予算表、PPM資料、業務委託契約書、出演承諾書…etc.。関わるスタッフが増え、制作の規模が大きくなるほど、必要書類の数は増え、作成にかかる手間も増えていく…そんなお悩みを抱える映像クリエイターは多いのではないでしょうか?
この連載では、なかなか学べる機会のないこうした契約書・制作管理書類に関する知識と情報を発信していきます。記事の中ですぐに使えるサンプルフォーマットも配布中です!
STEP4となる今回は、「守秘義務契約書(NDA)」をご紹介。クライアントワークにおいて注意すべき項目とは? 伊納達也さん、松永エイゾーさんに、「守秘義務契約書(NDA)」で確認しなければいけない項目や注意すべきポイントについてお伺いしました。
- 映像ディレクター / ビデオグラファー松永エイゾー
映像ディレクター / ビデオグラファー。静岡県浜松市出身。2013年法政大学社会学部を卒業後、旅行会社と映像制作会社を経て独立。企業やスポーツ系PVや、ドキュメンタリーなどをメインに制作。人が持つ「熱」にフォーカスした、映像づくりをしている。
- ノンフィクション・ビデオグラファー伊納達也
ノンフィクション・ビデオグラファー。ウェブメディア向けのドキュメンタリーや、ショートフィルム、企業VPなどを制作。2019年からは栃木県鹿沼市にスタジオを移転して活動中。
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守秘義務契約(NDA)の基礎
伊納:企業の広告映像を制作する場合、その制作に関わる人は「世の中に公開される前の未発表の情報」を得ることが多くなります。それは新製品の情報であったり、新サービスの概要であったり、企業のイメージキャラクターに誰がなるのかといったキャスト情報など様々です。
それらの情報が企業が意図したタイミングの前に漏れてしまうのを防ぐために、映像制作の関係者は 守秘義務契約(NDA) を結ぶことがあります。「守秘義務」と言われているように、企業が情報を漏らしたくない時に、制作側に対して「作っているものに関する情報を口外してはいけない」というものです。
「情報」とは具体的に、映像を制作する際に企業から共有される資料の内容や、制作している映像の内容に関わることを指します。新商品のスペックや新サービスの内容、新しいブランドだった場合はロゴなどのデータ、CMに誰が出演しているか、どこで撮影しているか、などです。
👉NDAの対象になる情報
撮影に関わる全ての情報が対象となります。
* 新商品のスペックや新サービスの内容
* 新しいブランドの場合、ロゴなどのデータ
* 撮影における場所や日時
… etc
これらも対象になりますので、取り扱いには注意が必要です。
松永:仮に情報を流出してしまった場合、賠償金が発生するケースも大いにあります。金額がどのぐらいになるのかは案件によりますが、個人のクリエイターが1人で払えるレベルのものではないことが大半です。イチ制作会社が潰れてしまうレベルの賠償になることもあります。
NDAを結ぶということは、それだけ 「クライアントのビジネスにとって重要な情報を取り扱う」という認識が大切 です。撮影だけではなく、SNS等を通じた安易な情報漏洩には細心の注意が必要ですね。
伊納:自分が得た情報が外部に漏れてしまったことが、企業の株価に影響を与えてしまったり、製品の売上を左右してしまうということもあり得ない話ではありません。本当に気をつけなければいけない問題です。今はデータがデジタルになったことで、間違えてメールにデータを添付して送ってしまうなどのミスが、簡単に起こってしまいますからね...。
松永:一般的に制作会社は撮影に関する商材などは当然、資料なども厳重に管理します。撮影後もスタッフに配った資料などを現場で全て回収し、責任を持って処分するなど徹底します。
撮影に多くのスタッフが関わるということもよくありますし、うっかり撮影の帰り道に重要な情報が記された資料を誰かが落としてしまうなど、大いにあり得えます。そういった基本的なリスク管理は徹底されています。
👉情報の取り扱いには注意が必要
NDAを交わす以上、情報の取り扱いには注意が必要です。対象となるのは、制作に関わる全ての情報。場合によっては、賠償金が発生してしまう場合がありますので、データ管理を徹底することが必要です。
SNSと制作に関わった発信の注意
伊納:話は少し変わりますが、NDAを結んでいるかいないかに関わらず、広告映像を制作している際は、先ほど話した 「制作に関わる情報」をいっさい口外・公開してはいけないものだと考えた方が良い と思います。
NDAを結んでいないからといって、外部スタッフとして参加したCM撮影現場の写真を撮って、SNSにアップするのは絶対NGです。小規模な撮影で、タレントも出演していないなど、ほぼ問題ないだろうと思う場合でも、念の為にプロデューサーなど現場の責任者に確認を取るべきだと思います。
松永:「広告を制作している立場」で関わっている以上、現場で知った情報を発信すること自体は全く業務とは関係のない行為になると思うので、企業にとって直接影響を与えることがあると考えると、SNSの投稿は慎重に取り扱うべきですね。
伊納:それと少しNDAとは離れる部分もあるのですが、作品が世に出た後に自身のポートフォリオに作品を載せて発信することにも注意が必要です。
例えばですが、自分が制作に携わったCMや映像を、ネット上に公式には上がっていないのに勝手にYouTubeなどにアップしてポートフォリオにするのはNGです。これはクライアントと出演者やナレーター、楽曲制作者の契約の中で、CMがどのように使われるのか明確に決まっており、その契約内容から外れた使用方法になってしまうためです。
そのためネットで公式にアップされていない映像を自分のポートフォリオとして見せたい場合は、パスワードをかけて特定の人しか見ることのできない状態にして、見せたい人にのみそのURLを送るなどの配慮が必要です。
また、クライアントによっては制作した映像を実績として公開することを禁止している場合もあります。禁止する理由はクライアントによって様々なようですが、映像が完成した後に「実績として公開はしないでください」という話になることもあるので、気になる場合は案件を受注する際に確認しておくのが確実だと思います。
👉SNSでの発信にも注意
NDAを交わす以上、制作に関わる全ての情報は口外禁止です。そして、撮影後の発信など制作に関わったという事実の発信も、クライアントに確認して行うことが必要になります。自身のポートフォリオを組み立てる際も確認が必要です。
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