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【鎌谷聡次郎インタビュー(後編)】都市から原生林までを舞台にした映像セッション。みずから手を動かすことで表現に命が宿る。

2021.06.22 (最終更新日: 2021.08.04)

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好評のロングインタビュー連載「私の映像哲学」。前編に続いて映像作家/アートディレクターの鎌谷聡次郎さんのお話を。

今回は森ビルのブランドムービー「Designing Tokyo」や水曜日のカンパネラのMVなどの制作エピソードを中心にお届けします。

言語化するのが難しい感覚的な企画をプレゼンする際に、鎌谷さんが心がけていることとは? 試写から納品までの時間が大切な理由とは? まろやかにトンがった独自の映像世界の秘密に迫ります。

▼前編はこちら

【鎌谷聡次郎インタビュー(前編)】映像の意図せぬ"揺らぎ"に心惹かれる。「狙ってない感じ」が好きなんです

好評のロングインタビュー連載「私の映像哲学」。2回目のゲストは映像作家/アートディレクターの鎌谷聡次郎さんです。 マルコメのウェブムービー「かわいい味噌汁」から、森ビルのブランドムービー「Des...

インタビュー&構成:河尻亨一(編集者・銀河ライター)
写真:押木良輔

生態系としての「東京」をビジュアライズする

——映像制作を始めた大阪時代のエピソードから、マルコメ「かわいい味噌汁」(2016年)のお話などうかがってきました。「かわいい味噌汁」が、鎌谷さんにとってひとつ転機になったということですが、それ以降で言うと、森ビルのブランドムービー「Designing Tokyo」(2019年)ですか。

鎌谷聡次郎氏(※以下、鎌谷):その前に、水曜日のカンパネラと屋久島がセッションする企画がありまして、これが森ビルの仕事にリンクしているところがあるんです。

——「屋久の日月節」(作詞・作曲:オオルタイチ)のミュージック・ビデオというスタイルで公開されたものですね。

鎌谷:ええ、YouTube Originalというシリーズもののコンテンツで、いろんなアーティストがだれかとコラボする企画です。その第2弾でお声がけいただいて。

——屋久島で撮影しようというアイデアはどこから?

鎌谷:偶然ですね。最初の打ち合わせで、「だれとコラボするといいかな?」という話をしていたときに、たまたま制作の人のもらった名刺に「田中大地」君って書いてあったので、"自然"とセッションするのがいいんじゃないか? ってふと思いついたんです。

コムアイさんが山とセッションしてるビジュアルはいいなと。それで屋久島で撮ろうと思って、オオルタイチさんに声をかけたら参加してもらえることになって。

クライアントさんは最初、乗り気ではなくて、何回か振り出しに戻ったんですけどね。別の方向性を考えあぐねて、半年くらいたった頃、「屋久島でいきましょう」と言っていただけて。

——「かわいい味噌汁」とはまた違う意味でユニークな映像ですね。アーティストと楽曲、屋久島の自然が溶け合う世界を描いているというか。CGで描かれる森の中のヘンテコな生命もチャーミングだし、屋久杉の樹皮をお婆の顔に見立ててコーラスするユーモラスなシーンもあり。これはどんな世界なんでしょう?

鎌谷:なんらかのコズミック(宇宙的)な視点を盛りこみたいと思っていたんです。それでコムアイさんと人工生命について話し合ったり、その領域の研究者にインタビューしたり。自分なりに結構色々調べました。

屋久島の生態系って、独特なんです。豊かな原生林みたいなイメージがありますけど、実は屋久島の土壌って肥えてなくて、少し掘ると岩ばかりの地質だったりもする。そういうこともあって、死んだ生命を次の生命に取り込む仕組みがうまくできているんです。自然の相互関係というか、大きな法則みたいなものを感じて、そういうものまで表現できないかなって。

——なるほど。でも、それが森ビルの映像にどうつながっていったんですか。

鎌谷:屋久島のロケから戻ったあと、改めて東京という街を見直してみると、「都会もある種の生態系なんだな」って思ったんです。

個人個人は好きなことをしてるんだけど、実はパターンがあって、それが渋谷なら渋谷、銀座なら銀座といったそれぞれの"顔"というか、街の個性を生み出していて、そこから独自のカルチャーが発生したり、それに対するカウンターカルチャーが生まれたり、互いに混じり合って変異してまた新しいものが生まれている。

——それは面白い発見ですね。コンクリート・ジャングルに大自然と近い法則を見るという。

鎌谷:東京の街もコズミックな目線で見てみると、屋久島に近いものがあるなと思って。それで気づいたんですけど、森ビルさんの事業である都市開発というのは、さっき言ったようないろんな化学変化のための"器づくり"なんじゃないかと。

実際の映像は、西新橋に第二森ビルが完成(1956年)してからの街づくりのプロジェクト、例えばラフォーレ原宿や六本木ヒルズの風景を、当時のファッションや街のカルチャーなども含めて垣間見せていくものになっています。

でも、それぞれのシーンに明確な境界線を引かないっていうんですかね? "曖昧な記憶"として表現することで、新橋から原宿、六本木、表参道、虎ノ門などの街が地理的にも歴史的にもつながっていて、どんどん続いていくんだーーということを伝えたかったというか。CGや実写、3Dスキャンもまぜこぜにしながら。

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