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【ウェビナーまとめ記事】光と色を巧みに操る撮影監督の世界観創り

2022.04.01 (最終更新日: 2022.04.25)

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撮影監督(DP:Director of Photography) とは、何をする人なのかご存知ですか?

“映像のルックを決める責任者”でもある撮影監督は、まさに映像の方向性を決める総責任者。実際に撮影が行われる現場ではどのように制作に関わり、思い描いた世界観を創り上げていくのでしょうか。

今回は、CMやMV、ドラマやドキュメンタリーまで、数々の作品を手がけられている撮影監督の戸田義久さんをゲストに、ドキュメンタリー監督の岸田浩和さんを聞き手にお迎えし、世界観作りの具体的な手順や考え方についてお話いただいたウェビナーの内容をまとめ記事としてお届けします。

  • ゲスト戸田 義久 / Yoshihisa Toda

    最近の主な撮影作品に大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「大豆田とわ子と三人の元夫」、CMにマイナビ転職「やめるの、やめた」編、マクドナルド・チキンマックナゲッ ト「パパの気のせい」篇、Hermes 「HUMAN ODYSSEY 新城大地郎」編、MVに back number 「黄色」等。現。過去作 に「東京女子図鑑」「21世紀の女の子 離ればなれの花々へ」「玉城ティナは夢想する」「おやすみ、また向こう岸で」などの撮影を担当。

  • 聞き手岸田 浩和 / Hirokazu Kishida

    メーカー勤務を経て、2012年に札幌国際短編映画祭で監督デビュー。2015年に株式会社ドキュメンタリー4を設立。Yahoo!やVICEなどWebメディア向けの映像取材やドキュメンタリー制作に携わる。ラン&ガンスタイルの機動力を生かした撮影と、ナレーションを用いない編集が特徴。京都の料亭を追った「Sakurada Zenchef」はNYフード映画祭で2冠。関西学院大学や東京都市大学、杏林大学で、ドキュメンタリーに関する講義を担当する。

撮影監督 戸田義久さんの来歴

ドキュメンタリーを経て、現在はドラマやCMなどを手掛ける戸田さん。どのようなキャリアを歩み、現在のポジションにたどり着いたのでしょうか。

岸田:映像制作の道に進まれたきっかけはなんでしょうか?

戸田:小学生の頃にテレビで見た『ロボコップ』という映画がめちゃめちゃ面白くて。そこから映画が好きになって、当時地上波でやっていた映画はみんな録画して見ていました。しかし当時はそれでも物足りなくて、自分の部屋にTVが無かったので、リビングにあるTVの前で映画の音声だけカセットに録音して、自分の部屋でも音だけ聞くような日々を過ごしていました。これが中学生が終わるくらいまでの間です。

一時期は「俳優になりたい」と思っていたんですが、映画は映画監督が作っていると知って「じゃあ監督がいいや」と方針転換。高校の時に空手部の先生から中古で買ったビデオカメラを使い、短編映画を撮り始めました。

大学に進んでから「ぴあフィルムフェスティバル」という自主制作映画の映画祭に作品を出したものの、結果は鳴かず飛ばずで。一方で「カメラマンとしては面白かった」という意見をいただき、監督は向いていないのかな、カメラマンは向いているのかなとおぼろげに感じていました。

岸田:本格的に「映画監督は向いていない」と思ったきっかけがあるとか。

戸田:大学を出た後に映画美学校という、監督を育てるための学校に行っていたんですけど、先輩に『呪怨』『牛首村』『犬鳴村』を監督した清水崇さんがいたんです。当時清水さんが撮った自主制作のホラーがすごく恐ろしかったらしくて、黒沢清監督や脚本家の高橋洋さんが「すぐにプロの監督をやらせたほうがいい」といって『呪怨』のビデオ版が作られたんです。

実際に自分も見たんですが、演出がとにかく面白くて。自分は 「どう撮るか」のアイディアは出てくるけど、「どう人を動かすか」は全く浮かばないので、これは勝てないなと。それで、カメラマンになったほうが幸せなんじゃないかと思った次第です。

岸田:そこが撮影監督・戸田義久さんの誕生の瞬間。初仕事は?

戸田:ドキュメンタリー制作会社関連の技術会社で、ドキュメンタリーを撮りました。自分の世界を広げるために、ドキュメンタリーから入った方がいいなと思ったのがドキュメンタリーへの入口です。実際、言葉も通じない海外で感じた「肌感覚」を大切に撮るのがすごくためになって、今の自分のベースになっています。その後は先輩のカメラマンさんの繋がりで、映画のBカメラマンもやらせてもらいました。これが20代から30代前半くらいまでです。

岸田:30代後半で光と色で勝負すると決意したそうですが、これはどういうことでしょうか?

戸田:この頃はドキュメンタリーをやりきった感があったのと同時に、ドキュメンタリーカメラマンとしての余白がないように感じていた頃。改めて映画の世界で映像を立ち上げていくようなところに戻ってもいいんじゃないかと思ったんです。

また30代後半に入ってから、水川あさみさん主演でAmazonプライムのドラマ『東京女子図鑑』を撮ったときに、「色が面白い」「光がきれい」というリアクションをたくさんいただいて、自分でもやっていて気持ちよかったんですよね。自分が好きなことはこういうことなんだ、と再確認できたと思っています。そこで人づてに連絡を取ってもらい、今所属しているTRAVOLTAというマネジメント会社に所属することになりました。

岸田:私の印象では、戸田さんは撮影+照明部のようなところまで自分で手を動かしているように感じます。

戸田:カメラワークの前に、空間を光と色で彩りたいという欲求があって。ドキュメンタリーで一回忘れましたが、その空白期間があったからこそ光に対する渇望が強いのかもしれません。

撮影監督(Director of Photography)とは?

撮影監督の役割とは何なのか?戸田さんの考える撮影監督像について話を伺います。

岸田:戸田さんが考える撮影監督の役割とはなんでしょうか?

戸田:基本的には映像の最高責任者です。色味、光、構図、アングルを決めることに加え、撮影部や照明部、美術部など他のスタッフと連携を取って、最終的にビジュアルとして物語を盛り上げる世界を作っていく人間です。予算に合わせた機材の準備を照明さんに依頼したり、監督やプロデューサーに世界観を提案したりといった仕事もします。

また、撮影現場での時間管理、つまりスケジュールを守ったり提案するのも大きな役割です。決められた時間の中でどれだけ面白いものをスピーディに作れるか。時間を守らないと予算も撮影日数もどんどん増えてしまうので、仕事として成立しなくなってしまいます。面白いことをできるだけスピーディにやれると、いろいろな意味で全体的によくなるんじゃないかと思います。

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