カメラマンをはじめ、制作スタッフが意識すべきシーンをイメージで共有するために必要となる「絵コンテ」。
絵コンテから得られる情報は多く、大規模な映像作品になればなるほどその重要性が高まります。しかし、「絵が下手だから伝わりづらく悩んでいる」 「どこまで細かく描くべきかわからない」 など、現場でのビジュアル共有に悩む映像制作者の声を多く耳にします。
そこでVookでは、絵コンテ制作のステップを学び、作品のクオリティをあげるために絵コンテ段階でできることを探るウェビナーを開催。その内容をまとめ記事として公開いたします。
講師は、イラストレーターであり漫画家のTakuro Fujitaさんと、ビデオグラファーのRen Takeuchiさん。絵コンテがつくられるまでの過程や試行錯誤を、たっぷりお話しいただきました。
- ビデオグラファー / 映像ディレクターRen Takeuchi
1997年京都生まれ。高校卒業後にビデオグラファーとして活動し、2019年にフリーランスの映像ディレクターとして独立。TVCM、WebPV、PV、企業VP、MVなど様々な制作を手掛ける。現在はチームで活動をし、主にカラーグレーディングを得意とし、企画・ディレクション・撮影・編集をワンストップで行う。 https://grovelifeartstudio.com/
- 漫画家 / イラストレーターTakuro Fujita
数年前京都のスタジオにて舞台照明、音響を担当。テレビ局にてカメラアシスタント後映像、デザインを専門に就職。現在はフリーランス。漫画、イラスト、アニメーション制作を中心に映像分野では絵コンテを制作しております。円谷との協力でウルトラマンのポスターや阪神タイガース記念作品のギターデザインなど担当。絵コンテでは一般企業からミュージックビデオ、有名モデル作品を制作。VTuberのキャラクターデザインなどもしております。>
👉ウェビナーの様子はこちらから動画でもご覧頂くことが出来ます
絵コンテの必要性と活用するメリット
Takuro:これまでの経験を踏まえてお伝えすると、映像制作において絵コンテは絶対に必要となります。なぜなのか?6つの理由をお伝えします。
1.クライアントとのイメージ共有の為
Takuro:基本的にクライアントワークにおける映像制作は、映像の専門家ではない方々を相手にして行うことがほとんどです。クライアントの中になんとなくのイメージはあっても、頭の中にあるだけで共有されないことがほとんどです。
文章を中心としたプロットだけで映像のイメージを共有しても、なんとなくのイメージはつくけれど、仕上がってくる映像がどんなものになるかまでは分からない。クライアントも実際に仕上がった映像と、自分のイメージとの違いがあっては困るので、依頼しても大丈夫なのか判断しにくいんです。
絵コンテでイメージを可視化することで、クライアントは「こういった映像ができるのか」と、実際にビジュアルで確認し、良し悪しを判断することができるようになります。ビデオグラファーにとっても、絵コンテを通してクライアントとの意思疎通を図ることができるため、仕事にも繋がりやすいです。
Ren:ビデオグラファーとしても、絵コンテを発注するのは、クライアントに出来上がった映像を見てもらった際「イメージと違う」と言われるのを防ぐためでもあるんですよね。
Takuro:絵コンテがあることで仕事に繋がりやすくなり、映像が完成したあとに「イメージと違った」と言われることを防ぐことができる。この2つだけでも大きなメリットですね。
2.タイム管理が可能
Takuro:撮影において、時間の管理はとても重要になります。1時間当たりに掛かる人件費、場所代、その他の費用など、撮影時間が1時間変わるだけで、掛かる費用も大きく変わってくるからです。
絵コンテがあることで、シーンごとの撮影時間を明確に算出することが可能です。実際にしっかりと時間内に撮影が終わると、爽快な気持ちになりますよね。
Ren:絵コンテをベースにシーンごとの撮影時間の配分などを考え、香盤表を組み立てるのはディレクターの仕事ですが、頭の中だけにある構想で香盤表を組み上げるのと、絵コンテを元に香盤表を組み上げるのでは、スケジュールの精度が変わってきます。終わりの時間がはっきりと決まっている現場の場合は、絶対に絵コンテを元に正確な香盤表を組み上げます。
3.現場で撮り逃しを防ぐ
Takuro:現場によっては、タイトな撮影スケジュールの場合もあります。そういった場合、焦って撮影を進めると撮り逃しが出てきたりします。絵コンテがあれば、現場でチェックしながら進めていくことができるので、撮り逃しを防げます。
Ren:自分はマスターショットを押さえて撮っていくタイプで、インサートなどを撮り逃してしまうことがありました。視覚的にチェックを入れられるように絵コンテにもインサートをしっかりと描いてもらえれば、撮り逃しが起きないのでとても助かっています。
4.現場で円滑な撮影が可能
Takuro:1〜3に大きく関連しているのですが、事前に準備しておかなければいけないことを、絵コンテを元に確認することもできます。絵コンテの情報から「撮影に必要な機材」「撮影場所」「小道具」が読み取れるので、あらかじめ準備をしておけば現場での撮影をスムーズに進めることができるのです。
現場でコミュニケーションをたくさん取って撮影を進めるよりも、「絵コンテで分かることは、絵コンテを見て把握して動いてもらう」 という考えの方がよりスムーズに撮影を行うことができます。
5.モデルがいる場合、動作や動きを伝えやすい
Takuro:撮影に入るまでの間、モデルには絵コンテを見ていただきます。シーンごとに「どう動いたらいいのか」「この画角でカメラが入るのならこう動くと良い」といったことを、言葉で説明しなくとも理解していただけるのもメリットです。
その上で演技に修正があれば都度コミュニケーションを取れば良いので、前提の説明を省くことができます。細かい動作の指示も、ビジュアルがあるのでとても簡単に説明できます。
6.編集スピードが速くなる
Takuro:撮影後は絵コンテを元に編集するのですが、絵コンテを横に置きながら作業すると速く仕上げられます。絵コンテを見ながらだと理解の速度が違うので、パっと編集できますね。
Ren:このとき作業のモニターが2枚あると良いですね。
以前は絵コンテを紙で管理していたのですが、最近はiPadに絵コンテのPDFデータを全て入れて持つようにしています。現場でPDFに書き込みを入れたデータをそのまま編集時のモニターに映し出せば、修正などの漏れがなくなります。そのため、片方に絵コンテを映せるように、モニターが2枚あると便利です。
絵コンテ制作のワークフロー
Takuro:絵コンテを制作する際のワークフローですが、ビデオグラファーの編集作業に比べるとシンプルです。
1&2.打ち合わせ・下調べ
Takuro:最初にビデオグラファーとクライアントの打ち合わせがあり、そこで決まったことや依頼内容を、ビデオグラファーから絵コンテを描く人に共有します。
基本、絵コンテを描く人はクライアントとの打ち合わせには同行しません。なので、プロモーションしたい商品についての詳しい情報や、映像をみた人に抱いてもらいたいイメージなどを聞いて、共有してほしいですね。商品の実物を持って来てくれるのが一番助かりますが、それが難しい場合、資料をいただきたいです。
それを元に、下調べや絵コンテの構成を作っていきます。
Takuro:絵コンテを作る際、必ず下調べを行います。この下調べにかなり時間が掛かるので、とにかく大量の資料があると助かります。特にニッチな分野のプロモーションでは分からないことの方が多いので、下調べが大変です。なるべく下調べが短くできるように資料を多めに準備してもらえると、描き手としてはとても助かります。
Ren:Takuro先生のように、緻密に描かれた絵コンテはクライアントに良い印象を与えるので、そこまで作り込めるように資料を渡すのは大事ですね。
3.作画
Takuro:準備ができたら画、説明文、タイム(カットの時間表記)やシーンの描き込みをしていきます。どれくらいの描き込み具合で描けば良いのか迷っている方が多いと思いますが、基本的に主旨を理解できる絵であれば大丈夫です。
細かく描く必要はなく、「カメラの画角」「モデルの表情」が分かればシンプルな絵でも大丈夫です。説明文は短く入れた方が良いです。長い文章を書いても、なかなか読み込むのが大変ですからね。
タイムは、制作側が把握できる程度で良いと思います。クライアントが現場にいる場合、タイムに厳密になってしまい撮影の進行について指摘されるケースもあるので、制作側の絵コンテに記載するだけで良いかと思います。
実際の絵コンテと出来上がった映像とを比較してみてみましょう。
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