爪先の宇宙
Story
言葉や思いはいつだって自分の中にあったのに。
相手に思いを伝えようとすると必ず心の中で渋滞してしまう。
だからいつも周りに合わせて言葉を選んで生きていた。
一年前、親友から投げつけられた言葉に接するまでは。
親友の朋子が発した一言で他人と接する事が出来なくなってしまった吉川亜紀は高校を卒業してから一年間自宅に引きこもる日々を過ごしていた。
このままじゃダメな事は自分でも良く分かっていた。けれど他人を前にすると
親友の言葉が頭の中を駆け巡ってしまう。苦痛が亜紀の心を支配していく。
携帯電話の電源はあの日から切れたままだった。
そんな時、ふと目に入ったアルバイト募集のチラシ。
亜紀はそんな自分を変えるため一歩踏み出す決意をする。