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【柳沢翔インタビュー(後編)】映像にもっと"WOW!"を。創作は僕を社会につなげてくれる

2021.05.18 (最終更新日: 2021.08.04)

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Vook特別ロングインタビュー「私の映像哲学」。フィルム・ディレクターの柳沢翔さんのお話(後編)です。前編はこちら。

【柳沢翔インタビュー(前編)】逆風の中から生まれる映像の力。ロジックを超えた場所に追い風は吹く

Vook特別ロングインタビュー 「私の映像哲学」。第1回目のゲストはフィルム・ディレクターの柳沢翔さんです。 資生堂「High School Girl?」、GRAVITY DAZE2「重力猫」ほ...


資生堂「High School Girl?」、GRAVITY DAZE2「重力猫」ほかのコマーシャル映像で世界的に評価されるだけでなく、人気アーティストのPVからショートフィルム、映画まで、さまざまな映像制作フィールドで活躍する柳沢さんに、創作メソッドから表現哲学まで、じっくりうかがってみました。
後編では、アプリの活用法といった実践的な話題から、クライアントワークと自分のつくりたいものとのバランスの取り方現場でのスタッフとのコミュニケーション術などを中心に。見る人を惹きつける「WOW!」のつくり方とは?
インタビュー&構成:河尻亨一(編集者・銀河ライター)
写真:押木良輔

新ネタはTikTokでチェックしてます 

——ここまでは柳沢さんの最新の仕事、ポカリスエットのエピソードを中心にうかがってきました。後半は少し違うアングルからのご質問をしていきたいと。

4年前、GRAVITY DAZE2の「重力猫(Gravity Cat)」が、カンヌ・ライオンズはじめ国際広告賞をいくつも受賞した際にも、インタビューさせてもらったことがあります。

そのときも、"軸とネタ"というキーワードが出て、興味深くうかがってました。映像に盛りこむ"ネタ"のほうは、ネットで見つけた気になる動画などをPCにストックしているそうですね。

柳沢翔氏(以下、柳沢) そのお話をしたときは、YouTubeだったんですよ。面白いネタ引っ張ってくる場所が。でも、ここ3~4年はInstagramのほうが、面白いネタがいっぱい見つかるようになっていて、最近ではTikTokをよくチェックしてます

それにしてもアプリの進化はすごいですね。クオリティはピンキリですけど、膨大な数の人たちが、アプリから毎日映像コンテンツを投稿していたり、使いやすい機能も公開されている。知の量に圧倒されますね。

——アプリの進化が制作に影響を与えているところもありますか。

柳沢 ありますね。例えばオンラインの作業でも、これまでならうん千万円もする高価な機械に入っているエフェクトの素材を使っていたのが、去年くらいからはiPhoneのアプリでやるようになっていて。

今回のポカリスエットもそうですし、ちょっと前にやった嵐のミュージックビデオもそうでしたね(「A・RA・SHI -for dream ver.ースペシャルムービー」)。iPhoneにデータをもらってアプリで加工して、オンライン機に入れて、次の素材をまたiPhoneにもらって加工してーーという作業になるんですけど、いまはアプリのほうが優秀です。

——すごいですね、そんなことになっているとは。

柳沢 ほんとこれだけで完結しそうだなって思うくらい。僕らはまだ世代的に前のやり方に馴染んでるところがあるんですけど、下の世代になるとさらにアプリを仕事で駆使していて。

この前、リクルートスタッフィングのCMで、黒木華さんに出演してもらったんですけど、そのCM内で使う黒木さんのポートレイトを、ヤスダ彩さんという大学4年生の写真家にお願いしたんです。

そしたらコンデジみたいなカメラで撮って、アプリで仕上げてましたね。現場で撮った写真をiPhoneに移して、ロケバスの裏とかでシャカシャカやって「できました!」みたいな。グラフィックのレタッチ作業は専門の人にお願いするものだと思ってきた側からすると、「もう、こういう時代なんだ…」って、変な感覚になるんですよ。

——企画から仕上げまで、映像制作のあらゆる工程を一人で、あるいはごく少人数でやれる時代ですね。「ビデオグラファー」と言ったりするようですが。

柳沢 めっちゃいい時代ですよね。5Dが出たのがつい10数年前で、一眼レフでフィルムトーンをギリギリ出せるようになったわけですけど、それがいまやiPhoneとアプリなんだなと思うと感慨深い。

——柳沢さんも「ビデオグラファー」の走りみたいな世代ではありますよね。前にインタビューしたとき、編集から何から何まで、できれば全部自分でやりたいという話もされてました。仕事によってはかなりの部分、自分で手を動かすケースもあるとか。

柳沢 それはね、最近すごい変わってきました。いや、変わってきたというよりも、以前お話していたようなカッコいいものじゃなかったという気がしてきたんです。

前の取材のときって、「自分の脳の中にあるものを表現できるのは自分だけ」といった話をしたと思うんですけど、そんなエラソーなことではなくて、ただ単に好きなんですね。撮影終了後の素材整理から、編集からオンラインまで自分でやることが。

基本的に僕、元々内向的っていうのか、一人でちまちまやるのが好きなんです。いまだに撮影現場、嫌いなんですよ。まず人がいっぱいいるのが苦手で。スタッフから「監督、ここどうしましょう?」って相談されたり、役者の人に「このシーン、説明してください」なんて言われることが苦痛なんです。ときどき「全員クローンだったらいいのに…」って思っちゃうくらい(笑)。

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