好評のロングインタビュー連載「私の映像哲学」。3回目のゲストはマルルーンさん。
高校2年の頃から、ミュージックビデオを制作。ゆずやでんぱ組.inc、アイナ・ジ・エンドら人気アーティストのMV演出を手がけてきたマルルーンさんは、現在大学一年生。新作の「すなばピクニック」(Kabanagu+諭吉佳作/men)にも注目です。
最初に仕事が来たきっかけとは? After Effectsを駆使して生み出された映像に宿る「温もり」と「違和感」とは? 記念すべき初ロングインタビューをお楽しみください。
インタビュー&構成:河尻亨一(編集者・銀河ライター)
写真:押木良輔
Twitterに課題作をあげたら仕事が来た。つくってみたら"こうなった"
——マルルーンさんは、いま18歳(2021年5月)。この春に大学入学したばかりだということなんですけど、すごいね。ミュージックビデオの仕事をたくさんやっていて。映像はいつからつくってるんですか。
マルルーン氏(※以下、マル):興味を持ち始めたのは小4くらいですね。最初はWindowsのムービーメイカーで、カット割りとか瞬間移動とか、遊びで編集をやってたんですけど。高校から美術系の学校に通って、Adobeのソフトを専門的に習い始めてという感じです。
——美術系の高校というのは?
マル:都立総合芸術高校です。美術科の中に映像専攻というコースがあってそこで学びました。
——MVは高二の頃からつくっているそうですね。最初はどうやって仕事が来たんですか。
マル:高一の最後あたりに、課題でつくった作品をTwitterに上げたんです。「モーション」っていうタイトルなんですけど。そしたらわりと「いいね」をもらって、そこから音楽業界の方だったり、ミュージシャンの方がDMで連絡くださったり。そうやって広がっていきました。
——この映像は街の光景が面白い。ビルが伸び縮んだりして。その動きに音もバッチリ同期してますけど、どのあたりがみんなにフックしたんでしょうね?
マル:自分ではよくわからないんですけど、不思議な映像が好きなんでしょうか。音楽が流れていて、ミュージックビデオっぽいところもありますから、そういうのが面白いと思っていただけたのかもしれませんね。
——いきなり仕事が来てどう思いました?
マル:ビックリしました。でも、音楽がもともと好きで、ミュージックビデオをつくってみたかったので、頑張りたいなと。
——最初の仕事は「O.W.A.」(Mega Shinnosuke)でしたっけ? この映像の感じをどう言ったらいいんだろう。サイケデリックというのか、80年代ぽいというのか…。それは狙ったところではある?
マル:狙ったというより、つくってみたらそう"なってた"という感じです。編集ソフトはAfter Effectsなんですけど、エフェクトを重ねたり、いろんなレイヤーを組み合わせたりして、素材をたくさんいじっていく過程で、ごちゃごちゃになっていく。
情報量の多さは意識しましたね。情報量が多いと"見ごたえ"が出てきますから。あと昔のレトロっぽい映像が好きで、質感なんかはどうやったら再現できるかな? と考えたんですけど、色に関しては"なってた"としか言えないです。
——つくっていくプロセスの中で、そう"なってた"っていうのが面白い。最初に実写を撮影すると思うんですけど、その段階で「こういう映像にしよう」という方向性やイメージがあるわけではなく?
マル:あまりないですね。素材はたくさん撮っておけばいいという考え方で、構成は基本、編集で練っていく感じなんです。その段階でクライアントの方と相談しながらつくっていきます。
最近つくった「すなばピクニック」(Kabanagu+諭吉佳作/men)では、ある程度、流れを決めて撮影したんですけど。それ以前のものについては、でんぱ組.incさん(もしもし、インターネット)のときも、アイナ・ジ・エンドさん(NaNa)のときも、動きをたくさん撮って編集で考えていくやり方でした。
マル:ゆずさん(イマサラ)のときは、「インドぽくしてほしい」というオーダーがありましたね。キャスティングは僕がお願いした方もいるんですけど、基本、お任せでやっていただいて。スタジオがメチャクチャでかくて、スタッフもたくさんで焦りました。
——その規模の撮影になってくると、事前の準備も結構必要でしょう?
マル:一枚くらいの企画書に、イメージみたいなものはまとめてます。クライアントさんに説明するために、YouTubeから探したリファレンスをつけたり。そうすれば雰囲気みたいなものは伝わりますから。
あと、3Dレイヤーをどういう形状でつくるかはメモしておいたりするんですけど、具体的な構成までは決めてなかったですね。撮ってるときは、「こういう動きがあったら面白いよね」 くらいの感覚で。
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