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【リレーインタビューVol.3】デフォルメとディテールのバランスを追求。3Dモデリングの制作プロセスに迫る

2021.04.21 (最終更新日: 2023.06.27)
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Vookは、2020年末に新たなビジョン 「映像クリエイターを無敵にする。」 を発表しました。これをより広く伝えていくためにVookビジョンムービーの制作に着手。クリエイティブディレクター、ディレクター、撮影、VFX、3DCG、音楽…と、多くのクリエイターが集い、制作を進めています。

各クリエイターがそれぞれの力を発揮し、意見をぶつけ合うことで化学反応を起こし、バトンを受け渡しながら完成へと向かっていく――。 そんなVookビジョンムービー制作の舞台裏を、リレーインタビューとして掲載しています。

前回Vol.2<撮影>篇はこちらから!

【リレーインタビューVol.2】若手クリエイターたちが追求する新感覚のルック。Vookビジョンムービーの撮影秘話。

Vookは、2020年末に新たなビジョン 「映像クリエイターを無敵にする。」 を発表しました。これをより広く伝えていくためにVookビジョンムービーの制作に着手。クリエイティブディレクター、ディ...

第2回に登場したTOSH SHINTANIさん(ディレクター・編集担当)とKevin Yoshidaさん(撮影・ステディカム)からのバトンを引き継ぎ、第3回に登場するのはモーションデザイナー・星子旋風脚さんです。

今回のビジョンムービーの見せ場の一つであるVFX/3DCGを担当するチームメンバーとしてジョインした星子さん。VFX/3DCGシーンに登場する“映像クリエイターの必須アイテム”の3Dモデリングを手がけた星子さんに、制作のプロセスや注力したポイントなどを聞きました。

星子 旋風脚 (ほしこ せんぷうきゃく)
アメリカ合衆国メリーランド州生まれ。会社員として働きながら、独学で映像技術を学び独立。アニメーション監督・モーションデザイナーとして数多くの解説映像、CM映像などのディレクションと制作を手がける。制作プロセスの構築から研究・開発し、新技術を取り入れながら柔軟で斬新な手法での映像制作を得意とする。

SketchfabやVRChatなど各種ツールを駆使

――星子さんはVookビジョンムービーの制作に3Dモデリング担当として参加されました。まずはそのきっかけについてお聞かせください。

星子:
以前からVookのイベントに登壇するなど関わりがありましたので、その流れで今回のお話をいただきました。3Dモデルの素材は各種サイトでも販売されているので、「購入した方がコストも下げられますよ」とお返事したのですが、とりあえず一回打ち合わせをしましょうとなって。

そこで、ビジョンムービーの世界観にマッチしたデフォルメした3Dモデルを使いたいという要望を聞き、それなら自分がオリジナルのCGアイテムを制作する意味もあるなと思い、参加することを決めました。

――ビジョンムービーには、某テレビゲームを彷彿とさせるようなCGで描かれたアイテムが登場します。パソコンや照明機材、ドローンやマイクといった各種アイテムのCGは、どのように作り込んだのでしょうか。

星子:
ダストマンさんやTaka TachibanaさんといったVFX/3DCGを担当するチームのメンバーとSlackでやり取りしつつ、Sketchfab(スケッチファブ) という3Dモデルを360度回転させながらチェックできるサービスを使用しました。静止画で確認する方法もありますが、あらゆる角度から見たい場合などは、このSketchfabで作品を共有するのが便利だなと感じましたね。

実際に作業を進める時は、Milanote(ミラノート) をイメージボードとして使いながら、参考画像などを集めてアイテムのトーンを考えました。

また、今回のやり取りの中で、CGに描き起こすパソコンや照明機材などのアイテムを、型番で指示してもらえたのは非常に助かりましたね。3Dモデルと実物画像を見比べながら、どこをデフォルメしていくかなどバランスを検討しやすかったです。

本編に登場するパソコンは、HP Zbook Createをもとにモデリング。

――ビジョンムービーの制作を進める上で、星子さん、ダストマンさん、TachibanaさんのVFX/3DCGチームだけでもオンラインミーティングを開催したとお聞きしています。コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションは当たり前になってきていますが、VFX/3DCGチームはVRChatを活用して交流を深めたと伺いました。

星子:
ダストマンさんとは、こんな状況ですのでしばらく会っていなくて。Tachibanaさんは台湾にいるので、直接お会いしたことがありませんでした。せっかくだから親睦を深めようと、VRChatを通じて3人で打ち合せをしました。

このVRChatは、目の前に相手がいるような体験ができて、VFX/3DCGチームの距離感がぐっと縮まりましたね。打ち合わせというよりかは、ほとんどの時間をVRChat内にあるギミックで遊んでいました(笑)。

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デフォルメとディテールのバランスに注力

――今回の3Dモデリングを手がける中で、注力したポイントはどこでしょう?

星子:
アイテムの実物画像をそのままCGに描き起こすのではなく、オリジナリティがあるように意識した点ですね。目新しい部分がありながら、ほどよい既視感があるといったイメージです。

デフォルメを施す作品の奥深さを、改めて感じました。リファレンスがあるとついついトレースした形になりがちで、作りたいトーンから離れてしまったり面白みがなくなったりしてしまうんですよね。そこで、ディテールを作り上げてからその要素を削ぎ落とし、どこまでデフォルメするかといったバランスを意識しました。

CGは多くの色を使わず、なるべく単色にしてほしいとオーダーがあったので、色に頼らずアイテムらしさを出すのも難しいポイントでしたね。完成した映像を改めて見てみると、ドローンやヘッドフォン、マイクの細かい網目の部分は満足のいく出来になりました。

今回3Dモデリングを行ったアイテムたち。本編にどのように登場するか、お楽しみに!

楽しさがあれば”無敵”になれる

――今回のビジョンムービーには「映像業界にある壁を壊していく」というテーマがあります。ご自身も映像業界の壁を感じることはありますか。

星子:
仕事をする上で自分が持つ作家性との向き合い方もそうですし、映像クリエイターの中には「インポスター・シンドローム」(※)というか、自己評価を下げてしまっている人が多くいると聞いています。そうした部分は何とかしていくべきだと、個人的には考えています。それに加え、映像業界特有の壁だと感じるのは「予算やスケジュールが足りないことが多い」といった、もっと原始的な部分にあると思っています。

また、発注元と受注者のパワーバランスが対等ではないなと感じることが過去にはありました。たとえクライアントと請負人の関係だとしても、フラットな立場で仕事をした方が成果物も良いものになると思っていますね。僕自身は、最近は「こんなに!?」と驚くほど丁寧な対応をして下さる相手との仕事が増えてきて、かなり気持ちよく仕事ができています。

もう一点、グローバル化が進んだ世界の中で、日本には言葉の壁がまだまだあるなと感じることも多いですね。ネットで情報を検索するにも、英語と日本語だと情報量がまったく違います。映像技術に関しても、ガラパゴス化してしまっているので、もっと先進国の情報を取り入れたり、外に向けて発信したりしていけば業界の風通しが良くなるのではないでしょうか。

※インポスター・シンドローム(インポスター症候群)……自分の力で何かを達成し、高く評価されても、自分自身にはそのような能力はないと自己を過小評価してしまう傾向のこと。

――星子さんは「Dr.プッツンコのたのしいCGラボ」というYouTubeチャンネルを立ち上げたり、ツイキャスで作業プロセスを生配信したりと、ご自身の技術を積極的に公開されていますね。そうした活動は、映像業界をもっと風通しを良くしたいという思いから行っているのでしょうか。

星子:
以前は、「無料でCGの技術などを公開することが業界全体の価値を下げてしまうのではないか」という不安がありました。マジシャンが種明かしをしたら、みんなマジックに興味がなくなってしまうような…。しかし、時代が変わり、今では映像を作りたいという意思のある人が、それを実現するためのノウハウにアクセスしやすくなってほしいと思っています。

星子さんが立ち上げたYouTubeチャンネル「Dr.プッツンコのたのしいCGラボ」

これからも映像技術に関する発信は増え続け、そうした世の中の動きを止めることはできないでしょう。それだったら自分が発信することで、映像制作は楽しいと感じてもらえるような情報を提供していこうと考えました。「映像て大変そう」と敬遠している人も、何か作品作りにチャレンジして楽しい体験をしてもらえれば、それが価値になると信じています。

――情報を発信することで、映像制作の楽しさを広めていきたいと。

星子:
映像を作るのは本来めちゃくちゃ楽しいことなので、それらを体験してほしいですね。映像制作ではさまざまな壁にぶつかることがありますが、この楽しさがあれば、きっと突破口を見つけて映像クリエイターも“無敵”になれるのかなと。VFX/3DCGチームはダストマンさんもTachibanaさんも、映像制作を本当に楽しんでいる人たちだと思います。この後のインタビューでも、そうした感覚をぜひ伝えてほしいですね。

ビジョンムービーでも、3Dモデリングの様子をライブ配信してくれた星子さん。制作過程はこちらでご覧いただけます!

Interview&Text:Yukitaka Sanada

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