッグはもう販売はほとんどされていないようです。ちょっとお値段高くなってしまいますが、同じOspreyのトランスポーターウィールドダッフル120やソージョンシャトル130が今なら代わりの選択肢になってきそうです。
もう少し長さが短くてもいい場合はmont-bellのウィーリーダッフル 90あたりも選択肢としては良いかなと思います。運びたい三脚やスタンドの長さを測って選んでみてください。
05. スリングバッグ
襷掛けで背負うタイプのバッグです。背負ったままで体の前にすぐに持ってくることができるので、撮影中のレンズ交換用バッグとして私は愛用しています。上記のローラーバッグなどに入れておいて現場についてからレンズを入れて使うなどの使い方もオススメです。
thinkTANKphoto ターンスタイル20 V2.0
軽いのに容量が大きく使いやすい鉄板モデルです。スリングは容量が小さいものが多いのですが、これは厚みがそれなりにあるのでレンズ以外のものも入れやすいです。
以上が私が思う種類別のカメラバッグの特徴になります。自分が使っていて気に入っている製品を中心に載せてみました。バッグ選びの参考になれば幸いです!
▼ ちなみにこのページでご紹介したバッグを使って海外撮影に行った際のパッキングを以下の動画にまとめてみました。見てみてください!
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伊納 達也@tatsuyaino
伊納達也 1988年愛知県生まれ。ノンフィクション映像作家/映像エッセイスト 高校時代にマカロニウエスタンに傾倒し映像制作を始める。東映シーエム株式会社にて制作進行として勤務後、映像ディレクターとして活動。2010年代前半には当時増え始めていたビデオグ...
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