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【Special Interview】国内外で活躍するオフラインエディターAika Miyakeに聞く、エディターとして大事な5つのこと

2021.05.11 (最終更新日: 2021.08.04)

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映像制作はチームで取り組む創作活動。各部署のスペシャリストが集結し、ゴールに向かって映像世界を構築していきます。オフラインエディターとは、撮影した素材を編集し物語を紡ぐ専門家。ポストプロダクションにおける、監督に近い役割を担い、撮影テイクを選び、つなぎ、素材の持つ力を最大限に引き出すのが仕事です。

Cut & Runに所属するオフラインエディターのAika Miyake(みやけ あいか)さんは現在ロサンゼルスを拠点に、広告(CM)やNetflixの番組など多岐に渡り活躍中。帰省中の忙しい合間を縫って、Vookのインタビューに応えてもらいました。彼女がエディターとして、楽しくモチベーション高く仕事を続けるために、大事にしている5つのこととは?

  • オフラインエディターAika Miyake

    愛知県出身。17歳の時、父親の死をきっかけにアメリカへ留学。24歳で帰国後、東京でオフラインエディターとして活動する。2019年、再度渡米し現在L.A.でビヨンセの映画やケリー・ローランドのMV「Flowers」、NetflixのTV番組、NikeやPampersの広告映像を手がける。人種的マイノリティーやジェンダーをテーマにしたストーリーテリングに長けている。Clio Awards 2021、D&AD Awards 2021、エミー賞といった世界的なアワードの審査員としても活躍する。

なぜ、エディターという職業を選んだのか?

なぜエディターをやっているのか…私に残されたスキルがこれだけだったから(笑)。アメリカの大学でフィルムのクラスを取っていて、ディレクション(演出)、シネマトグラフィー(撮影)、プロダクション(制作)、エディティング(編集)と一通りやった中で、エディティングだけ誰にも教わらずにすーーーっとできました。このショットとこのショットがつながると上手くいくって迷いなく浮かんでくるんですね。学校にも認められたので、じゃあきっと才能があるんだろうなって。

──映像を学びにアメリカに渡ったということは、早い段階で映像制作の道を目指していたのですね?

映画好きの母親の影響を強く受けていたのと、写真を撮るのが好きで、なんとなく「映像に呼ばれている…?」そんな感覚がありました。生活の真ん中にいつも映像があったのは確かです。ですが、その道程は結構サバイバル。私は17歳のときに父親を亡くしているんですね。だから人生にたいして余裕がないわけです。母親も病気になって、早く自立して生きる術を見つけなきゃというマインドセットでした。自分が上手くやれることって何だろう?と、ずっと考えていましたね。

20歳でアメリカの学校に4年間通うことに決めたのですが、それは何が何でも答えを見いだすぞという使命感から。渡米前は英語を話せなかったのですが、万が一学校で天職が見つからなくても、翻訳業で生計を立てられるんじゃないかって保険もかけていました。

──ビヨンセのフィルムや話題の広告、Netflixの番組など、充実して楽しそうに仕事をしている印象です。これまでの日本、そして現在のアメリカでのエディターとしての経験を振り返って、大事にされていることを5つ教えて下さい。

エディター論その1:基礎が大事

最初の就職先でゲーマーの先輩に叩き込まれた基礎

アメリカの大学を卒業して、就職したのは日本にある日本の企業。テレビ番組の編集業をやっていて、当時はAvidを取り入れた唯一のスタジオとして話題でした。私の先輩であり課長はゲーマー。ゲームってコントローラを一切見ることなく、反射神経でボタンを操作しますよね。それと同じことを編集でもやれって叩き込まれました。

自分仕様にキーボードのショートカットを設定して、ブラインドタッチで左手だけで操作できるようにとことん体に覚えさせるので、手がすごく早くなります。「時間は動かせないから、自分がやるべきことをどれだけ早く終わらせられるか。それで残った時間でクリエイティブなことをしろ」と、先輩はいつも言っていました。とにかく基礎をみっちりと教えてもらいました。

──一見地味ですが、やはり基礎は外せませんね。

自分のベースを築いてくれたと思います。その後のキャリアにおいても生きています。後に転職して、日本にある外資系のスタジオで編集アシスタントとして働く際も、そういう意味では何も怖いものはなかったです。

──ちなみに映像業界は、テレビや広告など手掛ける媒体によって会社も分かれていることが多いです。今は広告を主軸に仕事をされていますが、テレビから入ったのに理由はありますか?

人生って皮肉だなって思います(笑)。私は学生の頃から環境問題や社会的な課題に意識的だったんです。ですから 「広告」という媒体に違和感を感じていた んですね。例えば1万円で売っている靴があるとして、実際に手を動かして作っている途上国の人々には30円の賃金しか支払われず、ほとんどの費用が広告に注ぎ込まれているわけです。世界がどんどん格差化していくのを見て、それってなんかおかしくない?って思っていたんですね。なので、編集するならテレビやドキュメンタリー、音楽に関わるものがいいなと。

ですが、結局はテレビも協賛会社がいて成り立っているから、広告と同じだということに気がつくわけです。そこで「もうムリだ」と。この後、私の人生どうなるかわからないけど、崖から飛び降りる気持ちで会社を辞めました。せっかく社会人になれたのに…その時すでに28歳なのに(笑)。

●甲子園●2013年CM ナイキジャパン ナイキベースボール宣誓編

オフラインエディターのアシスタントとして携わったCM。ACCグランプリほか多数受賞。

──その後外資系のスタジオに転職し、広告に主軸をおいてだんだんと名を馳せていかれたイメージがあります。

会社を辞めてフリーランスで働いていた時、そのスタジオの日本支社の社長と誕生日会で知り合ったのがきっかけでした。技術的にも仕込まれていて、バイリンガルで、実務経験もあるって、当時はかなりのレアキャラなんですよ。でも、フリーランスでも生計を立てられるほどにはなっていたし、ガツガツしている性格でもないし、なにより“広告”ですから、迷いました。「広告を本格的にやるってことは自分の一部を殺さないといけないんじゃないか」って。

ただ、フリーランスの仕事はVコンばっかりだったので自分の作品が残らないし、新人にはチャンスが回ってこない仕組みだということも知り、デッドエンド感があったので、覚悟してオファーを受けたんです。

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